第32話

side:平倉

しばらくなにか考えていた勝村が、小首を傾げながら、


「美術部って厳しかったりするの?」


そういいながら、小首をかしげる姿は、普段そうしなさそうな人がすることで、格段の破壊力を得る。さようなら、私の理性。


「…そんなことないよ。」


と返事をすると、勝村はまた何事かを考え始めた。

勝村の縛られた両腕で出来た輪っかに、自らの頭を通す。勝村は上の空な感じで、気にくわないので、脇腹を上から撫でる。

ぎゅっと力が入ったが、気にせず撫でる。だんだん脇腹の筋肉が弛緩していってる。そしてこの顔はきもちいときの顔だ。それを隠すように少し下を向いている。


「勝村、どう?」


「どうって‥.?」


吐息混じりの低い声。色気がハンパない。中学生だぞ。


「きもちい?」


「…気持ちいい。」


素直でかわいい。褒美に首を撫でてやる。ここがいちばん敏感そう。骨に沿うように、表面をゆっくり滑るように撫でる。首の延長で耳も、私がさわりたいようにさわる。


「…っ」


色っぽくてかわいい。我慢するような顔もかわいい。


「ねぇ、どこまで許してくれる?」


「…世間が許す限りどこまでも、お望みのままに。」


「もうすでに越えてる感じはするけどね… どこまでもって、どうして?」


勝村は、ぐっと私の体を抱き寄せる。思わず目をつぶると、匂いがした。私は勝村の右肩に受け止められる。ガッチリしている。

お互いの顔が見えない位置になって、しばらくして、


「…幸せにしたいんだ。」


心臓が大きく跳ねて胸を圧迫して、息が止まるような気がした。

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