第2話 出会い
村を後にしたアルヴィスは、見慣れない森の小道を歩き続けていた。村の外は彼にとってほとんど未知の世界で、ただ歩くだけでも不安が募る。
「本当にこれで良かったのかな……」
そうつぶやきながら、背負った姉の弓を何度も握りしめた。この弓を持つと、姉の強さが自分にも少しだけ移るような気がした。
ふと立ち止まり空を見上げると、木々の隙間から明るい陽光が降り注いでいる。少しの間、その光を浴びて気持ちを落ち着かせていると、前方の茂みが突然揺れた。
「誰だ!?」
アルヴィスは緊張し、咄嗟に弓を構えた。茂みの中から、小さな人影が現れる。
それは旅装をした少女だった。彼女はアルヴィスを見ると警戒し、一歩後ずさった。
「あ、怪しい者じゃないよ! 俺は……アルヴィスっていうんだ」
少女はまだ警戒を解かないまま、じっとアルヴィスを見つめている。
アルヴィスは少女を安心させるため、ゆっくりと弓を下ろし、両手を広げて見せた。
「本当に何もしないから。君は誰? こんな森で一人なのか?」
少女はしばらく黙っていたが、やがて小さな声で口を開いた。
「私はリリア。この先の村から薬草を取りに来たの。でも……道に迷ってしまって……」
その言葉を聞いて、アルヴィスは彼女の不安そうな表情に自分の姿を重ねてしまった。
「そうか。俺も道には詳しくないけど、もし良かったら一緒に探してみようか?」
リリアは少し迷った様子だったが、やがて小さく頷いた。
「ありがとう……アルヴィスさん」
二人は並んで森を歩き始めた。最初は沈黙が続いたが、次第に会話が増えていく。
「アルヴィスさんはどこから来たの?」
リリアが尋ねると、アルヴィスは少し躊躇した後、ゆっくりと口を開いた。
「ロウファーの村って知ってるか? そこから来たんだ。今はもう誰もいないけど……」
リリアは驚いたように立ち止まった。
「ロウファーの村って、魔物に襲われてしまったって聞いたことがあるわ。あなたがそこにいたなんて……」
彼女の表情には同情と悲しみが浮かんでいた。アルヴィスはそれを見て、胸の奥が熱くなるのを感じた。
「大変だったわね……私も小さい頃、村が魔物に襲われて、家族を失ったことがあるの」
リリアの告白に、アルヴィスは目を見開いた。
「そうだったのか……。それなのに、君は強いな。一人で薬草を探しに来るなんて」
リリアは微笑んで首を振った。
「強くなんかないわ。でも、私にもできることがあるって思いたくて。それに、村の人が困っているから……」
アルヴィスはその言葉を聞いて、自分の弱さばかり見ていたことに気づかされた。
「君の言う通りだな。俺も少しずつでも、自分にできることを見つけなきゃいけない」
二人はお互いに微笑み合い、再び歩き始めた。しばらく進むと、木々の間から小さな村が見えた。
「あそこよ、私の村!」
リリアの明るい声に、アルヴィスは初めて感じる安堵と喜びを覚えた。
村へ近づくにつれて、アルヴィスは新たな一歩を踏み出した実感と共に、これから待ち受ける未知の世界への期待を胸に抱いていたのだった。
村の落ちこぼれだった俺が「魔物の核」を取り込んだら、いつの間にか空間を断ち切る最強スキルを手に入れていた件 あまつか ゆら @amatuka0001
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