第10章:幻影の谷へ

 賢者の塔を後にしたエリオスとリナは、《幻影の谷》を目指して旅を続けた。


 谷へと向かう道の途中、風が強く吹き荒れ、森の木々がざわめいていた。空には雲が広がり、まるで彼らの旅路を阻むかのように、不穏な気配が漂っていた。


 「どうも嫌な感じね……」リナが周囲を警戒しながらつぶやいた。


 エリオスも、星の欠片がかすかに光を放っていることに気づいていた。それは、何かが近づいていることを示しているのかもしれない。


 「気をつけよう。何かがいるかもしれない」


 そう言った矢先――


 ドォォン――!!


 突如、目の前の地面が炸裂し、黒い影が立ち現れた。その影は、人の形をしていたが、実体を持たず、闇が凝縮したような存在だった。


 「また《闇の使者》……!」エリオスが剣を構える。


 リナも素早くナイフを抜き、構えた。


 「エリオス、お前の旅はここで終わる……」


 低く響く声とともに、闇の使者が動いた。


 影が伸び、無数の刃となって襲いかかる。エリオスは素早く回避し、リナは軽やかな動きでナイフを投げつける。しかし、闇の使者は霧のように形を変え、攻撃をすり抜けた。


 「ちっ、効かないってわけ?」


 エリオスは星の欠片に意識を集中した。すると、星の欠片が強く輝き始める。


 「……この光なら!」


 エリオスは剣を振りかざし、星の欠片の光をまとわせた。そして、その光の刃を闇の使者に向けて振るう。


 ズバァァン――!!


 光の刃が闇を切り裂き、闇の使者は断末魔の声を上げながら消え去った。


 「はぁ、はぁ……やったのか?」エリオスは肩で息をしながら呟く。


 リナは周囲を見回しながら、油断なく言った。


 「今回は撃退したけど、また襲ってくるわね……」


 エリオスは拳を握りしめた。


 「もっと強くならないと……!」


 そう決意を新たにしながら、二人は再び歩き始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る