【KAC20255】天下無双が布団とダンス

大黒天半太

三題噺で「天下無双」「ダンス」「布団」

 眠っている間は、人は自由であり、何ものにも囚われない。


 夢の中では、私を縛る何も無い。


 だが、一度「布団」から出て現実に向き合ってしまえば、三題噺のお題と言う課題の難しさに縛られる。

 三題噺のお題を振られて、何も思いつかず諦めて寝てしまったが、やはり、眠ったくらいでは気分転換にはならず、何もアイデアは出て来ない。


 三題噺は、素直に繋がらない三つのお題を繋ぐ以上、どこかに無理や歪みが出ており、そこにオチを持って来るための工夫や捻りが必要で、むしろ、そのどこかにはっきり現れる無理や歪みをこそ、笑うものだ 。


 「天下無双」と言えば、洋の東西を問わずファンタジーにはありがちなキャラクター類型で、ある種の武道だの魔法だのを究めた英雄・豪傑とかを、主人公に置くのは定番だ。


 二つ目の「ダンス」にしても、英雄・豪傑の傍らに侍るのは美姫ヒロインと相場が決まっていて、高貴なお姫様プリンセスより身近な舞姫ダンサー歌姫シンガーの方が親近感が湧くし、舞台や映画になると歌やダンスは、それだけで見せ場になるので、演ずる側にも喜ばれる。


 苦難や強敵に果敢に立ち向かう主人公ヒーローに、寄り添う舞い歌う美姫びき相方ヒロイン、それだけで絵になる。


 問題は、やっぱり三つ目のお題「布団」だろう。

 三題噺のお題だけに、「動(天下無双)、動(ダンス)、と来て静(布団)」、「人物、人物、と来て単なる物」、「時代を問わない人物像キャラクターが二つ続いて、(ベッドではなく、むしろ昭和以前を感じさせる)布団」である。


 「畳の間の布団で濡れ場」では、異世界ファンタジーのラブシーンが、四畳半襖の下張になってしまう。

 永井荷風と正面切って筆力対決なんて、無理ゲーをするつもりは、当然無い。


 故に、布団はオチか、オチを導くファクターに捩じ込んでしまうべきだろう。


 一騎当千、百戦錬磨、天下無双の主人公ヒーローと相棒の絶世の美女の舞姫ダンサーが、ゾンビ=生ける屍リビングデッドの軍団相手に、一大スペクタクルを繰り広げると、超B級作品にはなりそうな感じだ。


 ただ、生ける屍リビングデッドならぬ生ける布団リビングベッドと決戦を繰り広げるとかだと、物語としての見せ場が苦しい。


 そもそも生ける布団リビングベッドってどんなモンスターだよ……アンデッド系?

 バタバタと羽ばたく四角い綿の入ったトリの降臨か?


 駄洒落はどこまで行っても駄洒落だが、そこを読ませるモノに出来るかは、やはり書く者の腕次第だ。

 無理筋とは思っても、地口落ちと行くのも手札には入れて置こう。


 やっぱり、今夜はもう寝る。寝ると言ったら、寝る。

 明日の頭の回転(廻天?)に、期待しておこう。

 私は、何も言わず布団に潜り込んだ。




 

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