Petalo 3
それから2週間と少し。
誕生日を迎えた私は両親と共に「桜が咲いた頃に3人で」と話していた遊歩道のそばの河原にお弁当を持って出かけた。
桜はまだ満開とまではいかなかったが、その姿は見惚れてしまうくらい美しく、私ははしゃぎながら両親の手を引いて桜のアーチを歩いた。
…………………
〈登場人物〉
桜葉家 ︎︎… ︎︎
綾瀬家 ︎︎… ︎︎
〈時期〉
3月下旬
…………………
アーチを見上げればひとひらの花びらが舞った。
なんとなく目で追いかけるけと、花びらは風に運ばれて川面にたどり着き、ゆらゆらと泳ぎはじめた。
私は花びらが見えなくるまでながめてから視線を上げた。
するとそこにはいつかの空色の髪の少女がいた。
私は嬉しさ半分、そわそわ半分と落ち着かなくなり背を向けようとした。
けれどその様子を見た父は、私を抱き上げて「あっちで休もうか〜」と楽しげに歩き出した。
…………………
抵抗むなしく、私は女の子から少し離れた桜の木の下に敷いたビニールシートに腰を下ろしていた。
いつかのように母の背に隠れながら女の子を見ていると、彼女は近くのベンチに座る両親らしき人に見守られながら宙を舞う桜の花びらを追いかけていた。
不規則に舞う花びらに遊ばれている彼女の姿はとても可愛らしく、私は思わず顔がほころんでいた。
だから気づかなかったのだ。
彼女が花びらを追う中で視界の端に私をとらえたことを。
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