きつね巫女🦊イン・ダ・ハウス!

一二三ケルプ

第1話 三島邸のおねぇさま

1 赤居みどり

 私、赤居みどり。

 うぐいすみさき小学校に通う、ごくごくフツーの小学五年生。


 ぶっちゃけ、私って、ビックリするほどフツー。

 顔も、スタイルも、勉強も、なにもかもがフツー。

 トホホなくらい、フツーの人。


 で、そんな私なんだけど――たった今、ぜんぜんフツーじゃない状況にいます。


 私の目の前にいるのは、一人の若い女性。

 えぇ、美人です。

 だけど彼女……なんかめっちゃ怒ってます。

 こめかみに青スジが、もぉ、ピッキピキ!


 そんな風にキレまくってる人を見たら、誰だって逃げたくなるものでしょう?

 はい、もちろん私だって逃げたいです。

 でも――逃げられません。


 なんでかって言うと、私、めちゃくちゃ足がすくんでいます。

 だから、その、動きたくても動けないんです。

 カッチカッチに、足が石&棒!


 おまけに目の前にいるこちらの若い女性――透明なんです。

 つまり、何と言うか、白く透き通ってらっしゃいます。

 プラス、空中にフワフワって浮かんでる感じ。

 煙みたいって言えば、わかりやすいかな?


『逃がさないわよ……』


 彼女が、私にそう言ってきます。

 ヤバいです。

 とにかく顔面がヤバいです。

 目がつり上がってて、口が耳もとくらいまで裂けてます。


 あ、あの、ちょ、ちょっと待ってください!

 私、何にもしてません!

 クラスメイトのきつねくんにムリヤリ連れてこられて、その、あなたのお宅にお邪魔しただけなんです!

 ホントです! 信じてください!

 私は、ムリヤリ……。


 でも――透明な女性の怒りは、まったくおさまる気配がありません。


 私、たぶん、今からこの女性に殺されます。

 呪い殺されるんです。


 なぜなら、この人――どう見たって幽霊なんですよ。

 しかも、悪霊系。


 女性の幽霊が、私に両手を伸ばしてきます。

 首を絞めに来るような感じ。

 これは、もぉ、逃げられません……。


 一体、どうしてこんなことになったんでしょう?

 思いっきり目をつむり、私はこうなった原因を考えます。


 そう……これは百パー、狐野くんのせい!

 狐野くんが、私をこんな目に合わせた張本人!


 悪いのは、全部狐野くん!

 あとは、まぁ、私がイケメンに弱いから……。


 すべては、今日の放課後にさかのぼります。

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