Virtual Re:Link 〜レバニラ炒めを添えて〜

獬豸

第一章:デビューと一皿のレバニラ

はじまりの配信編

第一話:デビューの光と影

 Vtuber業界は、夢と現実が交錯する世界だった。


 華やかなライブ配信、ファンからの熱狂的な応援、バズる切り抜き動画。そんな表の顔がある一方で、熾烈な競争、事務所の方針、炎上リスク、そして配信外での孤独。誰もが羨む存在でありながら、誰もが生き残る保証はない。


 その世界に足を踏み入れたのが、私——「たちばな 梨乃りの」。


 デビューを果たしたばかりの新人Vtuberで、事務所「Lumière Productionルミエール・プロダクション」に所属している。もともとは歌が好きで、趣味で投稿していた歌ってみた動画がバズったのをきっかけにスカウトを受けた。Vtuberとしての活動は夢のように思えた。


 しかし、すぐに現実を思い知らされることになる。


 Lumière Productionには、すでに数十名のVtuberが所属しており、競争は激しい。同期デビューのメンバーだけでも五人いて、みんな個性豊かで、すでに確固たるファンを獲得している者もいる。


 そんな中、特に私の目を引いたのが「白崎しらさき みお」だった。


 彼女は私と同じく新人でありながら、すでに驚異的な人気を誇っていた。端正なキャラクターデザインに、抜群のトーク力、ゲーム実況の腕前もプロ級。そして何より、その配信スタイルは「天性のエンターテイナー」としか言いようがなかった。


 初めて彼女の配信を観たとき、私は衝撃を受けた。


「……すごい」


 思わず口に出してしまうほど、彼女の配信には惹き込まれる力があった。


 同期とはいえ、彼女はすでに別次元の存在だった。デビュー初日の登録者数は私の倍以上、配信の同接(同時接続数)も圧倒的な差。まるで住む世界が違う。


 焦燥感。


 正直、嫉妬に近い感情すらあった。


 だが、それでも——


「橘ちゃん、一緒に頑張ろうね!」


 デビュー配信を終えた後、楽屋で笑顔を向けてくれたのは、ほかでもない白崎 澪だった。


 その優しい笑顔に、私は戸惑いながらも、思わず心を奪われてしまった。


 それが、私と彼女の関係の始まりだった——。

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