第8話
ベッドで隣に寝ている尚也の横顔を飽きずに見つめていた。
やっぱり、尚也が好き。
「見違えたなぁ、梨沙、なんでそんなにキレイになったんだ?」
尚也が嬉しげにそう言って、わたしの頭をなでた。
「だから、尚也にフラれて痩せたからでしょう。それに早希がとってもいい化粧品をくれたの!」
「そうか、フラれたせいか。じゃあ、俺のしたことも、そんなに悪いことばかりじゃなかったな」
さっきより横柄な態度にカチンときたけれど、これがいつもの尚也だから。
「あ、忘れてた。 明日はお見合いの日だったわ」
「えっ!」
尚也が驚いて跳ね起きた。
取引先の川上さんは、本気でドクターのお見合い相手を探していたのだった。
「お見合いって、いったい誰とするんだよ!!」
「うちの取引先の川上さんって人が、ドクターを紹介してくれるって。以前からいい人がいたらって頼まれてたんですって」
ちょっぴり、得意げに話す。
「ドクター? ……本気で見合いする気か? しないだろ?」
ドクターと聞いたからなのか、深刻な顔をしている。
「今になって断れないわ。だって明日なのよ」
クスッ、立場が逆転してなんだか嬉しい。
「仮病でも使えばいいだろ!」
「ダメよ。川上さんにバレるわ。迷惑はかけたくないもの」
少しはわたしと同じ苦しみを味わえばいいんだわ。
「まさか、その医者と結婚するつもりじゃないだろうな?」
「会ってみるだけよ。だって、尚也が今晩ここに来るなんて思わなかったもの」
「本当に会うだけだな?」
わたしが嫉妬されるなんてね。
めっちゃ、幸せ〜〜!!
「梨沙、、俺と結婚してくれないか。本当は指輪を買って、ちゃんとしたところで言いたかったけど、おまえが明日見合いするなんて言うから」
「尚也………」
ひどく焦った様子で尚也はプロポーズをしてくれた。
こんなに真剣な目で見つめられたのって初めて。
やっぱり、お見合いは断ろう。
会うだけ時間のムダだ。
見合い相手のドクターだって暇じゃないのだ。
まだ見ぬドクターに会ってみたい気がしないでもない。
だけど、どんなにステキなドクターだって、尚也より愛せるはずないもの。
ドクターにはこの先、いくらでも見合い相手が現れるのだ。
だから、わたしじゃなくてもいいはず。
尚也にはもう、わたししかいないでしょ。
でも、お見合い中止はしばらくナイショにしておくね。
尚也にもう少しだけ、もう少しだけヤキモチ焼いてもらいたいから。
ーENDー
あなたにフラれてよかった なごみ @Rikka2000
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