異能少女リンカのダンスフェスティバル【KAC20255】

花車

異能少女リンカのダンスフェスティバル



 舞台の照明が私を照らす。

 今日私は、人前で初めてこの異能ダンスを披露するのだ。

 周りから距離を取られ、自分の異能を恥じた日々。

 月明かりの下流した涙は、いまも私の胸を締めつける。


 だけどもう、恐れることは何もない。


 私は異能の国にいるのだ。


 †


 世界中から異能者だけが集まる『異能フェスティバル』。

 その舞台を明日に控え、私は何時間もの練習に励んだ。

 鏡の前で踊る私を、旅の途中に出会った異能猫のルナが応援してくれる。


「リンカのダンスは世界一だよ!」

「ありがとうルナ。明日はうまく踊れるかな」

「大丈夫。だから今日はもう寝よう」


 ルナと一緒に、冷たい布団に横たわる。彼のふわふわした白い毛が私の興奮を鎮めてくれた。


「私はやれる」

「当然だよ」


 疲れで重くなった体から、緊張がゆっくりとほどけていく。ルナの温もりを感じながら、私は静かに眠りについた。



 当日のフェスティバル会場は、圧倒されそうな熱気に包まれていた。


 全てをかけたステージに、私は一人立っている。

 会場の喧騒とは裏腹に、耳に響くのは自分の鼓動だけだった。


 指先まで神経を集中し、異能の全てを解き放つ。


――私を見て! 私はここにいる!


 軽やかにステップを踏み、体を逸らし、手を振り上げるたび、会場を駆け抜ける大きな力。


 人の心を具現化してしまう、忌み嫌われた私の力。


 だけど私は笑うんだ。ダンスは笑顔でするものだから。

 私の異能が会場を包み込むと、ステージは一気に彩られた。


 ステップに合わせて輝く光。舞い散る紙吹雪。

 スポットライトが私を追いかけ、衣装は艶やかに色を替える。


 バックダンサーも次々に現れた。

 動物たちは楽器を持って出現し、舞台の端で演奏を始める。


 チラリと視線を送ってみると、ルナも太鼓を叩いていた。


 聞いたこともない大歓声だ。

 観客が盛り上がれば盛り上がるほど、舞台は賑やかに活気付いていく。


 私は笑顔を忘れずに、私の全てをぶつけていく。自信とエネルギーに満ち満ちた私のダンスで、天下無双で勝ち進む!


 トロフィーを手に舞台の中央に立つと、全てを手に入れたような高揚感で、胸がいっぱいになっていた。


「これが私の夢でした! この優勝を、感謝の気持ちを、私の可愛い友達、ルナに捧げます!」


 

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異能少女リンカのダンスフェスティバル【KAC20255】 花車 @kasya_2021

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