モンスター

第1話

平穏の中_

男たちはおとなしい

争いの無い日常

淡々と緩やかに

無難に過ごす。


そも狩りは雌が行うもの

雄は眺め貪るだけ。


男たちは寡黙に仕事をこなす。

変わらぬ日常を好む。


あきらとヨシキ、たかあきは

会社の同僚であり仲がいい。

性格、嗜好、価値観が

一致しているわけでもない。

あきらは聡明、自己主張する。

ヨシキは温和、あきらの話に耳を傾ける。

たかあきは日和見、強いものになびく。

必然的に、あきらがリーダーとなる。


この均衡は至極当たり前_

長く続いていた。


あの女が現れる前までは_




暫定的にSとする。


Sは、どの男を選べば賢明か得策か

瞬時に解るのである。


慎ましやかに

「新人です。皆様、宜しくご指導下さいませ。」と挨拶しお辞儀した。


部内がややざわめいた。

何しろ女性社員は初めてであったから。




Sは、あきらを欲しいと思い

「将を射んと欲すれば、まず馬を射よ」の習いに従い

ヨシキとたかあきを懐柔せむと

俊敏に行動を起こす。


落とす為の自分語りをする。


"素直になれない愛しいあきらさん"

と呟き


夜な夜な恋文を綴り

あきらに送る。


「迷惑です!」と応えたあきらを

゙どうして自分の心に正直になれないのかしら…

ああ、何かしらトラウマを抱えて

いるのね゙

゙わたしがあなたを救ってあげる"

と更に接近する。


拒まれても拒まれても

 恋文を送り続ける。


「ね?あんなに愛して下さったのに

どうしてなの?あの女の入れ知恵?」


あきらは激昂し

「貴女を好きだった事など1度も無い!

これ以上、ストーカー行為を続けるならば、しかるべき所に訴えますよ」


ま、うふふ

可愛らしいあきらさん。

まるで十代の少年みたい

好きだと嫌いって言うものね。


Sは、あきらの周りの女達を片っ端から

排除する。


無関係の女をも嫌悪し

言葉の刃で責め続ける。


あきらがSNSをやってることを

突き止め、バーチャルさえも

許さない。


"あきらさんをを助けて差し上げられるのはわたしだげ


水面下で入手した

住所、電話番号…

アカウント名


無言電話は鳴り止まない。


SNSで繋がる女たちを追及、晒す



ヨシキとたかあきは

あきらの憔悴を案じ始めた

が……時、既に遅し


このひとりの女Sにより

三人の関係はとうに破綻していたのである。


ヨシキもたかあきも

Sに手懐けられ


目の前に居るあきらを懐疑的に_


_そう、洗脳されたのだ_


Sの創りあげた幻のあきらしか

視ていなかった。


「あきら、拗ねてないで

Sさんと仲直りしろや」


あきらは孤独を選んだ。

元々、群れることは好きではない

1人、黙々と仕事にいそしむ




今もSはあきらを視ている。


「あきらさん、ずっとずっと愛し続けます

あなたをお守りします」




モンスター

その名はS


男性たちよ

お気をつけあそばせ。

あなたのすぐ傍に

Sは存在します。


可哀想な女だと?

ならば1度お付き合い下さいな。


思い込みの強い女

妄想する女

実践する女

邪しまな女


モンスターにお気をつけあそばせ。












Sの妄想日記


○月○日

今日も、あきらさんは

わたしを見てたわ

恥ずかしがりさん

あなたとわたしは

運命の糸で結ばれてるの


他の女に騙されないで


もう仕方ないわね

あの女はわたしがお仕置きするから

安心なさって


○月○日

あきらさん

焦らしてるの?

わざと他の女に笑顔を見せてるのでしょ?

無駄よ

あなたはわたしだけを愛してる
































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モンスター @oboto

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