不幸な幸福
口一 二三四
幸福な不幸
お願いですから忘れてください。
お願いですから笑ってください。
悲しみに暮れる貴方が辛いのです。
四六時中泣く貴方が切ないのです。
もう私には何もできない。
もう私には何も言えない。
だから立ち直ってほしいのです。
だから前を向いてほしいのです。
私との絆が足枷になるなんて嫌。
私との会話が鎖になるなんて嫌。
それを伝えたいのです。
わかってほしいのです。
貴方の人生の邪魔はしたくない。
貴方の苦悩を少しでも癒したい。
捨ててください。
捨ててください。
私と過ごした思い出を。
私と交わした言の葉を。
どこか遠く彼方へと。
はるか深く奥底へと。
頭の片隅に置かないでください。
心の拠り所にしないでください。
私の過去を手放して。
私の存在を見放して。
代わりに覚えていますから。
代わりに抱えていますから。
お願いですから幸せになってください。
お願いですから未来を生きてください。
そう想っても。
そう祈っても。
たまらなく嬉しいのは事実です。
たまらなく愛しいのは本心です。
突然の死に寄り添う姿が。
一人の生に落ち込む姿が。
私が全てだった貴方を。
不幸の原因が私なのを。
喜んでしまうのです。
笑ってしまうのです。
それだけ思ってくれてることが。
私が貴方の幸福でいれたことが。
だからどうか忘れてください。
だからどうか笑ってください。
貴方の不幸で幸福になる私を。
貴方の涙を望んでしまう私を。
幻滅してほしいのです。
卑しくほくそ笑む私を。
私の居ない人生を過ごしてください。
私の居ない幸福を見つけてください。
たくさんの知ってる思い出を。
たくさんの知らない思い出で。
上書きしてください。
塗り潰してください。
私と過ごす過去を。
誰かと居る未来に。
変えてほしいのです。
変えてほしいのです。
不幸な幸福 口一 二三四 @xP__Px
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます