真実の救い(月光カレンと聖マリオ36)

せとかぜ染鞠

真実の救い(月光カレンと聖マリオ36)

 トリ妖精国危機のたび為政者が示唆を仰いだ救いの石板を探訪する過程で子供を叱る母親の戒めに「幽界ゆうかい雌堕津田めだった」という言葉を聞いた。それは罪深き女の堕ちる黄泉の深津であり幽界雌堕津田より蘇生した者は禍難を齎すと忌諱される。その幽界雌堕津田より尾三おみ多伸羽たのはは出生したゆえ忌みきらえと石板は告げていた。尾三多伸羽は王妃トリの出身種族だ。

 真実に対峙した王妃側近鳥綺ちょうきが震えている――大丈夫? 俺が近づくなり鳥綺は石板をふりあげ地に叩きつけた。経年劣化の進む石板は木端微塵――

 国を救ってきた至宝が破壊された! 群臣は怒り兵隊が鳥綺を牢獄へひきずっていく。

 トリが制止する。「朕のためにしたのでしょ? 石板は 朕に 不都合な内容を語っていた?」そう尋ねたのち今度は俺にむきなおる。

「多弁無用!」尾三多伸羽に反感をもつ者が王妃を槍玉にあげる――鳥綺の両眼が潤んだ。

「解釈したいように解釈すればいい。ゴールドも俺も一介の科学者と盗っ人だ。不正解な解読してるかも。その程度のもんさ石板の内容なんて。そんな覚束ない石に拘ってないで周囲を見なよ。主のため死罪も恐れぬ男や,憧憬対象アイドルのため憎まれ役をかってでる鳥がいる」

 かつて石板を盗んだ大烏たちが鳴きわめく。

「頼もしい臣下や仲間に恵まれた君は天下無双のトリ妖精国王妃さ。石板じゃなく周囲の奴らに救いを求めればいいんだぜ」

 トリ妖精たちが涙にそぼぬれ王妃賞賛のダンスを舞いはじめた。鳥も妖精も人もいりまじり宴にかわった。

 王妃だけが匍匐し一面に散らばる羽毛を拾っている。訳を問えば,当国では鳥より羽を抜くのを禁じ自然脱毛したものだけを絹につめ布団を拵えるのだと。無駄にするのは勿体ないから集めるのだと答える。

 こんなときまで君は――「天下無双の為政者だ」トリを抱きよせダンスに誘う。クワァコケケェ円らな瞳がとろけ素敵なムードになったが鳥綺に体あたりされた。

「トリの降臨である~~」満月の国境で鳥綺は告げる。

 目覚めない 三條さんじょう を 背負い 旅だつ俺を 王妃が見送る。「逃げ場に困ったら戻ってきて。国をあげて守ってみせましてよ,月光カレン」

 気づいてたのか,惚れるなよ――ウインクを残し黄金微粒子の降る絶壁より飛びおりた。

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