修学旅行。いつもと違う雰囲気の中で

糸花てと

第1話

 髪も乾かして、明日着る服の準備くらいか。周囲を見れば、化粧水だったり保湿クリームだったり、なんか大人。わたしもひと通り買ってるし、使ってるけど、修学旅行へ持ってはこなかった。


「ねぇねぇ、これから男子、バカなことするみたい。行ってみない?」


 スマホを片手に、友達が言ってきた。よく話す男子がいるわけでもないしなぁ……。


「なんの話? ダンスで天下無双? 何やろうとしてんのよ」


 楽しそうだなって気持ちと、男子の部屋へ行く……少し緊張。だけど嫌ではなくて、わたしも皆のあとをついて行った。


 あとは寝るだけの、自由時間。通路には結構人がいた。


 男子の部屋。格子の引戸を開けると靴がいっぱいあった。


「来ちゃいましたー! お邪魔しまーす」

「おう! ダンスバトルするから、審判よろしく〜」


 それで天下無双か。室内の中央に隙間なく並べられた布団、この上でやるってことかな。


「ダンス部いるのに勝てるわけ……あ、参加してくんない?」


 ダンス部が三人? 対して、どう見たって協力的じゃない人にお願いしてる二人。


「でも勝ち負けってどう見ればいいの?」

「イケメンかどうかで良いよ〜!」

「それダンス関係なくない?」


 協力的じゃなさそうな人が寄ってきた。耳からイヤホンを外す。


「この曲に合わせて即興なら、やる」


 彼のスマホから、流行りの曲が流れる。これなら判断しやすそう。

 ダンス部は経験者だから、まとまっててカッコいい。対して、ノリで集まった三人だけど楽しそうで、見てるほうも気分が良い。

 結果は引き分け。つまらないと男子からはブーイング。


「罰ゲームとか?」

「好きなやつに告白とか?」


 次は女子からブーイングだ。


 時間は過ぎ、ダンスバトルはお開き。


「あれ、靴……」

「端にあるけど、違う?」

「こんな端っこだったんだ、ありがとう」


 即興でなら、と提案してた男子だ。優しい人なのかな。思ってもいない状況に、足がもたつく。


「来て、楽しかった?」


 振り向くと、パック飲料にストローをさして飲んでいた。


「うん。みんなカッコよかった」

「審判、選んでくれてどうもね」


 もしかして真剣だったの?


「それじゃあ、お邪魔しました〜」

「うん」


 そう言って、一瞬合ってくる視線。数秒間だけ合わせた。



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修学旅行。いつもと違う雰囲気の中で 糸花てと @te4-3

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