Critical Footage9-3「虹の橋を渡って:ブリーフィング」
『マイグラント、次のミッションは……
世界樹最後の防衛機構、情報によれば……“ミンドガズオルム”の撃破……です。
ミンドガズオルムの表皮は凄まじい防御力を誇り、物理攻撃の大半を拒絶し、体表を流れる猛烈な魔力の流れによって、魔法すらも無力化してしまう……
そんな生き物が、樹海の端から端まで届くような巨体で暴れまわっているわけですから、ガイア製薬も傍観というわけにはいきません。
そこで私は……ガイア製薬第一隊長トールと、アースガルズのへレノールに協力を要請したところ、両者ともに快く返事を返してくれました。それぞれ、メッセージを預かっているので、再生します』
『貴公が山猫……と呼ばれている第三勢力か。
こちらに作戦の協力を打診するとは、先程まで我らの第二隊長と死合っていた相手とはとても思えないが……
まあいい。貴公の実力は折り紙付き、そして我らも貴公も、あの大蛇を退かさないことには話が進まない。
もちろん協力させてもらおう。僕と、テュールの二人で向かわせてもらう』
『やあ、君の同胞、へレノールだ。
まさか君の方から私に連絡をくれるとは、筆舌に尽くし難く嬉しいよ。
世界樹の防衛機構を排除するのに、アースガルズの幹部を頼るとは酔狂なことだが……まあ、君の要請なら応じるとしよう』
『以上です。
これより全員でのブリーフィングを行いますので、あなたも参加してください、マイグラント』
……――……――……
フィリア
『各員、通信状態は』
へレノール
『良好だ』
トール
『同じく』
テュール
『ああ』
フィリア
『今回の作戦は、世界樹を防衛するあの大蛇……ミンドガズオルムの撃破です』
へレノール
『ミンドガズオルムは、物理攻撃ではまず突破できない鱗、体表を流れる魔力によるほぼ完璧な魔法防御を兼ね備えた化物だ。アースガルズは長らく、これを頼りにしてガイア製薬と戦いを繰り広げてきた』
トール
『大蛇の概要はわかった。とても物量で押し切れるような相手ではないな』
テュール
『それほど防御力が高いのでは、俺たちが集まったとて烏合の衆に過ぎないのではないか』
フィリア
『その点はお任せください。ミンドガズオルムの防壁を突破するため、我々は新兵器を開発しました。魔力対流を相殺し、無力化する杭を射出する、フィールド投射装置……それを、私の渡り鳥に運用させます』
トール
『それが山猫か。とすれば、僕たちは何をすればいい』
へレノール
『体表の魔力対流を無効化している間に、ギャラルホルンを撃ち込む。ミンドガズオルムに当たりさえすればどこでもいい。あれも生き物であることには変わりないから、できれば頭部を撃ち抜いてほしいが』
テュール
『ギャラルホルンか……あれは大氷壁破壊の一射ですでに半壊状態になっている。持って二発……運が良ければ三発が限度だ』
トール
『だがそういうことなら、ヘイムダルに狙撃は任せよう。射撃能力なら、彼の右に出るものはいない』
フィリア
『ギャラルホルンによって表皮の貫通後、交戦している全員の火力をそこへ集中させてください。あれだけの巨体からくる生命力では、幾度か修復もされるでしょうが……』
テュール
『わかった。ギャラルホルンの発射可能回数が、そのまま俺たちの継戦能力に直結しているというわけだ。魔力対流は山猫の、件の武装の弾数が続く限り無効化出来ると考えると……へレノール、お前が魔法で表皮を削ぎ取れないのか』
へレノール
『ああ、可能だ。私もとっておきの衣装で向かう気でいるよ。ギャラルホルンほどの威力とはいかないが、付けた傷を維持することくらいは出来るはずさ』
トール
『そうか。つまり僕とテュールは火力の足しというわけだ』
フィリア
『その通りです。この作戦で肝要な点は、少ないチャンスに可能な限りの火力を叩き込む一点に尽きます。初見の相手に被弾を抑えることが出来る技量があり、その上で十分な攻撃力を持つ強者となれば……というわけです』
トール
『それに相手が途方もなく巨大と来ると、近接特化のヘイムダルは呼ばれないのも納得だ。偶然だが、噛み合ってよかったよ』
テュール
『そうだな。あの耄碌爺を狙撃手に据える必要も合ったわけだから、余計にな』
フィリア
『作戦については以上です。
我々が魔力対流を無効化、ギャラルホルンで表皮を破壊、破壊箇所に攻撃を集中。以上を、ミンドガズオルムが力尽きるまで繰り返します』
トール
『了解した。期待に沿えるよう、精々頑張るとしよう。なあテュール?』
テュール
『無論だ。ここまで随分犠牲を払ってきた。たかが蛇一匹に遅れを取って堪るか』
へレノール
『初めての共同作戦だ、君の活躍を期待しているよ、マイグラント』
フィリア
『む……
ブリーフィングは以上です。速やかに作戦準備に取り掛かってください』
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