第5話 新しい環境へ

「お前が実家を継ぐんだ。」


高校を卒業する頃、親父にそう言われた。


実家は電気屋をやっている。

本当なら兄貴が跡を継ぐはずだった。

でも、兄貴は大学へ進学。


だから、次男の俺が家業を継ぐことになった。


「電気の専門学校に行け。電気工事士2種を取れば、とりあえずはいい。」


親父はそう言った。

俺は、特に反論することもなかった。


「まぁ、いい大学に行けるほど勉強してなかったし、兄貴は継がんと言ってるし、、、」


そんな軽い気持ちで、専門学校に進学した。


でも——

ギャンブルが、俺の全てを飲み込んだ。




専門学校に通い始めた頃は、まだまともだった。

授業には出ていたし、スケボーにも熱中していた。


でも、一度ギャンブルの味を覚えたら、生活は一変した。


朝起きたら、パチンコ屋の開店時間を確認する。

授業がある? 知るか、どうせ出席日数ギリギリでも卒業できる。

バイトで稼いだ金も、親からの仕送りも、ばあちゃんからの援助も——

すべてパチンコに消えていった。


スケボー? いつの間にかやらなくなった。

「またやろう」と思ってたのに、気づけばスケボー仲間とも連絡を取らなくなっていた。


頭の中にあるのは**「どうやって軍資金を作るか」**だけ。


授業中も、ノートにはパチンコの立ち回りメモしか書いてなかった。

「この台は前日◯回当たってた」

「リセット狙いなら100Gまで回すべき」


俺は、勉強よりもギャンブルの攻略法を必死に研究していた。


でも結局——勝てなかった。




俺の唯一の長所は、異常なほどの効率の良さ だった。


普通、専門学校では1年通えば

「第2種電気工事士」の資格がもらえる。

でも、俺はそれだけじゃ満足しなかった。


「どうせやるなら、第1種まで取ってしまおう」


ギャンブルにハマりながらも、俺はそこだけは貪欲だった。

普通なら数年かけて取る

「第1種電気工事士」の資格を、1年で取得した。


それが、俺の専門学校生活で唯一の救いだった。




卒業後、俺は地元に戻った。


「実家の電気屋を継ぐ」

それが、親父との約束だった。


でも、そんなものはどうでもよかった。


俺が本当に考えていたのは——


「地元のパチンコ屋、どこが一番出る?」


実家の仕事なんて、ただの金を稼ぐ手段にしか思えなかった。

生活費? 仕事のスキル? そんなものより、どうやって軍資金を作るかが重要だった。


ギャンブルに狂ったまま、俺は新しい環境に飛び込んだ。


ここから——

本当のギャンブル狂いの人生が始まる。

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ギャンブル負け額1億円。俺はまだギャンブルをやめられない。 杉園浩然 @gyangyan1112

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