KACのお題を使って連作をする作家さんは少なくありません。
ただ、星取り合戦の舞台なので、それぞれのお話は単独として楽しめるものにしないと一見さんには忌避される傾向があります。
私も以前に、10個のお題に対し、全て違うジャンルにして、単話構成、それでいて連作、という縛りでチャレンジしましたが、評価にいたりませんでした。
KACはお祭りであって、星の相互授受に勤しんだ人が楽しめる場なので、しょうもないギミックで勝負しようと思うことが間違いなのかもしれません。
それでも、そんな縛りを楽しんで果敢にチャレンジし続ける作者様は存在します。
本作の作者である竹部月子さまも、そんな自縛プレイに突き動かされている稀有な一人です。
しかも今回は、別の短編からの派生として、クロスオーバー的な同じ世界観どころか、そっちを助走と言うか序章的に見える始め方をしています。
そして、一つ一つのお題をクリアしながら、登場人物の関係性をクリアにしながら、読者の頭もクリアにして物語は進みました。
一人称をぐるぐると回すことで、モノローグは説明不要の事実として受け入れることができて、短いながらも壮大な青春群像劇を視聴している気分になります。
そして、ラストシーン。
単話としても素晴らしいのに、この「約一か月」の作品群の終わり方として、なんとも言えない感動に包まれることになりました。
是非、この「一か月」を通してご覧になっていただきたい。
きっと春雷に打たれたような何かを得られると思います。