明日の恋は、晴れるかな――。

立坂 雪花

✩.*˚

 高校二年生の夏、私は大失恋した。


 相手は私といい感じだった、ひとつ年上の先輩。



 先輩に、すごく可愛くて性格もよさそうな彼女が出来た。幸せそうなふたりを見て、心が痛んだ。



 ずっと泣いた。


 思い出すたびに泣いた。



 別のことをしてても思い出してしまう。


 


 そんな日々を過ごしていた時。



「一緒に帰ろ?」


「どうしたの? 誘ってくるの珍しいね」



 教室で帰る準備をしていると、同級生で幼なじみの雪斗くんが私の教室に来た。雪斗くんは隣に住んでいる幼なじみ。



 帰り道、バスに乗り、一番後ろの席に並んで座った。



「大丈夫?」


「何が?」


「目が腫れてるから」


「……失恋したから、いっぱい泣いた」


「……そうだったんだ」



 雪斗くんは外に視線を向けた。


 雪斗くんは優しいから、多分、今、私の心の傷を広げないように言葉を探してくれてる。



「あんまり気を使わなくても、いいからね?」


「うん」



 それから、うちの近くのバス停に着くまで、ふたりは無言だった。



「ちょっと、寄り道していかない?」


「いいよ」



 雪斗くんからそう言ってくるのは珍しい。


 家の方向とは逆の道を歩き、川の流れがはっきりと見える橋の上に来た。



 無言で川を眺める私たち。


 眺めていると小雨が降ってきた。



「あ、雨だ。最近毎日雨降ってるよね」



 言いながら私は視線を少し上にやる。



「そうだね。一瞬の日もあるけど、毎日だね」



 雪斗くんも同じ方向を向いた。



「なんか、私の心みたい……もう、恋なんてしたくないな」


「……僕じゃ、駄目かな?」



 私はおどろいて勢いよく雪斗くんを見た。



「僕じゃ、駄目だよね。でも、いつでも待ってるから……ずっと、隣にいるから」



 雨の勢いが強くなる。



「帰ろっか」



 雪斗くんが手を差し出してきた。


 私は雪斗くんの手をぎゅっと握った。



 降り止まない雨はない。


 この雨の後は、快晴かな?



 明日の恋は、晴れる予感――。



☆。.:*・゜

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明日の恋は、晴れるかな――。 立坂 雪花 @tachisakayukika

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