塩谷凛 第31話



 部屋は最早……俺の知る自分の部屋では無かった……


「せ! 先輩遅いですっ!!」

「もぉ、三嶋君戻ってきたんだからやめなさいぃ〜〜」


 引き出しは全て剥き出しになり、布団はひっぺはがされ、シーツまで捲られている。


 まず目に入ったのはベットにうつ伏せに身を投げ出し、長い脚と薄ピンクのパンツをチラ見せさせながら、ベットと壁の隙間に手を突っ込んでいる者。そのパンツ丸見えのお尻を、清水さんが大慌てで隠そうと飛び付く。


 次は、あの押し入れから飛び出してるケツだ……捲れ上がったスカートから覗かすボーダー柄の綿パンを、リズム良く左右に振っている。それを凛が慌てて自分の体で隠すと、そのケツを引き抜こうと引っ張ってりだす……


「あんた達何やってんのよ……」

「陽子ちゃ〜〜ん、二人が絶対まだエッチな本あるはずだって言い出してぇ〜〜」


 それがこの惨状を生み出した……と……


「お前らな……」


 呆れて何も言えない俺に、ようやくケツの持ち主が頭を引っこ抜いて言葉を発した。


「いやいや〜、だってよ〜逆に不健全じゃね?」

「そうそう、普通はねぇ?」


 脚の人も起き上がると、会話に参加してきた。


「でもやり過ぎですっ! こんなにしたら片付けるの大変じゃないですか!!」

「……その割には凛ちゃんもあちこち漁ってたような……」

「わ、私は彼女なんで良いんです!」


 よく無いだろ……俺は凛へ胸の中で軽く突っ込むと、片付けてくれてなかったテーブルの上の教科書やノートをどかし、コーラのペットボトルと、新しいプラスチックのコップを並べる。


「取り敢えず引き出しとかを戻せ、出ないと食わさんぞ」

「えーーケチィいぞ!」

「もうちょっとで見つけれそうなんだけどなぁ」

「陽子、それも」

「あ、うん……」


 俺は陽子からサーターアンダギーの乗った大皿を受け取ると、テーブルの中央に置く。

 陽子は先程のやり取りで、まだ気まずいのかテンションが低い。そんな陽子へ、押入れの中から引っ張り出した、俺の子供の頃のオモチャを元に戻していた三井が目ざとく突っ込む。


「陽子さー、なんかあったん?」

「えっ?」

「あ〜〜、そうね? なんか元気無い?」

「う、ううん? なんでも無いよ?」


 そこにベットのシーツを直し終わった祥子が、俺の枕を胸に抱きしめながら話しに加わってくる。


「どうだった? 許してもらえた?」

「あ、うん……それは、そう……うん。大丈夫だった」

「なんだよ、なんの話ししてんだ?」


 祥子はさっきまで話していた事を、かいつまんで全員へと伝える。それを凛だけはとても不快そうな面持ちでしょげている陽子へと視線を向けていた。


「ギャッハハハハァっ!! マジか!? メチャウケんだけど!!」

「レナちゃん……笑いすぎよぉ」


 俺はアンダギーで乾いた口に、コーラを流し込む。


「でも良かったじゃん? 許してもらえて〜。アタシが幸人のお母さんなら許さないけどね〜」

「うっ……」

「祥子、あんまこれ以上陽子を責めんな、充分凹んでんだから」

「…………そのまま嫌われてたら良かったのに」


 庇う俺とは逆に、凛はそう呟くと俺との距離を詰める。


「だいたい西野先輩は関係ないんだから、気にするのがおかしいです!」

「り、凛……陽子だっーー」

「先輩……陽子ってなんですか? なんで下の名前で呼んでるんですか……? さっき伊東先輩の事も祥子って呼んでませんでした?」

「うっ……そ、それは……」

「まぁまぁ……そんなプンプンしてる塩谷には、ご褒美と、こんな事実をプレゼントしてやろう!」


 そう誇らしげに、三井は席を立つと先程漁っていた押入れに向かう。


「ちょっ!! 三井何してんだっ!!」

「まぁまぁ……ちょっと……したっ……戦利品を……」


 そう言うと、三井は押入れの中から何冊かのアルバムと、袋を取り出した。俺はそれを奪おうと立ち上がって三井に迫る。


「おまっ!! バカッ! 戻せっ!!」

「やーだよぉ〜だ! ほれっ、塩谷! 一緒に見よーぜ! 全裸もあったぞぉ〜」


 三井は止める俺を押し退け、凛の横、さっきまで俺が座っていた場所に陣取る。


「これ……先輩?」

「そりゃそうだろぉ〜、ほれ見ろっ、ここっ! 丸出しだぜ!!」

「レナ! アタシにも見せなさいよっ!!」

「お前らはコッチの袋に入ったヤツから見ろよ! そっちは小学生の時みたいだったぞ」

「クソっ! お前さっきケツだしてそれをずっと見てやがったのか!」


 俺は三井に向けて睨みを向けるが、これはもうダメだ。俺には女子五人相手に、強引にアレらを奪う力は無い……


「可愛い……」

「な? ご褒美だろ?」

「はい…………あ……」


 凛がアルバムをめくる手を止めた一ページ。俺が保育園から幼稚園に転園した五歳程度の頃の俺の写真。


「イジメの証拠は無かったけどよ、結構コイツら一緒に写ってんだよなぁー」

「……西野先輩」

「ほらな? これが事実ってやつだ! ちゃんと幼馴染してんじゃん?」

「…………はい」

「だから、あんま関係ないとか可哀想な事言わねぇでやれよ!」

「…………」


 凛からの返事は無い。陽子の存在をまだ受け入れる事は出来ないのだろう。


「ーーおお〜! これが噂に聞いてたやつか!!」

「ほんとだったんだねぇ〜、凄いいっぱい写真あるし〜、目立ってたんだねぇ」


 祥子と清水さんが広げていたのは、俺が小学生の時に買った写真達だった。二人が今見ているのは俺の小六の時の運動会の時の写真だ。


 そんな中で、陽子は一枚の写真を手に持って、それをジッと見つめてる。


「でも、幸人こんなに写真買っちゃってさぁ〜ナルシーじゃん!」

「アホっ! お袋が写ってるは全部買って来いって言ったんだよ!」

「本当かなぁ〜〜」


 そんなやり取りをしてる俺達に興味を示したのか、凛が祥子達が広げてる写真に視線を向ける。


「あ…………私が持ってるやつ………」

「え?」


 それは陽子が手に持った写真だった。陽子は驚きの声を上げると、そのまま両手で自分の胸に写真を抱えこんだ。


「に、西野先輩……?」

「…………私だってコレもってるもん」


 静まり返る室内。三井ですら口を開けて固まっている。数秒が十分二十分に感じる重苦しい空気……


 俺はそんな空気に耐え切れなくなり、リセットするべく、道化る覚悟を決めた……


「あ、ああっ! あの後は色々大変だったからな!? ら、ラブレターとかチョコとか……色々下駄箱に入る様になったりな? 結構買った女子多いんじゃないか? その写真! いやぁ〜モテる男は辛いなぁ………な、なんつって…….」


 ジトッとした五人の視線が俺に向けられる。後悔先に立たず……背中に油の様なネトっとした汗が滲み出る……


「ほ、ほら! もう良いだろ? 凛には今度ちゃんと見せてやるからさ!」


 その全員が固まった隙をついて、俺は写真やアルバムをそそくさと片付け、押入れにそれを投げ込む。


 俺は背中に凍る様な視線を浴び、振り返ればきっと俺は無事にすまない、そんな恐怖が胸に広がる。


「じゃ、じゃあその所為で調子こいちまってたって事だな!?」

「そ、そうね? アンタ本当ダメダメだったもんね? 一年の時! 本当中学デビューって感じでさぁ……マジダサキモだったわね!」


 俺はようやく援護を受ける事が出来た。やはり三井は良い友達としてやっていけそうだ! 祥子はちょっと言い過ぎだ……俺は振り返ると、引き攣った笑顔で元いた空間に視線を向ける。


「うっ……」


 そこでは凛と陽子が再び睨みあっていた……陽子の胸には今も俺の写真が抱きしめられている。


「よ、陽子? それもしまうから……」


 俺は写真を回収しようと手を伸ばす。だが陽子はそれを拒否するかのように、体を捻る。


「私のだもん……」

「ちょっ! いい加減にして下さいっ!! それは先輩のですっ!!」


 凛はそう叫ぶと陽子に飛び付くーー


「や、やめっ!!」

「持ってるんなら家で見れば良いじゃないっ!!」


 写真を奪おうとする凛と、それを離さないで胸元に引き戻そうとする陽子ーー


「ちょっと! アンタ達辞めなさい!!」

「こらぁ〜! 喧嘩しないのっ!!」


 二人を引き離そうと、祥子と清水さんが割って入るーー


「ギャッハハハハハッーーーー」


ビリッ


「ーーハハハ?」


 三井の面白がる笑いが室内に溢れている中、何かが引き裂かれる音がした……


「あ……」

「え……」


 引き裂かれる俺の栄光の一枚……


「あ〜〜ほらぁ……そんな引っ張りあったら破れちゃうに決まってるじゃない」

「もぉーー!! アタシそれ欲しかったのに!!」


 俺は二人が握りこむ、半分に引き裂かれた写真をソッと近づいて覗き込む……


「うげぇ! 顔面真っ二つっ!!」


 俺と同じ様に覗き込んだ三井が汚い悲鳴をあげた。俺もなんかあまりに無惨な裂け方に、まるで自分がこんな目にあったかの様な錯覚にかられ、ブルッと全身が震えた。


「せ、先輩……これ……私……」

「み、三嶋……ご、ごめん……」


 二人が涙を浮かべ、懇願するような目で俺を見上げている……


「良いよ、俺はナルシーじゃないからな? そんな写真の一枚二枚。それより、お前らが相手の所為にしないから安心した」

「そうねぇ、そこは立派ね?」

「取り敢えずもう揉めるのは無しな? サッサと食べてお開きにしようぜ?」

「そうよぉ〜? 三嶋君のお母さんがせっかく作ってくれたんだからぁ」


 俺と清水さんは、それぞれ凛と陽子の肩を掴むと、二人を離れた位置に座らせる。俺は凛の手から写真を取る。


「はい、三嶋君」

「ああ、ありがとう清水さん」


 俺は清水さんから、陽子が持っていたクシャクシャになった写真を受け取って、自分の学習机に持っていく。俺は二枚をひっくり返して机に置き、手で少し伸ばしてからセロハンテープで裏から止める。そしてひっくり返して表面を見ると、そこには哀れな俺の姿……


「…………ふざけた事を言った罰か……」

「ん? なんか言った? あ! そこそこ見れるじゃん! もーらい!」

「しょ、祥子……」

「アタシもお揃い〜〜」


 ショックで本調子を取り戻していない凛と陽子の隙をついて、俺の背後に忍び寄っていた祥子が、写真を奪って胸ポケットに仕舞う。


「あ、伊東先輩……」

「しょ……祥子……」

「二人は家にあるんでしょー? 別に良いじゃない写真くらいさぁ、これ破れてんだしー」

「「うう……」」


 俺は溜息を吐くと、テーブルのアンダギーに手を伸ばす。


(早く食い切ってお開きにしよう……)


 俺は無言でひたすらそれを食べ続けた……



#



「ごちそーさまっした! ユキポンまた明日なぁ!」

「お邪魔しましたぁ〜」

「お義母さま、ご馳走様でした。幸人君また明日学校で」

「あ、あの……今日はありがとうございました……」


 順に三井、清水さん、祥子に陽子の順に玄関で別れを告げ、次々と家を出て行く。祥子はあのスタイルをこれからも貫くつもりなんだろうか?


 凛はまだ俺の後ろでビクつく、健の頭を優しく撫でている。


「嵐みたいだったわねぇ〜」

「こ、こわかった……」

「ごめんね? 先輩達にはちゃんと言っとくからね」


 俺は取り敢えず、今日の礼をお袋に伝える。


「ありがとうね、母さん。俺もまさかこんな事になるとは……」

「いいのよぉ? お母さん、なんか幸人がモテモテで嬉しくなっちゃった」

「だ、ダメです! もうあの人達は家にあげちゃ!」

「そうねぇ、凛ちゃんにとっては災難だもんね? それよりご飯は食べてく? 居間は居心地悪いなら部屋まで運ぶわよ?」

「あぁ、それがいいな? まだ凛と話したい事あるし」

「い、良いんですか?」

「お母さんには連絡しておくわね〜」


 そう言うと、お袋は振り返って居間のドアを開け、健を連れて居間に戻っていく。俺は今日何度も往復した階段を上がろうと、手すりを掴んで凛に声を掛ける。


「行くぞ? 聞きたい事にはちゃんと答えるからさ」

「う、うん!」


 凛は写真の件から少し暗かった顔に笑顔を浮かべ、俺の後ろをついてくる。


 部屋を開け、惨状となった部屋に入る。散らかされきった部屋に俺は溜息が出る。


「はぁ……もう二度とゴメンだ」

「……先輩が悪いんですよ、ちゃんと断らないから」

「分かってるよ……ごめんな」

「伝わらないです……」


 そう言って、拗ねた様に唇を尖らす凛を、俺は腕を掴んで引き寄せると、ソッと軽いキスをする……


「んっ……ズルい」

「伝わったか?」


 俺はベットの布団を軽く直すと、そこに腰掛ける。凛もそれに続いて俺に寄り添うように座るを


「西野先輩……先輩の事本気なんですね」

「……初恋、とは言ってたな」

「私だってそうです……」

「本人は最近まで自覚していなかったみたいだった。多分俺が凛と付き合う事で、アイツの中にあった気持ちが噴き出したじゃないかな……」

「それでもこんなのおかしいです。人の彼氏にあんなあからさまに絡んで。伊東先輩もレナ先輩もですっ!!」


 全くその通りだ……何度も言うが彼女持ちにこんなハーレム展開なんて必要ない。やっぱりおかしいんだろう。そして共通する彼女達の行動原理には、俺が凛と別れるのが絶対だと思っている事がある。


 そしてそれは凛もきっと同じで……それが不安を生みだす大元なんじゃないだろうか。


 俺は世界が歴史を矯正しようしているという考察をしているが、これは本当にタイムリープなんだろうか……彼女達には以前の歴史の記憶の残滓があるとしたら……俺の死のタイミングで世界自体が巻き戻されとしたら……


(アイツらには俺の人生の顛末が記憶の片隅に残ってる?)


 それなら誰もが俺の中学時代の末路を知ってる事になる。もしくはなんとなくでも、そんな感覚としてでも……受け継がれているとか……それだと陽子の行動の裏付けになる。



(考えすぎか? そもそもこの俺が置かれてる状況自体がファンタジーなんだ、それを理論的に解析しようとしても仕方ないだろ……)



「先輩?」

「なぁ、凛は俺と別れる気はないよな?」

「え……?」

「え……ってお前……」

「あ、いや! もちろんだよ?」


コンコン


「幸人〜ご飯ここに置いとくわねー」

「ああ、ありがとう」


 俺は立ち上がるとドアを開け、廊下に置かれたお盆を持ち上げる。お袋が階段の下りる足音が聞こえる。俺はお盆を部屋に運び込むと、それをテーブルに乗せる。


「じゃあ食べながら話すか」

「うん」


 お袋が持ってきたのはハヤシライスと味噌汁だった。居間じゃなく部屋で食べる提案をしたのは、運びやすいメニューだったからだろう。


「俺、結構好きなんだよなハヤシライス」

「へー、そうなんだ? 私全然知らなかった」

「そうか? まぁ、実はカレーよりコッチの方が好きで、お袋には変わってるって言われるな」

「へーー!! 確かに変わってる!!」


 そんなどうでも良い会話を交わしながら、俺と凛は二人きりの食事を楽しむ。


 俺は皿の上の最後の一口を口に運び、それを咀嚼して飲み込むと、凛へ声を掛ける。


「最後にこんな時間を過ごせるんなら、今日は悪い一日じゃなかったって思えるな」

「……良い感じに締めようとしないでください」

「う……」


 墓穴をほってしまった。凛はジトッとした目を向けたまま、スプーンのハヤシライスを口に運ぶ。もう少し食べ終わるまで時間がかかりそうだ。俺は元妻ともう一人同棲してた彼女がいたが、二人ともやはり凛と同じ様にゆっくり食事をとるタイプだった。俺は早食いなので、こうして何時も、のんびりと食事をとるその当時の彼女を眺めていた。


「あんまりジッと見ないでください……恥ずかしいです……」

「いいだろ? 可愛いなって思って見てたんだから」

「もぉ……」


 俺は両手を背後の床につけると、天井を仰ぎみる。怒涛の一日だった……


 陽子の初恋宣言や、新しい可能性を想起させる不思議な現象。それに祥子や三井の怒涛のアピール……確かに俺が凛と別れたとしても俺には次があるのかもしれない。でも、俺の想いはちゃんと凛に向かっていて、俺はこの子を可愛いと思っているし、大切にしたい。性的なものはもう少し大人になってからで良いだろう。


「ごちそうさまです」

「あ、いいよ。後で俺が運ぶ」


 凛が食事を終え、食器を重ねてお盆に乗せると、立ち上がろうとする。俺はそれ制止して、もう少しこの幸せな時間の延長を望んだ。


「凛はテスト勉強してるのか?」

「うーん……まぁまぁかな? 前に教えて貰って、授業についていける様になったし、多分大丈夫」

「お、なら期待してるぞ?」

「うーー、先輩と比べるのは無しですよ!」

「幸人で良いよ」

「え?」

「先輩はやめて、幸人って呼んでくれよ」


 俺は一つ二人の距離を詰める提案をする。実は凛はかつての世界では、付き合った二日目から俺を幸人と呼んでいた。これは体の関係を持った事で、凛が俺に対して自信を持って詰め寄ったからなんだろう。


「……うん」

「嫌か?」

「ううんっ!! そうじゃない!! 呼びたいっ!!」

「そっか、それなら頼むよ」


 頬を染め、少し俯く凛はとても愛らしく、直ぐにでも押し倒したいぐらいに色っぽい。


「…………ゆきと」

「あぁ、なんだ? 凛」

「ふふ……ゆきと……」

「だからなんだよ……」


 俺の名前を何度も呟く凛。俺はその響きに何度も心を喜びで震わす。


「……ゆきと……これは西野先輩と伊東先輩の事を下の名前で呼んだ償いでしょ……」

「ち、違うわっ!! アレはアイツらがそう呼べって言ったからであってだな……俺は別にーー」

「いいよ、もういいよ。ゆきとは私の事大好きなんだよね? なら、それでいいよ」


 そう言うと、立ち上がった凛は俺の横に座り直すと腕に抱きつく。俺はその感触と凛の体温に鼓動が高鳴る。


「部活帰りじゃなきゃなぁ……」

「別に気になんないけどな?」

「私がいやなの……もう……バカ……」


 俺は腕を引き抜くと凛の肩を抱く。この時間がずっと続けばいいと、そう思いながら俺は凛から伝わるほのかな体温をもっと感じようと、ほのかに香るシャンプー香りがする彼女の茶色い髪に自分顔をうずめた……

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