【KAC20255】楠木さんは「噂」が気になるお年頃

ほわりと

【KAC20255】楠木さんは「噂」が気になるお年頃

 私は午後の授業中にルーズリーフを見ながら百面相をしていた。そこには箇条書きでこう書かれている――


 ・天下無双

 ・ダンス

 ・布団


 前回のお題は難しすぎてパスしたのに更に難しくなるなんて。ここまで難しいと逆に笑えてくる。


「まあ、お題に踊らされている感じはするけど」


 斜め向かいの席に座っている柴田さんを見ると真面目に授業を聞いていた。最近一緒に出かけたりレインをするようになったものの、すれ違いがあってここ数日連絡を取っていない。授業の終了を告げるチャイムが鳴ると同時に昇降口に向かう。


「よかった、まだいた!」


 靴に履き替えていると腕を捕まれた。もう逃げられないと悟り、諦めて振り向くと柴田さんがいた。始まりは柴田さんが書いていたKACお題のメモを盗み見て、私が勝手に謎の儀式をするんじゃないかと勘違いしたのがきっかけ。


 いつもそうだ。ちょっと気になると猪突猛進するのは私の悪いところ。小学校の頃に友達に好きな男子がいると勘違いをして、おせっかいを焼いたら嫌われた。中学校ではその噂が広まり、猪女なんてあだ名までつけられて天下無双とは真逆の中学生活だった。


 だから高校は友達がいない高校を選んで入学したけど、同じクラスに中学校の同級生である柴田さんがいて、噂を広めるんじゃないかとビクビクしながら過ごしていた。そのことを柴田さんに話してから、私は意を決してこう謝った。


「ごめんなさい。私、柴田さんに話しかけるまでKACに興味なんてなかったの」


 確かに、そう謝ったはず。それなのにショッピングセンターのニャオンで布団コーナーを見て回っている。どうして?


「えっと、怒っているんじゃ」


「もちろん怒っているよ。レインを送っても未読だし、授業が終わると居なくなっちゃうし。それに、興味がなかったのは私に話しかけるまで、だよね?」


「……えっ?」


「私も楠木さんのメモを盗み見ちゃったからお互い様。あと、私は噂を気にしないから大丈夫だよ」


 柴田さんは、いつかひな人形を一緒に見た時のように聞いてきた。


「まだ時間はあるから、今日は布団について考えようよ。自分の家にある見慣れたものもいいけど、こうして色々見て回ると何か思いつきそうじゃない?」

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【KAC20255】楠木さんは「噂」が気になるお年頃 ほわりと @howarito_5628

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