そういうのはまだだったな〜勇者(俺の分身)対魔王(俺)の続き〜

越山あきよし

「天下無双」「ダンス」「布団」

 魔王は俺だけではない。

 それは勇者だった時から知っている。

 まさか俺が魔王達からダンスパーティーに招待されることになるとは。

「おまえ、元は勇者だったんだろ?」

「そうだけど、それがどうかしたか?」

「実はオレもなんだよ」

「マジか」

「マジマジ。オレもお前と同じで。自堕落の妖精にお願いして魔王になったんだ」

「あたしもだよ! ていうかここにいる魔王、全員そう!」

 賛同する声が会場内に響き渡る。

「まぁ、なんていうか、闇落ちってやつ? あまえもいつかはこっち側に来ると思ってたよ」

「なんだよ、それ」

「まぁまぁ、細かいことは置いといて。一緒に踊ろ? そのために集まったんだし」

「そうだな」

 容姿だけで言えば小柄でわんぱくそうな娘。

 魔王のひとりで、俺が勇者だった時はずいぶんと倒すのに苦労したのを憶えている。

 俺はそいつとダンスすることになった。

「魔王も大変だよね」

「そうだな」

「どんなに勇者が弱くてもわざと負けないといけないし。あんたの時もずいぶんと苦労させられたわ」

「俺、そんな弱かったか?」

「弱い、弱い」

「あんま言われるとへこむんだけど……」

「ごめん、ごめん。にしてもこんなに魔王が勇者に負けてるところを見てる国民(観客)からしたら天下無双の状態よね」

「だな。まさに無敵」

「まぁ、やられたふりしてるだけだけど」

「よくバレないよな」

「国民(観客)がバカなだけでしょ」

「だけど、その国民(観客)を楽しませるのが俺らの役目」

「とんだ茶番だわ。……まぁ、いい暇つぶしだけど」

 俺らがダンス&雑談をしていると、このパーティーの主催者であり、この会場の所有者でもある魔王が声をあげた。

「よーし! おめぇら、そろそろお開きにしようや。各自、家に帰るのもよし! ここに泊まっていくのもよし! 布団ならあそこにあるから自由に使ってくれ」

 100はいるだろう魔王達はそれぞれ思い思いに行動する。

 帰る者、準備されている布団を敷く者、持参した布団を敷く者、焚き火する者。

 あれなんか最後、おかしいな。キャンプファイヤーかな?

「あんたはどうするの?」

「俺?」

「そう」

「どうすっかな」

「用ないんならさ……うち来る?」

 そういうのはまだだったことを思い出す。

「ヤるか」

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そういうのはまだだったな〜勇者(俺の分身)対魔王(俺)の続き〜 越山あきよし @koshiyama

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