カウンターで待ってる〜私を捨てた彼らのために舞い戻ってきました〜
リーシャ
第1話ベールを被った女の正体
今、王族が座っている場所に佇んでいる。
詳しく言うと、王族が公務の時に座る椅子がある部屋で椅子に座っていた。
端から見れば、こちらの容姿は仮面と頭にベールを被っていて顔が見えない。
対するもう一人の容姿は見えていて、とても整っている。
王の間と呼ばれる場所であるのに、その王様は頭を低くして膝を付いている。
その理由は偏にここへ連れてきてくれた男が彼よりも高い身分だからだ。
なんというか、不思議な気分と言う他ない。
昔、目の前に居る王はマリアを見て見ぬふりをして追い出されるのを傍観していた。
庇うのすら取るに足らないとでも思ったのだろう。
皮肉でも何でもない。
敷居の高い人間は長くその環境に居たら、洗脳のように敷居の低い人間が目に入らない。
いや、周りが入れさせないようにしているのかも。
その取るに足らない女が再び地位を得てここに来ていると知ったら、さあ、彼らはどんな反応をするのだろう。
ここへ連れてきてくれたセナをちらりと見て、相変わらずの格好良さに感嘆の息を付く。
顔が整っているからこれ以上ない程の観賞対象である。
流石、見られ慣れているからだろう、ケロリとしていた。
「して、予定通りこの国に滞在する」
セナの言葉には一切相手の承諾を得る響きは無い。
当然だ、さっきも言った通りに彼の地位も権力も此方の方がずっとずっと遥か上なのだから。
王はその言葉に首を縦に振って「承りました」と王族にはありえない言葉遣いで応える。
しかし、それが普通なのだという。
昔、王国が公国になったのはこの世界に住む全ての人達の認知する歴史。
王が頭を下げたまま言葉を交わしていると、何やら扉の外が少し騒がしい。
王が何事かと扉に目を向け、衛兵が入ってくる。
入室を得る言葉にセナが頷く。
王はそれを受けて衛兵に伝令を言うよう足す。
「ご報告します。巫女様が、こちらへ参られております」
その報告を聞いた王の苦虫を潰したような顔付きと言ったら。
良くも邪魔をしてくれよってとありありと書いてある。
王たるもの、態度を顔に出さないように教育されているのに、余程それを破顔させる事態が生じているのだろう。
セナはまだ顔色も変えず騒然とする部屋の空気に緊張を走らせる。
「成程、やはりこの《国》は禁忌を犯したのか」
また王の顔が剥がれる。
まさか、バレていないとは思ってないよね。
普通バレるよそれ。
魔力とかでもバレるからどんなに隠しても無駄。
セナはうっそりと笑みを浮かべ、王の顔を青くさせていく。
勝手に自爆しているだけなのだが。
そもそも巫女を隠そうと躍起になっていたのに、その巫女が何も知らずに此処に来たのは一番避けねばならないことだった。
リリカは驚いた顔で王子を見上げる。
「痛いわディー?どうしたの?」
一端に令嬢言葉なんて使っちゃってさ。
あざとい。
「……行くぞ」
セナに足されて歩きだし、部屋を後にした。
宛てがわれた来賓用の部屋へ辿り着くとセナは誰も見ていないからとドカっとソフぁーへ大胆に座る。
「何なんだあの女は。礼儀すらもなってねぇじゃねぇか」
「あのボンクラ達もしまった!みたいな顔してたから、きっと勉強してないんじゃない?」
「成程。案の定のアホか。只でさえあれこれ言うと向こうは警戒してボロが出にくくなるからな……我慢比べだこれは」
「ふふ、お疲れ様」
「お前はあの女に何年も一緒に居させられたんだったな。良く血管が破れなかったってお前を尊敬する」
「嫌な方向に慣れた結果だよ」
セナは首を捻って凝りを解すとマリアにこっちへ来るよう合図。
いそいそと向かうと太腿の裏を持ち上げられてそのまま膝の上に抱き上げられる。
「良く我慢したな」
「………うん」
仮面に手を掛けるのが視界に入り、そのままされるがままに取らせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます