実創怪集

城異羽大

エレベーター


昔住んでたアパートの話。


事故物件調べるサイトでちょうど変死事件があったらしいんだよね。どこの部屋かはわからないんだけどさ。


黄色い9階建てのアパートで、ところどころボロいのよ。床は軋むし、備え付けのクローゼットは少し壊れてるし、ところどころ電球は切れかけがデフォルト。


中でもエレベーターが最悪だった。

カビ臭いカバーが貼られてるんだけど剥がれかけ。ガタガタ音を立てながら動くんだから、命の危機を感じるんだよね。

そういえばエレベーターの重量オーバーなった場合、その部屋ごと落ちるんじゃなくて、床が抜けるんだとさ。あのエレベーターだったらありえそうだったな。


7階に住んでたんだけど、窓から海が見えて割と充実してたよ。ただ家鳴りがすごくてさ、ドタバタした音だとか壁を叩く音はよく聞こえたよ。隣に誰も住んでなくてもね。


まぁそれくらいだったから、嫌な感じははそこまでなかった。家の中ではね。

エレベーターなんだよ。何回も言うけど。


学生時代の話だからさ、よく遅くなって帰ることもザラにあった。田舎だから星が綺麗だったんだけど、その分あたりは静かでさ。帰り道じゃ落ち葉が風で舞う音が響くくらいしか聴こえないんだよ。そんでアパートの入り口はまだギリギリ電球が生きてるんだけど、古いのか薄暗いんだよね。ポストの中を開ける音も高い金属音が摩擦する音が甲高く鳴き出すんだ。別に変なもん入ってることはなかったけどさ。そんでエレベーターに乗って部屋までなんだけど、その時間がいつも嫌だった。


エレベーターの中は基本一階で止まっててボタンを押すまでは真っ暗。ガラスに反射して映る自分も見たくないし、なにか見えても嫌だから毎回下を向いてた。ボタンを押すと黄色い光が灯って重たい音を鳴らしながら開く。乗り込んだらドアが閉まって、人ひとり持ち上げるのに似つかわしくない動きで上昇するんだけど、スピードが一定じゃない。嫌な気配がずっとして早く降りたい気持ちでいっぱいだった。


一回だけ、見える友達が来たんだけど、ずっとソワソワしてて早く帰りたがってたんだよね。そんで、いろいろ話したら引っ越せって言われたね。あいつ帰るときに階段で降りようって強請るから仕方なく7階も降りたよ。しかも早足で歩くもんだから少し疲れた。夕方でまだ陽が高い時間だったのによ?まぁエレベーターは暗いんだけどさ。


卒業する前にはアパート出たんだけどさ。

後から聞いた話。

事件があったのは、3階の部屋だったんだと。

じゃあエレベーターはなんだったんだって話なんだけど、別の事件があったらしい。

ってか起こってたんだと。

エレベーターにトランクって言って、救急車が来た時にトランクって言って人を運ぶ荷台を入れるために奥まで開く隠し部屋みたいなのがあるらしい。その中に住んでたやつがいたんだとさ。もちろん生きてない状態で。


いつからいたんだろうな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る