……三題噺から求める女の究極の幸せとは?

大創 淳

第五回 お題は三題噺「天下無双」「ダンス」「布団」


 ――驚愕の瞬間だった。


 PCの画面を見た途端。


 それは小説サイトの『書くと読む』の大イベント、燃えるKACの最後のお題。これまでに経験したことのない三題噺が、デカデカと表示されていたのに対して……



 これまでに四つのお題をクリアしてきたけど、今回は、どうしたものか?


 案が浮かぶどころか、脳内は真っ白。


 そして目覚める。第三の目が明くように、お布団の中から。……ン? お布団? いつの間にか上布団が掛けられていて、そばには、そうマイハズバンドがいたの。


「さあ、ダンスの時間だ」


 と、微笑みながら言った。眩き午後の陽射しが照らしていた。


 PCの画面は変化した。


 そう。彼の宣言通りにダンス。ユーチューブでヨガダンスが披露される。マイハズバンドこと太郎たろう君と共に、僕も横並びで真似る。まるで早朝のラジオ体操第一のような感覚。


 内容は、それほど難しくないと彼は言うけど……


 彼ほど、僕の身体は柔らかくない。僕と言っても僕は一人称が『僕』なだけ。動きやすい服装はボデーラインを強調するの。丸みを帯びた女性の身体。僕は正真正銘の女性だ。


 因みに、僕の名前は千佳ちか


 今年もKACに挑む書き手だ。今年は家庭内が大きく変化したので控えようと思っていたけれど、そんな時に妖精に化けたトリさんが降臨して、僕を駆り立てたのだ。


 それをキッカケに、僕はまた筆を執った。


 キレキレのリズムではなく、ゆったりとしたダンス。そのお陰かホクホクになったのは身も心も。そして太郎君と共に洗いっこしたシャワーは、まるでサウナのような効果を齎して、僕は再び向き合うこととなる。PCの画面を目の前に。今度は執筆……


 そしてここは、部屋の真ん中。


 畳の香りは午後の一時を演出。今は二時過ぎ。ほんわかとした陽気。


 ……思えば、僕と太郎君は学園を卒業してまだ日が浅く……二人とも成人を迎えたばかりで、この四月より大学生となる。それまでは新婚生活の予行練習のようだけど……


 僕はもう、女の幸せを手に入れていた。


 天下無双ともいえる、究極の幸せなの。


 ほら、聞こえる? 笑い声が。


 ベビーベッドから聞こえる我が子たちの笑い声。ベビーベッドは二つ。我が子は二人いる。一卵性双生児で、どちらも女の子。因みに僕も一卵性双生児の妹の方だから……


 梨緒りお千恵ちえ


 僕らの子供。そして天下無双は、きっとこの子たちの笑顔。


 だから僕たちは、仲の良い夫婦でいられると思うのだ。――そっと、未来へと。

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