【回天堂キ譚】トリノ光臨篇5 世は事もなし

サイノメ

第0話 トリノ光臨

 ふと、布団の中で目が覚める。

 目の前に広がるのは、見慣れた古びた板張りの天井。

 いつもの事ながら、よくまあこんな古びた家屋が現代にも残っているものだと思う。


 大きく開いた窓の向こうで小鳥が庭の木に止まっているのが見えた。

 外はまだ少し薄暗いのに、鳥たちは早起きだ。


 さて、少し早いけどわたしも起きることにしよう。

 トリノ光臨が終息し人々は安堵の表情を浮かべている。

 世間は再び穏やかな日常へと戻った。


 ……本当にそうなのか?

 わたしは疑問が残っていた。

 九堂は人々に暗示をかけたが、そもそもの原因である物質(本当は何なのか分からないから、物質と仮定しておく)、それ自体は何の対処もしていないのだから。


 なのでわたしは調べることにした。

 今回の件で関係した人々にもう一度、会って話をして。


 ……正式な仕事じゃないから、有給と自腹を切っているけど。

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