第2話
「……て。…きて。おきて」
俺は激しく肩を揺すられ、目覚めた。気が付かないうちに眠りに落ちていたようだった。揺する…?誰が??目覚めて数分、我に返った寝ぼけていた頭をフル回転させ、現状把握に努めた。
まず、俺の目の前、つまり突っ伏していたベッドには美人がいた。肌が白くスーツを身にまとった美人。あ、そうだった、俺は昨日、この美人が植え込みに頭から突き刺さっていて、で回収して自分の部屋に寝かせてやったんだった。
で、今その美人が俺の肩を揺すって叩き起こしてくれた。
「あ、気が付いたんですね」
他になんて返せばよかったか分からなかった女性経験の対してなかった俺は、ありきたりなドラマのような返事をした。するとその美人はくしゃっと笑い、ぷっと噴出した。
「ごめんなさいね、助けてもらったのに。馬鹿にする気はなかったのよ」
「別にいいですよ。気にしてないです。とりあえずシャワー浴びていきます?」
自分でシャワーを浴びていくか聞くだけ聞いて後で気が付いた。そういえば彼女なんてできたことのない27年間の人生だった。慌てて取り消そうとした俺がなんて切り出せばいいのか分からず口をパクパクとしていると、美人は不思議そうな顔をして何か問題でもあるのかと聞きたげな顔をした。
そんな顔をされると僕は何も言えなくなって、気が付けば美人をお風呂場に案内していた。
よくよく考えたら今まで普通の人生を歩みすぎて、この家には消毒液もなければ、抗菌作用のありそうな強めの塗り薬すらない。買いに行くべきか。俺はその場に留まり知恵を働かせようとしたが、よい案が思いつかず諦めた。
そういえば。俺は昨夜あの美人に何か確認しようとしたはずだった。
なんだったっけ?
どうやら寝て起きたら忘れてしまったらしい。なんて俺は滑稽なんだろう。確かに俺にとっては超重要事項で、確かめない選択肢なんて昨夜時点では全く持って存在していなかったはずなのに…。
俺はいくら考えても思い出せず、そのままその場で美人を待つことにした。もしかしたら彼女の顔を見たら思い出せるかもしれない。俺は小さなため息をついてその場に座り込んだ。床に落ちていた彼女のスマートフォンの画面が一瞬通知か何かで画面を表示した。どうやら相当な量の通知をため込んでいたようで、パッと目に入っただけでも通知が画面を埋め尽くしてた。
俺は何となく、通知の方よりも背景に使用している画像が気になってそのスマートフォンの画面の方に視線を落とした。なんとなくぼやけてはいるけれど見覚えのある画像が表示されている気がした。勝手に通知をどけて画像を見たいという気持ちがあったが、罪悪感のようなものが胸の奥深くから立ち込めてきた。
ガチャッ。
扉に開く音がした。どうやら美人がシャワーを終えたようだ。俺はスマートフォンを覗き見ようとしたという事実がバレないように、こっそりとその場でスマートフォンを裏返し、自分のスマホに視線を落とした。
流石に女性のスマートフォンを勝手に覗いたとなるとまずい。しかもただの女性ではなくて『一応』初対面だし。そもそも初対面の人のスマートフォンの覗き見なんて同性でもしない。好奇心半分でそもそも覗き込もうとしたのが間違いだった。何を見たわけでもないのに俺は今、勝手に一人で後悔して、罪悪感に苛まれている。
「シャワーお借りしました」
シャワー上がりの美人が部屋に戻ってくるようだ。俺は彼女が服を着ていない可能性を考え、音の方から目をそらした。
「別に服着てるのでこっち見て大丈夫ですよ…?」美人は不思議そうな顔をしながら顔をしたから覗き込む。ちらっと美人の方を見ると、確かに彼女はスーツを身に纏って元通りの格好になっていた。どうやら先ほどまで身に着けていたスーツを再度身に着けたらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます