神様に独り言

柚月まお

未完成の出来損ない

 ねえ、神様。僕、泣いてもいいかな。思いっきり。喉が壊れるほど。不安も全部聞いてくれるかな。出来損ないの未完成でも泣いていいかな。全部が不安なんだ、関係も環境も変わってしまうのが。でも、誰にも言えなくて。不安にさせたくないんだ、頑張っている人を振り向かせたくないんだ。こんなちっぽけな不安で。立ち止まってほしくない。となりを支える人が僕じゃなくても。僕よりも素敵な人だってたくさんいる。無知で何もできない僕よりもきっと。僕は聞いているだけ、聴いているだけなんだ。“今”の関係がこの先も続く保証はどこにもないけど。あの時に言ってた約束は果たしたいな。

 

 僕の前にいる君は、いつも可愛い?と僕に質問をする。僕はいつも可愛いよと返す。

だってそれ以外の言葉は似合わないから。変えのきかないただひとりの君。

どんな召物で彩ったって、最高の仕上がりになるはずで。でも、それをみられるのは僕ではないかもしれなくて。そんな些細な不安で僕の心は少し壊れた。無惨にも。救いようがない弱虫は誤りを謝ってまた地面に目を落とす。バカバカしい。不安なんかに押し潰されそうになっている自分が一番情けない。ねえ神様、僕はこのままきっと大丈夫を抱えて歩いてもいいのかな。僕が渡した優しさはどこかで支えになっているのかな。


 僕の言葉は僕にはちっとも支えにはなってくれなくて。ずっと何かに焦って心ここに在らずの日々で。不味い涙じゃ空腹は満たされない。君を幸せにするのは僕だなんてそんな贅沢なことは今の僕には言えない。無知で情けない出来損ないの僕は、尊敬できて物知りで優秀な君のとなりを歩くに値しないと思っている。でも逆に、僕しかいないのかもしれない。と思うこともある。この関係だからこそお互いに新しい発見があるのかもって。不確かだから確かめ甲斐があるかもしれない、また明日がくる。そうやってゆっくりお互いが進んで行って巡り巡って奇跡になればいいなって。これからも自分を歩いていくよ。結び切りで続いていくかどうか。まだ今の僕らにはわからない、だからこれからわかっていけたらいいな。これから待っている不安の先に奇跡の道しるべがあるかもしれないから。急がば回れって言葉もあるからね。僕を変えてくれた君とのご縁がこれからもずっと続いたらいいな。きっと大丈夫、僕も君も。

 

 ありがとう神様、僕の情けない独りごとを聞いてくれて。

 これからもゆっくり歩いていく、まだ生きるよ。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

神様に独り言 柚月まお @yuduki_25nico

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ