猫のアーサーとマーリン

雪沢 凛

1. 雨の中の出会い

土砂降りの午後だった。


まるで空に大きな穴が空いたみたいに、激しい雨が滝のように降り続いている。

こんな天気では、外を歩く人なんてほとんどいない。


私は会社で仕事をしていた。

冷房が効いたオフィスの中、窓の外に広がる灰色の世界をぼんやりと眺める。


「早く帰りたいな……こんな日に残業とか、マジで勘弁してほしいんだけど。」


スマホを机の上に置いたまま作業を続けていた。

ふと、画面が光る。


家族からのメッセージだった。

添付された写真を開くと、そこには玄関の前にちょこんと座る二匹のずぶ濡れの子猫が映っていた。


「……え?」

思わず息をのむ。


一匹は茶トラで、まん丸の目がキラキラと輝いている。

もう一匹はサバトラで、雨に濡れてぺしゃんこになり、小さく震えている。


「この子、アーサーっぽいな……」


私は思わず呟いた。

堂々とした雰囲気があって、王様みたいな風格。


そう、アーサー王の「アーサー」という名前がぴったりな気がする。

でも、鯖トラはどうしよう?


「……ランスロット?いやいや、この子にそんなイケメン騎士の名前は荷が重すぎるか。」

ふと浮かんだ名前を呟いてみたけど、なんか違う。

もっと臆病そうで、賢そうな感じの名前がいい気がする。


「まあ、帰ってから考えよう。」


仕事を終えたら、同居人にも相談してみよう。

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