side 美雨
第6話
「ボサノヴァ」
「ロック」
「絶対にボサノヴァ」
「絶対にロック」
「何で毎回同じことで揉めるんです? いつも通り前半と後半で音楽を変えればいいではありませんか」
青筋を立てた加藤さんに私も滝山さんも引き下がらざるを得なかった。
「もっとリズムよく動いて。シャッターとタイミングが合わない」
ロックのリズムは嫌い。
誰かとのセックスを思い出す。
激しいリズムも。
腹の底に響く音も、苦手だ。
上手く動けない。
体が嫌がる。
これは仕事。
気持ちが焦る。
「あ……」
思わず時計に視線を向けたとき、足がもつれた。
「……少し休憩しよう」
「はい……」
その表情を見なくても自覚している。
まだ1枚もいいものが撮れていない。
「ここは踏ん張るところよ。気持ちを切り替えましょう」
「……うん」
加藤さんがスポーツドリンクを渡しながら励ましてくれた。
変に慰めない加藤さんのこういうところが好き。
そうだ、気持ちを切り替えなくちゃ。
「廊下にいってくる」
「いつもの?」
「直ぐに戻るから」
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