ベランダの神様

昼月キオリ

ベランダの神様

俺は今日、ベランダから飛び降りて死のうと思う。

会社で怒鳴られるし彼女には喧嘩して引っ叩かれるし。

窓を開けてベランダに出た。が、見知らぬ男がベランダの手すりに横になってあくびをしていた。

おかしい。物理的にあの細い手すりにどうやって横向きになってるんだ?

一真(かずま)「誰だあんた!?」

神様「きゃー人の昼寝を覗くなんてエッチ!」

一真「誰かって聞いてんだよじいさん」

神様「神様だよ」

一真「馬鹿にしてんのか」

神様「してないってば」

一真「あのなぁ、俺はこれから死ぬんだよ」

神様「何だ、君死ぬ気だったのか」

一真「ああ、だから邪魔すんな」

神様「えー今死ななきゃだめなのぉ、やだやだわしは嫌だぁ痛いよぉ」

一真「痛いのは俺だっつの、止めても無駄だ俺は飛び降りる」

神様「ふむ、なら止めるのは辞めるかね」

あっさりと引き下がった神様を尻目に手すりに足をかけた。

神様「ていっ!!」

あろう事か神様は俺の脇腹目掛けて両人差し指をブッ刺してきた。

一真「ふぎゃ!!」

バタン!!

俺はその衝撃で後ろに倒れ、脇を抑えたまま悶絶している。

神様「キャッキャ」

一真「いい度胸してんじゃねーか、人の脇腹に思いっきり指ブッ刺しやがって・・・俺は脇弱いんだよ」

神様「ねーねー、一個聞いていい?」

一真「何だよ」

神様「わしにあれこれされて腹が立って怒っただろう?」

一真「それがどーした」

神様「なーんで会社には怒らずに死のう

としたんだね?」

一真「え?そりゃ会社はそういう場所だから」

神様「そう言って勝手に線を引いているのは君自信なんじゃないかな?」

一真「それは・・・」

神様「ほれ、彼女が来たみたいだぞ」

一真「え?」

下を見る。

千春ちはる「かずくーん!!」

一真「え、千春!?」

千春「さっきはごめんなさい!謝るから死なないでぇ!!」

どうなってんだ?誰にも俺が死のうとしてること言ってなかったのに・・・はっ。

一真「まさかあんた何かしたのか?」

神様「まぁ、ちょいとね」

そう、神様は一真が死のうとしていると千春にメールを送っていたのだ。

神様「そんな事より早く彼女の所へ行ってやりなさい」

一真「あ、ああ」


千春「うわぁん、かず君ごめんなさいごめんなさい!」

一真「わ、分かったから泣くなよ」

千春「かず君死んだら私も死ぬう・・・ぐすっぐすっ」

一真「千春・・・ああ、ごめん、もう二度とあんな馬鹿な真似しないよ」

千春「ぐすっ・・そういえばさっきのメール誰からだったんだろう」

一真「神様じゃね?」

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ベランダの神様 昼月キオリ @bluepiece221b

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