布団をめくると
野林緑里
第1話
引っ越しのために荷造りをするために随分と開けずにいた押し入れを開けた。そこにはぎっしりと入った布団。一体どれくらい使っていなかったのかわからないがそれなりに綺麗だ。
その中から引っ越しのためにもっていく布団を選ぶために一度押し入れから出すことにした。
すると布団の隙間からなにかが抜け落ちてきた。
なんだろうと畳に落ちたものをみるとそこには数枚のチケットや写真、雑誌の切り抜きだった。
懐かしい
わたしはそれを手に取る。
映っていたのは昔私が大好きだった男性ダンスボーカルグループのメンバーの姿だった。
私と同世代で歌もダンスもずば抜けて上手くてその当時は“天下無双のダンス集団”なんてよばれて持て囃されていた。
マスコミは連日話題にして出す曲出す曲はミリオンセラー。
彼らがでる番組は常に高視聴率。
私もその流行りに乗っかってはまったわけだ。
けれど彼らは人気絶頂期に突然解散してしまった。
その理由は定かではない。
ゆえにたくさんの憶測が飛び交ったのはいうまでとない。
けれど月日が経つに連れて彼らの存在自体が忘れ去られていき、話題にすることさえもなくなってしまった。
それからどれくらいたったのだろうか。
私はふいに彼らのパフォーマンスをみたくなってしまった。
もしかしたら布団の中でまだ埋もれているのかもしれない。
私は押し入れの中を探してみた。
案の定、
彼らの写ったDVDが布団の中に紛れ込んでいた。
懐かしい。
ホコリだらけだ。
見れるのだろうか?
そんな不安を抱きながらもホコリを取り除くとさっそくブルーレイプレイヤーへ入れてみた。
写った。
確かに彼らが歌って踊る姿が映されていた。
うまい。
キレキレのダンスに美しい歌声。
まだ幼さを残すけどまだ10代だった彼らのダンススキルは天下無双と呼んでもいいものだった。
もしいまも続いていたら世界一になったかもしれない。
そんなことを考えていた。
「おいおい。まじかよ!」
すると後ろから声が聞こえてきた。
私が振り返るとそこには旦那の姿があった
「よくもそんなもの持ってたなあ。うわあ。天下無双なんてよく言えたものだ。ダサすぎる」
そんな風にいいながら顔を真っ赤にする旦那がなんだか可愛らしくて愛おしく思えた。
布団をめくると 野林緑里 @gswolf0718
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