不本意ながら魔王に転生(期間限定)した話

北前 憂

第1話

 ここは…、どこだろう。


どこまでも真っ白な世界。

地面も真っ白で、それどころか立っている感すらない。


 記憶があやふやだ。夢を見ているのかも。


でも、夢というにはあまりにもリアルな感覚だった。

とりあえず記憶を思い起こしてみる。


いつもの朝だった。

少し寝坊したけど、このくらい大したことないと、急いで着替えて一階に降りた。

朝ごはんを食べて行きなさいとお母さんが声をかける。

時間ないから、と言ってテーブルにあったトーストをくわえて外に出た。


いつもの路地。通学路はブロック塀の角を左に曲がるのだが、真っ直ぐ行った方が全然早い。

たまに車が抜け道に使うけど、今は先が工事して通行止めになっているからみんな避けて大通りを使う。


[歩行者も止まれ]の赤い逆三角形の看板の下を、全速力で突っ切った。

車の音は聞こえなかった。

昨日配信されたばかりの新曲をヘッドホンで聴いていたから。

それで…。

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