1少年

ヤラマナ王国、

王都ナハラの北に位置する街『サラフ地区』。

　貧困層が多く居住している地域で、安全や道徳が脅かされている街。危険な街であるため、王都民は決して近づかない。

　

　犯罪は毎日のように起きる。取締る騎士団もいないため住民は自衛のすべをもっている。ほとんどの住民が手ぶら（武器を持たず）で外出することはない。

　王都民は『サラフ地区』の人々を恐れており、それが理由で『サラフ地区』は王都から箱のように区切られている。

その街を王都民は『箱』と呼んでいた。

、、、、

　『サラフ地区』のゴミ捨て場。

巨大な敷地に山のようにゴミが詰まれている。残飯、壊れた家具、空のビン、破れた服、何かわからない鉄の塊、動物の死骸、あらゆる物がそこに捨ててあった。

　食べ物を求めて、集まってくる動物や虫がそこらじゅうにいた。すごい臭いを放ち、ゴミ捨て場は混沌としている。

そのゴミの山の上にその場所の住人がいた。

　黒髪黒目の少年。歳の頃は十に届くかどうか。ゴミから拾って来た破れた服をきている。肌は泥にまみれ、眠そうな目をしているが、眠いわけではなかった。

　少年はゴミの中で暮していた。

ここにはすべてがあった。

食べるもの。着るもの。住む場所。

身を守る武器。すべてが捨ててあった。

「はっ！！」

少年の手から炎が出る。

「くらえ！」

「はっ！！」

「くらえ！！」

　その少年は魔法でゴミを燃やして遊んでいる。ここのゴミはいくら燃やしても誰も困らない。少年はゴミを燃やすのが好きだった。

　「ボウズ、上手いな。その魔法どこで覚えた。」

どこからか声がする。

少年の魔法見ていた男が喋りかけたのだ。

「、、、おっさん誰だ？」

ゴミ山の下に男がいた。

少年に話しかけた男は大きなハット帽を被りあまり顔は見えなかった。身につけているものから『箱』の住民でないことはわかった。

「オレはアンラっていうもんだ。」

、、、

「魔法は本で覚えた。

ここにはいっぱい捨ててあるからな。」

少年はさっき程の質問に答える。

少年は昔ゴミとして捨ててあった魔法書を見つけた。字が読めなかったが、薬屋のオババに物と交換で、字の読み方を教えてもらった。

魔法書に載っている方法を実践するが、最初のうちは何も起こらなかった。暇だったので毎日魔法を練習した。魔法の練習はあっという間に習慣になった。体の中を流れる何かが動くのを感じとれるようになった。

魔法書を手に入れてから数年がたっていたある日、手から炎が出たのである。少年は驚いた。そして喜んだ。少年は魔法が大好きになった。

「、、、そうか独学か」

アンラという男は驚いていた。魔法は独学で習得出来るほど簡単ではない。魔術師の大半は幼い頃から専門の教育を受け魔法習得している。

「ボウズの魔法はすごいな」

「はっはっはっ」

「そうだろ！おっさん見る目あるな。」

少年は自慢げに笑った。

「おっさんはこんなところで何してんだ？」

笑いながらゴミ山から降りてくる少年。

「ちょっと探し物をしててな」

「ここにはゴミしかないぞ？

一緒に探してやろうか？」

「いやいいんだ。探し物は見つかった。」

「そうか。良かったな。」

少年は笑った。

「ところでボウズ。家はどこだ？」

「オレの家はここだ！」

「、、、そうか

ボウズ学校には興味あるか？魔法や剣を教えてくれる学校だ。」

「学校？オレにそんな金ないぞ」

「金はいらない。しかも飯もタダだぞ。

どうだ興味あるか？」

「そりゃスゲーな！おっさんが入れてくれんのか？」

「ああそうだ。ボウズは年いくつだ？」

「10歳だ」

少年は両手を開き10本の指を見せる。

「そうか10歳か。

学校は12歳から入れる。」

「2年後まだ、学校に興味があったらコレをもってアルトール騎士学校と言うところにきな。」

「学校に入れるようにしてやる。」

アンラは少年に小さな紙を渡す。

「わかった。その時、暇だった入ってやるよ！」

「ははは、楽しみにしてるよ。

ボウズ名前はなんてんだ？」

「トランだ！」

少年は笑顔で答える。