愚才な武人と天才娘達 後編

不自由な新自由主義の反乱児

愚才な武人と天才少女達 後編、第七章から最終章

新しくアカデミーが世界で拡大する事が決まり。四月になり、新しく大きく人数の

増えたアカデミーが始まったのである。増えたと言っても、一クラスで一人の講師が指導する人数は前回と同じ十五人、それぞれの特性や専門性でクラス分けして

担当するする教師を決める。また幅広い教養や技術を習得させるため、授業の

振り分けもして分担して教え込む。当然基本的教養や語学も、それぞれの専門の講師を使い教え込むのである。ユニオンはその頃、武力部隊のエージェントだけでなく、医療や情報技術、科学部門の専門的な学校を作っていたので、様々なことを教える

講師にはこと欠かない人材を抱えていた。それを上手く活用するシステムを作って

行ったのだ。このような根回しやプロデュースには、ヒトミも忙しい病院経営の

合間に携わり、ビジネス展開の顧問たちにも協力して貰った。

このような事にも、共存の考え方が上手く生かされて行ったのだ。

そして娘のマリもヒトミを手伝い、マリアの代役、また裏方として1か月間動いて

居たのである。十八歳と言う若さで、驚愕する能力と知恵を備えていることに、

ヒトミも感心せざる得なかった。

マリアの教えた知恵の奥深さを、感じざる得ないほどの働きぶりだった。

アカデミーがスタートしてヒロのクラスの十五人の中に二人の生徒が居た。

一人はエリカと言い、彼女の祖父はある武闘集団の長であったが、その祖父が

亡くなるとその組織の内部が、権力闘争に陥り彼女の父親が闘争に敗れ

死んでしまった。それを当時ヒロや、その仲間が助け、その親族を違う場所に逃がしユニオンに所属して貰ったのだ。その他の集団は結局争いが続いて、バラバラになり、皆どこかへ消えて行ったが、エリカの親族や派閥だけユニオンの仲間として

今も存続している。そしてエリカはその中で、特筆すべき才能を見せ始めていると

言うのだ。もう一人は美樹と言いヒロと一緒に戦った、師兄弟とも言える水樹の姪に

あたる娘だ、彼女の父親や母親も水樹達がとある集団と争っている中、

戦いの中命を落とした、その娘を水樹が母親のように育てたのだ。

水樹自身は子供を持たないが、戦いなどで親が死んだ子供を何人も面倒を

見ている。今回のアカデミーにも、水樹の里から何人か入って来ている。

今回ヒロの助手として、アリサもアカデミーに携わることになった。 

ヒロがアリサに色々と経験させるため、また生徒の様子を細かく見るためユニオンに

承諾させてそれを任務として勤めさせることにしたのだ。

二人がクラスの生徒の前でこれから、自分とアリサの二人が君たちを指導する担任だと名前を名乗り挨拶すると、水樹は手を挙げて質問をしてきた。

【先生、アリサさんはまだ若いし、確かアカデミーの一期生の姉様ですよね?

何故そんな若い人が助教なんですか?多分私の方がアリサ姉さまより強いですよ】と

美樹が目立とうとする。他の生徒たちはその発言に緊張した顔を見せるが、

ヒロとアリサは笑っている。ヒロが【十年位早いんじゃないか?

俺にはそう見えるけど】とバカにして煽ると、美樹は【私、水の里ではもう大人にもそうは負けません、水樹先生からも色んな秘技を教えて貰っています】と主張する。

ヒロが【水樹の名前を出すのは止めておけ、師匠に恥を掻かせるな】と笑うと。

美樹が【じゃあアリサ姉さまと一度組手をさせてください】と強がる。

アリサが【先生いいですよ、私が相手をします】と言うと、ヒロが【仕方ない、

どうせこのあと修練場で実習だ、みんな着替えて道場に集まれ】と指示する。

みなが揃うとヒロがアリサに【良いか、アリサは打撃を使わず、八卦掌と合気の崩しと防護だけで投げや崩しは有効とする、軽い掌打は可とみなす、美樹は突き蹴り投げ

すべての攻撃を可とする、相手を戦闘不能に制御すれば勝ちとする】と言って

始めさせた。美樹は持ち前の連撃と長い手足でどんどん攻撃を当てようとするが、

アリサは八卦掌の歩法で美樹の死角に入り込み掌底でバランスを崩し足払いで

転ばせることを繰り返す。実戦なら何度もトドメを貰って絶命している、そして何度も転びスタミナが切れて浮いた構えで美樹が左脚で蹴りを出したところ中に入り、

反対側の足を刈りながら 体重を乗せた掌底で美樹の身体を潰す様に倒し、息が出来ない状態にして無力化をしてしまった。

息が上がっているところに、倒れながら掌底を胸に食らったので、美樹は息が出来ず声も出ない状態になった。幸い頭は受け身を取ったので、畳にぶつける事は無かったが、息が出来ずに美樹が苦しんでるところをヒロが、横隔膜に活を入れ呼吸が出来る状態に戻した。ヒロが美樹に【大丈夫か?骨や筋は痛めてないか?】と声をかける。

美樹は無言で呼吸をしながら涙を浮かべている。ヒロはそれをみて【良く戦ったな、さすが水樹姉の弟子だ、蹴りも突きも攻撃は悪くは無かった、実戦と修行の量の差が出ただけだ】と慰めたが、更に美樹は余計、悔しさと、自分の情け無さに声を出して泣いてしまう。ヒロが【無く必要は無い、お前を必ず強くしてやる、

お前はその悔しさを忘れなければ強くなる】と慰めた。

そして美樹や皆が落ち着くまで、アリサが使った八卦掌の技を自ら見せて

アリサと約束組手の中で解説をし、型と用法を繰り返し説明した。

武術の修行は基本、黙念師容(モクネンシヨウ)と言い、姿を模倣させその意味を

教え何度も繰り返させ体に覚えさせる。 まず師の姿を真似ることから始まる。

そして何度も型式を練習させ体に覚えさせるのだ。

ただただ型を真似るだけでなく、そこに想像力や実戦の想定も必要だ。

ボクシングのシャドーも同様で、ただやるだけではダンスも同じで、そこに相手の影を想像して行うことから、シャドーボクシングと言われるのだ。

皆に型と用法を教えた後、ヒロはエリカを前に出させて約束組手でやって見せるように命じると、エリカが見事な見本を見せる。それもそのはず、エリカの祖父は元々、八卦掌をもとに、日本で伝承された門外不出の武術の伝を受け継ぎ、中国まで八卦掌を学びに行って更に改良をした技を家に残していた武人であった。

それほどの武人でも状況により怪我を負い死ぬことは戦いでは普通にあるのである。

過去、名人や天才と言われた武人があっけなく戦いで死ぬことは普通に良くある話で

たまたま生き残った者が、名前を残し流派を立てて、武名をとどろかせる。

それが武の世界でもある。

次にヒロは美樹に水樹に学んだ技で、自分に攻撃するように言う。

すると持ち前のスピードと連打で見事にかみ合う組手を見せる。

間合いとシュチュエーションがかみ合うのだ。

そもそも、エリカと美樹が学んだ武術は修行の過程が違う上、戦いを想定した場面に違いがあるため、大きく異なる。エリカの武術は内功を重んじ時間を掛け技を練る。

水樹の一族は元々海賊の集団であり、外功から入り技を磨く。

良い悪いでは無く、結局至る所、目指すところは同じだが方法の違い、環境や

シュチュエーションの違いが有るのだ。それを見本を見せて生徒に理解させそれぞれに合う修行を課す。それぞれ足りない部分を理解させ補い、良い部分を更に伸ばす、学校の勉強と同じである。数学の天才で有っても、国語力やそれを応用する能力が

皆無ならば宝の持ち腐れだ。

どれだけパンチが優れていても、防御が全然出来なく、自分の間合いに相手を捕まえる事が出来なければパンチは当たることは無い。

新しい生徒たちに教えながら、朝の時間と授業の合間を使い、アリサとヒロ自身も

修行を行っていて、金曜日が訪れヒロは終末の夕食の用意をしていた。       アカデミーは土日休み、生徒は全寮制だがアリサとヒロはヒトミの家から通ってる。

シマアジを買い、ラム肉のリブチョップとサラダを作った。

つぶ貝は、甘く煮て、ホタテ、シマアジ、は刺身、シャコは塩ゆでに料理した。

この時期のシャコは子持ちで、卵が非常に美味でヒロの好物である。

夕食の準備が出来る頃、ヒトミやユウ、マリ、コウジ(義兄)が仕事から

帰って来た。ヒトミはワイン、ユウはビール、そしてヒロは秋田の日本酒、

新政のNO6を楽しんだ。

アカデミーが始まりヒロはアルコールは週末だけと決めている。

ヒトミが【新しいアカデミーの生徒はどんな様子?】とヒロに聞く。

【どんなもこんなも、他のクラスも手を焼いているみたいだ、うちにも問題児が

一人紛れ込んでいる】と言う。アリサが【美樹ちゃんのこと?】とヒロに聞くと

【水樹姉と性格がそっくりだ、あんな性格の女がこの世に二人居るとは恐ろしい話だ】と答えた。ヒトミが【水樹ちゃんがよろしくと言っていたわよ】とヒロに言うと

【よろしくも何も、あんな厄介そうなのをよこして、せめて手土産でも持たせて来いと言っておいてくれ】とヒトミに苦情を言う。

するとアリサが【でも、先生彼女、あれから、こっそりエリカちゃんと朝練とか夜錬をしているらしいですよ】と言う。

【まあ、水樹姉の弟子ならそうすると思ってアリサと組手をさせたんだ

水樹姉の娘同様なら強くなると思うよ】とヒロが答える。

【でもなんかしでかしそうで、危なっかしい気がしてならない】と心配した。

ヒトミが【大丈夫でしょ、何か有ったら貴方が責任取れば良いのよ】とヒロに言う。

ヒロが【姉ちゃんは鬼か?弟に苦難を押し付け、いざとなれば責任取れとか、

マリ俺を助けてくれ】とマリに甘える。

ユウが【マリちゃん、甘やかしたらダメよ甘やかせ過ぎたらこのオッサンはホントにクズに成るんだから】と言う。するとヒトミが【大丈夫よ、もうすぐロンさんが日本に来るから、もう甘えた事言えなくなるわ】と言う。

ヒロが【嘘だろ、なんのためにロンが来るんだ?】と聞くと。

ヒトミは【何言っているの、アカデミーにロンさんも関わってくれるのよ

貴方も鍛えなおすとか言って居たわよ】と答える。

ヒロが内心、あの男がワザワザそそんなことのために日本まで来る?

だいたい、あの男は自分の武術にしか興味を示さないド変態だ。

もしや俺で何かの技を実験でもしようとしているのか?と思った。

アリサが【ロン先生って先生に中国武術を教えた師匠でしょ?伝説のレジェンドだって里で聞いた事がある】と聞く。

【伝説と言うより、妖怪か化け物の一人だ、関わると死ぬような思いをする、

強くはなれるが俺は10メートル以内には近づきたくない】とヒロが言う。

ヒトミが【何言っているの、何度も貴方の命を助けてくれた恩人でしょ】と言うと。【それ以上に修行で死にかけたんだよ、姉ちゃんは知らないから

そんな事言えるんだ】とヒロが言う。

ヒトミは【ホント大げさな男ね、恥ずかしいったら無いわ】と言う。

ヒロは、ロンの術式は難解で生徒たちには理解出来ない、だいたい仙人を地で行く

あの変態が懇切丁寧に若い弟子に教える訳が無い、どうせ俺を相手に術式を試し、

それを生徒に理解できるよう説明して教えるのは俺にさせるに決まってる、

と思った。そんな話をしながら、酒を飲んでいるとヒロの携帯に電話が掛かる。

時間は夜九時半、何事かと出てみると、エリカからである。

アカデミーは全寮制だが週末は里の自宅に帰ったりする者もいる、外出も届出を

すればOKであるが一応未成年なので、夜十時が門限としている。

エリカがヒロに少しトラブルが有って寮に帰るのが遅れるので、寮の管理人に連絡

したら先生にも連絡しろと言われた、と言うのだ。

ヒロはこれは絶対とんでもないトラブルだと直感する。

エリカに【誰と一緒なんだ?一人じゃ無いだろ、お前が一人で夜出歩くとは

考えにくい】と聞くと、エリカは口ごもっている。

ヒロは【そこは何処なんだ?場所を言え、言わなくてもGPSですぐに解る】と聞くとエリカが場所を教える。そこは近所の街にあるカジュアルなバーかパブのような

店らしい。すぐにタクシーを呼び出し、場所に到着すると町の郊外にある不良の

溜まり場に成っている店のようだった。

ヒロの悪い予感は予想以上に的中していた、店の中に入ると若い男たちが

数人倒れているのだ。しかも工事現場などで使う拘束バンドで腕と足を拘束されて

いる。そこにはエリカと美樹が立っていた、ヒロは一瞬めまいを感じたがそんな

場合ではない。男の一人の拘束を解いて【何が有ったんだ】と聞くと男は

【何が有ったも、いきなりこのガキが俺たちを襲ってきてこんな目に合わせて

くれた】と言う。エリカが【そんなの嘘です、この人たちが私たちを帰らせないと

言って囲んで来たから】と言う。

美樹がエリカに【だからこいつら、放置して逃げてしまえば良かったのよ】と言う。

カウンターの上に空のテキーラの瓶とショットグラスが何個も並んで、

カウンターの中にも若い男が酔っぱらって倒れて眠っている。

ヒロが引きつった笑顔を見せて【美樹ちゃん、拘束したまま放置して誰も

来なかったら、どうなるのかな?】と聞く。美樹が【お腹が減る?】ととぼける。

ヒロが【人間は何日間、飲まず食わずだったら死ぬのかな?】と聞くと、

美樹が【温度や環境によるし個体差があるから一概には答えられません】と言う。

ヒロが【そうだね、しかも拘束された状態で、ユカに転がされてストレスを

受けているけど、彼らを殺しても良いと?】と聞くと。

美樹が【だから、こいつ達の携帯で誰かに電話させて、助けに来させて、

その間に逃げちゃおうと思って】と言うのだ。

ヒロは思わず吹き出してしまったが、完全に海賊のやり方だ。

エリカによると、この中の一人がタダで飲ませると言って、美樹を酔っぱらわせ、

何とかしようと考えたら、その男の方が美樹の酒の強さに負け潰れてしまい、

美樹がご馳走様と言って帰ろうとすると、帰らせないように囲んで来たので、美樹が

全員倒して拘束したようだ。結局、ヒロが有る筋の人間に連絡して事情を話し、

ことを収めた。だいたい未成年に大人が飲酒を刺せた時点で犯罪だが、未成年を監禁しようとすれば重罪だ、しかしその理論は輩には通じない、奴らの目的は少女を金にすることである。たしかに極悪であるが法で解決できると思っている日本の社会が

ヒロにはバカ丸出しだと感じる。

刑務所のリスクは百も承知なのだ、また重罪化を叫ぶバカが居るがそれなら

犯罪全て死刑にする覚悟があるのか?己が何かの拍子に罪に問われる可能性を

考えないお気楽な思考停止のバカが日本に多すぎる。

罪と言うのは勝手に作るのは非常に簡単だ、また、人が死のうとも罪に

問われないケースも有る。例えば人を自殺にまで追い込んでも犯罪では無いとは

どういうことだ?教師が生徒と一緒に生徒を追い込んで自殺に至ったケースが

何故処罰することさえ出来ない。

政治家の秘書が自殺したケース、何故すんなり自殺認定されている。

逆に交通事故で相手が警察官だったら何故か重罪、逆に被疑者が元貴族

皇室ならば逮捕さえされなかったケースもある。

司法は間違いを犯す、それなら何故間違えた司法は罰することが

出来ないのだ。あの様な輩の事は、蛇の道は蛇である、司法より痛い思いをさせる

方法がいくらでも有るのだ。だいたい警察に相談してもケースバイケース、案外役に立たない場合も多い。司法の考え方も検事や判事も時節や世間の風で変わる。

役人と言うのは江戸時代から何にも変わっていない。

しかしヒロの心配の種、問題は美樹である、何故なら美樹にも悪意が存在している。

ヒロは彼女の師匠の水樹が、色んな店で出禁に成っていることを知っているのだ。

美樹はこの手の輩を引っ掛けて、ただ酒を飲む気が満々だったのである。

完全に水樹の悪癖を真似ている。帰り3人はタクシーでユニオンに帰って行ったが、エリカは半泣き、美樹は不貞腐れて黙っている。その日は寮では無く家に連れて帰り再度説教だ。美樹に【何か言うことが有るなら聞いてやる、それから、水樹に報告を入れる】と言う。美樹は黙っている。

エリカに【お前も言う事があれば聞いてやる、言ってみろ】と言うと、寝きながら

【私が止めなかったから、もっと強く止めようと言わなかったから】とエリカは

泣き出してしまう。すると美樹が【エリカちゃんは悪くない、エリカちゃんは関係

ない、罰するなら私だけにして先生、どうせ先生も世の中の大人と同じなんでしょ?守りたいのは自分たちの体裁や身分の保身、そうやって邪魔なものを排除して正義を気取っていればいいじゃん】と言う。

エリカは号泣して【美樹ちゃんやめて、美樹ちゃん強くなって、世の中から無視

されている人たちを助けたいって言っていたでしょ、美樹ちゃんの里のことも

話してくれて、私のお父様や母様の事も一緒に泣いてくれたから一緒にアカデミー

卒業して頑張ろうって言ったでしょ】と美樹に訴える。

美樹はようやく、エリカの顔を見て涙を流す【エリカちゃんは本当に私を止めようと

しただけなんです、それに軽い気持ちで、ただでお酒飲めるかもって思って

行ったら、やっぱりボッタくりの連中で、少し痛めつけてやろうって思って】と

言う。ヒロが笑って【お前、タダほど高いものは無いと言う事を覚えておけ、

それに十五歳で酒を飲むのは遺法って知らんのか?それを堂々とバカすぎる、

アカデミー卒業まで週末でも外出禁止、その変わり週末はここで、エリカと勉強を

することで今回の事は表には出さない、一から根性を叩きなおしてやる】と言った。

ヒトミに言って部屋を用意してもらい、その日は二人を休ませた。

その日から二人は平日は寮生活、土日はヒロの監視の元ヒトミの家と言う変則的な

内弟子生活が始まった。翌日、アリサとマリが起きてきて【昨日は大丈夫だったの?何が有ったの?】と聞くので【大した事は無い、週末は美樹とエリカもここで過ごすことに成った、お前たちも面倒を見てやってくれ】と報告するとアリサが驚いて、

マリの顔を見るとマリは事情を理解したのか笑っている。

朝食の後、二人に着替えを寮まで取りに行かせている時にヒトミとユウに事情を

話すと二人は大爆笑している。ヒロが【笑いごとじゃ無い、一歩間違えたら大事件に成っていた】と言うとヒトミが【良く言えるわね、あんた学生時代や友歌ちゃんが

居なくなった時のこと、もう忘れたの?アンタの場合何人か大怪我させて、

それをユニオンの病院で治療までさせて、私が色々後始末したのを覚えて無いの?】と言うと、ヒロは【後始末って、金を少し与えて無理やり示談書かせた

だけじゃないか】と言う。寮から二人が帰ってきて、アリサと三人で自主練をするというので行かせていると、美樹の師匠で叔母の水樹(ヒロの師兄弟)から電話が

あった。ヒロは美樹が自分で水樹に報告をしたのかと思って電話にでると、

【家の娘が世話に成っているようね?あの子頑張って修行している?】と

とぼけている。ヒロが【低い声で、水樹姉なかなかユニークに育てて居たようだな、違う意味でものすごく頑張ってくれたみたいだ、一日で髪の毛が白髪に

成りそうだった】と苦情を訴える。水樹が大爆笑して【アンタも私にそんな冗談を

言えるようになったんだね、だいたいアンタ白髪になるタイプじゃない、

禿ていくタイプじゃないか】と言い返す。

ヒロが【誰が禿るか、少しでも禿げたら全財産つぎ込んで最先端で治療するわ】と

言い返す。水樹が【家の御姫様のことを頼んだよ、私の宝もので私の跡継ぎなんだ

から】と言う。ヒロが【水樹姉、俺の休日を返せ、過労死したらアンタを訴訟して

やるからな】と言うと。

水樹はギャハハと声を出して笑い【アンタ、ユニオンのエージェントに過労死の適用が有ったとは初めて聞く、だいたい武人に土日休日とは片腹痛い、源三先生が聞いたらあの世で泣いているよ】と言う。ヒロが【あのジジイが涙なんか流すか、だいたいアンタ毎日休日みたいに酒ばっかり飲んでいて良く言うわ】と言うと。

水樹は【私の肝臓は特別でね、酒を飲んでも普通に戦えるのさ、お前みたいなショボいのと一緒にしてもらったら困るね】と言う。

たしかに水樹は体質的に酔い難い、特別な体質であるのは確かだが肝臓の処理能力は

きっと何処かに歪を与えるとヒロは思っている。

ヒロは【解ったから飲みすぎるなよ、そんでなくても武人の身体はストレスを常に

与えている、いくらアンタでもそろそろ、体に気を配れ】と心配をする。

水樹が【とにかく美樹のことは頼んだよ】と言って電話を切った。

美樹は自分の生徒でもある。

問題は多いが、可愛い。ヒロはあの水樹が頼み事とはと驚いた。頼まれなくとも、

美樹はすでに自分の生徒だけに何故か彼女のことを見捨てられない。

水樹達は元々海賊と言われた集団で、自分の土地を持たず、外洋や内海問わず争いに

巻き込まれ、世間から疎外されていた武闘集団だ。

それをヒロの祖父の源三が骨を折り、土地や仕事を与え、自分たちの落ち着ける里と

言うものを初めて持った。それまでは戦争の道具として、利用されたり、海外での

戦闘に参加したりして生業を立てていた。

たまたま源三と縁が有り、海運の仕事を斡旋したり、漁業権を大金で買い取りそれを生業の一つにしたりと出来たのだ。また源三との縁でユニオンに加盟して、警護などの仕事も出来るようになった。それでも外の世界とは違い、疎外された目で見られることは大いに有った。何より元々の文化が違う、郷に入ればと言うがそれは勝手な

マジョリティーの言い分である。それぞれの違いも尊重し合い、共存する配慮が実はマジョリティーには無いのが人間の性なのである。

きっと源三やその一族にしろ、矢早の里にしてもエリカの一族にしろ、似た境遇は

大なり小なり経験しているのだろ。

現代でも別の意味で、孤立する人は多くいる、現在の社会構造から排除され、孤独に

しか生きれない人達、ある意味、社会からも家族からも理解されず完全に孤立している人間もいる。引きこもりやニートと言われる人たちも、世間から甘えているとか

言われるが、ほんの少し誰かが寄り添えば彼らも生きる道が違うのでは

無いだろうか?しかしネット社会に引きこもる現在は厄介だ、

ネットでは心は救われない。同じ釜の飯を食べたり、相手のことを自分と違っても

受け入れる隣人が必要なのだ。しかし残念ながらNGOとか綺麗ごとを言って

それを生業にしている組織の多くは何故か金と言うものに縛られて団体を

運営している。悪意云々は別にして、何故か世の中はそのように縛られて

しまっている。滅私奉公などと言う言葉は何故か空しく空虚に感じる。

しかしヒロはそんな綺麗ごとではなく、自分に縁の有った娘や任務として関わった人

自分の手の届く範囲だけは愛情なのか解らないが、大事にしたい、公的な正義感とか

そんなものでは無く、人としての縁こそ、自分の為に大事にしようと思っている。

だから無理に手を広げる事には賛成出来ない。

アリサとエリカ、美樹が自主練から帰って来て、遅いランチを取ることにした。

三人がシャワーを浴びている間、ヒロは二八蕎麦をゆで、鳥の胸肉と卵を入れ三人分の軽いランチを作った。ヒロは動いて無いのでプロテインとサプリで済ますことに

した。ランチの時アリサが美樹に昨日は夜、何処に言って居たの?と聞く。

ヒロが【道に迷って帰りが遅くなって変な奴らに絡まれそうになったんだよな】と

助け舟をだす。アリサが怪しいと思い美樹の顔を見ると何故かエリカが

動揺している。【エリカちゃん本当に?】とアリサが疑う。

ヒロが【本当だ、そんなに追及するな】と言う。

アリサが【先生、美樹ちゃんの先生の水樹先生ってどんな人?】と聞く。

ヒロが【何でだ?気になるか?】聞くとアリサが【美樹ちゃんがその話をやたらと

してくるから、先生とも兄弟みたいな仲だって言っていたし】と言う。

ヒロが笑って【俺の爺さんも水樹姉を可愛がって教えて居たからな

爺さんも今思えば苦労したと思うぞ】と言う。アリサが【水樹先生は強かったの?】と聞く。ヒロが【そうだな、集団で水の上で戦ったら、水樹姉の部隊は最強の部隊の

一つだった、勿論、水樹姉の個人の武力も凄いけど何故か部下に人望が厚く、

お前の父様も俺も水樹姉の部隊で前線に出ていたんだ、みんなの姉御みたいな

存在だった】と答えた。アリサが【美樹ちゃんみたいに自由過ぎたら、だれもついて行かなくなる。確かに可愛い所も有ってなんか放って置けないタイプだけど】と言うと。ヒロは笑ってしまうが【そうだな、でもそれが美樹の良い所に変わるかも

しれない、アリサが姉様として長い目で導いてやるんだ、それもお前に取っても良い修行になる。アリサが将来また自分の弟子を持つときに色々解ってくる】と言う。

まるでそれはヒロが自分に暗示をかけて居るようにヒロ自身も感じた。

ヒロは部屋で美樹の勉強を見ているエリカを下に呼んで大変だけど、

美樹の勉強を見るように頼んだ。エリカは勉強や筆記テストが非常に優秀で

アカデミーでもトップの成績だ、そして優しい性格で何故か美樹とも波長が

合うようだ。ヒロは副業にもしている、為替取引やモルトウイスキーの古酒、

金の先物取引のチャートや値段の動きを確認分析し後、アリサを連れて買い物に出ることにした。アリサに何が食べたい?と聞くと久しぶりにエスニックな物が食べたいと言う。実はこれはヒロが苦手な物の一つだ。

アリサが何故エスニックなものが好きなのかも知っている。

アリサの父親が好きで、それを母親が得意料理にして、それが娘のアリサにも

影響しているのだ。ヒロは心の中でこれをユンチャオの呪いと呼んでいる。

元々同じ部隊でアリサの父とヒロの兄貴分だったユンチャオがなんにでも

エスニックな味付けを戦場でしてタイ料理風にしてしまう。

ヒロはこれに辟易としていたが、アリサの父(俊人)は大好きになった。

言った手前仕方なく、了承してガイヤーン風のエスニック料理を作ることに。

これは昔ユンチャオに習い作り方を覚えたがヒロ自身は箸をつける気にならない。

自分のためにスーパーに出ていた上物のイシガキ鯛を買い刺身とアラ煮を作り

その他タコとイカも刺身にした。

エリカの里で作られたジャガイモがスーパーに有ったのでそれで肉じゃがも作った。ヒロの肉じゃがは、牛すじ肉を使う、圧量鍋で時短で美味しく作れるのだ。

夕食の準備が終わりマリとヒトミ、ユウがかえって来て、夕食が始まる。

いつものように、ヒトミはワイン、ユウはビールヒロは奈良県の日本酒みむろ杉、

の純米吟醸を飲む。娘たちはペリエの炭酸水を飲んでいる。

ヒトミが美樹に【今日はテキーラじゃ無くて良かったの?】と聞く。

ヒロがあわてて【姉ちゃんなにを言っているんだ】と制すると。

【何を言っているのアンタも十六歳の頃、水樹ちゃんに付き合って飲んで

いたでしょう】と言う。

【あれは水樹姉に無理やり飲まされていたの、戦場で仕方なく付き合ってやってい

たんだよ】と言うと。美樹が【先生の部屋の中や冷蔵庫を探したら、ウイスキーと

日本酒ばかりで私の好きなスピリッツが無かったんです】と答える。

ヒトミとユウが爆笑するがヒロは引きつり、【お前いつの間に勝手に探しているんだ

勝手に俺の酒飲んでも良い訳ないだろ】と怒る。ユウが【なんか賑やかに成って楽しいわね】と言うと。ヒロが【こっちは笑いごとじゃ無い】と怒る。

アリサがタイ風に作った焼き鳥ガイヤーンを美味しそうに食べていると

ヒトミが【懐かしいわね】と自分も箸で皿にとり食べる。

【この味、ハヤト君もユンチャオ君も好きだった味ね】とヒロに言うと

ヒロは【俺はこの味をタイ人の呪いの味と呼んでいる】と言う。

ヒトミが【何を言っているの、美味しいじゃない】と言うと

【戦いの間、何にでもパクチーで味付けされてみろ、呪いの味に変わるから、兄貴の奴こんな呪いを残して先に意ってしまって】と思い出し目が潤む。

ヒトミが【そうね、二人とも皆から愛されているのに悲しみを残して逝って、

こんな可愛い娘を残して】と言う。アリサに【貴女はその分、幸せにならないとダメよ】と言う。アリサが【私、幸せですよ。先生や皆に出会えてマリちゃんにも

会えて】と言う。ユウがアリサを抱きしめて【貴女って可愛過ぎる、マリちゃんや

美樹ちゃんもエリカちゃんも一度に妹が沢山できて嬉しい】と喜ぶ。

ヒロが【なんか俺の存在がよほど嫌だったように感じるけど、気のせいか?】と

ユウに聞くと、【兄ちゃんと二人の時は根暗が映りそうで嫌なのよ】とショックな

発言をする。ヒロがため息をつき日本酒を冷蔵庫にしまって、ハイランドモルトの

タリスカー21年をグラスに注ぎ飲みだすと、ユウが【そう言うところよ】と

ヒロに言う。ヒトミが【二人とも仲良くしなさい】と窘めると美樹がこっそりヒロのウイスキーのグラスを持って飲もうとしている。アリサが【何やっているの。と注意をすると】美樹が【先生が飲み過ぎないように】と言い訳をする。

ヒトミは爆笑してエリカが心配そうな顔で見ている、なんだか、まだまだ波乱が

起きそうな予感である。月曜日からまたアカデミーの授業が始まり、美樹とエリカは寮に帰り、ヒロとアリサも授業をする。アカデミーでの実戦の訓練、

授業は大きく分けて二つのシュミレーションで行われる。

ユニオンのエージェントの現場もそうだ。

一つは戦場を想定した戦い方、もう一つは非戦闘地域での戦い方。

どちらも相手を無力化することが目的だが、こちらの使える武器も相手の武器も

大きく違う。現代のユニオンでもドローンやAiを駆使した戦いもするが、

戦場では相手の武器の無力化を目的とする。

敵をいかに拘束するかで作戦の危険度は大きく変わる上に、必要な戦闘人数も

大きく変わる。ユニオンの兵器は大きな火力や威力に頼るのではなく、

的確に相手の兵器を無力化することに特化して作られている。

ドローン兵器を扱う部隊はヒロ達とは、違い懸隔で科学技術のみで相手の武器を

無力化するがその後、人間力でヒロ達のようなエージェントが動く作戦が

多く使われる。非戦闘地域での想定によっては使える武器が限られる。

勿論相手も同様だが、その場合ユニオンのエージェントは超小型のドローンを

使用しての情報収取や戦いをヒロ達エージェントが求められる。

そして徒手格闘戦での能力も大きく求められる。

勿論銃器を扱う場合も有るがその場合もユニオンの武器の目的は相手の殺傷では無く

相手を無力化することに特化した武器を使う。

ヒロは折り鶴と呼ばれるユニオンが開発した手裏剣の名手でもある。

これにも多くの科学技術が織り込まれていて、相手の視力を瞬間奪ったり、

時には意識を奪う薬剤を散布したり出来る。この薬剤は戦場でも使う事が有るが、

ユニオンの医療部の薬剤開発チームが開発したものである。

後遺症が残らないように対処薬も開発されている。

ユニオンの武器の最大の問題とも言えるのは、そのコストである。

一つの武器や装備には莫大なコストが必要で大量生産も不可能だ。

ヒロがエージェントの増員に反対する、もう一つ理由でもある。

しかしそのような武器を開発する目的の一つは、敵の殺傷をなるべく

避けるためだ。

人が多く死ねば恨みが恨みを呼び戦いが泥沼化して、両者のダメージや

疲弊も増すばかりである。

ユニオンの目的は戦いでは無く、共存のための和解で戦わず共存出来るのが 

最良であることは間違い無い。

戦いが泥沼化して大国が兵を引きその後、長年戦地に成った国も大国も回復のため

多くの犠牲や経済損失を払う必要が有ったケースは歴史の中で多く存在する。

中にはそれで肥え太る連中も存在するが、それは一部だけで、その犠牲を多くの人が払う羽目になるのだ。

勿論そのような人間に踊らされ、争いに熱中する人も自業自得と言えなく無いのだが

ヒロは無知な人間の命を利用し、肥え太る人間には殺意を覚えることが

有るのだった。

アカデミーが始まり、1か月が過ぎ5月に入った頃、ロンが日本にやって来た、

ロンは年齢不詳だが古くからの源三と武縁があり、敵の時も戦友の時も有った人物で

ヒロに中国武術を教えた師匠でもある。

ユニオンの最古参の一人だが、推測年齢と見た目が一致しない謎の人物で

ヒロは悪意を込めてマリアとロンをユニオンの2大悪魔と呼んでいる。

マリアが魔女ならばロンは仙人であろう、事実、ロンの食事はまるで仙人で仙薬や

薬草の入った薬膳のような食事をしている。

ロンの元でヒロが二人で修行した時、体重が激減したり、その食事で幻想を感じたりする。変な脳内物質が出て来てると感じる事がある。

ロンがアカデミーに顔を出してヒロに挨拶に来たとき、ヒロは何故か一瞬、目の前が

真っ暗に成った気がした、勿論、本当に暗くなった訳では無くヒロの心理状態の

話である。ヒロは気を取り直し、【本当に来たんだな、びっくりポンの

ビックサプライズだぜ】と言うと、ロンは【ヒロの言葉は意味不明すぎます、

まともな言葉を使いなさい】と早速、説教が始まる。

ヒロが【わざわざ、師父にお出まし戴き恐悦至極でございますが、 

そのような、お手間をお掛けして心苦しいのです】と言い直した。

ロンは【マリアさんから、貴方と生徒たちに私の武を少しでも

伝えるよう、お願いされたので来たのです】と答える。

ヒロは心でありがた迷惑な話だと思いながら【どれくらい、日本に滞在するんだ?】と聞く。【三か月位を予定しています、早速、明日あなたがどれくらい成長したか

組手をしてみましょう】と言い。

【生徒も集め挨拶の時に組手を見せ参考にしてもらいましょう】と言う。

ヒロは本当に目眩を覚えた、予測をしていた中で最悪の設定で、最悪の

シュチュエーションである。ロンはヒトミにも挨拶して今日は宿舎に戻ると告げて

帰っていったが、ヒロはアカデミーで授業の間も明日の組手の事を考えていた。

色々、考えるがロンに目に見える穴があるとは考えにくい。

接近を許せばアッという間に死角に回られ必殺の発勁を打たれてしまう。

常に正面にロンを捉えてカウンターの後の先を狙うしか勝機は無いが、

口で言うほど簡単な話では無い。ヒロの打撃は連打でも一撃でも当たれば相手を倒すパターンや攻撃力を持っているがあくまでも、ヒロの間合いや呼吸の範囲でのこと。

常に死角を取られたり、間合いを外されたりすれば攻撃の威力も

空砲の大砲と同じである。翌日、アカデミーの生徒や教師、全員が修練所に集まり、

ロンが自己紹介と挨拶をして、ヒロとの模範組手を行うことになった。

審判を置かず時間も決めずに始めることに。ヒロは覚悟を決め、排水の陣である。

唯一の戦略は修行場の地の利の四隅の一角を使う事。

これで早々に死角を取られることは無い。

意外にもロンは正面からの長打、空手で言えば左の直突きの飛び込み突きで

攻撃をしてきた。ヒロは虚を突かれはしたが、左構え(右足前)に体を入れ替え

右手でロンの突きをさばきロンの懐に入り必殺の頭突きで顎を狙う。

遠慮なしの一撃必殺の技である。

カウンターで有ってもロンがこの技をまともに食らう事は有り得ない上

必殺の覚悟の技で無ければ、合わせ技を喰らい自分が倒されてしまう。

ロンに頭が届くか届かないかの距離でロンが軽気功でふわりと左斜め後ろに下がり

距離を取る。ヒロが右足前の状態のまま、右足でロンの左足に俊足のローを放つ。

ヒロのローキックは古式ムエタイの達人。ユンチャオ直伝の上、ヒロの脚力は

スクワット350kgをフルスクワットで挙げる。

まともにヒットすれば人が宙に一回転して倒れる威力だ。

ロンは一歩前に出て太ももで流し掌底でヒロの喉にのど輪のような攻撃を入れる。

ヒロは顎を引き硬気功で、のどを守りながら右手でロンの腕を払い

左下突き(ボディーフック)をロンに打つがヒットはしたが何故か

手ごたえが感じない、柔の呼吸で打撃を殺されたのだ。

これはヒロには出来ない、中国拳法の打撃の封じかただが、この下突き

さえ封じられることはヒロには精神的ダメージが大きい。

かぎ突き(横からのボディーフック)や三日月蹴り(斜めから入る蹴り)が

肋骨にヒット出来ればダメージを与えられるがロン相手ではリスクが高く当たる気がしない。先ほどのロンの喉への打撃で呼吸が乱れているが、距離を自ら取り直し、

逃れの呼吸で呼吸を整える。

それを見てロンがにやりと笑うとヒロはイラつき心が乱れる。

ロンに通用するのはやはりダメージ覚悟でユンチャオから学んだローキックで

足にダメージを与えた上で密着した間合いからの発勁での短打以外無い。

ヒロはスキを作らず遠い間合いから色んな角度で膝や膝下、ふくらはぎ、

足首の横などの急所を狙い何種類かのローキックを放ちロンのフットワークや

発勁を封じる作戦に出た何発かヒットして手ごたえも有ったがそのリズムをロンに

読まれ見えない角度からロンの短いストッピングのような前蹴りがヒロの

水月(みぞおち)に入った。

普通なら息が出来なくなり床でもがき苦しむ激痛が走るが

あぶら汗を掻きながらヒロが構えを解かず我慢してると、ロンが

【ここまでにしましょう】と距離を取り残心を残しながら礼をする。

館内から拍手が起こるがヒロは痛みの苦しみと手も足も出なかった、くやしさで

その時の記憶はハッキリ覚えてなかった。

ロッカー室でしばらく休んでいると、シュウが心配して見に来た。

シュウが【凄い組手だったな兄様】と言うと、ヒロは

【何が凄い物か、あれはロンの力の半分も出て居ない、完全に弄ばれただけだ】

と言う。シュウが【兄様の下段も凄い音で当たって響いていた】と言うと。

ヒロが【くそ、当たっても倒せない技なんかただの、演武だ】と言う。

更に【急所に当ているのに効いた気配さえない】と言う。

シュウが【あれがロン先生か、なんであんなに若いんだ?】と聞くと。

ヒロが【化け物なんだよ、化け物、お前のとこのババ様や、うちの死んだジジイと

同じで人間では無いとしか思えない】と言う

シュウが【兄様の下突きがヒットしてなにも効かないなんて本当の

仙人かもしれないな】と言うと

【ボディーに当たった打撃を化勁で逃がすなんて人間に出来るとは思えない。

しかもストッピングの前蹴りで発勁するなんて、3か月あの変態と修行する身に

成ってみろ】とヒロがぼやく。

ロンが日本に来て、アカデミーで授業を行い生徒に戦闘のおける理論や技術を

教えながら、ヒロとアリサにも修行を付ける日々が続いた。

ヒロには主に戦闘中の脳の使いかたと、それを利用した身体を操る技術。

アリサには八卦掌や長拳や武器術の身体法や歩法をさらに変幻自在に

使えるように修行を付けた。ロンの帰る日が近くなるある日、ロンが水樹を訪ねたいと言うので、土曜日を利用して二人で尋ねることに。

久しぶりに会う水樹は少し瘦せていて、小さくに感じる。

ロンが水樹に【お久しぶりですね、これは特別に中国から取り寄せた

秘伝の薬草です、お湯で煎じて寝る前か夕食前に毎日飲んでください】と手渡す。

ヒロが心配して、【水樹姉、すこし痩せたんじゃないか?マジで飲むのを

控えろよ】と言う。水樹が笑って【私もアンタに心配されるようじゃ、

焼きが回ったね。心配しなくても大丈夫だよ、それより美樹は元気で頑張って

いるか?】と聞く。ヒロが【やんちゃだけど、水樹姉に似てクラスで人気が

あるようだ。エリカと言う親友も出来てやんちゃしながら誰より修行は頑張って

いる】と答える。そして【来年の3月のアカデミーが終わる頃まで、責任もって

エージェントとして働けるようにして、水樹姉に返すよ】と言った。

水樹が【楽しみだね、あの娘が成長したのを見るのが】と言うと。

ヒロが【いつか姉ちゃん以上のエージェントになれる才能は有ると思うよ。

だからそれまで姉ちゃんも少し酒を控えて元気でいろよ】と言う。

長年の激しい戦いを勝ち抜くため酷使した身体と、非常識な酒量のため

水樹の一族の多くは長生きするものは少なかった。

一族を守るため誰よりも前線で激しい戦いをして毎日大量の酒を飲む習慣の水樹の

身体は恐らく疲弊して来たことをヒロは感じた。

これはヒロの祖父、源三も同じだし、昭和以前の肉体労働の人々の多くも同様に

長生きの人は少ない。それくらい昔の人間は肉体を酷使して来たと言える。

水樹の所からの帰り、ロンはヒロに悲しい事実を告げる、【水樹さんはもうそんなに長くは生きることは難しいでしょう、でもその魂は貴方や美樹と言う娘に引き継がれるのです、我々人間はそんなことを繰り返して、進化をして来たのです、貴方には私の武も継承して戴く必要が有ります、今期のアカデミーが終了したら、貴方とアリサには私の道場に来て頂きます】と告げる。

ヒロにとっては地獄への招待状のような宣告で有るが、このシュチエーションで

断ることは出来なかった。その地獄の先には進化が有ることも確信が有る。 

ロンの武は人間には想像も付かない高みに有るのも確かだ。

家に帰ると沖縄の海人のゲンから荷物が届いていた。

すこし前にゲンにモルトのスコッチウイスキーを送ったお礼に、沖縄の食材を冷蔵や

冷凍で送って来たのだ。アグー(沖縄豚)の冷凍肉やスーチカ(塩づけ)冷凍軍鶏肉や軍鶏刺し、そしてヤギ刺しなど、たっぷりの食材であった。

ヒロはそれらを料理して軍鶏鍋や軍鶏刺し、ヤギ刺し、スーチカなどを作り皆で夕食を食べた。ヒトミ夫婦、ユウ、娘たちも一緒だ。

ヒロがビールを飲んでいるとヒトミが【水樹ちゃんの所に行って来たの?】と聞く。すると美樹が【先生は元気そうだった?】とヒロに聞く。

ヒロが【元気だったよ、お前のことを心配していたから、一生懸命修行していると

伝えた、早く一人前になって水樹姉に恩返しをしないと】言うと

美樹が【私、もっと修行して頑張って強くなる】と言う。

ヒロが【月曜から、もっと実戦に即したお前の足りない部分を修行していく

お前は攻撃は十分身に付いてきたけど、相手の攻撃をさせない技術や間合いを取る

技術が足りない。絶対に大怪我や致命傷にならない戦い方を身に付ける必要がある】

と言った。水樹の一族の秘伝には攻撃と守りを攻防一体で行う秘伝の型があるがそれには守りの意識からの交差法を身に付ける必要がある。

また水樹には源三から学んだ太極拳の化勁が使え一族の秘伝と合わせ

戦いのシュチエーションで舎己従人の動きから攻防一体の交差法に移り相手を倒す

水樹独特の戦い方を編み出している。

美樹が【アリサ姉さまが使う歩法を教えて下さい】と言うので

ヒロが【美樹には美樹の風格、戦い方が有る、それに最適な攻防や型式を教えていく

技にはどれが強くてどれが弱いと言うのは無いのは教えただろ、要は使い方で

ジャンケンでチョキを出すかグーを出すかだ】と言い。

【その状況の中で、自分の引き出しの中から最適な戦術を瞬時に使えることが

大切だ、そのためには型や術式を完全に理解して身に付け無意識にどんな状況でも

自分の技から最善の戦いが出来るようにすること、極端な例えだが相手を倒さなくても全てジャンケンで言えば相子でも良い、そのうち相手の出す技の綻びが見えて来る、相手が強ければそれを判断して危険を回避するのも一つの強さだ】と言う。

美樹が【エーッ?それって引き分けか逃げるのも有りって事?なんか私の

戦い方じゃ無い】と言うと。

ヒロはため息をつき【バカたれ、だからアリサにやられたんだ、アリサは過去、

苦い思いをしてそれを理解して今の戦い方を身に付けた、お前はまずそこから修行で

実感させる必要が有るな、俺が直接しごいて行くから覚悟しておけ】と言う。

やがて、ロンは日本のアカデミーから他の任務につき、八月を迎えた。

八月にもアカデミーは開かれているが、座学の授業は休みで実戦の

講義の枠だけで、ヒロやアリサも授業の枠は半分に減る。

その時間を美樹とエリカ、他にも希望者が居れば、実技の指導に充てた。

ヒロとアリサにすればボランティア活動だが、それは自分の修行の再確認にもなる。

武術の修行と言えば映画などで派手なシーンを想像する人も多いが、大半は地味な

動作の繰り返しである。

勿論、組手やスパーリングなども必要だが、格闘技でも延々とシャドーを

何ラウンドも、行うとかサンドバックを延々と殴り続けるなど、地味なものである。

昭和の後期あるプロの格闘家がレジェンドのキックの元チャンピオンに教えを請いに出稽古にいった。そのレジェンドの道場はラーメン店の2階にあり、レジェンドは

その格闘家に俺が良いと言うまでサンドバックを叩くよう、彼に言った。

三十分、一時間たってもレジェンドは下の自分の店でラーメンの仕込みをしながら

サンドバックの音だけを聞いていて声をかけてくれなかったそうだ。

それでもレジェンドの指導でさぼる事も手を抜く事も出来ない。

二時間がたちほとんど身体に力が入らない脱力して無意識で技を出し続け、三時間

近くたったころ、その音を聞いてレジェンドが二階に上がって来てサンドバックを

打っている彼を見て、その感覚を忘れるなと言って、その日は指導を終えた。

つまり脱力して無意識に出した技こそ彼が身に付けた技で、それをいかにして進化

させることが出来るかが修行であり、練習だと言う事なのだ。

勿論コンビネーションの組み立てなどを考えて、それを身に付けて行くのは必要だがそれを試合で出せるには、無意識になるくらい練習をして初めてそれが自分の技に

なると言う事である。プロ野球の選手が夜何時間も素振りでばぅとを振るのも

同じ意味だ。厳しい修行を経て、エリカも美樹もアカデミーを卒業できた。

その頃娘のマリもマリアの元に帰り新しい修行を初めていった。

本格的にマリアの跡継ぎとしての教育を受けるためである。

美樹とエリカはヒロの元で一回り成長して、多くの技も身に付けたが、

ヒロには心配の種がまだまだ有った、特に美樹が良く言えば子供らしさが

残っているとも言えるが、要はまだまだ、ガキンチョでやんちゃ盛りなのだ。

しかし、水樹の所で時間を過ごさせ水樹の技や魂を少しでも美樹の心に残して

やることをヒロは決めていたのだ。

ヒロは源三と最後の時期を過ごしたことに水樹と美樹を重ねて居たのだ。


第八章

アカデミーの卒業後、美樹は水樹の元に、エリカはハヤメのいる矢早の里に

預けることに、そして自分とアリサはロンの所で修行に行くことにした。

ロンの道場は本当に仙人が住むような、極めて険しい切り立った山の中にある。

ヒロはそこを悪神の住む山と呼んでいる。

まずその麓(ふもと)まではユニオンのヘリで何とか行くことが出来るが、そこから険しい山を自分の足で登り上がっていく必要がある。

普通の人間なら確実に遭難して、道に迷う。ユニオンの特別な通信機意外は電波も

無いし、ロンの住む場所にかろうじてユニオンの発電機器が有るのみで普段は電気を

使うことすら無い。どうやって生活するの?と言う話だが仙人を地で行くような生活である。ロンは基本雑穀と野草や木の実、山の淡水魚、たまに野鳥を取り、水は天然の水を熱して常温にし、白湯や薬草を煎じてそれを飲んでいる。

グルメを自称するヒロにはまずはそこから地獄なのである。

ヒロは今回、ロンの軽気功を本格的に学びながら更に爆発呼吸の精度を上げて瞬時に相手を倒す秘儀を修行する。

簡単に言えば相手の攻撃は当たってもほとんど効かなくする技術と、こちらの攻撃は軽い打撃でも一撃で倒す秘儀を習得するための修行だ。

アリサには軽気功の基本的技法で空中戦や飛び技の精度を上げるための

修行をロンは施した。

道場と言っても山の自然の中での修行で、常に危険と隣り合わせの修行が多い。

岩場で歩法を訓練したり立ち木を利用したり、昔の武術家が山籠もりで神託を授かる場面を地で行く、あるいわ導師が仙人になるための修行のように見えるが

いい加減な物でなくロンが理論的に考え色んな体験をヒロ達にさせながら、

体を練ったり、身体操作を刷り込んで行く。

武術もスポーツも簡単に言えば戦うためのフィジカルと身体操作とそのための

マインドを積み重ね完成させれば良いので有る。

爆発的な力もフジカルトと、それを100%引き出す脳からモーターユニットへの

伝達機能の向上である。

火事場の馬鹿力をイザというとき引き出せ、それを操るための修行なのだ。

ヒロに取って一番の苦痛は修行の厳しさよりも山での生活と食事だ。

そして夜や大雨の日に行われる、ロンの座学での講習、

それには五経四書も含まれる。

五経四書とは易経』『詩経』『書経』『礼記』『春秋』の五経、

『論語』『大学』『中庸』『孟子』の四書で中国の官僚の試験で出た書物だが

それを、くどくどとロンが解説する。ヒロはこれを地獄の子守歌と呼んでいる。

つまり死ぬほど眠くなる。ある日ヒロはお茶を飲みながらアリサに苦情と愚痴を

言うと、アリサは【先生が愚痴を言うのを初めて聞いたと】何故か嬉しそうだ。

そう言えば弟子に自分の弱みを見せないよう、いつも繕っていたのだ。

ヒロが苦笑いしながら【そうだったか?お前は辛くないのか?】と聞く。

アリサは【先生と一緒だから、それにロン先生に直接修行を受けるなんて凄いことでしょ?どんどん技を覚えられることが、楽しい】と言う。

アリサの才能がロンの指導で開花して来ているのだ。

ヒロはアリサの父親のことを思い出す、いつも自分より先に技を覚え才能の差を感じていたことを。ヒロは【やはりお前はハヤトの娘だ、技の吸収と理解が早い】と

頭をなでた。アリサは嬉しそうに笑って【、もっと頑張って強くなりたい】と

言った。アリサはそれだけで無く、ロンから鍼灸や薬草など、東洋医学の知識や技術も学んだ、その実験台はヒロである。

ヒロが【なんで俺が実験台なんだ】とロンに言うと【貴方は自分の身体のケアが全然なって居ません、アリサの施術の恩恵を、これから受けて行くのですから、実験台

くらいは我慢してください】と言う。アリサが【先生のケアはこれから私がします

から、安心して】と言う。ヒロは恥ずかしさで何とも微妙な面持ちに成ってしまうのだった。半年の修行が終わり山を下りる頃ヒロの体重は78キロの筋肉質だった

身体が70キロ位になった。

不思議とパワーの衰えも感じず、瞬間的な技の威力は増したように感じる。

アリサも以前よりシャープな身体に成り大人びた顔になったように見えた。

日本に帰りユニオンに付くとヒロはアリサと美樹の居る、水樹の元に

顔を出した。水樹と美樹の事が気になっていたのだ。

水樹は以前よりさらに痩せて居るように見えたが、何故か気力は充実

しているように感じた。そして美樹も半年の間で少し大人びて感じる。

水樹がヒロに【アンタ少し男前になったんじゃないか?】と冷やかす。

ヒロが【水樹姉、今頃気付いたか?元気そうで安心したよ】と言う。

【美樹に色々技を仕込んでいたから、少し酒を控えたんだよ】と言う。

美樹が【先生ロン先生の修行ってどうだったの?】と聞く。

ヒロが笑って【地獄の牢獄で修行した感じだ】と答える。

水樹が【今日は泊まって生き明日一緒に修行しよう】と言う。

ヒロが【そうだな、水樹姉との、本気の技を美樹に見せるのは良いことだ

水樹姉の相手が出来るのは今は俺位だからな】と言う。

翌日、皆で水樹と修行し、ヒロと水樹の組手を見せる。

本気の組手に近いがまるで模範組手で二人が演武で技を美樹に見せているような

美しい組手で水樹は化勁や交差法を存分に発揮してそれをヒロが引き出したり受けたりする、美樹はそれを目に焼き付けるように見つめている。

美樹やアリサそこにはシャチ(美樹の兄弟子)も静寂のなか見入っていた。

組手が終わってヒロが【流石、水樹姉だな、全盛期と遜色ない技の切れ味だ、

まだまだ戦えるな】と言う。水樹が【これからは少し楽をさせて貰うよ、その分お前たちに託す】と言う。美樹が【私がもっと強くなって頑張るからね、先生】と言うと水樹が美樹の頭をなで【頼んだよ、美樹】と言う。

シャチの目頭が赤くなっているようにヒロに見える。

ヒロがシャチに【美樹の事は俺に任せておけ、お前も俺の弟のような存在だ、

里の事も何でも相談しろ、ヒトミ姉ちゃんもお前のことを気にしていたからユニオンでフォローすると言っていた、嫁さんも探さないと、とか言って居たぞ、余計な世話かも知れんが】と言うと美樹が【シャチ兄様は女にウブ過ぎるし、小うるさいから、是非良い人を探して】とヒロに言って来る。水樹が大笑いしてヒロに

【よろしく頼むよ】と茶化す。ヒロは一旦ユニオンに帰り水樹の様子をヒトミに報告した。実はヒトミは1か月に一度診察と薬の処方のため水樹の所に行っていた。

そしてシャチとも頻繁に連絡を取っていた。水樹がもう長くないことも知って

いるのだ。しかし水樹はそんな中でヒロとあのような組手が出来る事は人間の身体の力の不思議な力であろう。勿論、ヒロ自身も決して手を抜いたりしては居ない、

改めて水樹の気の力に驚かされたのである。

十月になりまだ残暑が残っているが山には少し秋の風始めようとした頃、水樹の体調が急変した、海の風も少し変化して気温も朝夕の気温が変わって来た頃だ。

ヒトミとヒロ、アリサは水樹の所に急行した。

水樹はまだ息はあるが、既に半分気を失っているように眠っている。

ヒトミの処方で既に看護師が点滴を投与して酸素吸入を行っている。

ヒトミは少し前に病院への入院を勧めたが、がんとして拒否して自分の里での療養を望んだので里に看護師を手配して、なにか有れば指示を仰ぐように言っていたのだ。

美樹が心配そうに水樹を見つめている、ヒロの顔を見て美樹は涙目を浮かべる。

ヒロが水樹に水樹姉と声をかけると【何だい慌てた顔して】と細い声で水樹が

返事をする。ヒロは何か言おうとするが何を言って良いか言葉が浮かばない。

ヒトミが【何処か痛む所は有る?】と聞くと水樹は笑顔だけ見せた

ように見えた。水樹はヒロに【ヒロ、後の事は頼んだよ】と一言いうと

薬が効いたように眠りに就き少しずつ脈が落ちていきそのまま逝ってしまった。

計器の心拍がゼロに成りブザーが鳴ってヒトミが脈を取り首を振り臨終したことを

告げる。肝臓ガンによる臓器不全だ、モルヒネを打っても、痛くない訳が無い、

しかもそんな中で、ヒロと見事な組手を見せ、美樹に技を伝授するなど常人では有り得ない。水樹も常人を超えた武人で有ったことは紛れもない事実だ。

美樹は泣き崩れ先生先生と水樹に縋りつく。ヒロもアリサも涙を浮かべ、あまりの

出来事に声が出ないが、美樹が落ち着いた頃、美樹に【お前は水樹姉の命を懸けた技を最後に見た、一人だと言うのは理解しているな】と尋ねる。

頷く美樹に【お前はその技を継承して、更に進化させて引き継ぐ義務が有る

技だけでは無くいずれその魂さえ理解して進化させる義務がある

水樹姉は命を懸けてそれをお前に託した、お前には水樹姉以上に幸せに成る責任が

ある、そのことを水樹姉は俺にも託した、それだけは何が有っても忘れるな】

と告げる。そしてその二日後、里で、水樹の告別式が行われた。

多くのユニオンの仲間や武縁の有った者が弔問に訪れた。

矢早の里のハヤメやシュウ、ユミなども訪れ、葬儀の後料理の仕出しは何故か

精進料理では無く魚料理と酒が沢山振舞われ、水樹の昔話に花が咲いた。

そこで、美樹が水樹の正式な跡継ぎで有ること、彼女が成長するまでシャチが

後継人として里を運営することをヒロがユニオンの代理人として告げた。

お別れの宴では皆、水樹の悪癖や事件などが懐かしい思い出として語られ、

葬式と言うより悪口や苦情に近い話も多かったが、それでも皆水樹に愛着が有り、

憎めない存在だったことが伺われた。ハヤメなどは水樹を酔っぱらい娘と呼んで、

年上の自分より早く逝く不幸をなじったりしながら皆で酒を交わしていた。

シャチは葬式の準備や世話で大変だったが上手くこなしていた。

ハヤメと一緒にハヤメに預けておいたエリカも弔問に訪れ、美樹の隣で

常に慰め一緒にいてくれた。葬儀が終わり一段落つくと、エリカも美樹もユニオンのヒロの所に帰って一緒に住み任務に当たる事となる。

ヒロとアリサは一度ユニオンの家に帰り、新ためて美樹とエリカを迎えに行った。

美樹、アリサを連れて矢早の里にエリカを預かって修行をさせてくれたお礼と挨拶に

行った。三人が里に着くとエリカが迎えに出て来た。

ヒロがエリカに【少しポッチャリしたんじゃ無いか?ちゃんと修行していたのか】

と言う、完全にセクハラ発言である。アリサが【先生、エリカは女らしく成って来る年頃に成ったんです】と言う。ホルモンの関係で、体つきが変わる年齢は、個体差がある。ヒロはそのことにようやく気付き【エリカにそう言えば女らしく

綺麗に成った】と訂正するが、実はこれも受け取り方でセクハラ発言

に成ってしまう。美樹に【先生、デリカシーが無さ過ぎ】と窘められてしまう。

ヒロは【うっ、悪かった、すいません】と謝るが心の中で面倒な世の中に成った

と思った。ハヤメに【何をしとる、早う上って来い】と声をかけられ屋敷に上がり

ハヤメにエリカを預かってもらった挨拶をして土産を渡す。

ハヤメの好きな白鷹の純米酒と秋鹿の純米酒と水樹の里で作られた、

アカカマスの干物を持って来た。カマスの干物を見てハヤメが【懐かしいの、これが旨いんじゃ、水樹とこれを魚に飲んだものじゃ】と言う。

座敷に皆を座らせ、美樹に【水樹が逝ったのは残念じゃが、皆が水樹のために

集まって良い葬式であった、昔ならあり得ん事じゃ、これも源三が争いを治め

ユニオンを作ったおかげじゃ】と言う。

【あの葬式に来たモノの中には昔、里どうしで血で血を洗う争いの

有った者もあった。愚かな事じゃ】と言う。

ハヤメが【今日は皆ここに泊まり飯を食べていけ】と進め、皆で酒を交わした。                                ヒロが酒の席で【エリカはちゃんと修行していたか、おばば様】と聞く。

【エリカは真面目で良い娘じゃ、お主とは大違いじゃ】と言う。

ヒロが【俺だって真面目に修行していただろ】と言うと。

【お主はアーダコーダ屁理屈ばかりこねておった】そして美樹を見て、

しかしこの娘は【水樹の若い頃によう似ておるの】と言う。

ヒロは笑ながら【悪い所までそっくりで困って居るんだ、おばば様に

行儀見習いに預けるかな】と答える。ユミが【悪い所は兄様の影響じゃないの?】と言うとヒロは【そうなのか美樹】と聞く。美樹は【私悪い所なんて無いもん】と答えると、ハヤメが【美樹もエリカもアリサも皆、良い娘じゃ】と言う。

ヒロが【おばば様は俺意外に甘すぎる、なんで俺にだけ厳しいんだ?】

と文句を言うと【お主が一番出来が悪いからじゃ】とハヤメが笑った。

それを聞いたアリサが弓美に【ヒロ先生の若い頃ってどんな生徒だったの?

弓美先生】と聞く。弓美は【兄様はいつもババ様に反抗して叱られていたのよ、

いつも私にババ様の愚痴を言っていたの】と答える。

ハヤメが【源三への恩が無ければ、こんな出来の悪いのは世話はしておらん、

こんな出来損ないでも源三に頼まれたから世話をしとるんじゃ】と言う。

アリサが【先生の爺様は凄い人だったんですね】と聞くと。

ハヤメが【源三が居なければ、里同士が未だに世界中のどこかで争い続けていた

恐らく多くの里がその果てにバラバラになり消滅しているじゃろう】と言う。

アリサがヒロに【凄い御爺様だったんですね】と言うと

ヒロが【ある意味凄いが俺には鬼だ、あのジジイ小さい俺をあっちこっち

連れまわし、鬼のように地獄の修行をさせて】と言うと。

ハヤメが【このバチ当たりが、源三が厳しく修行してなければお主は

とうの昔に死んでおるのが解らんとは情けない】と言う。

ヒロが【そんな事は解っているよ、でも俺はもっと青春が欲しかったの】と言うと

【それが定めじゃと解らんとはあの世で源三が泣いておるわ】とハヤメがヒロを責めるのだった。弓美が【ほらね、いつもこんな感じだからアリサは気にしなくて良い

からね、兄様を見習っちゃダメよ】と言う。疎ましそうな顔でヒロは弓美を眺めるのであった。そうは言ってもヒロは、ユミが赤ん坊の頃から知っていて、

小さい頃はヒロになついて、ヒロも抱っこをしたり、おしめまで換えたりした。

赤ちゃんの頃は、あんな可愛い子供だったのにと思いながら、眺めるので有る。


第九章

ユニオンに帰り、十一月に入った頃、四人の新しい任務が決まった。

以前紛争を収めた地域での医療のNGOの警護だ。

紛争は収まったとは言え盗賊、人身売買、貧困のだめの治安の悪さは完全に

解決は出来ていない。医療や食料でのサポート産業施設の警護など多くの任務を

ユニオンがこなす必要がある。しかし紛争地での戦闘に比べれば、安全であるため

エリカや美樹の最初の任務や現場研修にヒロは選んだのである。

またしばらく日本食を食べる事が出来なくなるし、外で酒が飲めなくなる。

ヒロは娘たちを連れ久しぶりに馴染みの寿司屋に寿司を食べに行った。

そこは東京なのに広島の酒を多く取り寄せている。

広島の酒で唯一、ヒロの口に会うのは呉市で作られている宝剣の純米吟醸だ。

決して他が不味いと言うのでは無いが、酒はそれぞれの好みが分れる。

広島の酒で加茂鶴が日米首脳の会食で飲まれて有名に成ったが、ヒロの好みでは

無い。日米の首脳が飲んだからバイアスで嫌っているわけでは無く、

好みでは無いのだ。この時期の寿司のおすすめは、何と言っても光物だ、

これは店の腕が試される。光物の美味しさをいかに引き出し客に食べさせるか。

ヒロはコハダ、マサバ、サンマ、アジなどとカワハギそして金目の煮物を楽しんだ。

アリサもエリカも育ちが山の田舎なので、回っていない寿司は初めてらしい。

美樹に関しては水樹が色々引きつれて飲みに言って居る。

アリサが回っていない職人が握った寿司の旨さに驚く。口の中でシャリが解けて味が広がる。アリサは【こんな美味しいお寿司、初めて食べた】と喜んでいる。

美樹が【私は何度も美味しい寿司食べたこと有るよ】と自慢する。

ヒロが美樹に【お前この前、矢早の里で、木の実やマツタケ食べて

初めて食べたと感動していたじゃないか】と言う。日本は自然に恵まれた国である。

豊かな自然をどんどん目先の金で壊していく、アホな国民性は何とも悲しい限りだ。

娘たちは遠慮しながらも高級食材アワビ、車エビ、ズワイガニなどを楽しんだ。

その後ヒロが学生時代通っていたカジュアルなロックバーに久しぶりに顔を出した。

ヒロの青春の1ページである。ヒロより十歳くらい年上のマスターと学生のバイトの娘が居た。ヒロはスペイサイドのクラガンモアを注文したオールドパーの

キーモルトのモルトウイスキーだ。アリサとエリカはパイナップルジュース、

美樹はテキーラの瓶を眺めているがヒロが特別にバランタインの30年を飲むことを許した。これは水樹も好きだった酒である。美樹は【これいつも水樹先生が

隠していたお酒】と言う。ヒロが【なんだ俺の所みたいにこっそり盗んだりして

無いのか?】と言うと。美樹は【だってシャチ兄様がマジ切れして怒るもん】と

言う。ヒロはこのバカ娘だけはと思いながら、憎めないところでもある。

ヒロがマスターとバイトの娘に一杯すすめると、マスターがシーバスリーガルの

ロックと娘にはハイボールを作り乾杯する。マスターがヒロに【久しぶりだな、俺はてっきり刑務所でも入っているのかと心配した】と言う。

【また、人聞きの悪い、そんなへまをする訳ないだろ、日本の警察も司法も金と権力には弱いからもしヘマしても金で権力に手を回せば大丈夫さ】と言う。

マスターが【相変わらず好き放題に暴れているのか】と聞くと

【冗談だよ、大人しいものだ、海外が多いし外で飲んでないだけさ】とヒロが言う。

音楽はマイケルシェンカーのアコステックソロのアルバムが流れている。

ヒロには懐かしい雰囲気だが、美樹が【なんか新しくカッコいい雰囲気】と言う。

現代っ子には一周回って新しいのだ。美樹が【時々私も一人で来て良い?】と言うとヒロが【良い訳ないだろ俺が居ないとこでトラブルに成ったらお前こそ刑務所行に

なるぞ、マジで勘弁してくれ】と言うと。

マスターが【大丈夫、うちは警察に袖の下を渡しているから大事にはならない】と

美樹に言う。ヒロが【本当そうで怖いわ】と言うとマスターは

【ヒロの学生時代のほうが怖かった、色んなとこで暴れまわって】と言う。

娘たちがビックリして【エーッ?】と声を上げる。

ヒロが【嘘だ嘘、作り話に決まっているだろ】と言うと。

マスターが【こいつの当時のあだ名知っているか?】と言う。

美樹が【何?マスターと食いつく】と【Tレックスだ】と言う。

バイトの娘が【この人が噂のTレックスなんですか?マスター】と聞く。

ヒロが【そんな話は知らん別人の話だ】と言うとマスターが【この娘はお前の大学の後輩だ、悪い事は出来んものだ、未だにその話が大学に伝えられているらしい】と

言う。ヒロが【浜教授の陰謀だよ、尾ひれを付けて、未だに生徒に話してる、

いつか訴訟を起こしてやる】と言う。美樹が【やっぱり本当なんだ、こんなに向きになるのは、いつも私たちを諫めているのに】と言う

【美樹、信じるな、俺は嵌められているのだ、俺を信じろと】ヒロがと慌てる。

マスターが笑って【因果応報とはこのことだな】と言う。

美樹が【先生は生徒を怒るとき時々Tレックスみたいに成るもんね】と

言うと【その時はだいたいアンタが悪さしているからよ】とアリサ言う。

マスターが【Tレックスは狂暴とか言われているが実は自分の子供には

凄く優しいと言う学説も有るんだ、ヒロも実は優しい所も一杯有る】と庇う。

ヒロが【もうTレックスの話は止めようぜ、褒められても全然うれしくないぜ

マスター】と言うと、皆が笑った。ヒロが二杯目にトロワリビエールのVSOPを

飲んだ。カリブのフランス領マルティニークで作られたダークラムだが

フルーティーなラムで値段も変にバカ高い訳ではなくヒロは好んで飲むラムだ。

美樹も【それ飲んでみたい】と言い頼むと、アリサが白い目で【大丈夫?アンタ】と注意する。【今日は無礼講だから許してやれ、お前らも何かカクテルでも作って貰え】と言うと、マスターが二人にベリーニ(ピーチネクターとグレナデンシロップ、

スパークリングワインのカクテル)を作ってくれた。

この時アリサは十九歳エリカと美樹は十七歳完全な違法行為である。

十一月中旬、四人はアフリカに渡り任務についた。ユニオンの費用で医師に成った若者は二年の研修の後、NGOの医師として海外に派遣され、治療に当たる縛りが

有った、それにより先進国では考えられない程の治験が経験出来る、医師として人の命の重さ儚さ色んな経験も得る事が出来る。研究員として研究に携わることも出来るがその場合は給与から少しずつだがユニオンが都合した学費を返す必要が有る。

ユニオンの医師の場合、派遣の手当も他のNGOより高額に設定されユニオンが

身の安全を保障するため、ヒロ達のようなエージェントが警護に当たる。

その費用を捻出するため先進国の病院では高額な先進医療で利益を上げたり国連や

各国政府を脅し(出資をつのり)活動したりビジネスを展開して利益を上げそのお金を投資して更に利益を増やしたりしている。マリアが考えた錬金術は複雑で

魔導士たちが調査した人の心理を利用している。経済学を学んだヒロにも一部しか

理解出来ていない。ヒロは悪魔の錬金術と呼んでいるが、このおかげで多くの貧しい人間の命が救われ、紛争地などでの信用も高まり。ビジネスも展開できる。

ヒロは資本家や資産家にお金が留まるよりいくら悪辣【高額な利益】で有ろうと

意義が有ると思っている。ユニオンの資産の保有は計り知れないが、マリアの

私利私欲で使われることは無いし、マリアは普段自分たちの森で自然と共存して質素に暮らしている。ユニオンのスタッフはそれなりに高い収入を得ているが、

危険な仕事やハードワークをしている。今回、ヒロ達が警護する医師団には、

ヒロのもう一人の義理の妹でユウの姉に当たるサチが居る。

彼女は有能な外科医で、なんと獣医の免許も持っているが、ほとんど日本に帰らず

アフリカで医療に携わっている。かなりの変わり者だが、純粋でどうも日本人が嫌いだと言う。日本の多くの医師も一部の患者も、彼女からしたら卑賤(ひせん)な人間だと言う。アフリカの医師たちはベースになるキャンプ地からユニオンの車で離れた村なども診療や食料を届けたり薬を届けたりしている。

エリカもそんな医師をガードして離れた村に行った時の事である。

エリカが帰って来て涙を浮かべてヒロの所に来た。

ヒロが【どうした、何が有った】と聞くと【先生助けて】と言う。

【だから何が有ったんだ】と聞くと一緒に行った医師が【良くある話で

私達には何も出来ません】と暗い顔で言う。サチが【あの村またなの?】と言う。

どうやら村の中で特に貧しい家が子供を人身売買でお金に換えたと言うのだ。

ヒロが【エリカ、お前の気持ちは解るが、アフリカでは、いや世界中の何処でも普通に起こっている、その事情は様々だが法律で罰せない国さえある、何故か解るか】

と聞く。エリカが【解りません、でもそれが普通じゃないのは解ります】と言う。

ヒロが【そうだな、俺たちの常識では普通無い、でもそれは俺たちの常識だ。

そうじゃない国や村も有るんだよ】と言う。

美樹が【絶対に、間違っている、自分の子供を売るくらいなら人を殺して

お金を奪って山賊でも生業にする方がまだ人間らしい】と怒る。

ヒロは笑ながら【俺も実は同意見だが、世界中の大体の国ではそれは死刑か終身刑に

成る、司法も警察も、政治行政も、自分たちの落ち度は置いて、情状を酌量とかは

ほとんど考えることが無い、それが今の世界だ】と言うと。

アリサが【でも先生なら何とかしますよね、何とかしてあげて】と言う。

それを聞いていたサチがアリサに【それは私たちの仕事じゃ無いの、お兄ちゃんを

買いかぶりすぎよ、こんなことに首を突っ込ませたら、この人は暴走しだすから】

と言う、エリカがそれを聞いて号泣する。美樹はヒロに【そんな奴ら、

フッ酸(フッ化水素)に溶かして跡形もないくらいにすればいいじゃん】と言う。 

ヒロは頭を抱え【俺たちは暗殺集団じゃない、そんな物持って来ているか】と言う。

美樹が【とりあえずその人買いの連中をやっつけ子供たちを取り戻しに行こう、先生が動かないなら私達だけでもそんな奴らぶっ殺してやる】息まいてる。

サチが【お兄ちゃん解っていると思うけど例えその人買いから娘を取り戻しても

その村が貧しい限り別の人買いが子供を買いに来る、お兄ちゃんに何とか出来るの】とヒロを責める。ヒロがため息をつき、サチに【一つテストケースで試してみる、

まずはその子供を売られる前に助けに行くか】と言った。

娘達は喜びヒロに抱き着いてくるが、サチはヒロを怪訝な目で見ている。

ヒロは辺境の地域がそのままの生活を維持して収入を得る方法は

無いかテストケースを考えていた。

勿論その場所で、農業など安定した収入が有るのが一番だが辺境で

暮らしている人、全てで可能な訳では無い。

以前からヒロは大学時代の友人で新聞記者をやっている、シロウと相談

していた案件が有った。

フリーランスで仕事をしているカメラマンがアフリカの生の生活や普段は目に

出来ない生活や奥地の自然の写真が撮れないか?と相談されていた。

それに合わせて、その村で民芸品を作らせ紙面で販売したりして写真の収益と

民芸品の収益の一部を、村の貧困の家の基金として活用する

そのプロジェクトの最初のテストケースに、その村を選んで進めようと

考えたのだ。

その件を早速シロウに連絡して、そちらはシロウに動いて貰うことに。

ヒロは人買いの組織を探るため動いて回った、それはユニオンの情報網で

すぐに判明した。

実際突き止めて捕まえても、このような事は鼬ごっこである。

国が貧しく、皆が豊かにならぬ限り、そしてそれがビジネスとして

成り立つ限り、無くなることは無い。

日本でいくら犯罪者を捕まえても、その人達を社会で受け入れる地盤が

無ければ何度でも繰り返されてしまうのと同じだ。

いっそ全て終身の禁固刑にするか死刑にする?例えそんな法にしたとて

犯罪が減り無くなることは有り得ない。

そしてそのコストと一体誰がその役割を引き受けるのだ。

今の日本は何でも重罪化しろと言う無思考な人間が増えているが

それにより重い判決がどんどん下されている。

しかしどうだ?犯罪はどんどん巧妙になり進化し、凶悪犯罪も未だに

多数、報道されている。いっそ公務員の半分を警官にするか?公務員すべてに

捜査権、逮捕権を与えるのか?冤罪も不正も多発して、自由に外も歩けなくなる。

しかしその子供たちは助ける必要が有るし、その連中が二度とそんな事を

しないようにする必要はある。アリサと美樹は通常の業務に付かせた、通常の業務を疎かにする訳にいかない。そして今回はユニオンとして動く訳に行かない。

そんな連中でも恨みをなるべく買わないようにするのがユニオンの方針なのだ。

翌日ジープに乗り、突き止めた組織の場所に二人で向かう

その場所に着くとヒロがエリカを連れて人を呼ぶ。組織の人間がヒロに

【なんの用事だ】と聞き、ヒロは【この娘を売りたい、日本人だから高く買え】

と言う。ヒロはエリカの手首をロープで縛ったように見せていて、連中が扉を開けると建物の中に突き飛ばす、連中のうち二人の男がエリカを抱え起こそうとしたところエリカが起き上がり二人を四方投げと言う技で頭から地面に落とした。

ヒロはエリカを制するふりをして、発光弾を投げ他の7人ほどを倒して無力化して

拘束ベルトで動けなくしてしまった。

相手は小銃を持っている人間も居たが、室内でユニオンの発光弾を投げれば小銃は

使う事は出来ない、仲間打ちや跳弾の危険が大きい。

一瞬で9人の人間を拘束して、ボスと子供たちの隠し場所を聞く。

当然素直に言う訳が無いが、エリカが投げ飛ばした二人は頭から落ちて

気絶したままだ。その連中の懐から携帯を探し出し、気絶してない連中に助けを

呼ばせたのだ。敵が来る前ユニオン独自のブービートラップを周囲に仕掛け、次々に組織の連中を無力化してしまった。大きなケガをしないように配慮をしたトラップや、特別なガスなどで相手を眠らせたり、一時的に失明状態にさせる等の罠や、

中には穴に落ちて足を骨折させたり、エリカの技で腕の関節が脱臼する者もいた。

その連中から組織のボスの居所と、子供たちの隠し場所を聞き出し、まず子供たちを

救出した後、ボスを見つけようとしたが、すでにボスは逃げ出した後である。

子供は一時的に助けることは出来たが、使った武器のコストは膨大、

その組織のボス探しや、捕まえた連中の後の更生などマリアに頼むしか方法が

無かった、唯一の救いは新聞社とのプロジェクトが、事の他順調に進んだ事だ。

当然ヒロはマリアやヒトミそして妹のサチからまで、散々お小言を言われ

立場が無かった。しかしヒロは最終的に後始末をマリアに被せることを

計算していた。マリアの恐怖は実はアフリカの多くの裏の組織では伝わっている。

これを利用するのが最善だと思っているのだ。

マリアもそれを知ってヒロを厳しく責めるが、ヒロはマリアにいつも

言う事がある【マリア、これはお互い様だろ、いつもそっちの都合で

嫌な任務もさせているし、俺をはめて居るのはそっちも同罪】と言う。

マリアは【これは貸しよ、その嫌な任務は覚悟しているのよね】と返す。

ヒロは心の中で、どうせ俺を散々はめて任務に着かせるくせにと、

いつも思うのだった。妹のサチなどもっと辛辣にヒロに文句を言う。

【兄ちゃんが余計な仕事でけが人を増やし、こちらの仕事を増やして

どうするのよ。その経費兄ちゃんに請求回すわよ、医師たちの人件費も含め

支払いなさいよ】と言う。ヒロは【どうして家の妹たちは俺に優しくないんだ、

昔、優しくしてやったのに)と言うと、サチは【それだけ皆に迷惑かけているのよ】と言う。しかしこのことを機会にユニオンは貧困の子供に教育と食を与える事業を

さらに広げることになる。残念だが何にでも金が必要だ、それだけ世界には誠意と

悲劇のバランスが取れてないのが現実なのだ。

ヒロはそのことをエリカに実体験させたかった。エリカの優しさは貴重であるが

優しさだけでは事は進まないのも現実だと、知って欲しかった。

これはヒロのジレンマでもある、時には人間なんか滅んでしまえとさえ感じる。

でもヒロには大切な宝物も出来た。命に代えても守りたい人達、それこそがヒロが

任務を続ける理由である。

社会正義だの国家のためなんか、ヒロには反吐が出る位嘘っぱちに感じる。

そんなことを口にするやつなんざ100%詐欺師だと思っている。

事実それを口にする奴はろくな奴しか居なかった、と思っている。

死んでくれとさえ思っている。目の前の悲劇に自ら行動しようとした、

エリカの優しさは本物だとそう思ったから手を貸した。

例え無駄に終わろうと、ヒロは娘たちの気持ちに動かされたのだ。

小さな一歩でも無駄か無駄じゃ無いかは、後の歴史で解る。

しかし権力を持つものが自己の虚栄心でやったことは、大抵悪い方に動く。

不思議な現象だ。歴史の中で悪政と言われても実は良い影響の事も有るし、その時点で人気が有っても後に酷い影響を及ぼした政治も沢山ある。

そして春に成り六か月の任務も新しい交代要員と変わってヒロ達は次の任務のため

東京に一時的に帰って僅かな休息を取ることに成った。


第十一章

東京に帰ることが決まった時にヒトミが慰労をかねてお疲れ会をすると行って来た。ヒロはヒトミに遠慮しとくよ、と言う。悪い予感がして断ろうとしたが娘たちを

巻き込んで強引に進められた。日本に 着いたのが早朝だ。

ユニオンの運輸便で通常の半分の時間で到着するが、それでも十二時間飛行機の中で、疲れた状態で家に到着し、ヒロは遠慮したかったが娘たちは若さなのか、

元気なものである。高級なイタリア料理店と言う触れ込みで大喜びしている。

ヒロは正統なイタリア料理は面倒でその料理の種類の多さに壁壁する。

だからアラカルトで食べたい物だけ食べたいのだが、ヒトミは娘たちに

経験させるためコース料理に拘る、ヒロはこれが面倒臭いのだ。

食前酒(シャンパン、から始まり)ストゥッツィーノ(食前酒のつまみ)

アンティパストと呼ばれる、前菜、(生ハムやソーセージ等)

プリモピアット(パスタ等麵料理)セコンドピアットに魚料理(今回はロブスター)更にメインに子牛の肉料理チーズと野菜のほうれん草、フォルマッジィ(チーズ)

エスプレッソ、デザート。

それぞれの量は少なく調節されているが、こんなに食えるかとヒロは思った。

しかし娘達は美味しいと食べてしまった。

ヒロはウエイターに言って肉料理を遠慮し、食後酒のグラッパ

(ワインを絞った後のブドウで造る蒸留酒)を飲みながらヒトミに

【どうせ何か話が有るんだろ?】と聞くと。

ヒトミは【マナー悪いわよ、皆が食べ終わって話すわ】とごまかす。

娘たちは初めての高級なイタリア料理に、ご満悦で美味しいと喜んでいるがヒロは

後の事が気になり味が良く判らない。

美樹が【先生、なんか不機嫌なんですか?】と聞くので。

【お前たちが楽しめれば良いよ】と当たり障りの無いことを言う。

食事が終わるとヒトミが【急で悪いんだけど、明日早々に東側の首都に

飛んで欲しいのよ】と言う。

ヒロが【いくらエージェント契約としても急すぎるだろ、普通準備期間が必要だろ】と言うと。【緊急事案なの、それにアンタの教え子が危機に陥るかも知れない】

と言う。ヒロが【まさかチヅルに、危険な仕事をさせているのか?約束が違う

チヅルの上司は何しているんだ】と聞く。

ヒトミが【ちょっと言いにくいんだけど、実はその上司が少し前ケガを

負って彼女が中心で任務を続行しているの】と言う。

ヒロは【聞いてないぞ、俺に知らせると言う約束だろ、ユニオンの調査部は

エージェントとの信頼関係が命綱だろ】と言う。

ヒトミが【違うのよ、チヅルちゃんが立っての希望でヒロに秘密にして

との事案なのよ】答える。ヒロは目の前が暗くなり、酒の酔いも一気にさめた。

【それでどんな状況なんだ】とヒロが聞くとヒトミは【ユニオンが護衛しているのは

東側と西側のパイプとして、動いていた要人なのだけど、少し前にその娘が誘拐されてしまって、その要人が娘を盾に脅されているのよ】と言う。

千鶴の上司はその襲撃で大きな負傷を負ったらしい。

ヒロが【ヤバい連中かもな、明日一番で飛び立つように手配してくれ】と言うと

アリサが【私も行きます。チヅルちゃんを助けたい】と言う。

美樹とエリカも【私たちも出来ることをしたい】と言う。

五月に成ろうとしてもまだ寒いはずの地域だが、アフリカから東側は自律神経の調節もままならない、しかしことは急を要した。

正直、西側だ東側だと言う任務に、千鶴を関わらせたことをヒロは後悔した。

ただの要人の護衛で長年任務に関与した、エージェントの元でのサポートぐらいに

思っていた自分の甘さを責めた。

当然任務の詳しい内容は、守秘義務に当たるが、何か困って居るなら自分に相談しろといつもメールしていた、チヅルは弱音を相談するタイプでは無いことを

解っていたのに、安心した自分の馬鹿さを責めた。

輸送機の中で娘たちの前では暗い顔は見せる事は出来ない、自分に絶望しながら

移動する中、アリサが心配そうな顔で【チーちゃんなら大丈夫ですよね】と

ヒロに聞く。ヒロが【必ず何が有っても助ける、今の所、悪いニュースは

入って来てない】と答える。現地まで旅客機なら十時間程度かかるがユニオンの

輸送機だと5時間程度で行ける。その国の国連大使の手回しにより空港に到着するとチヅルが迎えに来ていた。それを見てアリサがチヅルに抱きついて

【良かった無事でいて】と言う。ヒロも一旦ほっとして【大丈夫だったか、一人で

大変だったろう】とチヅルをねぎらう。チヅルは【一人じゃ無いよ、現地の人も沢山サポーターがいるけど、まだ解決に至る情報が足りないし、どうも東側の反対勢力だけじゃなく、西側の諜報部や裏組織が東側の対勢力や裏の組織と絡んでいる気配が

あるので手こずっているの】と言う。ヒロは【当の要人はどんな様子だ】と聞くと、チヅルは【今ユニオンが隠れ屋で匿まっている、怯えて娘の事ばかり

心配しているわ】と言う。ヒロは【なるほど、二人とも表面的に行方不明、

神隠し状態ってことだな。この国では要人が暗殺されるとか海外に亡命するのは良くある話だ、亡命した先で暗殺されるケースとか普通に考えて、両者による共謀も、

有り得る話だ】と言う。要人本人に合うと実際にすっかり怯えている。平安時代の

呪詛に合っている状態である。戦前、隣国の独立運動に関わった要人を、

日本が匿っていて第三国に輸送中に暗殺された話もある。

隠れ屋でヒロは【チヅルなにか考えていることが有るんだろ?】と聞くと

【有るけど、この人の娘を見つけないと】と答える。

ヒロが【呪詛返しを考えているのか】と聞くと【先生、言い方】と言う。

呪詛返しとはこの計画に関わった連中に、災いを返すことでその術式(やり方)は

様々である、チヅルの一族は古くからその術式を家伝で受け継ぐ家であった。

彼女の頭脳の明晰はそこから来ている。ヒロはマリアに連絡して、要人の身代わりに成るエージェントの派遣を要請した。変装のプロである。

特殊メイクをさせてあえて目立たせ、彼を狙う連中をあぶりだす。

その前に情報を集め目星をつけて置く事も寛容で、そこに傀儡、つまり言いなりに

なる人間を作る作業も必要だ。その前に重要なのは、誘拐された娘の安否確認と

居場所の特定だが、現状表に出せない、この国の警察には犯人側の息のかかった人間も上層部に居る可能性が高い。そこで実行犯を、おびき寄せるのに身代わりの

エージェントを使うのだ。その国のネットを通じて、色んな場所で身代わりを

発見した写真を出させる。その場所にユニオンの、超小型の昆虫型のドローンを仕掛け実行犯を特定していく。勿論、はずれや直接犯人では無く調査員として調査に来た場合も多い。その情報の中で実行犯と娘の所在に繋がる者達が、数日で見つかった。

これぞユニオンの科学の力である。ここからはヒロ達が表立って暴れる

ターンである。チヅルは表立って顔を晒せない。

ヒロとエリカ、アリサと美樹のツーバディーに分かれ行動する。

その建物の構造はあらかじめ虫型ドローンで解っているので作戦は簡単だ。

相手は二十人ほど。相手の武器は小銃や拳銃。

まずヒロとエリカが正面から入って相手の多くを引き付ける

同時にアリサと美樹が娘がいる部屋に近い所に忍び寄り娘を救助する。

こちらはミツバチ型のドローンと発光弾、催涙弾、小型の麻酔銃、折鶴型手裏剣、

流星錘(りゅうせいすい)(中国武術のロープの先に錘が付いた武器)である。

まずヒロが表玄関を小型の爆弾で壊して堂々と入る。

その音を合図に、アリサと美樹は裏からこっそり忍び寄るがドローンで人数を確認

して、ミツバチ型の針で相手を眠らせて娘が居る部屋に近付く。

ヒロは流星鐘で暴れまわり後ろからエリカが麻酔銃で援護していく。

娘の救出には十五分も掛からなかった。

相手を拘束して他のエージェントが連中を別の場所に運び、得る事の出来る情報を

尋問して取り調べる。ユニオンは警察でも無ければ正式な調査機関でもない。

そして相手は違法と言うより裏で暗躍する連中である。

法に乗っ取り取り調べはしない、様々な方法で情報を得る。

時には体に影響の少ない自白剤を使ったり、相手によりそのまま開放したり、

相手が寝ている間に超小型GPSを体の中に仕込んだり入手が出来る情報を全て

手に入れて今後に生かす。ヒロは連中を闇の調査機関と呼んでいる、マリアに連絡を取り、今後の打ち合わせをしてヒロの考えを伝えた。ヒロは要人の入れ替わりに、

記者会見を開かせ引退を宣言させ、密かに西側と東の仲介をしている国に本人を亡命させ、そこで秘密裏に活動させ、両国が極端な行動に出ないように裏でパイプに

なってもらう事だ。当然今までと同じ活動は出来ないが、彼の影響下に有る人間との仲介は可能である、そしてこの国での護衛よりは第三国の方が負担は少ない。

身代わりには当分この国で本人として隠居をしてもらい影武者でいてもらい敵に

油断をさせる役割を担ってもらう。そして何よりチヅルを一旦日本に返すことを

要求した。マリアはヒロに【チヅルを日本に帰すことは、今は難しいわ】と答えた。

ヒロは【何故だ、チヅルの代わりのエージェントを派遣すれば良いだろ】と少し

切れ気味に言うと【その国での情報ネットワークの殆どをチヅルが構築したの、

今、チヅルがその国を離れたら全てが水の泡と化すわ】と答える。

ヒロは更に切れ気味に【チヅルはまだ二十歳にも満たない娘だぞ、

そんな娘にそんな重責を負わせていたのか】と食いつくと。

【貴方が思っているよりチヅルは大人よ、自らその重責を進んで行う

一流のエージェント、流石、ユキちゃんの娘ね】と言う。

ヒロは【都合の良いときだけユキ姉の名前を使うな、ユキ姉に重責を

負わせ病気にさせたのはきっと俺たちだ、俺はチヅルをユキ姉みたいに

させたくない】と言うとマリアが【解っているわ、彼女は必ずユニオンが

守る、そのため貴方にも協力して動いて欲しいの】と言う

ヒロはまたマリアに嵌められたと言う思いがした。

そしてチヅルを助けたいと言う思いが交錯し、この世界に憤った。

そもそもヒロにとっては西側だ東側だ、なんか両方滅びれば良いくらいの

気持ちでこのような任務には関わりたくない、これはマリアにすれば序章に

過ぎないのだろう、しかしどんどんマリアの蜘蛛の巣にかかって行く

自分を認識した。勿論マリアが悪行を行っているとは思っていない、

きぅと共存のための道筋を将棋や囲碁のように、先の先まで読んで手を打って

居るのはヒロも理解しているが、余りにも気の遠い道だ、一つ間違えたら

全てやり直しだ。それどころか自分の身内に、とんでもない悲劇も有り得る仕事だ。

ヒロは誘拐された娘を、要人の所に護衛して帰りながら暗い思いだった。

アリサが【先生、任務が成功したのに元気が無いね】と聞く

美樹が【アフリカの疲れがまだ残っているの?それ更年期って言うらしいよ】と

ヒロが気にしていることを発言する。

ヒロが美樹の頬っぺたをつねりながら【まだそんな年齢じゃない今度言ったら

イスラムの国に売り飛ばすぞ】と言うと。

美樹が【アラブの王族の奥さんなら良いよ】と言う。

エリカが【美樹ちゃんお酒禁止の国だよ】と突っ込む。

要人の娘は言葉が解らないので、不安そうに見ているとエリカが英語と

ロシア語の片言でコミ二ケーションをとって、安心させようとしている。

エリカらしい優しい行動だ。隠れ屋に着き、要人と娘を再会させ、

娘のメディカルチャックを行い食事を取って朝までそこで過ごす。

任務中の食事の多くは、携帯できる缶詰やパン、バター等が多い、アフリカ等の

キャンプ地ではシェフが多くのメンバーの食事を作ったりするが、

ケースbyケースで有る。そんな時いつも諜報するのがプロテインやオートミール、ビタミン、ミクロ栄養素のサプリなどだ、疲れて眠り付けない時などは

アユルベーダーのサプリ、アシュワガンダなどは疲労を取るのに役に立つ。

そんなヒロを見て美樹は再度禁句である年齢の壁の発言をする。

【先生は最近サプリに頼ることが増えているのは、やっぱり更年期の特徴だ

お酒飲んだあとシリマリンとか言うサプリを、必ず飲んでいるし】と言う。

ヒロが【お前みたいなバカ弟子を置いて早死に出来ないから、ケアは必要なんだよ】と言うと、チヅルが【私も先生を見習ってサプリは色々飲んでいるのよ】と美樹に

言う、美樹が【だからチヅル姉様はこんな綺麗なんだ、私も飲もうかな】と言う。

アリサは【アンタは先ずその性格から綺麗にしなさいよ】と言うと美樹は

【私は性格も容姿も綺麗だもん】と言い返す。

チヅルが【美樹ちゃんって面白い存在よね、アリサちゃんが、いつもメールで書いて居るからどんな子か興味が有ったけど】と笑うと【なんか悪口書かれてそうで怖い】と美樹が言う。ヒロは【良いことを書けるように努力しろ、良い事書く事案が

今のとこ見つからん】と突っ込むと【ちゃんと先生が見てないんです、今日だって

頑張ったもんね】と美樹は主張するのだ。隠れ屋は前もって結界をはり、ドローンで見張っているが、ヒロとアリサが交代で見張り、朝を迎え早朝に中立国の大使館に

向かった。大使館に着けばとにかく安心出来る、そこで皆ゆっくり休んで翌日密かにユニオンのチャーター機で中立国に、ヒロ達と要人と娘は、向かうことに成った。

大使館に着き、ヒロ達は久しぶりに、夕方まで休んで夕食を取ることにした。

丁度その頃ユニオンの身代わりのエージェントが、テレビで引退を発表している。

それも安全のセーフティーネットで有る。大使館の一室ではヒロ達と要人と娘に

ささやかな夕餉がシェフにより振舞われた。食前酒にシャンパンのクリュグ、

基本ヒロはシャンパンは好んで飲まないがクリュグとなれば話は別だ。

娘たちも久しぶりの食事らしい食事に喜んでいる。

アリサはチヅルからディナーのマナーを学んでいるようだ。

その知識もさることながら、何よりいつの間にかディナーにふさわしい

カクテルドレスに着替えている。ヒロ達も一応着替えているが、

簡単なカジュアルスーツだ、目の前のキャビアを食べながらヒロが

【大人っぽく綺麗に成ったな】と褒めると、チヅルは

【先生、私もう大人ですよ、大人の女として見てください】と意味深な発言をする。

ヒロは何故か少し赤面してしまい、【そうだな立派に大人に成長した】と返す。

アリサが【チーちゃん自分だけドレス着てずるい】と言うと、

チヅルはにっこり笑い余裕を見せる、二十歳そこそこで大人の色香さえ見せる。

ヒロはチヅルの母の面影をはっきり思い浮かべるのであった。

その後、食後酒にシェフからルイ13世を勧められ飲んだ。

未開封のバカラのボトルを、そのまま持って帰り売れば、結構な値段で売れると

思ったが、大使館で持って帰るのは止め、せっかくなので皆で味わうことにした。

アリサとエリカは美味しいか不味いか、度数が強くて解らないと言い、美樹はパンチが足りないとか言う、ヒロは黙って味わうが正直タダだから飲むが自分の金で

買おうと思わない、先ほど思ったように、売り買い目的なら有りだが、コニャックならポールジローが好みである、ヒロはだいたいがモルト派なのだ。

チヅルがルイ13世を飲みながら、【先生、来てくれてありがとう】と言う。

ヒロは【いいか困ったら必ず連絡しろよ、どこに居ても飛んで来るから】)と言う。

チヅルはアリサにも【アリサちゃんありがとう】と言うと           【私達、親友でライバルでしょ】とアリサが答える。 美樹はそれを聞き

【私とエリカちゃんも親友でライバルだもんね】と言いエリカを見るとエリカは

ニッコリ美樹に笑顔を見せる。要人とその娘も二人で無事を喜んでいるようだ。

ヒロはチヅルに【しかし、ここまで経費と人材を使って両国のパイプが繋げなければ

無駄な労力だな、関わった以上助ける必要は信用上、有るのだろうけど、国連から

出る金は知れているだろ】と言うと。チヅルは【それ以上に経済的メリットも有る

みたい、彼は世界中で飲食ビジネスやホテルビジネスを展開している。まあ結局、彼がパイプ役をしている理由もそこなのだけどユニオンの経済的メリットも大きいの。

それに今回は先生のおかげで、揉め事で金儲けしてる連中をあぶり出せそう

だから、棚から牡丹餅に成りそう、彼もユニオンには借りが大きく成ったから

ユニオンとのビジネス展開に協力せざる、得ないでしょう】と言う。

ヒロは【結局金か、まあその金で俺たちも飯を食べているから

何とも言えないがその金で共存しあえる人間が増えれば良いな】と話す。

チヅルが【先生、投資や経済の本を沢山持っているでしょ、私も経済分析や

チャート分析の勉強をしたいから本や資料を送って】と言う。

ヒロが【何だ、俺みたいに、こずかい稼ぎするのか】と言うと

【それもいいけど、その知識が人と近づくのに役に立つの】とチヅルが答える。

ヒロが【本や資料で解らない事が有ればメールで送れ】と答えた。

翌日チャーター便で、要人親子を第三国に送る飛行機の中でマリアから

電話が入った、ヒロとアリサ、美樹、エリカは要人を第三国に送り

その後日本に帰る予定だった。


第十二章

ヒロ達が輸送機に乗り、無事第三国に着く頃にマリアから電話が有った。

マリアはヒロに任務が無事に終わったことを労い(ねぎらい)そのまま同じ

ヨーロッパの小さな公国に行くように言ったのだ。当然ヒロはマリアに文句を言った

【おれはアンタの式神や使い魔ファミリアじゃないぞ】と、マリアは

【そんな事思ったこと無いわ、貴方は私の息子か弟みたいに思っているのよ、

今度の任務はそんな大変な任務じゃない、マリとの休暇みたいな物よ】と言う。

ヒロは【マリと会えるのは嬉しいがアンタの任務で楽だった記憶が俺には無いんだが気のせいか?】と言うと【まあ、人聞きが悪いわね、まるで私が悪魔みたいに

聞こえるわ】とマリアが言う。ヒロは心の中で、悪魔以外の何者でも無いだろう、と思ったが怖くてそれは口にしなかった。【何の任務だ?】と聞くと【その国の即位式が行われるわ、その時の警護をお願いしたいの】とマリアが答える。

ヒロが【そんなのその国の警察が、やれば良いんじゃ無いのか、そんな任務にマリまで巻き込むんじゃないよ】と言うと。【そう言う訳に行かないの、マリは私の代わりに式に出席するのよ、その国と魔導士会は昔から繋がりが有ってヨーロッパの社交界と繋がるには付き合いを断つ事は出来ない、マリは私の跡継ぎとして出席する必要が有るのよ】とマリアが答える。ヒロは【マリを守るために受けるんだからな】と

言って電話を切った。三人の弟子たちにそのことを告げると、そこに行けることを

喜んでいる。ヒロがこれは任務だと言う事を伝えるが、そこはリゾートとしても

有名な場所、しかも季節は春五月になろうとしている。気候は温暖で世界のセレブも集まる、金持ちも多い。美樹は【私もセレブと出会えるかも】とか喜ぶ始末だ。

要人と別れたあと移動し、その公国の近くの空港でマリと合流して

車で約20キロの距離でそこに着く。娘たちは再会を喜んでいるがヒロは何故か

不安だ。ヒロの悪い予感はマリがマリアの代役で式に参加する事、マリアはその影響力から裏の世界で恨まれることも有る。正直、式典が襲われようがヒロにとっては

どうでも良いのだ。特権階級にリスクは付き物だから、自分の身は自分で守れ、

と思っている。その国の人が巻き込まれる事は、気の毒だがそれを守るのは、

特権階級の務めだと思っているのだ。だいたい国王だの帝(みかど)だの今の時代にそれを有難がるなんぞ、国民も自立心が無いのか、くらいに思っている。

そんな権威にすがる者だから、なにか有ればブー垂れて国民自身で改革する気概も

無いのだ位に思うのだ。江戸幕府が潰れた要因も結局、幕府への依存と諸藩と幕僚の権力交代をひたすら繰り返し、それに西南外様が、つけこんで尊王討幕が成功した

だけでは無いのか?と思っている。結局、頭を据え換えても国民自身、自分が脳細胞として進化しなければ無意味だろとさえ思う。それはさておき、マリを守るためと、任務として受けた限りは無事遂行する必要がある、常に万全にしなければと、

早速その国の警護の責任者と会い、会場の調査と警備のための結界、ドローンを配置する場所の確認カメラの配置などを打ち合わせをした。

向こうの要人の警護はその国の警護の責任者一人とヒロがマリや、来賓の警護には

その他の警護のスタッフと共に、アリサと美樹とエリカが対応することに成ったが、相手の国の警護の人間は娘たちが女だと言う事に不安を覚えたようだ。

警備の現場の人間があまりにそれを露骨に表すので、その男にエリカを殴るなり

投げるなり、倒せたら弟子たちは警備から外すと伝える。

本来、武を見せ付けるのを良しとしないが、弟子を見限られることは我慢ならない。

エリカは三人の中で一番小柄で顔も幼く見える。その警官は舐めてかかり、アホみたいにエリカに掴みかかろうとする。ヒロは逆にこんな警官で大丈夫かと不安になる。普通ならその時点で目打ちから金的で、警官を卒倒出来るが、エリカはわざと襟を

取らせ左の死角に瞬時に入ると同時に、柔道の隅落とし別名空気投げのように警官を床に叩き投げた、頭は引手でエリカが支えたが、警官は腰を強く打って床で唸って

いる。ヒロが【女と侮るとこう成る見本だな】と笑う。そしてアリサに無拍子の

飛び蹴りを見せてやれと、自分の手の平を高く頭の上に挙げる。するとアリサは

無拍子(ノーアクション)で双頭龍と呼ばれる二段蹴りで手の平に

蹴りをヒットさせる、パーンとヒットした音が鳴る。無拍子の技はゼロ秒の機敏で、相手に技を当てるので、相手はいつ技を当てられたか判らない、ボクシングの

スピードタイプのジャブもそうだ。今、世界で有名な日本人チャンプのジャブは

無拍子ゼロ秒ジャブから半拍子、壱と半拍子、フェイントをおりませる、

多彩な左パンチで次々に相手をノックアウトしているが、相手には打たれた後に

打たれたことが判るので倒れるのも当然なことで有る。アリサのその技はやはり父親譲りの身体能力の成せる技の一つだろう。結局、配置はヒロの意見の通り決まる。

一旦宿舎に帰りヒロ達五人は式典の、装備の準備をして後に身体を休める事と

成った。翌々日、式典が予定通り始まり順調に進んで行く、そいて終盤に入ろうと

する時間帯式典の会場の中のトイレで爆発が起こった。テロ行為としたら小さな爆発で、被害はトイレの部屋だけであった。ヒロは幼稚な手筈に不安がよぎる、何故ならこれで終わりで無いことは明白だからだ。そしてこれは内部の人間も手伝っている

可能性が高い。とりあえずトイレの方の調査は、この国の警察に任せてヒロ達は警護を継続する。変に中止したところを誰か狙われるより、このままの方が警備しやすいからだ。最後のセレモニーでマリが向こうに花束を手渡す儀式だ。小さな子供が

マリに花束を手渡し、それをマリが皇族に献上するよう取り図られている。

ヒロ達のイヤホンに異変を伝えるシグナルが聞こえる。ヒロは要人の警護で持ち場を離れることは出来ない。ユニオンの手話(サイン)でアリサ達に伝えると美樹が子供の花束を奪いアリサに手渡しそれをアリサが人の居ない場所を見つけ耐爆防護容器に入れた。それにより、人的災害は避けられた、会場はパニックに陥りそうになるが、幸いその場合の打ち合わせは警備側としている。人数も限定しているため、会場の端に全員を集め、再度、全員の持ち物を検査する。招待客の中には異物を持った人間はいなかった。つまり警備なり内部のスタッフが一味に加わっているのだ。

そちらの調査はその国の警察に任せて、まずは要人と来客を安全に避難させることに専念した、何よりヒロには気にかかることが有る。犯人はマリを直接狙ったか、

あるいわマリを犯人に仕立てようとしたのだと感じたのだ。

虫型ドローンの記録やカメラの配置から、現場で関わった犯人はすぐ判明をしたが、

彼らは言われた通り動いただけで所謂、闇バイトに応募した人間だ。

ある国の王子が、ドッキリの録画と思わされたモデルに毒を掛けられ王子が死んだ

事件と同じ構造だ。ヒロはマリアに状況を報告して、マリと娘を連れて出国することを進言したがマリとマリアは承諾しなかった。このまま真相を突き止めなければ、

魔導士会の信用に関わると言うのだ。美樹はヒロに【先生観光どころじゃ無くなったね、でもマリ姉様を狙う奴は許せない、皆で絶対捕まえよ】と息巻く、アリサも

【私のマリちゃんに手を出すなんて、全員病院送りにしないと気が済まない】と言う始末だ。ヒロはマリには言わないが、これはマリアの因果が産んだ事件だと

思っている。きっとマリアが何かしらの理由で恨まれていると信じている。

しかしマリアを恨んでも、それを実行するとは命知らずの馬鹿が居るなとも思う。

さて今回は前回とは違う毛色の事件だ、実行犯もまるで素人に毛の生えた連中だ。

そこから事件の根っこを探ることが出来るのか。マリアはその国の要人が怪しいと

言うのだが、証拠をつかむ捜査はユニオンが手を出すのは事実上正式には難しい。

となるとマリが直接会って様子をドローンなどで行動を見張るように仕掛けるか、

なんらかの形で張り込むか方法は限られてくる。当然現地の警察もそうそう簡単に、令状を持って取り調べなど出来ない。司法が強いものに弱く、弱いものに強引な事はどこも同じ、その現実は世界の現状だ。まあそれも国により個別に違うが、

日本の司法がどう感じるかはその人間のデバイスで見方の違いは大きいが、

正義なんざそんなものである。日本の野党議員が殺された事件はその真実の動機は

全く解明されずに、有り得ない動機で結審し、とある被疑者が裁判で否定をし、

否認をすれば動機をこじ付け不確定な証拠を取り上げ、しかも事件の数年後に証拠が見つかるとかどう考えても不信感は拭えない。ある被疑者は五十年以上拘束を

されて、その後に無罪判決が出た。中には無罪の人間を高齢で不健康にも関わらず、拘束中に死なせたケースもある。ユニオンは犯人を逮捕する必要は無い、その犯人にユニオンの力を示せば良いのだ。しかしその特定に時間と手間が掛かりそうだとヒロは感じていた。来客として式典に来たのは、百人余り、その中でその国の要人は

二十数人だ。まずはそちらが怪しいいと睨んで経歴を探る。その中に金融業を、自身で営み、日本の元総理や東側とも繋がりが有るが、どうも環境重視派閥との諍いで

大臣を追われた人物がいた。現在も国会議員だが大臣を辞め自分の権限が

縮小されている。 マリアはその人間が怪しいと睨み、ヒロ達がその派閥の人間達

からドローンなどで調査すると共に、派閥の長の要人本人には、マリが直接、正式に面談して読心術で反応を見るとマリ自身が提案した。もう一つマリが提案したことが有る、宿舎はずっと非公開にして置いたのだが、その元大臣には会った時に、

その場所を明かして、関係者の動向をドローンで探ることだ。ヒロは危険なので反対したがマリは譲らない。マリはヒロに【パパとアリサちゃん達が守ってくれると

信じてる】とヒロ達を煽る、そして相手を油断させるためそこに一緒に行くのは

アリサ一人にしたのだ。当然、少し離れた見えない所でヒロも待機はしているが、

ヒロはドローンのカメラで周囲をチェックする役割を担う。そして、その派閥の人間は美樹とエリカがドローンのカメラで動向をチェックすることに成った。

マリがその元大臣にアポを取り、何も疑ってない事を装い、会って挨拶する。

マリが土産として持参したのは、セーブルの骨董ティーカップセットだ。

ヒロは骨董には疎いがバカ高い値段であることは知っている。それを手に入れ、

プレゼントすることを理由に、アポを取ったのだ。ヒロはマリアに【そこまでする

必要が有るのか】と問うとマリアは【良いのよ、それで真相が解れば安いものだし、彼が関わってないならば、それを機に友好を深めビジネスで元を取ればいい事よ】と答える。つくづく恐ろしい女だと感じた。その元大臣とマリは面談して、セーブルのセットを手渡すと、彼は大喜びした様子だそしてマリは彼に嘘の捜査状況を流す。

どうも実行を計画した、裏の組織の一人が判り、逮捕直前だと言うデマだ。

勿論彼が疑われているとは見せずにである。その情報で彼がどのように動くかを見定めるためである。そしてもう安心なのでと、彼に自分の所在を明かしたのだ。

彼には二つの心理が働く。自分は疑われてない事への安心、しかし他の容疑者が

捕まればその保証は無くなってしまう。彼が関わって居るなら、まずはきっと何らかの形で動きが出るはずである。マリが自らを餌に結界の罠を張ったのだ。すぐに蜘蛛の巣に動きの振動が起こる、マリが出た後、要人の元大臣が有る人間に電話を掛けた様だ。それに反応したのがその派閥の一人の議員だった。そして驚くべきことが更に起きる。その電話を受けた議員と接触をしていた人物が、ヒロも知ってる人間だったのだ。その当時ウルフと名乗りユニオンの部隊に参加していた、彼は元傭兵でナイフも手徒格闘も腕が立ち、ヒロとも仲は悪く無かった。傭兵だっただけ有って、品行が良いとは言えなかったが、悪人と言う訳でも無かった。だがある戦いで行方不明に

成っていたのだ。色んな噂が有ったがその一つに家族が出来たと言うものが有った。

それが本当なら何故、こんなことに関わっているのか。未だに傭兵家業をしているのだろうか。その事実は彼にしか解らない。昨日の見方は今日の敵とも言うが、

この仕事の因果を感じてしまう。まず、要人が連絡を取った議員を、美樹とエリカが密かに付けて確保した。そしてあたかもその議員の指示のように、彼にメールを送り今日の夜マリを遊撃して金を持ってユーロ圏外に一緒に逃げると連絡する。

先ほど彼が言って居た言葉をカメラで解析して、再度集合場所と時間を伝える。

やり口としたら、どちらが裏か表か判らない、これも古くから伝わる術式の応用だ。

場所は港近くの遊歩道で、夜中だと人も少なく街灯もその場所は暗い。

更に周辺にドローンを配置して、人口の霧を発生させて、視界を悪くする。

メールでの指示は、先ず港の遊歩道で手付金半分を渡す、マリを襲撃して再度港からユーロ圏外に逃げる計画だ。港にウルフ本人が現れるかは不明だが二重の罠である。

そこに現れたのはウルフと他2名の男で有った。ヒロはウルフに顔を見せ【久しぶりだな、生きていたのか】と言う。ウルフは驚いた様子で【何故お前がこんな国に居るんだ】と言う。ヒロは【戦場以外で会うとはお互い驚くよな】と言うと

【戦場は懲りたのさ】と答える。【ウルフ、ここはもう結界が張っている、流石に

お前でも逃げるのは無理だ、悪い事には成らないから投降しろ】とヒロが言うと

ウルフは【そうだな】と言って投降する振りをしてなんと自爆してしまった。

先日使われた小型の爆弾である。他の二人をヒロが拘束して、そこから他のメンバーも捕まえる事が出来たが何とも後味の悪い事件であった。ホテルで爆弾に関わった

人間も、そしてウルフの一味もそれぞれ何らかの事情で金や生活に困ったり、

あるいわ弱みを握られたり、事情は違うが人生の落とし穴に落ちそのような事に

巻き込まれた人間たちだ。しかし手を汚さず、自分の権力欲などで人を巻き込み、

罪を犯させる人間も居る。ウルフの仲間は元傭兵や下級兵士など、潰しが聞かず

ウルフの仲間に成った人間が多かった、普通の社会でも有る話だ。

仕事が無い若者が闇バイトに応募してしまう、しかし行政はそのような人達を救う

なんて思っても居ないと感じる。知らず知らずに、そのような人を社会が作り出している自覚は、全く無い人間たちが政治も行政を司っている。彼らが考えているのは

自分たちの保身と行政の定めたルール。政治は大衆の目と自分の権力、それが悪とは言わない、少しでも困っている人たち への優しさは無いのだろうか?

ルールを超えた気持ちが行政や政治そして人々に有れば、世の中が変わるのでは無いかとも考えさせられた、ヒロにも後味の悪い事件だ。世界一豊かな富豪やセレブが

多い場所で、起きた事件の裏側と陰で過去の戦場で知った顔の最後はまたヒロの心に傷を残した。式場での実行犯は未遂で終わっていたことで執行を猶予されユニオンの協力企業で働くことに、ウルフの仲間は知っている情報を洗いざらいしゃべる

条件で、国外の戦地で仕事を与えた。そして黒幕の二人はその地位を追われ、

財産を没収の上、国外に追放と成っていた。マリが渡した、超高級陶磁器セットは、何故かマリの元に帰って来た。やはりマリアとは悪魔の化身だとヒロは知った。

ヒロはマリアに【こんな国に関わるの俺はもうごめんだ】と苦情を言うとマリアは【こんな国とか、どんな国なの、そこは良い国よ】と言う。【何が良い国だ、訳が

解らん骨董で騙されるアホが要職で、妬み合うアホの国じゃ無いか】と言うとマリアは【素敵じゃないそう言う人が居るから利益も取りやすい、金融もやりやすい、貴方だって投機運用して小遣いをため込んでいるでしょ】と言う。ヒロは【何で知って

いる俺の小遣い稼ぎなんて可愛いものだバカ高い骨董で権力に食い込むなんて

恐ろしい考えは無い】と言うと。マリアが【貴方もバカ高いウイスキーで大儲け

企んでいるらしいじゃない。日本の税務署には気を付けなさい、そこの国はタックスヘブンだからユニオンも私も問題ないけど】と言う。いくらタックスヘブンでもそのため物価がバカ高く底辺が生活に困るそんな国はやはり御免だとヒロは思った。

どちらが良い悪いでは無くどちらに配慮した運営をするかである。金持ちだけが

暮らしやすいと仕事はこちらで、住むのは違う場所と言う歪さえ生まれる。

ユーロ圏の場合は特にそうだ、ヒロ達はマリとの別れを惜しみ、日本に向かった。


第十三章

そしてようやく、日本に帰って来たのは六月に入ろうとする日で

アリサはもうすぐ二十歳、美樹とエリカははに十八歳になる年である。

日本のユニオンに着いたのは早朝だった。

ユニオンの輸送機は旅客機の約半分の飛行時間で到着するのだが、時差と飛行時間と精神的疲れでヒロはへとへとだった。ユニオンの空港に着き姉のヒトミに

電話を入れると【ご苦労様、大変だったみたいね】と労いの言葉を言う。

意外な反応だと思った、いつもなら、そっけなく了解で終わる。

家に着くと驚愕の書置きが置いてあった。自分たちの荷物を片付けたらキッチンと

リビング、ダイニングを大掃除しておいて下さいと書置きが置いて有った。

ここにも一人鬼が居るとヒロは思った。家に帰り、ヒトミの置手紙を見て一瞬魂が

抜ける気がしたが、再度気を取り直し、 丹田で呼吸をし、娘達には自分の荷物を

整理させて、自分の荷物は自分の部屋に放りヘトヘトの中、キッチンの片付けと

大掃除から、独りで始めた。娘達には荷物の片付けが終わったら、自由に休むも

報告書と日報を入力するも自由と言って、自分はひたすら家の大掃除である。

昼に成りヒロはキッチン掃除が終わり、リビングとダイニングに取り掛かっていると美樹が部屋から出て来た。ヒロは心の中で美樹が手伝うと言うのを期待したが美樹は【先生お腹すいた】と言う。ヒロは今、掃除で忙しいからユニオンの食堂でランチ

するか弁当を買ってこいとお金を渡しアリサとエリカも一緒に行ってこいと言った。

ヒロは俺は早死にする、そうでなくても、うちの家系は長生きの家系では無い

と思いながら、掃除を続けた。昼食も取らず掃除が三時ぐらいに終わり、シャワーを浴びて一休みしていると、ヒトミから電話で【ちゃんと掃除してくれた?】と一言。

ヒロが【もう終わっている】と言うと【今日私とユウは帰れないからそっちはそっちで適当にして】と言う。俺はお手伝いさんじゃ無いと思いながら、娘たちと居候状態のため文句が言えないヒロだった。夕方になりヒロがソファーでウトウトしていると美樹がヒロに【先生、今日夕食、何にする】と聞く。

しかし若い娘が食欲旺盛と思うが、美樹は特別、食が太い。

しかし娘の中で一番スレンダーなタイプなのだ。内臓の代謝が活発で基礎代謝も

高いのであろう、水樹もそうであった。エリカは少し小食なのに普通より少し細い

くらいのスタイルでアジア人と言う感じのスタイルだ、そして清楚で可愛い雰囲気でクラスの男子に人気だったようだ。エリカは美樹のスタイルと体質を羨ましいと

思い、美樹はエリカの清楚な可愛さを羨ましいと思っている、不思議なものである。

美樹はヒロに【今日は焼肉食べに行きたい】とねだる。ヒロは肉より魚派だが昼を

食べてない、韓国料理なら色んなものが食べる事が出来る、久しぶりに良いかと

思った。美樹に【皆で久しぶりにシュリでも行くか】と言うと美樹は

【わーい、ジュン姉さまに久ぶりに会える】と喜ぶ。

ジュンはヒロのユニオンの後輩で水樹の所の出身である。

現在はエージェントをリタイヤして結婚して自分で韓国料理店をユニオンの

近くの街で営んでいる。本格的な味を出して評判を得ている、韓国系の人たちも多く訪れて居るようだ。肉や食材も彼らのルートで良いものを仕入れたり

しているようだ。ヒロ達はシュリに行き、中に入るとバイトの男の子が

いらっしゃいませと挨拶をして席に案内する。

ジュンがおしぼりを持って来て【兄様いらっしゃい、ご無沙汰だったね。

どこで浮気していたの】と聞く。ヒロは【任務で過労死するぐらい働かせられて

いたんだよお前は気楽でいいよな】と言う。ジュンは【また大げさに、

こっちはこっちで個人経営は大変なの】と反論する。

確かに飲食店経営は、良く脱サラしてやりたい、と言う人は多いが大抵が

失敗に終わる。顧客の獲得も大変だが、客層は常に移動したり年齢が変わって環境が変わったり、世の中の環境も変化する。またライバル店が近くに出店したり、大手の資本がチェーン店を作ったり飲食には様々な壁が存在する、しかし店内を見ると、

しっかりお客さんが入っているようだ。ジュンの努力の賜物なのだろう。

ジュンが【飲み物、何にする】と聞くのでメニュウーを眺めながら

ヒロは、えびすビールの中瓶を注文した、アリサとエリカはジャスミン茶、

美樹はヒロのビールを拝借すると言う。飲み物と付け出しのナムルとカクテキが

来て、メニューを見ながら注文する。上焼肉セットを2つ頼み、あとは娘たちとヒロが、それぞれ好きなものを注文することに美樹は脳みそが完全に焼肉に成っている。

特上ミスジ、ザブトンを頼む、ヒロは特上牛タンとキンパ‘(‘韓国風巻き寿司)

エリカとアリサは二人でサムゲタンを頼んだ、ヒロはここのキンパが大好きで

目当ての一つだった。以前仕事で韓国に行った際に初めて食べて、この食べ物を気に入った。恐らく日韓併合され、日本の巻きずしと、韓国の味付けが混ざり

この食べ物が出来たのだろう。向こうとこちらで本家や始まり論争をしているが、

どうでも良いことである。それぞれの国の文化で、違う味の食べ物に成っている。

焼肉とてそうだ、韓国の文化が入ってこなければ、日本でこんな旨い肉は食べることは出来なかった。空手とテコンドウとて、それぞれの文化や事情で違う闘技として

存在しているそれぞれ良い面を持ち学べる所を吸収するのは人間の歴史の中で進化のために必要だ。どちらが祖であるに何の意味があるのだ?人間の馬鹿な心理に幻滅

してしまう。美味しい料理や肉を皆で食べていると、手がすいたジュンがテーブルに来て【兄様、私も一杯頂いていい?】と既に大ジョッキの生ビールを

持ってきている。ヒロはもう飲んでるやないかい、と思いながら【ああ】と

返事をする。ジュンが【このまえシャチ君が会議の後とか言って寄ってくれたよ】と言う。ジュンとシャチは同期である。ヒロが【シャチも水樹姉が逝って寂しいのかもな、美樹もこっちで預かっているし】と言う。ヒロが【お前誰かシャチに紹介して

やれよ】と言うと。ジュンは【うーん、彼は真面目すぎるから難しいのよ】と言う。

ヒロが【真面目で何が悪いんだ、顔だって悪く無いだろ】と言うと

【面白味が無いから難しいの】とジュンが言う。ヒロは【何だ面白味って、真面目で顔が普通以上ならなんの問題があるんだ。女って言うのはどれだけ欲深いんだ、

もっと己をきちんと自己評価して考えろ】と怒る。

【兄様がそんなムキになる必要ないでしょ、何怒っているのよ】と言うと

【先生は古代人並みに考えが古いんです】と美樹がジュンに訴える。

ヒロは【お前が新人類過ぎて訳が解らん】と言い返すと。

【兄様、そんなんじゃ年取って弟子たちに見放されるよ】とジュンが言う。

アリサが【ジュン姉さまって先生と昔から仲が良かったんですか】と突然聞く。

ジュンが【どうしてそんな事聞くの、仕事はバディー組んでいたけど、個人的には

普通かな、仕事では良く助けられたけど、兄様はビジネスライクって感じだった。

こんな感じに話をしだしたのも私がエージェントを辞めてからね】と言う。

アリサが【へーっ、そうなんですか、なんか意外です】と言う。

【兄様は女嫌いとか、シスコンとか噂が有ったからこっちも最初は絡み辛らかった】とジュンが言うと。美樹が【それ私も聞いたことがある】と言う。

ヒロは、ムッとして、二人に【水樹姉がデマを流していたんだ】と答えると

ジュンは【最近はロリコン説まで聞いたこと有るけど】が言う。

するとヒロは【誰だ、その噂を言って居たのは、それだけは許さん。それじゃ

犯罪者予備軍みたいじゃ無いか】と顔色を変えて怒る。ジュンが【別にそんなこと

気にする?】と言うと。ヒロは【ユニオンで犯罪まがいどころかアンリーガルな仕事もやるのに、ロリコンだけはダメだ】とムキになる。ジュンが【別に相思相愛なら

良いでしょ】と言うと【そう言う問題じゃ無い、相手がまだ判断する能力が無いのに相思相愛も有るか】と言う。ジュンが【堅い性格過ぎるよ、兄様は年齢だけで、判断できるとか関係無いでしょ】と言う。美樹が【私たちはもう子供じゃ無いもんね】と言うとヒロは【お前はまだまだ子供だ】と否定するのだ。まるで父親が娘の大人に

成ったのを認めない様子だ。ヒロ達は家に帰りゆっくり休むことにした。

ヒロは娘たちが独り立ちする時の事を考えて複雑な心境になり、結局、ウシュクベ ストーン フラゴン(ハイランドのブレンドウイスキー)を飲むのだった。

ウイスキーならこれから美味しさが増すのが二十年以上の熟成だと、

これを女性に言えば完全に訴訟されるようなことを、思いながらである。

翌朝起きて朝食を取り、娘たちとユニオンでメディカルチェック

をすると、ある人物を姉のヒトミから紹介をされた、医師で科学者だと言う。

彼女は名前をユリと言い年齢は三十前くらいに見える。

ヒトミが、【これから貴方のメディカルトレーナーをお願いすることに

成った先生よ】と言う。ヒロは【そんな物必要か?自分の身体は自分で管理できる、体調悪ければちゃんと相談する、それにオリンピック選手でも無いのに】と言うと。

ヒトミが【貴方もう年よ、それにこれは絶対必要な事なの、命令よ】と言う。

【理由をきちんと説明してくれ、何か不調でも見つかったのか】と聞くと、ユリが

【完全な肉体なんか存在しないわ、完全に近づける為、ケアと改善を依頼されたの、

貴方以前より回復が遅れたり自律神経の調節が時間が掛かったりしていない?】

と聞く【それは仕方ない話だ、二十代とは訳が違う、上手く付き合うしか

無いだろう】とヒロは答える。ヒトミが【それじゃダメなのよ、とにかく命令よ】と言う。ヒロは、なんだか死ぬまで激務を与えて、働かせるつもりか?

と思ったがしぶしぶ了承した。ユリがじろじろヒロを眺めながら、【これがヒロ君か】と何とも失礼な物言いをしている。ヒロは、なんだか実験動物に成っている気分だ【そんなに珍しい?】とヒロが聞く。そもそもヒロは医者と言う人種がそんな好きでは無い、特に日本の医師は信用していない、大学病院の医師には患者を実験材料の

ように考え臨床している人間さえいる。そうでなくても患者本人を見ないで

検査データーしか見ず診断を下したり病気を誤診するケースもある、ガンなどの病気や体の異変も少しの違和感を、あらゆる角度で推測する必要が有るのだが

データーだけでは見逃すことが多くなるのにも関わらずだ。

そして日本の医療システムにも問題が多い、予防医学に対する認識の弱さだ。

ヒロはこれこそ究極の医療費削減策、と思うのだが、これは金に成らない。

薬品会社も医者も儲からない。ヒロは医師も製薬屋もマッチポンプぐらいに

感じている。ユリは直接ヒロに色んな質問や生活習慣を聞き、筋肉を触り、

心臓の音を聞き関節の動きを確認しながら、【改善の余地が沢山あるね】と言う。

そしてヒロに【私を見て何も思い出さない?】と聞く。

ヒロが【どこかで会いました?】と聞くと【まあ友歌ちゃんとは腹違い

で似てないと言われるから仕方ないか】と言う。

ヒロはえっ?と思いよく見る、目の色だけが友歌やマリと同じ色なのだ。

ヒロは【まさか】と言うと【そのまさかなんだな】とユリは答える。

妹が居る話は聞いた事が有るが、そんなに詳しく聞いていない。

当時、友歌と一緒に居るだけで幸せで、他は見えて無かった。20代前半の世間

しらずの学卒で武人、普通の社会人の恋愛や結婚感とは違うヒロだった。                                 ヒロは【ちょっと待ってくれ、俺の身体の話より、それを先に整理したい】と言う。 ヒトミが【それは後々順を追って説明するわ、今はちゃんとチェックに専念して】、

と言う。ユリが【とりあえず状態をチェックしましょう】と言い別室にヒロを

移動させた。そこには今まで見たことも無い機器が並んでいてワイヤレスで何かを

計測出来る機器の様だ。そしてヒロの身体にシールのようなものを頭や手足、

体幹部、数か所に張り付け武術の動きを見せろと言う。

そのような事を三十分繰り返し【今日はここまでにしましょう】と言う。

ヒロが【これは何の検査だ?】と言うと【脳出力と筋出力、交感神経、副交感神経の伝達を可視化する装置よ、Aiで編集して今度解りやすく説明してあげる】と言う。

ヒロは【要は気の流れを感じることだろ、そんな物無くても修行したらその感覚は

解ってくるだろ】と言うと、ユリは【それを可視化することで早く前に進める事を 可能にしていくの、またあなた達が気の力とか言っている物を更に具体的に、

システムを解明するのにも約立てる、また出力をいかに体にダメージを与えず上げて行くかを進化させるのに役に立つわ】と言う。

【何だ結局、俺はモルモットじゃ無いか、これだから医者や科学者はと】言うと

【貴方の愛した友歌ちゃんやヒトミさんも医者で科学者よ、私や友歌ちゃんが、貴方と話せるのも科学の力によるものよ】とユリが言う。

たしかに何故二人とも日本語が話せるのか不思議で有った。

ユリは更に【これはAIが脳の側頭葉の聴覚野と前頭葉の頭頂葉を通って

ブローカ野に送り言葉として教育するシステムを完成したから】と言う。

ヒロは専門家が素人を詐欺る話し方に聞こえると思った。

理屈的には解らないことも無いが、そんな事が可能なのか?と思った。

その後、娘達と合流し家でランチに玄米ご飯と野菜、鶏肉と卵で雑炊

を作り休憩を挟んで4人で修行した。今日は任務で疎かに成っていたフィジカル

トレーニングを中心にした。まず上半身の胸、背中をスーパーセット(二種の運動を交互にする)で何種目か軽く負荷を与え、身体を負荷に慣れさせ、

最後に高出力高負荷で筋肉を追い込む久しぶりのウエイトマシントレーニング。

限界まで追い込む訳では無いが、きっと明日は筋肉痛だろう。

それが終わるとバーベルをスクワットラックにセットしてそれぞれの筋力に合わせ

バーベルスクワットを行う、キングオブトレーニングと言われる所以はそのキツさと

フィジカルにおけるスクワットの重要性だ。ヒロは300キロを超える重さで

トレーニングする、娘たちも皆、100キロを超える重さを扱う、アリサに至っては最高重量150キロを超える。軽量級の女子としては規格外の筋力だ。

その後スピードトレーニングを少し、有酸素トレーニングもこなし、

しっかりストレッチする。トータル3時間追い込みが浅いと言え、へとへとに成る。

因みに追い込みを強くすると短時間で追い込めるが、その分負荷も強くなり久しぶりのフィジカルトレーニングには向かない。少ないセットで強く追い込むのは勿論効率も効果も高いのだが、いきなりだとケガのリスクも上がる。

ヒロは計画的プログラムを弟子たちに組んで、色んな負荷の種類を使い

進化を促している。アリサに至ってはヒロのトレーニングと修行で女性としては

かなり高いレベルに達していた。技の技術とメンタルを成長させれば、

更なる高い次元に行けるとヒロは思っている。修行が終わったのは午後五時で、

今日はユウが夕食の担当に成っていた。普段はだいたいヒロが担当だが、

今日はメディカルチェックと午後のトレーニングの予定でユウがやることに成っていたので、どうせ手抜きは覚悟はしていた。ユウが担当だとそうなるのだ。

昨日、本格的焼肉で味覚とともに栄養も取ったから良いと思ったのだ。

家に帰ってシャワーを浴びていると、ユウが病院を出た後スーパーで買い物をして

帰って来た。ヒロ達は丁度シャワーから出ると買い物を袋から食品を出している。

予想通り、全て出来合いの物だ、出来合いの握り寿司セットが人数分、

野菜の煮物の出来合いのパック、ユウ自身のビールのお供。ヒロはいくら何でも、

これが医者の夕食に選ぶメニューかと思い、ため息をついた。

するとそれが気に障ったのか【何か文句有るの?有るなら自分で作れば

良いじゃない】と突っかかって来る、兄弟喧嘩が、そこから始まるのだ。

ヒロは【文句と言う訳じゃ無いが、医者が選ぶ夕食メニューがこれか?

育ち盛りの娘が居るんだから、栄養を少し考えたらどうなんだ】と売り言葉に

買い言葉、こんなことから夫婦間にヒビが入るのだろ。

二人は夫婦では無いが、ユウが赤ちゃんの頃、ヒロの父の養子になりヒロが家に居る時はヒロもユウの面倒も見ていた。二十七年も兄弟として付き合いだ。

アフリカに居るサチは、ユウより5歳年上だが、同じ時に兄弟同時に養子として

ヒロの父のもとに来たのだ。彼女たちの母親は、ヒロの父の部下で、不幸な実験に

よる事故で亡くなってしまった。そしてヒロの父が彼女たちを養子として

預かったのだ。しかし実質、母親のように面倒を見たのはヒトミで有る。

病院の託児所に預けたり、夜はヒトミが面倒を見てのだから、ヒトミも凄い

女性である。ヒロも家に居る時は彼女たちの面倒を見ていたが、大半、修行に行っていたり戦いの任務に参加していたのだ。都合の良いときだけ、面倒見たと言っても、二人には響かないのであろう。ユウと口論していると丁度ヒトミが帰って来た。

【また喧嘩しているの、止めなさい】とヒトミが言う。

ユウが【お兄ちゃんが私のメニューが気に入らないって文句言うからよ】と言うと

ヒロが【文句じゃなくて、栄養を考えた方が良いと言っただけだ】と言う。

ユウが【そんなの兄ちゃんのサプリで補いなさいよ、こっちは昨日から

働いて帰って来ているんだから】と言う。ユウの言い分の方が、冷静に考えれば

正しく感じるが、これが男と女の売り言葉に買い言葉である。

ヒトミが仲裁して結局ヒロが冷蔵庫の残った鳥肉と野菜を使い汁物を作って

寿司と総菜を皆で食べた。ヒトミが白ワインを飲みながら、東側の任務とヨーロッパでの事を聞く。ヒロが【任務の事は報告書で書くよ】、と言うと【チヅルちゃんと

マリちゃんの様子を聞きたいのよ】と言うと【二人とも元気だよ、チヅルもマリも

どんどん成長してる、でもチヅルはあの国の任務から早く変えて欲しい、あの国を

含めて複雑に絡み合ってその糸に絡まったら身動きが出来なくなる危険が有る。

あの年齢でそれに絡まるのは俺は見たくない】と言う。ヒトミが【そんな時は貴方が助けてあげて】と言うと【簡単に言うなよ、そっち系の仕事は俺向きじゃ無い。

それにチヅルにも、やらせたく無い】とヒロが答える。

美樹が【チヅル姉さま凄いですよね、向こうの人とも、向こうの言葉で

コミニケーションして大使館の人も、何かチヅル姉様が指揮していたみたいでした。あのドレスも凄く綺麗に着こなしていたし】と言うと。

ヒロが【チヅルの能力が高いのは解っている、でもまともな任務でその能力を

生かして欲しいんだ】と言う。ヒトミが【解っているわ、私だってユキちゃんとは

友達だったのよ。でも個人的感情で情報部を動かす事は出来ないの、解ってよ】と

言う。ヒロはそれを聞いて何も言い返すことが出来なかった。

【そう言えばあの女の件だけど】と切り出すと、【それはまた時間を掛けて説明する

貴方が感情的に成らないようにね】とヒトミが言うと、アリサが【誰ですかあの

女ってと食いつく】ヒロが【俺にも招待不明の女だ、アリサは心配しなくていい】

と言う。その時アリサが【そう言えばマリちゃんがもうすぐ日本に来るって

メール有りました】とヒロに報告した。ヒロが【ホントか姉ちゃん】と聞くと

【本当よ、日にちはまだ決まってないけどマリアさんも一緒に来るわ】と答える。

ヒロ達は次の日からも修行とフィジカルトレーニングを繰り返しながら、

一週間に一度ヒロはユリの色んな検査やテストトレーニングを受けた。

一か月程たち七月に入る頃、マリとマリアが日本にやって来た。

ユニオンの空港に迎えに行き二人をコウジの働く科学部の研究所に運ぶ事に

成った。【何故研究所なんだ】とヒロがマリアに聞くと

【私たちが会いたい人がそこに居るの)と言う。ヒロが【義兄さんに用事なのか】と聞くとマリアは【そうねコウジ先生の話も聞かないとね、貴方やマリちゃんにも関係有る話よ】答える。ヒロは【やはりあの女の事なんだな、本当の事だと思って

いるのか】とヒロが聞くと【貴方は信じて居ないの?】と聞き返す。

【何も詳しい話は聞いていない、急に言われても信じる材料も無い】そう言うと

マリアは笑って【貴方、性格悪くなった?】と言う。ヒロは【そうかもな、誰かさんのお陰かな】と答える。娘のマリが【パパはパパのままよ、いつも私達に優しい】と言う。ヒロは笑顔に成り【マリは俺の唯一の宝ものだ】言うと、マリアは

【それは私にとってもよ、この子は未来への希望なの】と言う。

ヒロが【未来の希望を、大人の事情にあんまり巻き込むなよ、頼むよ】と言うと

【出来ることならそうしたいけど、この子たちに未来を託すためなの、

解って欲しいわ】とマリアが答える。ヒロが返事をせずに黙っていると、マリが

【パパ、私達は大丈夫、自分たちの未来のために覚悟を持って動いている】とヒロに言う。何故か彼女の母親、友歌の面影をヒロは感じるのであった。

マリアが【貴方は友歌さんに本当にそっくりに育ったわ】と言うと

ヒロは【俺に似ずに良かったと言っているのだろ】と拗ねる。

マリアが【昔からそう言う捻くれた所は変わらない子ね】と答えた。

研究所に着くと、コウジとユリがコウジの部屋で待っていた。

応接室のように見えるが、普段コウジはそこで研究の論文を書いて

寝泊りもする、家に帰るのは1週間に一度くらいだ。ヒロは科学者の中で唯一、尊敬出来る人格者だと思って慕っている。ヒロとマリ、マリアが部屋に入りソファーに

すわりコウジに【義兄さん働きすぎだよ、ちゃんと家に帰って休んでよ】と体を

気遣うと。【睡眠はちゃんと取っているよ】とコウジが答える。

そしてコウジがマリアに【彼女が友歌さんの妹のユリさんです】と紹介する。

マリアが【初めましてお会い出来て光栄です、私はマリアそしてこの娘がマリです】と挨拶する。ユリはマリを見て【何て可愛いの、友歌ちゃんの若い頃より

可愛いかも】と言う。マリアが【友歌さんはお元気?】と聞く。

ユリは少し暗い顔になり【元気は元気ですけど大変な状況です】と答える。

ヒロが【無事なのか?どんな様子なんだ?どうすれば会いに行ける】と迫ると

マリアが【慌てないで、順を追って聞きましょう】と言う。

ユリが【まず友歌ちゃんは無事よ、そして今はあの星の女王として星を収めている。

私は秘密裏にこの星に自分の意思で来ている】と答える。ヒロが【どうやって来たんだ、母船は地球の近くに有るのか?】と聞く。ユリが【言って置くけど、あっちに

行きたくても、今は無理よ、私は小さな宇宙船を使って来たけど、第三者の手助けでこの星に来た、今友歌ちゃんに会うのは無理、もしかしたら数年後会えるかも

知れないけど】と言う。ヒロが【友歌が女王とか、想像が付かない、象徴的に利用

されているのか、宗教のようなものか】と聞くと【そう言う所も有るけど実質的な

リーダーとして治めている、貴方が知っている友歌ちゃんと違う一面も有ると考えると良いわ】とユリが答える。マリアがヒロとマリに【私は色々彼女に話が有るから、二人は先に帰っていて荷物は一旦預かって置いて】と言う。ヒロはマリを連れて家に帰ると時間は昼前に成っていた。娘たちは自分達で修行している、娘たちに電話すると修行を終え、帰る所だと言う。待っている間、マリがヒロに【いつかママに会えるかな】と聞く。ヒロは【マリも友歌に会いたいよな】と言うと【会える定めなら

いつか会えるわパパ】と笑顔で答える。そうしていると娘たちが帰って来てアリサがマリに抱き着く。美樹が【マリ姉様お帰りなさい】と言う。マリが【美樹ちゃんは

相変わらず可愛いわね】と言うと【あんまり褒めると調子に乗っちゃうから、ほめ過ぎないで】とアリサがマリに言う。美樹は【姉様は私に厳し過ぎるんです】と言い

返す。ヒロが娘たちに【ランチにしよう、パスタで良いか】と聞く。

美樹が【オムレツパスタが食べたい】と言うのでヒロが調理した。

オムレツパスタはパスタを茹でそれを鳥ミンチと玉ねぎとトマトピューレで炒め、

味を調えた上にオムレツとケチャップを乗せた料理だ、ヒロは調理油を使わず、

ミンチ肉の油でパスタを炒め、オムレツも薄く油を敷いて余分な脂肪を使わず作る。

鶏肉は高たんぱくで、パスタは低Gi(低グリセミックインデックス)なランチだ。

アスリートなどのランチにはお勧めなメニューである。【みんなで食べるランチは

美味しいね】とマリが言うと美樹が【先生は料理だけは上手なんです】と言う。

ヒロが【料理だけって?】と突っ込むと【ユウ先生が先生は料理で奥さんを騙して

結婚したって言っていたもん】と答える。ヒロは、あながち嘘とは言えないと

思いながら【他にも何か有るだろう】と言うと、美樹は【うーん?何だろうな】と

真剣に悩む風だ。エリカが【先生は弟子たちに優しいよ】と言うと【それはエリカ

ちゃんに優しいだけで、私には厳しいもん】と美樹が答える。

【パパは美樹ちゃんが可愛いのよ】とマリが言うと。美樹は【えーっ、それなら

もっと優しくしてよ先生】とヒロに言う。一番身長は高くてもいつまでも子供の

美樹だ。それでも末っ子として愛されるキャラなのだ。食事が終わると娘たちは

自由に休ませ、ヒロは午後から少しトレーニングと修行をした。

武でヒロが重要視しているのは気持ちの強さ、フィジカル的強さ、そして技術

そして結局そのどれもが修行やトレーニングで養われる。

勿論実戦経験やマインドトレーニング、イメージトレーニングも必要だが、

基礎が無ければそれは絵に書いた餅になり下がる。トレーニングが終わると

ストレッチをしっかりして、筋肉や腱を伸ばした後に修練場に有る薬浴の浴槽に

入浴した。薬浴でなくとも入浴には非常に大きな疲労回復効果が有る。

一つは毛細血管が広がることで疲労物が体外に出やすくなる。

もう一つは高まった交感神経を制御して副交感神経に切り替え

リラックス効果が出て、脳や体を休める事が出来る。

ヒロが入浴した薬剤はハーブから抽出したリラックス効果を高める物である。

ヒロが浴場から出て着替えると携帯に着信が残っていた。

ヒトミからである。慌てて掛けなおすと、今日は皆で外に食べに行く事に

成ったと言う。ヒロは【家で食べれば良いじゃないか】と言うと、ユリを招待して、皆で外で食事することに成ったと言うのだ。

場所は西と言う高級料亭で、めったに行けるようなところでは無い。

また【奢った場所で】と言うと【特別なのよ】とヒトミが言う。

ヒロは、急に予約が取れる場所では無いだろう、と思ったが、そこは以前から興味が有った料亭だ、値段以上に味や技術が素晴らしいと聞いていた。

ヒロが常連の銀座の岡も親方と尊敬している。料亭、西に着き席に案内されテーブルに座る、個室にテーブルが置いて有る部屋で薄いグリーンの九谷焼きの花瓶に、白い小菊が飾っている。上品に数本だけを控えめに飾らてる。

何より久谷焼きの色が、素人のヒロにも花の可憐さを引き立てて見える。

ユリがそれを見て感動したようだ。こんな可愛くけなげに咲く花が有るなんて。

ヒロが自慢げに【これが日本の文化なんだ、小さな命の美しさを、美しく見せる。

景色も食べ物も豊かな自然を大切に味わう事を大事にする】と言う。

マリアも【素敵な文化で私も日本の文化は好きよ、でも残念よね多くの日本人が

どうやらその文化を忘れ去っているように見えるわ】と言う。

美樹やエリカはその雰囲気に飲まれ、そわそわして見える。そうしていると店主の西がヒトミに挨拶に来た。【今日はありがとうございます、精一杯務めさせて頂きます】と言う。ヒトミが【急な予約でご無理をかけて申し訳有りませんでした】と言う。

西は【先生のご予約ならいつでも歓迎いたします】答える。ヒロがヒトミに

【姉ちゃん来たこと有るのかよ】と聞くと【学会の会合とかでお世話になることが

有るのよ】と言う。西が【お飲み物は何かご指定ございますか】と聞くと、

ヒトミとマリアはビール、ユリとヒロは日本酒、娘たちは温かいお茶を頼んだ。

流石の美樹もここでは酒を頼めないと思ったようだ。マリアが【美樹ちゃん今日は

お酒はいいの?】と聞くと【なんか緊張して】答えるのだった。

日本酒は三重県の而今の 純 米 吟醸、ビールはエビスビール、

突き出しにタコとモズクの酢の物、タイと万願寺の木の実和え、じゅんさいの酢の物

刺身にコチ、キス、スルメイカ、アマダイ、焼き物にスズキ、丸ナスの味噌田楽

そして揚げ物はアユの天ぷら、吸い物はコチの吸い物、

ご飯ものにタイ三種の手まり寿司、文句の付ける所が無い仕事が施してあった。

ユリは料理の種類と色んな食材の豊かさ味付けの違いに驚いた。

そしてヒロに【地球は本当に豊かな所ね、こんなに食材が多くて美味しくて、

でもこんな小さな生物まで食べたり、多くの食材を一度に使ったりして罪深く無いの、法でそれが許されているの】と言う。ヒロは【厳しく規制され、取る数や量を

決められている物も有るよ、ただ資源の大切な事をまだ理解できていない所もある】と答えた。ヒロが【俺もまだ君に質問が有る、友歌の事だ、彼女は女王として星を

収めていると言った、彼女は幸せなのか】と聞く。ユリは黙ってマリの方を見た、

そして【どうかしら、人の幸せかなんて誰にも解ら ないかもね】と答え

【マリちゃんは幸せなの?】と聞く。 マリは【私はパパや皆が居るから幸せ、ママにも幸せでいて欲しい】と答えた。ヒトミが【マリアさんとユリさんと三人で話を

しに行くけどどうする?】とヒロに聞く【俺は娘達を家に送る、マリは家に泊まる

だろ】と言うとマリは【アリサちゃん達と色々話したい】と言う。

タクシーを三台呼んでヒトミたちは2件目に、ヒロ達は家に帰った。

家では娘たちは色々、話し合っているようだ、ヒロは一人秘蔵のミルトンダフの

古酒(スペイサイドモルトの銘酒)を飲んで友歌の事を考えた。

翌日ヒロは朝の修行が終わると、弟子たちを休息日にした、マリと彼女たちが

都会の街に出てみたい、と言うからである。

弟子たちは普段、ユニオンで修行の毎日、季節の変わり目に私服を買いに行くことはあるが、他の同年代の若者のように週末は街で過ごすと言う事は無い。

ヒロは例の検査と、メディカルトレーニングを受ける日である。

朝十時にユリと待ち合わせた病院内の場所に行き、ユリにあるスーツを着るように

言われた。スイッチをユリが入れると急激に身体が重く感じた。ユリが自慢げに、

ふふふっと笑い、【どうよヒロ君】と聞く。【どうよって、これはなんだ、急に体が

重くなったが何故だ】とヒロが聞くと【地球を利用しているのよ、苦労したんだ

から】とユリが言う。ユリ曰く、ドラゴンボールとか言うアニメを見て思いついた

らしい。地球の磁力は北から南そして地殻の鉄分によって発生しているらしい。

特別な繊維がその磁場に引き付けられるように強い磁力を発するように

作られている。スイッチを入れることでGがスーツに加わり、体に負荷を与える。

ユリが【負荷を少し上げるわよ、いつもの型をやってみて】と言う。

勿論負荷により重く感じるのだが、それ以上に感覚が狂い型式が崩れている気が

する。疲れるのは勿論だが調子が狂うのだ。それをユリに告げると【ふふっ、それで良いのよ。それを一度脱いで同じ型式をやってみて】とユリが言う。

するとスピードが戻りイメージが良くなった気がする。ユリはヒロに【これはやり

すぎないで、週一これで修行して後は通常のメニューでこなしてみて、それからその後はこのサプリを飲んで】と言う。ヒロが【なんだこれは?】と聞くと

【自律神経を回復させるサプリ<このメニューは脳を騙して修行の負荷を与える

メニューだからこれは必須なの、負荷を上げれば回復も大切なのは、いくらヒロ君でも解るでしょ】と言う。ヒロはこれもドラゴンボールでは無いかと思った。

そしてヒロは【ヒロ君でもってどう言う意味だ】と聞くと。

【そう言う捉え方良くないよ、子供っぽいって言われない?】とユリが言う。

ヒロは、この女も姉のヒトミやマリアと同じタイプだと、苦々しく思うのだった。

それでも言う通り、週一でメニューをこなしていく。その日の夕方、娘たちが帰宅

して夕食を取る、ヒトミ、マリア、コウジは相変わらず忙しいようだ。

ユリが来たことで何かが動いているのだ。今日はヒロがスーパーで、夏野菜を色々

買って、ラム肉と夏野菜で蒸し鍋を作った。ミニトマト・ナス・オクラ・

ズッキーニ・さやいんげん・パプリカピーマン・ゴーヤ・ししとう、色どりも綺麗で栄養も豊富、ラム肉は高たんぱくで筋肉のグリコーゲン回復にも良い。

娘たちは、新大久保に行ったらしく、ヒロにキムチをお土産に買って来た、

このメニューでビールと行きたいところだがヒロはなるべく

2日連続のアルコールは避けようとジャスミン茶にした。

そこに妹のユウがかえぅて来た。ユウも一緒に夕食を食べ、ユウは冷蔵庫からビールを出し、飲みながら食べる。昨日は宿直で料亭に行けてないが、娘たちに韓国コスメを頼んでいてご機嫌の様だ。美樹とユウは韓国ネタで盛り上がって、いつも仲が

良い。ヒロはコリアンポップスとか、全く知らない、しかし若い娘には人気らしい。

マリは若者の街を見て、びっくりしたとヒロに話す。

自分たちの世界と日本は完全に別世界、まるでコンピューターが作った

仮想空間のように感じたという。渋谷、新大久保、お台場と回ったらしいが、

日本だけ何かが違うと言う。これはどういう訳であろう。マリには人の生活感が感じない、と言うのだ。実際には裏に回れば、そこにも人の生活は存在するが、それを

見せる事はない。韓国コスメやコリアンポップス、オタク文化、ネット世界、現代には人の生活の匂いを出さない事が根付き始めているのか?

ヒロは文化とは人間を表現するものと思っている、みやびな物、泥臭い物、

激しい主張、色々有っても良い、そこに人間が介在して表現するのが文化である。

でも長く愛されるのは、やはりどれだけ人間の魂が籠っているか、奥深く突き刺さる物が有るのかだと、ヒロは思っているのだ。酒、音楽、芸能、絵画、建築、文学、

それらは後世まで愛されるものが多くある。そこには何かしらの生活、人間の魂が

存在していたと思うのであった。ユウが【ユリ先生って、すごい天才だし、ユニークで素敵よね】と言う。ヒロは【ユニーク?俺からすれば不気味で変人に感じる

けどな】と言うとユウは【親しみやすいし可愛いじゃん】と言う、美樹も

【私もユリ先生親しみやすい感じがする、年は若いけど、マリ姉さまの叔母さんに

成るんでしょ】と言う。ヒロは【見せかけで年齢は判らない、本当の性格なんて特に直ぐには判らないものだ】と言う。マリが【私は信じてみようかと、思っているよ】とヒロに言うとヒロは【今は信じるしかない、俺はともかく、家族や仲間を

傷付けたら許さんけどな】と言った。


第十四章

それから八月手前まで、娘たちと修行した後、アメリカで任務をすることに成った。7月末が迫る頃ある人物がヒロ達と合流した、フランス系カナダ人のジャンで有る。ヒロが用事で外に出ている時、ヒロを訪ねて来た。

ヒロが帰ると美樹が【なんか金髪ロン毛の外国人が先生を訪ねて来たヨ】と言う。

ヒロは【馬鹿でかい筋肉隆々の奴か】と聞くと美樹が【太っては無いけど、

プロレスラーくらい身長デカかった】と言う。ヒロが【あいつは熊の遺伝子を持った人間なんだ】と言う。当然嘘である、ジャンはミオスタチンと言うホルモンが少なく筋肉が少しの負荷でどんどん肥大する体質で、身長も彼の体質で高い、190cmで110kgで体脂肪率は10%以下だ。よく体脂肪5%だの3%だの言う人が居るが、それは実は正確ではない。ハッキリ誇張だと言える、いくらアスリートでも、

そんな体脂肪で普通に生活は無理なのだ、リミット限界に脂肪を絞って恐らく位

であろう。それは異常な数値で、ボディービルダーの極限の状態、血管がお尻や

下腹部に浮き出て皮と筋肉だけの状態である。アリサが【熊の遺伝子って本当

ですか?】と聞くとヒロは【本当だ見たら解る】と言う。

美樹が【顔はカッコいい感じだった】と言うと【カッコいいものか、お前熊が

好みだったのか】と言う。そうしているとジャンが再度訪ねて来た。

美樹が玄関の門まで出て【先生、熊の人が来たよ】と声を出してヒロを呼ぶヒロが

そこまで出ると、ジャンが【熊って誰の事だと】英語で言う、すこし日本語が

解ったようだ。ヒロは【気のせいだ日本語は難しいから間違えたんだ】と英語で返事をするが、信用してないようだ。任務の概要と現在まで状況やヒロが参加する任務のファイルを持って来て口頭で伝えるべき部分を説明に来た。

ヒロは【わざわざ日本まで来なくても向こうで合流すれば良いのに】と言うと

【別件でマリアから呼ばれたんだ)と言う。ヒロは【お前はマリアの式神か、

使い魔、みたいな者だからな】と言うと【何とでも言え、俺は彼女の親衛隊で騎士だと思っている】と答える。ジャンはそのホルモンや遺伝により普通では長生き

出来ないが、ユニオンの科学により命を助けられた一人なのだ。                        それを恩に感じマリアのために、エージェントとして世界中で、活動している。

何度もヒロとも同じ任務についた事が有るのだ。今度の任務はアメリカで、

賭博と麻薬に絡んでいる組織との接触だが、本来ユニオンは、ただの賭博だの麻薬だのは、関心も無い。しかし戦争や紛争に絡んでいると成れば話は別だ、チヅルが東側で絡んだ事件の背後にも関係しているらしい。世の中、敵と見方と入り乱れ、

絡まった糸のように成っている。構図としては西にも東にも争いが起これば、

得をする連中は、東でも西でも利益のため繋がり、お互いの共通の利益のため、一緒に動いていると言う事だ。ある意味、ユニオンの理想と同じ手法だがそのための手段で戦争が起こり多くの人が死ぬのは許しては置けない。己のイデオロギーや自分の

保身のため、多くの人が死ぬことも良しとする連中もこの連中も両方、許す訳に

いかない。連中はニューヨークで、スポーツ賭博やカジノ賭博に携わっている組織

らしい。ニューヨークは現在ゲーム賭博が合法なのだが、その資金の流れを調査して

誰の懐に入り、それはどのように使われているのかを調査する。

ヒロはこのような調査は、本来自分のテリトリーでないと言い、引き受けない。

しかし、弟子のチヅルがからんでいる事と、マリが任務に着くため、その護衛だ。

アメリカ、ニューヨークで早速活動を始めた。ニューヨークの都会の金融街のビル、隠し部屋の中にある会員制のカジノに潜入するのだ。このカジノは違法の無登録で

有るが、裏では合法のカジノと繋がりが有ると言う情報だ。

ユニオンの調査員の調査と人脈で、ようやくそのカジノと、繋がりを持てた。

その繋がりからの紹介で日本の資産家で、多くの資産を持つ令嬢と言う名目での

潜入である。そのためユニオンの不動産の多くを一時的にマリの名目にしたり、

アメリカ当局の協力でパスポートとビザを取ったり、かなり危うい工作もした。

この任務には何よりも東洋人風のマリの容姿と、魔術の術式による知識や心理眼が

必要だったのだ。マリとアリサとヒロはカジノの中に、美樹とエリカとジャンは

なにかあった時のため外で待機している。ボディーチェックが非常に厳しいことを

予想して、超小型の虫型のドローンを一つだけ中に入れ、見えない場所で

待機させた。勿論武器は持ち入る事は出来ない。三人は中に入りマリの持つ

ブラックカードで一番高額なチップを購入する。やるのはテキサスホームデムと

呼ばれる心理戦が大きく影響するゲームだ。ルールは手持ち二枚と一ラウンドごと

配られる五枚のテーブルカードで、降りるか勝負するかで決します。

そしてベットして掛けるチップも大きく影響するのだ。

極端な話、高額にベットしてそれに付いていけなければ、降りるしかない。

勿論、何らかの担保でチップを借りて、勝負も出来るが、それで身の破滅を

招いた人間が数多くいるのが、賭博である。そこでなんとマリは初日から、

百五十億円も勝ってしまう。そこで、顔を売って、そこのメンバーと繋がったり、

組織の深部まで探る作戦なのだ。その日、泊まるのは最高級ホテル、

ペニンシュラ・ニューヨークのスイート一泊二百万以上の部屋である。

カジノで、ある人物に近付いて、その部屋に泊まっていることをあえて告げる。

一部屋240m以上で寝室も二つ有りゲストルームや中にダイニングキッチンまで

有るのだ。娘たちはベッドで、ヒロはソファーで寝るが、娘たちは大喜び。

ヒロは何故か不安がつのる。1億ドルのチップは当然クラブに預けているが、こんな勝負をどこまで続けるのか。だいたいそれで関係者が釣れるのか、この一泊二百万に泊まり、相手を釣る必要が有るのか。ヒロはマリに【大丈夫か】と聞くが

【たかがお金でしょ】と答える。さすがマリアの跡継ぎ、肝の据わり方が違う、と

感じると同時に本当に俺の娘なのか?と不安がよぎる。しかし、友歌の面影はその

まま残るこの娘を本当に愛している。夕食は近くのスーパーでサンドイッチや

チキン、サラダ、そしてサプリで済ますことにした。ヒロはニューヨークの、そこが嫌なのだ、バカ高いお金を払って、外食する価値を感じないしスーパーの食材も

高い。そしてやはり日本とは食材の種類が違い、ヒロが料理したい食材が無い。

そのためヒロはオートミールをスーパーで買った。

戦場のキャンプでも良く使う、プロテインとオートミールを一緒に加熱すれば

美味しいのだ。プロテインが膨らみ、泡がこぼれるのには注意する必要があるが。

低脂肪で高たんぱく、良質の糖質も繊維質も取れる。翌日の朝はペニンシュラの

ビュッフェで朝食を取った。宿泊料金に含まれていたからで有る。

ヒロは意外に節約家で、良い物には金を出すが、価値を感じなければ一円も出したく無い人間なのだ。朝食を取っている時、早速マリの電話に電話がかかって来た、名刺を交換した男がカジノ以外で会いたいと打診してきたのだ。

早速部屋に仕込みをして、それらしく着替え、部屋で会う約束をしたヒロは

執事として仮装、アリサはマリの友人として、他の二人とジャンは

別の場所で待機している。その男はイタリア系アメリカ人で名前をリカルドと言い

不動産開発の会社の経営者であった。そして昨日行ったカジノの、オーナーの

友人だ。彼はマリとホテルで会うと、一緒にカジノを日本で経営しないか?

と誘って来たのだ。マリは当然断りを入れる【日本でやるのはリスクが大きすぎるわ

アメリカのように日本の司法は寛容では無いのよ、そしてまだ貴方の事を

良く知らないわ】と言い、そしてこう切り出す。【貴方はどのように日本でカジノを展開するつもり、またどのような客層を考えているのかしら、その計画書を見て協力するかどうか決める。ただし出資は50対50そして収益の見込みと出資規模も、

どこかの政府のように甘い考えなら当然お断り】と言った。その日も午後から

そのカジノクラブに出かけた。その日は、ほぼ勝ち負け無しにゲームを終え、

その掛けかたはカジノで評判を取り多くの人間が彼女と名刺を交換しようと近づいて来た。そんな中リカルドと一緒に、ある投資銀行の営業マンがやって来てマリに

計画書の概要を見せた、ネットを利用した会員制のカジノと野球やサッカーを

利用したスポーツ賭博で、総出資額が10億ドルであった。1ドル百五十円として

千五百億円を五割ずつ出資すると言う。計画はこうである、日本の中堅、ネット証券会社をまず買収して、その会社の傘下に入れる。その顧客情報を元に、富裕層だけにアメリカの捌会社からDMを送る、その投資銀行の金融商品を、そのネット証券を

通じて売買したり、不動産物件の投資ファンドを募ったりするのだと。

勿論投資商品は、正式に認可させ営業すると言うのだ。日本で個人情報が云々と言うが、ネット上での個人情報など全く管理されてないも同じ。いつの間にか知らない

会社からメールが来たり、ネット上に広告が出てきたりしている。なかなか狡猾な

戦略と言える。客層の選別もかなりクリアになる。顧客により攻め方や勧める物も

AIでの選別も簡単に出来る。彼らはそのノウハウを持っていると言うのだ。

そこでマリは出資の件は承諾した、しかし自分を出資者として名前を出すのはリスクが有ると言うことで、とある人物の名前でその銀行に送金すると言う。

それは予めアメリカの捜査機関が、裏で用意した口座からの送金だ。

それを辿れば、関係先の口座の証拠が一気に入ってくる、またマリの交換した名刺は

指紋などの情報が多く含まれる。当局はそれを元に深堀した捜査が出来るのだ。

マリが勝ち取った、カジノの金は、何処に行ったのか、ヒロには不明だ。

マリの懐には入ってないのは事実だ。その任務が終わると、アメリカでの次の任務にそなえ、ユニオンが所有する不動産会社のコンドミニアムに移動した。

ヒロは高級ホテルに泊まるなら、ニューヨークではなく海の綺麗なリゾートで

のんびり過ごしたい。価格もグルメもロケーションも、そちらが価値が有るし、経済効果も貧困層に流れる効果が大きいと思っている。ニューヨークに行って二週間、

八月中旬に差し掛かった、ヒロと娘たちはニューヨークでも修行は欠かさず

行っている。武術の修行は暑さを避け早朝にセントラルパークで行い。

そしてフィジカルトレーニングは、平日の午後の空いている時間にマンハッタンの

GYMでダンベルやバーベルを使い行います。ヒロ達にとっては負荷の重さが

足らないのだが、種目を工夫して負荷を高め、筋肉を追い込む。

例えば下半身の種目など片足に負荷が掛かる物にしたり、一回にかかる負荷時間を

長くとる。スロートレーニングや、二種目三種目のトレーニング種目を連続して行う

スーパーセットやトライセット方式で追い込んだりして負荷を強くする。

負荷の種類を変えることで新たな刺激が加わり筋肉が進化するのです。

食べる食事は日本と違い、単調なメニューが増えるが、ちょうど良い蒸し焼き用の

鍋を人は見つけ、肉の種類をその日で変えたり、白身魚にしたりして野菜と一緒に

蒸し焼きにし、ソースを色々変えて食事する方法を見つけた。自分で天才だと娘たちに自画自賛して自慢しているヒロだ。そんな時、マリアから新たな任務の連絡が

入ってきた。ノースキャロライナに有る、軍施設に武術の指導に行って潜入し、武器の横流しの調査をすると言うのだ。ニューヨークもあと数日と言う時、娘たちに事件が起きる。娘たちに休みを与え、ニューヨークの街の観光を許した時だ。

途中で、ふた手に別れ、マリとアリサは自由の女神、エリカと美樹は

タイムズスクエアーで色々買い物して居た時のことだ。エリカも美樹もやたらと声を掛けられる、ナンパである、日本人はニューヨークで良くナンパされるのだ、

特にタイムズスクエアーは多い。ヒロは仕事柄アメリカ人の知り合いも多くいる、

彼らは日本で白人の男子は特にクラブなどで、やたらとモテると言う、日本人女性

から、良く声が掛かって来るらしい、日本人女性は、ニューヨークでは大人しい上、金を持って居る、と勘違いされたりする。そんな訳が無い、日本人は貧しいのだ、

勿論、アメリカ旅行する層は少しは豊な部類だが、日本人は今や先進国で有数の

貧乏民族と言える。また日本に旅行したことの有る、アメリカ人は夜の繁華街を

見て、色々な意味で日本人女性を勘違いしているのだ。

ヒロの知り合いなどは、ヒロに【日本人の女はエッチな女が多いのか】などとヒロに聞いてくる。その理由を聞くとクラブなどで白人と言うだけで声をかけて自分から

ついて来ると言うのだ。ヒロは【その女達がそうだっただけだろ】と答えるが、

強ち事実無根とも思えない部分も有る。美樹たちは全て無視し、大抵はそれで終わるのだが、エリカは一見非常に大人しい。美樹のように露骨に拒否感を出すタイプでは無い。そこを勘違いされたのか、物凄く執拗について来るグループが居た。

美樹が少し前を歩いている時、エリカの腕を掴んで来た、エリカは振りほどくと

何か、差別的な言葉を発して言ってる、それが美樹に聞こえて美樹が振りむき

蹴りをボデイに入れた、軽く三日月蹴りを入れるとボディーを抑えうずくまる。

もう一人体のデカい男が、美樹に掴みかかる美樹が切れ、その左手の肘関節に手刀を入れ、ほぼ同時に喉に抜き手を入れ、金的に蹴りを入れ倒す。

一人がナイフを手にしようとしたのを、エリカが見て、ハンドバックを首の後ろに

ヒットさせると、その瞬間長い間合いから人中に、飛び込みの直突きをヒットさせた。中指を突起のようにした、中指一本拳と言う打撃法で軽くヒットさせただけだが、その痛みで、その男はしゃがみこんでしまった。ハンドバックで後ろから、

一本拳で前から、衝撃の挟み撃ちで下手をすれば、卒倒してしまう急所だ。                           人々の注目の中、3人の男を打ちのめし、騒ぎに成った。すぐに誰かが騒ぎを

治めようと警察に電話をかけたようだ。ちょうどその時、マリとアリサが待ち合わせの時間で、その場所にやって来た。マリ達が騒ぎを聞きつけ、合流した時は人だかりに囲まれて、エリカがオロオロしてた、そして美樹はエリカを庇って肩を抱いているようだ。相手は腹を抑えしゃがんだり、金的を抑えて居たり、一人は倒れて

起き上がれない。アリサたちが合流すると同時に警察が到着して事情を聴く。

マリが美樹に話を聞いて警官に説明してアリサがヒロに電話をして大騒ぎだ。

ヒロがジャンとユニオンの専属弁護士に連絡を入れる、そしてジャンとヒロも

そこに急いで向かった。電話を受けてヒロが到着するまで十五分くらい掛かったが、彼女たちはそこで警官から話を聞かれていた。マリが機転を利かせ病院に連絡して

そこに三人をタクシーで運ぶ手配をした。最初に美樹に蹴りを入れられた男は腹を

抑えてはいるが骨は大丈夫そうだ。体のデカい男は肘が動かないし、玉金が入ったままで苦しんでる。最後のナイフの男はまだ意識が朦朧として起き上がれそうに無い。

ジャンが警官に身分証を示し警官と一緒に3人を病院に運んだ。

そこでユニオンの弁護士も病院に駆けつけ、マリと二人で警官に事情を説明して逮捕を逃れた。病院ではエリカが号泣して、美樹はエリカを慰めながら、マリは男たちが

回復するのを弁護士と待って、ジャンは関係各所に手を回し、ヒロは呆然とする。

ヒロにしたら戦場以上に地獄絵図に思えるシュチエーションだ。

ヒロがエリカに【泣かなくて良いから、落ち着いて説明しろ、どうして

こんなことに成ったんだ】と聞く。それを聞いて美樹が【あの金髪ロン毛が、

ひつこくエリカちゃんに絡んでファッキン ボウリング. イエローととか言って、腕を掴んで来たの】と言う。【美樹はその時どうしたんだ】と聞くと黙ってる。

エリカに【それでどうしたんだ】と聞くと黙って答えない。

するとその金髪が、検査から腹を抑え出て来て【こいつが俺を蹴りとばしたんだ】と叫ぶ。ヒロは【大きな声を出さなくても聞こえる、話せるようになって良かったな】と英語で話す。【どこをやられた】と聞くと{腹をけられたんだ}と答える。

ヒロが【見せてみろ】とシャツをめくると、ほんのり赤く成ってるが

他に影響はなさそうだ。【まあドクターの診断を待とう】とヒロが言うと、ロン毛が警官に【こいつを逮捕してくれよ】と美樹を指さす。ヒロが【あくまでも提訴を望むなら、こちらも性的虐待と人種差別と性的差別で訴えるしかないな】と警官にも

告げる。ユニオンの弁護士が名刺を渡しその男の身文書の提示を求めた。

美樹とエリカのパスポートを出させ、お互いの身分を、示す事にしようとすると

モジモジしている。警官が不思議に思い、提示を求めるが今は持っていない、

と言う。腕が動かない男と、ナイフの男には、マリは治療費用をこちら持つことで

話を付けた様だ。どうやら三人とも前科持ちで、執行猶予中であったようだ。

他の警官が観衆に目撃した様子を聞き連中が付け回したことが証明され事なきを

得た。ジャンがニューヨーク警察に手を回したことも功を奏したようだ。

今回は事なきを得たが、今の世の中どっちが良い悪いでは無く、一つ間違えれば

誰もが、逮捕される危険が有る事は確かだ。警察や検察や判事との巡り合わせが

悪ければ、思いも寄らない目に合う可能性は誰にでもある。言い方を変えれば、正義など時の運で、コロコロ変わるのだ。ヒロは宿舎に帰り美樹に【皆に言う事が有るんじゃないか】と言うとまた黙っている。エリカはそれを聞いて【私が悪いんです

、御免なさい】と謝る。ヒロが美樹に【黙ってる人間が居るがどうしてだ】と言うと

ジャンが【まあ良いじゃ無いか、事なきを得たし、原因はあの男が悪い】と言う。

ジャンに【今は任務でこっちに来ているんだ、ユニオンの迷惑に成る行動を

取ったことは、謝る必要がある】とヒロが言うと美樹はようやく、【御免なさい、

エリカちゃんがバカにされて】と下を向く。マリが【もう怪我をする程やっては

ダメよ、治療費が大変なんだから】と言う。ヒロは【幾ら掛かりそうだ?】と気に

成る事を聞いた。マリは【判らないマリアママに聞いてみて】言う。

ヒロは今、一番電話したくない人物だ。【マリアはこっちに回すとか言って居たか?】とヒロが聞くとマリは【判らない、ママは困ったわねと言っていたわ】と言う。

ヒロが暗い気持ちになったところで、美樹が他人事のように【先生、気にしないで、それよりお腹すかない?】と言う。ヒロが【美樹ちゃんこっちに来てご覧】と言うと【お腹空いた、ごはん食べよう】と聞かない困ったちゃんであった。

ジャンがそこで【今日はヒロの奢りで、ニューヨークステーキでも食べに行こう】

そう言うと美樹が【賛成】と言う、そして【エリカちゃんも食べたいよね】とエリカまで巻き込もうとする。エリカはヒロやアリサの顔を見て、様子を伺い。

再度、美樹を見て【私は別になんでもいいけど】と小さな声で言う。

ヒロは【バカ高いステーキが、どれだけの物か、味を見てやるか、どうせアメリカ人は味音痴だから、期待はしてないが】と言う。ジャンが早速、マンハッタンで

古くから有る、有名なステーキ店に電話をかけて予約が取れた。

この店ではなんと前金でカード支払いの必要が有る。日本でも大問題に成っている、キャンセル問題対策だ。ヒロ達はTボーンステーキとヒレステーキ、シーフード等を予約した。ヒロからすればバカ高い値段だが、ニューヨークにすればこんな物

だろう。量や肉の種類で違うが、一品が、100ドル目安と言う所か。ヒロとジャンはビールで娘たちはオレンジジュース。そうアメリカはアルコールは二十一歳からである。そして年齢チェックは必ずされる。美樹はヒロにこの国は頭が変だと文句を

言っているが、これがこの国のルールである。ヒロはメニューが運ばれると

【なんて粗雑な盛り方なんだ、アメリカ人は美的感覚もバカなのか?】と日本語で

人種差別発言をかます。マリが【パパ冗談でもヘイトはダメよ、聞かれたら逮捕されちゃうわよ】と言う。ヒロはアメリカ人が嫌いと言う訳では無い。親しい知り合いも居る、ただこの皿の盛り方は気に食わないのだ。まあアメリカ人を一括りにした時点で、人種差別で有ることは間違いない。マリが【まあ頂いて見ましょう】と言って

食べると【悪く無いお味よ】と言う。ジャンも【流石だな、ここは政治家や有名人も来た、店らしいからな】と言う。ヒロも食べてみると、味は悪く無い。

熟成肉と言うものを初めて食べたが、肉自体の差材は悪く無い。

ヒロは【味は悪く無いが、このデリカシーの無い盛り方は、何とかならない物かね】と言うと、マリが【パパ、それがアメリカの文化でしょ、パパはバーボンやロックや

ジャズは認めているじゃない】と言う。ヒロは【そうだな、これがアメリカの田舎で、安い料金で出されていたらベタ褒めしていたかも知れない】と言う。

マリは【大きな声では言えないけど少しお高いお値段ね】と言う。

とても百五十憶円の博打をしたり、ペニンシュラのスイートで、ビジネスマンや銀行を騙した同一人物に見えない。彼らは今は泳がされているが最終的に当局に法を

こじつけられて訴訟されてしまうだろう。ユニオンの目的はその先に居る連中で

ある、根源を潰さなければ悪い循環は回り続ける、もしかするとそれは、人間自身の遺伝子の中に有る物かも知れない。もしそうならば人間はいずれ、自分自身で

滅びゆくのであろう。宿舎に帰り、ヒロが久しぶりに買って来たバーボン、

ブッカーズを飲んでいると美樹が【先生、ステーキのお礼】と言って

タイムズスクエアーで買ったチョコレートを渡す。

ステーキのお礼にしたら、安上がりだがヒロは【ありがとう】と言って受取り

そのチョコをつまみに、グランドファンクレールロードのハードロックを聴きながら

バーボンを飲んでゆっくり過ごす。明後日には準備して、ノースキャロライナに移動しなげればならない。移動の日に成り、ヒロ達は空港に到着すると、軍の特別捜査官に案内され基地に行く。軍の武術指導で3か月滞在すると言う名目だ。

捜査官の名前はジャック、ジャンと知り合いの様だが、ヒロ達には余所余所しい。

ジャンがヒロを武術マスターのヒロと紹介すると、一応握手をするが、

何故か少しバカにした感をヒロは感じる。美樹が小声で【なんかちょっと感じ悪い

よね】とヒロに言うとヒロは【まあよくある事さ、信用してないんだろ】と言う。

アリサが【私達が居るから?】と聞くと【それより俺の事じゃないか?小柄な東洋人

だから、自分の体格と較べ、キッドとしか思えないんだろ】とヒロが言う。

美樹が【解って無いよね、あんな馬鹿知能、海蛇を使えばすぐ殺せる】と言う。

ウミヘビと言うのは水樹達の里で使う毒で手裏剣や武器に仕込んだりして使う。

ヒロが【お前、ウミヘビを持って来ているのか、どうやって持って来たんだ

今回は普通に税関通って来たのに】と言うと。美樹は【全然簡単だよ、栄養ドリンクの瓶で判らないように偽装したから】と言う。ヒロはあきれて物が言えない。

マリが美樹に【黙って持ってきちゃダメでしょ、皆に迷惑掛かるんだから

そおう言う時は、ちゃんと知らせて私が隠してあげるから】と恐ろしい事を言う。

ジャンが【何をこそこそ話しているんだ】と英語で聞く。ヒロが【気にするな、内輪の話だ】と答えた。基地に着き荷物を置いたら早速、格闘教官の責任者の所へ、ヒロ達は皆で挨拶に行った。ヒロが教官に挨拶すると、練習をしている皆を集めヒロを

紹介してヒロにエキジビションの試合して、実力を見せてくれと言う。

言葉は丁寧だが慇懃無礼な感じだ、ジャックはニヤニヤしてそれを眺めている。

ヒロは【嵌められたな】と日本語で呟くとアリサが【やっつけちゃったら】と言う。

ジャンがそこに制止に入る。ジャンは教官に【失礼だぞ、やるなら俺が相手をして

やる】と言うと、ジャックが【俺たちアメリカ人は、実際に見ないと信用しないんだ、お前の実力は俺が知ってるが、そのマスターは知らない】と言う。

美樹が【何でも有なら私が相手にする】とヒロに言うと

ヒロが【アホ、殺したり大怪我させる訳に行かないの】と美樹に言う。

ヒロは【総合ルールで良いのか?】と司令官に聞くと、教官は【バーリトードで】と

承諾する。バーリトードと言うのは、最小限のルールでと言う事で、目つき、金的、噛みつき以外は認められ、相手がタゥプするかギブアップするまで行うルールだ。

ヒロがTシャツとハーフパンツに着替えると、足の筋肉が始めて露わになる。

スクワット、300キロ以上の負荷で追い込み作った足だ。

その足がストレッチする、とまるでタコのように、柔らかく曲がる。

ベンチプレスとて、百五十キロを挙げる。ヒロは素手、相手は総合ルール用の

グローブを付けてる。身長190位で体重が85くらい、ボクサーの体つきの男が

リングに上がる。身体は細身だがスピードは有りそうだ。男がアップライトに構え、距離を取って、フットワークを使い出した。間違いなくスピードタイプで

アウトボクシングであろう。総合には向かない構えだが、余程フットワークとハンドスピードに自信が有るのだろう。ヒロは逆に腰を落とし、クラウチング気味に

構える。相手のウウォーミングアップを見て、フリッカーのような、下から入る

ジャブだと読んだのだ、かなりのスピードで来た左ジャブに、右の肘を拳に合わせ

カウンターの肘打ちを拳に入れ、相手の意識が拳に行気が上に行った所に

左ローで、脛を相手の脛に、ヒロの鍛えた脛を当てた。ヒロがその後右斜めに距離を取り構えると。相手は手を振りギブアップのジェスチャーをする。

脛が骨折しているか、ヒビが入って居るのだろう。レフリーが直ぐに止めて、ヒロがジャンに救急車を呼ばせた。彼の仲間が付き添い、救急車で病院に連れていった。

ヒロがジャックと教官に【どうする?お前も試して見るか?誰かやりたい奴がいたら

今日のうちだ、明日は帰るかも知れない、今日は誰でも相手をするぞ】と英語で

言う。するとその中で一番でかい2メートルくらいに見える体重140位の男がヒロに【俺がやると言う】大人と小学生くらいの体格差だがヒロは受ける。

その巨体がブンブンと太い腕でパンチを振り回してくる。今度はヒロが

アウトボクシングで相手の動きを見、距離を取りながら相手の周りをまわる。

巨体の割にはスピードも有るが直線的な動きで、ヒロは左右構えを変え、相手の正面には立たないで、今度は膝上の膝と太ももの間に背側で、何発もローキックを

同じ場所に入れながら逃げ回る。このくらい巨体を相手にする場合、頭突きや八極拳の頂心肘【肘打ち】が有効だが捕まると厄介に思い、足を殺して様子を見ることに。

2分ほど立つと明らかに動きが鈍くなって居る。相手の足がふらついた所、右回りと見せかけ八卦掌の歩法で、左の死角に入り無拍子の左ハイキックを顎に入れる。

相手が崩れるとともに、渋川流柔術の鉈落とし(大外刈りで投げると同時に、

体重を乗せて一緒に倒れ、肘を相手に体重をごと叩き込む技)を掛ける。

決して良い子は、まねをしてはダメな技だが、相手が140kgのデカ物だから

死にはしないと思った、内臓を損傷したのか、もがき苦しんでいる。

これも直ぐに救急車をもう一台呼んで、基地内の病院に送った。

ヒロはジャックに‘【もう良いか?俺も移動で疲れている、やりたい奴が居るならやる怪我云々は責任持たない、自己責任だ】と言う。美樹は見たことかと言う顔で

ジャックを見ている。ジャンに【宿舎に帰るぞ】と言い宿舎に帰った。

美樹は宿舎で【流石先生、やったね】と言う。ヒロはため息をついて【良い事有る

ものか、マリアから長々と文句を言われる、俺も美樹に偉そうなことを言えないな】と言う。マリが、にっこり笑ってヒロを見ている、アリサは心配そうにヒロを見て

【あの人たち大丈夫かな】と言うと【多分死にはしない、急所に入れた訳じゃない、

救急車も呼んだし、明日見舞いには行こう】と言う。美樹が【先生お腹空いたね、

動いたから何か食べないと】と言う。ヒロが【お前は動いて無いやないか】と関西弁で突っ込むと【めちゃ動いたわ、ウウォーミングアップやストレッチ付き合った

やないかい】と関西弁で返してくる。美樹の性格が時々、ムードメイカーに成るのであった。ヒロがジャンに電話して、食べる所を探してくれるようにと言うと基地内のカフェを教えてくれた、ジャンも心配して一緒に食べることに。マリとエリカは

サンドイッチとサラダ、他はハンバーグとバケット。美樹はヒロの顔色を伺いながらビールを頼んでる、ヒロも憂鬱な気持ちのためビールを頼んだ、ヒロは自分の

せいで、美樹がどんどん、やんちゃに成ったらと、心配だった。

因みに基地内には、特別捜査官が用意した別のIDで、入って居るので、娘たちも

身分上は二十一歳以上だ。ジャンはそんな美樹が見ていて楽しいようで、美樹は

ユニークで明るいと、褒めているか貶しているか、判らないコメントをよくする

のだ。ヒロは、売店で置いてあったブラントン(バーボンウイスキー)とナッツを

買い、一人で飲んで居ると、予想通りマリアから電話が入る。

マリアが【何をしているの】と聞くので【別に何もしていない】とヒロが言うと

【どうせ一人でお酒を飲んでいるのでしょ】と言う。ヒロが黙っていると

【一人でお酒を飲むのは良くないわよ、そう言う時はマリやジャン、仲間と一緒に

過ごしたら】と言う。ヒロが【そう言う時ってどんな時だ?】と言うと、

【イライラしたり、落ち込んでいる時よ】と言う。ヒロは【別に落ち込んでは

居ない】と言うと、マリが【ジャックは別にあなたを嵌めようとしたんじゃ無いわ、彼は一緒に仕事するに当たり、貴方の実力を見たかったのだと思うわ】と言う。

ヒロが【違うね‘、明らかに俺を見下しているのを最初から感じた、それは勝手に

すれば良い、だがそれなら自分で試せってんだ】とイライラをぶつける。

マリアが【それで相手をケガまでさせたのね、困った子ね】と窘める。

ヒロが【余裕が無かったんだよ、見下される訳に行かない】と言う。

マリアが少し厳しい口調で【貴方なら引き分けで勝負無しや、優勢勝ちの

選択も出来たのでは?貴方のイライラがその余裕を無くさせた、戦場なら誰か死んだかも知れない、それは貴方だったかも】と叱る。ヒロは【解っている、どうせ俺は

まだまだ弱い、ロンやジジイの様には成れないさ、だからアメリカで仕事なんか

嫌だったんだ】と答えると【明日朝一番で、基地の司令官のサミエル大将に会いに

行きなさい仕事の依頼主の責任者よ、これも大切な仕事よ】と言って電話を切った。

ヒロは全く勝手なものだ、俺が嫌な仕事ばかり押し付けて、と思ったが

どうせ何を言っても、うまく言う通りに動かされると思い諦めるのだった。                  少し経つと娘たちが揃ってヒロの所に現れ、マリが【ママが明日、司令官に皆で挨拶に行くようにって】とヒロに言う。アリサが【司令官って凄い偉い人なの?先生】と聞いてくる。ヒロが【さあな、大統領よりは下だろ、俺はアメリカじゃないが、何人か大統領や大臣に会ったこと有るが、皆同じ人間だった、神様みたいなのは居ない】と言うと、美樹が【どうせお爺さんだから、適当に褒め上げて持ち上げてれば良いのでしょ】とヒロに言う。エリカが【美樹ちゃんそれはダメなんじゃない。きっとバカにしているのがバレるわよ】と言う。美樹が【ふーん、でも良いじゃん、私偉い人

なんかどうでも良いし】と正直に言う。この師匠にこの弟子有りだ。翌日、ヒロ達は全員で司令官質に挨拶に行くと。サミエルが出迎え【貴方がマスターヒロですね】と丁寧に出迎える。ヒロが【ユニオンから派遣されたヒロと言います】と頭を下げると

彼が【お会い出来て光栄です】と握手を求める。ヒロが両手を差し出し【よろしくお願いします】と握手をして頭を再び下げるとソファーと椅子に皆を座らせた。

早速任務の話かと思えば指令は【昨日はご活躍だったそうですね】とヒロに言う。

ヒロが【お恥ずかしい話でご迷惑をお掛けして申し訳ございません】と詫びる。

指令が【凄い武術だったとお聞きしています】と再度ヒロに言うとヒロは【勘弁して下さい、未熟な者で本当にご迷惑をお掛けして申し訳ございません お許し下さい】と立って深々と詫びた。再びヒロに座るように言うと【貴方はマスター源三のお孫さんと聞きましたが本当でしょうか】と言う。ヒロは驚いて【祖父をご存じなの

ですか?】と聞き返すと指令は【マスター源三は、私の命の恩人でヒーローなの

です】と言う。ヒロは【私は源三の孫ですが、祖父は二十年以上前に亡くなりました】と伝える。ヒロは源三の話を聞くのが好きでは無い、自分は源三とは違うと言う思いが強いのだ。しかし、こんな所でも源三の縁が有るとは、ヒロはびっくりする。

源三の話を切り上げたいヒロは、早速、任務の話を切り出す。それぞれの共有して

いる情報と、作戦の大筋を擦り合わせるためである。武器の横流しは、射撃訓練の

武器管理者と経理部の人間が関わっている。その後の経路や、後ろで動いてる人間を探り、証拠を見つけて欲しいとの事である。打ち合わせが終わるとサミエルはヒロに【彼女達も武術をするのですか?】と聞くと、【彼女たちも、それぞれ武術を身に

付け、優秀な技術を持つユニオンのエージェントです】とヒロは、娘たちを紹介

する。彼は【時代は変わったのですね】とヒロに言うと。ヒロは【指令は二つ勘違いをなさっています、一つは武術は本来、弱者が権力や力の強い者に抗う為に発展した技術です、そして女性は男性以上の可能性を秘めた能力が多く備わっています、女性と言うだけで侮ればその時点でアドバンテージは女性に有るのです、貴方方は

ベトナムや中東で苦い思いをされたことをお忘れですか】と言う。

指令は大きく頷き【其の通りです、私達は勝てると思い戦いを始めましたが、

その代償は大きな物に成りました】と答える。それを聞いていた美樹が手を挙げて【どうして勝てると思っただけで戦いを始めたんですか?】と聞く。

マリが【美樹ちゃん戦争が非常にお金に成る人が居るの、銃一つで鉄屑が百万円の

価値に成るの、それが何万丁も作られる、ミサイルに至っては一つ壱億円もする物も

有る、戦争が始まれば、大きな利益や権力が手に入る人たちが、議論を

そう持ってくる、自分たちは危険な戦場に行きもしないのにね、またその議論に

乗せられ勇ましい事を言う人も居るし、逆にそれに反対して票を集める人も多く

いる、複雑に絡み合い争い会うことで、更に糸が絡まって、また争いや分裂が

起こる、悲しいい事ね】と言い、美樹は【なんか気の毒、税金を使って自分の仲間も犠牲に成るなんて】と言う。ヒロが【そんなことに成らないため、俺たち

エージェントが動くんだ、一度、争いが始まると、大きな損失や犠牲が生まれる、

そして争いを止めるのは、防ぐより大きな力を必要とするのは、アフリカで知って

いるだろ】と言うと美樹は【それじゃお手当をたんまり貰わないとね、先生】と

オネダリ少女に変身するのであった。ヒロはその後、予定通り怪我をさせた兵士の

見舞いに行く事をジャンに伝えた。マリ達には一旦宿舎で待機するように指示すると

美樹がエリカと基地内を探索したいと言う。ジャンと一緒ならばとヒロは許可を

出し、病院に出かけた。美樹の長所の一つは物怖じをしない行動力と、人を何故か

引き付け、親しくなる性格である、これが基地内の調査に非常に役立つと、ヒロは

思ったのだ。第一段階として、基地の中に親しい人間を多く作る事を、前もって

指示をしていた。美樹は早速調査&探検と娯楽を始める。美樹自身は趣味と実益を

兼ねた任務で、大喜びだがヒロには心配でもある。エリカとジャンと同行させる事で、リスクを減らすようにヒロはした。一方ヒロは病院に見舞いに行くと、最初の

相手であったボクサースタイルの兵士を見舞った、名前をレイと言う。彼は、元全米ボクシング、ライトヘビー級のランキングにも入ったことが有る選手らしい。

ヒロは看護師に病室を聞くと、彼の部屋をノックして、入って行き彼に怪我をさせたことを謝罪した。すると彼は【これは自己責任だ、格闘技でケガをするのは、自分が弱いからだ】と言う。ヒロは【レイ、君は決して弱い訳じゃ無い、ルールや状況が

違えば、君と俺の立場は逆転していた、君と俺があのルールで戦うのはフェアーでは無いんだ】と言う。レイは【マスターは謙虚なんだな、正直俺はマスターの体格を

見て勝てると思っていた、それなりに自信も有ったんだ、でもそれは勘違いだった

ようだ】と言う。ヒロは【それは君の誤解なんだよ、俺が勝てたのは、先ず君の心理を利用したこと、そして君に知識も見識も無い技術と術式で闘った事だ、ボクシングで戦えば俺は君にkOされただろう】と言った。レイは【俺は君の足を見て

ローキックで来ると思っていたんだ、でもエルボーでパンチを合わせるとは凄い技

だな、あの技術は空手なのか?】聞くとヒロが【古式ムエタイの技術で、その後の

キックとセットの技だ、本当はリングで見せてはダメな禁術だ君は何でまだ

若いのに、ボクシングを止め、軍に入隊したんだ】と言う。レイは【金が必要

だった、軍に入隊して金を貯めて、また再度ボクシングにチャレンジするつもり

だったのさ】と言った。ヒロは居た堪れない気持ちに成った。そして彼に【拳は折れてないだろ?】と聞くと【拳は大丈夫らしいが脛にヒビが入っているらしい、当分、ボクシングはお預けさ】と言う。ヒロは【もし拳や足に違和感を感じたら、良い医者を紹介する、治療費も俺が出す必ずボクシングに復帰するんだ】と言う。

【何故そこまでするんだ?】レイが聞くと、ヒロは【俺はワールドボクシングは必ず

録画して後からでも見ている、君が出ていたら自慢できるだろ、俺の友人として、

俺が勝ったことは秘密にしておいてやる】とジョークを言い部屋を後にした。

もう一人のスーパーヘビー級の方は検査の結果内臓に少し損傷は見えるが、日帰りで帰ることが出来て、投薬治療で様子を見ることに成った。足のダメージは当分残るが骨折はしていないとの事だった。流石140kのスーパーヘビーの頑丈さはたいした物だ。ヒロは、見舞いを終えると、宿舎に帰りその後、皆で集まり昨日のカフェで、ランチを取りながら、打ち合わせをした、カフェでヒロ達がランチを食べていると

捜査官のジャックが現れそこに座って良いかと聞く。ジャンが呼んだので有ろう。

ヒロが【どうぞ】と言うと、近くに座り【昨日はすまなかった】と言う。

ヒロが【何故謝る、やったのは俺の判断だ】と言うジャックは【レイの怪我の

具合はどうだった?】と聞く。ヒロが【思ったより軽いと思うが、脛の骨にひびが

入っているそうだ】と言う。すると美樹がジャックに英語で【ドゥ ユウ ルック

ダウン】見下してる?聞く。そして【ディスクリネイション】と差別?と言う。

ド直球である。ヒロはビックリした、語学の得意で無い、美樹が自ら英語をしゃべり

ド直球でジャックに言葉を投げつけたことに。マリが【美樹ちゃん】と制止する。

ジャックが英語で否定して説明する。美樹がエリカに通訳をさせて【日本人にも韓国や中国をバカにしたり、貶したりするバカが居る、私はそんな奴を居るとバカだと

思う】と言う。ヒロが【もういい、解っているから止めろ】と美樹をなだめる。

マリがジャックに【私たちは仲間でしょ、仲良くしましょう、ここに来た目的は

同じ、争いを起こそうとする人を止める事】と言うと、ヒロはジャックの肩をさわり握手を求める、すると美樹もそれを真似てジャックに握手をする。つくづく美樹の

能力には驚かされる。その後ヒロはトレーニングするため基地のトレーニング施設に行き、娘達には二手に分れて情報収集に。マリと美樹はジャックと同行して

ボウリング場に、アリサとエリカはゴルフ練習場に行くことに成った。

アリサとエリカはたまに、ヒトミに付き合い、ゴルフの練習場に行ったことが

あるのだ。特にエリカはゴルフの才能が有ると、ヒトミはヒロに言ってエリカをよく

連れ出していた。エリカは武器を自由に操る能力に長けている、道具を使う能力にも長けているのかも知れない。一方、ヒロがトレーニング場に入ると、先日の格闘技の教官がトレーニングをしていた、ヒロは挨拶をしてトレーニングを始める。

今日は脚をドロップセットでトレーニングする日だ。ドロップセットは、短時間で

筋肉を追い込むため、非常にキツイ負荷を与える。例えばスクワットを

ウォォーミングアップの後に、高重量の300Kgで、限界の回数まで行う、その後すぐにバーベルの重さを少し落とし、270kgで限界までやる、また同じように

240kに落とし限界までやる、限界が来て直ぐに少しウエイトを下げ最後150k位まで下げ、1クール6セット位を行う、セット間の休憩を挟まないので非常に

きつく短時間に限界まで追い込める、ただし毎回行うと疲労が蓄積する上、

その刺激に慣れて効果が、薄まってしまうので、要注意である。スクワットを終えた後ヒロは更にマシーンで脚の筋肉を追い込んでトレーニングをする。

教官はヒロがトレーニングを終えると声をかけて来て【いつもこんなハードに追い込んでいるのか?】と聞く。ヒロは【追い込むのは当たり前だろ、ただドロップセットはいつもやっている訳では無い、時に刺激を変えないと、筋肉が刺激に慣れてしまうからな、勿論普通のセット法の日もオーバーロード‘(加負荷)の原則に従い1kgでも重い負荷や、回数を増やすことを意識している】と言う。教官は【君たちの武術はもっと魔法のような物だと思っていた】と言うと、ヒロは【馬鹿らしい、それは君達が古武術の術式を理解出来ないだけで、何百年もかけて術式を進化させたから、武術は受け継がれているんだ、スポーツ化も一つの進化の方向だが、俺たちの先人は違う方向の、進化を選んだのさ】と言う。よく気の力を、魔法のようにとらえる人が居るが、脳と神経伝達力の伝え方を極めたものを、そのように表現するだけである。

気の力を使うには、そのイメージや感覚こそが、秘伝なのである。野球のレジェンドが、教え子のバットの素振りを聞いてそれだと教えたのはそう言うことだ。

ヒロは格闘技の教官に【この基地で狙撃のめ旨いのは誰だ?】と聞く。彼はダニエルとトミーと言う名前を出す。二人とも射撃を教える教官だが、性格を聞くとダニエルは評判が悪く遊び人で金に汚い、博打と酒と女と三拍子揃った男だと言う。

一方でトミーは真面目で大人しく、皆に親切な男らしい。一方アリサとエリカは、

ゴルフ練習場の打ちっぱなし場で、有る老人と三十代の男を探したピーターと言う

経理部の人間だ。彼が今回の事件に関わる、疑惑が持たたれている人物だ、丁度その近くの打席が空いて居たので、そこで練習を始めた。エリカが打っているとピーターの隣に一人の老人が来た、アリサが読唇術で唇を読んで居ると、元の上官で退役軍人らしい。老人が打ち始めると、アリサが声をかける、ごく自然に、先日主人が、この基地に赴任して来て、ゴルフに来た、と言う話をする。アリサはジャンの新妻、と

言う設定で来ているのだ。エリカはアリサの妹として来ている、アメリカ人には日本人の顔は選別しにくい、兄弟と言っても違和感が無いのだ。これは逆もそうだ、白人の顔は日本人には判りにくい、ドイツ系だのイギリス系だの言われても判らないのだ、そしてアリサはウイルソンにエリカを妹と紹介する。ウイルソンはアリサが結婚していることに驚く、アリサは見た目より年が行っていると言う。勿論初対面で年齢を聞くようなことを彼はしない。エリカがウイルソンに挨拶をして【ゴルフを教えて下さい】と彼に言う。ホステスがジジイの金持ちにと被くベタな手法だが、これは

スタンダードにどこでも通用するのだ。ジジイのゴルファーは、教え魔と言う、習性を利用した手法である。ウイルソンはエリカにゴルフを教え、それをエリカが受け入れ上達する。ウイルソンはエリカの才能に驚いたようだ。エリカも満更では無い様子だ、任務を忘れてゴルフに興じている。その自然さが功を奏している。

エリカとウイルソンがゴルフに興じてる間、アリサはトミーに声をかける。

ウイルソンが親しくしていることで、トミーの気が緩むことを期待してである。

このような作戦は機を焦ると失敗するが、思いの外うまく行った、エリカの

ジジイ殺しのお陰であろう。ゴルフの後お茶を飲み、なんと二人はコースに誘われたのだ。帰って来てエリカはそれをヒロに自慢する。【先生、私ゴルフの才能有るって言われた、プロを目指せるんだって】と言う。ヒロは【そうか良くやったな、でも

それはエリカが中学性ぐらいに見えたからじゃ無いかな?プロは大変だと思うぞ】と言う。エリカが‘【エーッでもプロゴルフのチャンピオンは四百万ドル位、稼げるって

それ以外にスポンサーがついて、年収十億円も夢じゃないし、洋服や色んな物がタダで貰えたりするらしい】と言う。ヒロは【そうだな、その前にゴルフのルールと

マナーを覚えないとな】と言い。【エリカ、コースデビューは来週週末だろ?アリサとお前は、それまでゴルフマナーの特訓だな、至急ユニオンから講師を派遣して

もらう】と言う。二人は毎日2時間、オンラインでマナーとルールの勉強をすることになった。ヒロはゴルフ講座の後、心配で【どうだ面戸臭いだろ?】と二人に言うと

エリカは‘【ハヤメ御婆様のマナー講座よりか簡単だよ】と言う。ヒロは矢早の里での事を思い出し【あのババアのマナー講座を受けたのか】とエリカに言うと【うん、

毎日一時間、弓や武器の修行の後】と言う。【御婆様が女の嗜みだって言ってた】と言う。ヒロはその度に、ハヤメに文句を言い衝突していたが所詮、空しい抵抗だったことを思い出した。美樹はジャックとマリと、色んな遊技場やバー等で潜入して、

友達や遊び仲間を作り情報集めをしていた。その夜、夕食を皆で取りながら、更に

打ち合わせと、今後の事を話し合う。早朝は娘と達とヒロは朝修行、その後ヒロと

美樹、そしてアリサとエリカがツーコンビで別の場所で活動することに成った。

昼は美樹とヒロは手徒格闘場で、武術の指導を、ジャンとジャックは射撃の教官講師として兵士の指導に、マリは心理カウンセラーとしてカウンセリングに入る。

アリサとエリカはゴルフの勉強をしながら、ヒロや皆のため買い物や、

頼まれた用事をこなすことになった。またアリサ、エリカ組は、色んな場所で虫型のドローンを使い、情報なども集めて行った。ヒロは格闘教官をやる中で、兵士たちと交流をして次第に兵士とも打ち解け武術を教えて行った、その中で常に教えるのは

生き残る術だ。急所への攻撃を避ける事、そして無理な攻撃を行わない。

武はスポーツ格闘技とは違う、スポーツ格闘技は危険なのは確かだが審判が存在し、危険ならばストップが入り試合は終わる。武の本質は守り抜き、生きる事だ。

作戦の成功は大切だが、自分や仲間の命より大切な作戦など存在しないと常に説いて来た、そしてそのための術式の基本を教えて行く。勿論攻撃は最大の防御になる場合もある、防御を攻撃として使ったり型式の基本を教え、それを実践で使える組手を

やらせたりして身体に覚えさせる。多くの技を一度に身に付けるより、その人間に

適した少ない技を、何度も繰り返し覚え、実戦で使えるようにするのが、ヒロの

やり方だ。中国拳法の達人の中には、一つの技でその名を轟かせた先人もいる。

半歩崩拳、あまねく天下を打つ、と言われた、郭 雲深(かく うんしん)と言う

武術家である。たった一撃のパンチで、全ての敵を倒したと言われる武術家だ。

それはあくまで極論の例えだが、それぞれ自分の骨子に成る技術が身を助けるのだ。

修行が進むにつれ虚実や応用を覚え、実戦のレベルが上がってくる。何事も基本ありきと、言う事なのだ。そんなある日、美樹とマリとジャックが基地の中のバーに居ると、射撃の名手で教官の一人、トミーがバーにやって来た。ジャックがトミーに声をかけ、マリを紹介する、美樹はバーのダーツで仲良くなったグループで、テキーラをかけてダーツをやっている、水を得た魚とはこのことだ。美樹にはダーツもテキーラも得意種目、負け知らずの英雄気取り、美樹が羽目を外さないか、マリは監視して

いた。そんな時にトミーが現れジャックが声をかけたのだ、ジャックはマリを、

心理カウンセラーで友人として紹介した。トミーは宜しくとマリと握手をする。

ジャックが何か奢るよと言うと、イエガーマイスター(薬草のリキュール)を

注文した。マリはトミーに【結婚しているの?】と何気ない話をする。

トミーは【独身だよ】と答える。マリが【結婚はする気が無いの?】と聞くと

ジャックが【彼は以前フィアンセが居たんだ、でも戦争のせいで別れることに

成った】と言う。マリが【気の毒に私の所にも戦場での出来事で、心に傷を負った人が多く来る。私で力に成れるなら何でも言って】と、電話番号を教える。

トミーが【カウンセリングには何度も通ったんだ、でももう良いんだ、軍も退役

しようと考えてる】と言う。ジャックが【気持ちは解るが早まるなよ、君のような

シューティングの名手が勿体ないよ】と宥める。マリが【無理に留めるのは良くないわ、でもどちらにしても、出来るなら貴方の苦しみを少しでも和らげたいわ、貴方

お酒を飲まないと眠れないのでしょう、このお茶を寝る前に飲んでみて、心を穏やかにするハーブ茶で変なものは入ってないわ】とハーブ茶のティーパックを数個渡す。

魔導士たちが心を穏やかにするのに自分たちが飲むお茶だ。マリが三人で話をして

いると、美樹がそこに戻って来て【姉様見て、ダーツ全部勝っちゃった】とお金を

マリに見せる。マリが【コラッ、お金を掛けちゃダメでしょ全部、返して来なさい】としかる。美樹が【エーッ勿体ない】と言うと【じゃあそれで皆にお酒を奢りな

さい、本当にダメな子ね】と言う。美樹が【ハーイと言って】皆にそれでお酒を奢ると、更に美樹の人気が上がり拍手が起こり美樹も有頂天になるのだった、困った

ちゃんとお金も使いようなので有る。トミーがマリに【君の妹か?】と聞くと

【まさか似て居ないでしょう彼女は親戚の娘でここで武術教官をやっているパパが

預かっているの】とマリが言う。ジャックが【マリはレイと試合をしたマスターヒロの娘なんだ、彼女は東洋の医術や心理学の知識も有るんだ】と言うとトミーが

【レイの見舞いに行った時彼から聞いたよ、何度もレイを見舞いに来て

くれて、ジェントルマンで親切だって彼が言ってた】と言う。ジャックが【ヒロは

ホントに凄い武術マスターだよ】と褒めると。マリが【ジャックやめて、東洋では

変に褒められると、くしゃみが出ると言うのよ】と言う。トミーが【それは本当なのかい】と聞くと【褒められると鼻がムズムズする例えなの】と言う。トミーはマリに心を許し始めたようだ。そうしてマリは遅くなると、パパが心配するからまた連絡

するねと言い、帰りたくないと、ごねる美樹を連れてバーをでた。当然待っていた

ヒロは、マリに遅かった理由を聞いた。ヒロは心配だからメール位送ってくれ、と

頼む、普通の親に成っていた。一方、ジャンは米軍の実弾射撃の訓練を、ダニエルと言う教官と一緒に組んですることに。米軍の実弾射撃訓錬にも色々有るが、最初は

ただ同じ距離から的に当てる物から、実際の戦場を想定して、25ヤード

100ヤード200ヤード300ヤード500ヤード等、色んなシミュレーションで、既定の的中を狙うより実践に即した物まで様々ある。ジャンはシュウと同じ銃のスペシャリストで、様々な銃器に精通してユニオンでトップクラスのシューターだ。

しかし米軍のそれとユニオンのそれは、明らかな違いが有る。

米軍の射撃は必ず急所を想定して撃つ、頭部と胸部にマーキングされた的を

狙うのだ。ユニオンの場合は脚や肩を、威力の少ない特別な弾丸を使い撃ちます。

より難しい技術を必要とし、厳しい訓練がなされるのだ。米軍よりはるかに厳しい

条件で、訓練したジャンには米軍の規定訓練など簡単で全てノーミスで的中できる

腕を持っている。米軍の教官のダニエルはそれを見て驚きます。【こんな凄腕の奴は見たことない何処で習得したんだ】と聞く。ジャンは【俺は傭兵上がりさ。金に成ればどこでも仕事をする、家族には秘密だが色々金が要るのさ】と言う、ダニエルに

近付き、罠を張るためで有った。一方、マリがバーでトミーに会った数日後、トミーからマリに電話が有った。バーで渡したお茶が欲しいと言うのだ。マリが

【判ったわ】と言ってトミーに会いに出かけ、ハーブティーを持っていった。

トミーは【これはいくらなんだ?】と聞くと【これは私が自分で飲んいでる、私物

なの、お金は要らないはわ】と言う。トミーは【そういう訳には行かない、何でお金が要らないんだ?】と聞く。マリは【その代わり、私のカウンセリングを受けに

来て、それが私の仕事なの、それで実績を上げることで、信用が付くのよ】と

答える。アメリカ人は、相手にメリットが無いことを信用しない。取引とは両方の

メリットが両立して成り立つと、教育されているのだ。マリは【最初は貴方の事が

もっと知りたいわ、心の治療にはそれが必須なの】と言う。予定を組んで週3回の

予約を入れた、軍の場合これは軍のお金で賄われ、医療は無料で受ける事が出来る。

軍役で心を病む人は多い、また過酷な訓練で退役を余儀なくされる者を、防ぐことにも繋がる、因みに中東での任務で、アルコール依存に成る兵士は部署によっては2割を超えるとも言われる。その1人の証言では、【タリバンは「人間」ではなく「悪人」だと軍隊ではそう教え込まれたが、実際は自分と同じ人間だった、罪のない多くの

民間人が巻き添え死する映像も目の当たりにした。着任から三カ月、自分はタフだ、きっと耐えられるはずだと自身に言い聞かせて来たが、何もかもが嫌になった】と

言う。戦争はそれほど悲惨で、生き残っても大きな傷を残すのだ、ユニオンの戦い方の違いは、ここから生まれたのである。マリの治療は何気ない会話から始まる

【今日は来てくれてありがとう、貴方に会えて嬉しいわ】と言う、相手を認める事が大切なのだ。【貴方はこの前辛く悲しそうな顔をして居たわ、余程つらいことが

有ったのね。言いたくなければ話さなくて良いの、でも辛い気持ちは何でも話して、辛いときはいつでも電話して】と言った。そして相手の気持ちに同期して、同じ立場で有る、いつも何か有ればそばに居る、貴方の苦しみは、私の苦しみで、お互いが

分け合う事が出来ると認識させる作業が大切なのだ。時には彼の気持ちに同期して

涙を流し、良い事が有ったと言えば一緒に笑顔見せる、地道で大変な作業だ。

日本の治療はそれを1か月に1回の薬の処方で済ましている。それで心が回復する

わけが無いのだ。一方ヒロは、トミーの過去について、サミエル指令官に聞いて

いた、彼がどこで着任していて何故心を病んでしまったのか。彼は社会生活が送れないほどの病では無いが、治療が必要なのは明白で、その原因となる事を調べる為だ。

本来は本人が話すのを待つのが良いが、マリには時間が無い上、彼を真剣に思うが

故である。かれは中東で恋人が出来た、彼が負傷した折野戦病院で知り合った女性

らしい、そしてお互いの優しさに惹かれて愛しあったのだ。しかしトミーは彼女の

友人から、有る悲しい事実を聞くことに成る。彼女の父親がテロ組織の一員で、自分の参加した作戦で亡くなったらしい。彼にとっては正に衝撃の事実であった。

今まで敵として戦った相手の娘を愛してしまった。散々、殺した人間にも普通の家庭が有ったこと。すこし考えれば解ることだが、それが解らなく成るのが戦争なのだ。

ヒロは彼の事が自分と重なって見えた、マリにも関係有る事である。マリは3回目にトミーに会った時、思い切って彼に言った。【トミーごめんなさい、貴方を助けたくて、貴方を苦しめている物が何か調べたの。それは貴方とフィアンセだった人の事なのね】と切り出す。トミーは【何故それを】と聞く。マリは【貴方を大切に思ってる人から、私の父が聞いてくれたの、貴方は一人じゃ無い、貴方の知らない所で、貴方の事を心配している人は沢山居るの】と言う。トミーは【僕なんてそんな価値は

無いんだ】と俯くと、マリは【そんな悲しい事言わないで。私の話を聞いて、これは私や私の父にも関係している話なの】と言う。トミーは【君と君のお父さんが?】と言うとマリが【私の父は若い頃、有る戦いに参加していた、貴方も知らない戦いよ、私の母は医師だったの、そして二人は愛し合って結ばれ私が産まれた、でもその戦争のため、母は父と別れ別れに成ることに成ったの。実は母はその国の出身で母の父、つまり私の祖父はその国の要人だったので二人は別れなければいけない立場だった

のよ】言う。そして【父は今でも母を愛していて、会いたいと思っているけど、それは叶って居ない、でも諦めて無い、だから私たちは貴方を助けたいの、貴方は私達の鏡、同じ境遇の者同士なのなのよ】マリは感極まり涙を流している本心からだった。

それに共鳴してトミーも涙を流した【君はこんな僕のために泣いてくれているのか?】と聞く。マリが【私だけじゃない他にも、貴方を助けたいと思っている人間はいっぱいいる、だから一緒に手を取って欲しいの】と訴えた。トミーは【僕はどう

すればいいんだ?】と聞くとマリは【まずは心の準備をして】と言う。

トミーは【何の準備だ】と言うと【アリューシャさんと話せるかどうか決めるの】

と言う、トミーは【そんなの無理だ、不可能だよ】と言うと。マリは【解ってる、

直ぐに決めなくて良いの、この事は特効薬だけど劇薬なの先ずはその心の準備が必要よ、毎日私が貴方に会いに行くそれだけで良いわ、そして心が決まったら話して

頂戴、それからこれは貴方の心を平穏に保つ薬、毎日朝と寝る前に飲んで貴方を守るためよ】と言って別れた。そして毎日トミーの様子を見て少しずつ、アリューシャの思い出の話を聞き出して治療を行った、一方でアリューシャの存在を、ユニオンで

調べて行った。アリューシャがどこに居るか、ユニオンで直ぐに解った。

今でも現地の医療NGOで、看護師として働いて居たのだ。

そこにはユニオンからの医師も派遣されて居て、彼女は元気で現地の医師にも非常に評判が良い人柄も優しいスタッフだったのだ。一方いよいよ、アリサとエリカの

ゴルフコースデビューの日がやって来た。ゴルフコースはレディース5100

ヤード、レギュラー、6200ヤードのフラットで簡単なコースだったのだが、

エリカはパー、72打のコースを初心者ながら、80打で上がる驚異的なスコアーを、出してしまったのだ。アリサも95打で100を切ると言う素晴らしい出来で、ウイルソンは非常に驚いて居た。何より1週間のマナー講座が功を奏して、彼女達、特にエリカを非常に気に入った様子だ。因みにヒロが以前、ヒトミに無理やりコースに付き合わされた時スコアーは120打を超え、散々な成績、それ以来、誘われてもヒロが、ゴルフをすることは無かった、ヒロ曰く、あれは究極の自然破壊で、人間の傲慢が作った恐るべき所業だと言う。自然を歩きたかったら、山を壊さずそのまま歩けとヒトミに散々文句を言って喧嘩に成ったのだ。エリカから電話でその報告を受けたヒトミは、大喜びでエリカをプロに育てようだの、自分が学会やビジネスで参加

しているコンペに、出させるとかヒロに言って来たようだ。接待ゴルフが功を奏してその日、彼女たちは彼の主催するホームパーティーに招かれたのだ。

その規模は、男女十人ほどの小さなパーティーだが、そこに居た一人に注目

すべき人物が居た、その日のゴルフで違うパーティーだった人物で非常に政治的

影響力を持ち、色んな団体を運営している人物だが、かなりのタカ派で何かと注目を浴びている人物だ。過去にマリアとも因縁が有り、一度表舞台から消えたのだが、

再度注目を浴び表舞台に戻って来た人物だ。ホームパーティーに参加した人物は、

勿論、虫型のドローン等で追跡したりユニオンが調べたり、マリアが裏取りを勧めて行きました。共通点は有るNGOに繋がって居たのです。彼らは戦争で障害を負った兵士への、援助活動をする団体の理事で男性の多くは退役軍人でした。アリサと

エリカはその後も、ウイルソンと親しく友人のように接して彼とゴルフをしたり、

お茶を飲んだり、お土産を持って家を訪ねたりしていきました。

彼自身に特別怪しい動きは無く、その慈善団体の経理は例のピーターが

行って居るのだと言う事が判りました。他のメンバーも、非常にタカ派で右寄りの

考えと言う以外はお金の怪しい動きは証明に足りる事は、見つかりませんでした。

裏で絵図を書いて居たのは、ケビンで有る事は間違い有りません。何故ならケビンは、ニューヨークでヒロ達が調べたカジノの連中の中心にある投資銀行の役員でも

有るのです。先ずはケビンと、実際にNGO団体の経理をやっている、ピーターとの接触証拠、武器の横流しの実行現場と犯人とケビンの関係性。多くの証拠をユニオンと捜査当局でそろえる必要が有る。そのためにもウイルソンとの繋がりを、エリカとアリサに持ってもらう必要が有るのです。一方マリはアリーシャ(トミーの恋人)の所在が判ると、彼女にユニオンを通じて連絡を取った。マリは自分が、ユニオンの

メンバーだと証し、彼女にユニオンの医師を助けてくれて居る礼を述べた【いつも私の仲間を助けてくれて有難う貴女が献身的に、患者や医師を助けて下さっている事を、心から感謝します】と言う。すると彼女は【それは私自身の喜びのため、行って居るのです、それにそのお手当もきちんと頂いています、感謝しているのは私も同じです】と言う。マリは【有難う同志アリューシャ、実は私は貴方に助けて頂きたい事が有ります、私のケアしているクライアントについてです、彼は有る悲しい出来事から、非常に今も苦しんで居ます。彼の名前はトミーハントと言い、貴女への贖罪のため、自分が戦争で行った罪深さを悔い、自分の心を自分自身で苦しめる、心の病に

かかって居ます】と告げる。そして【彼はもしかすると、貴女の家族や隣人に危害を加えた、加害者かも知れない、と言う思いから苦しんで居ます、私はカウンセラーとして彼の心の治療について、貴女に助けて頂きたいのです】と言う。アリューシャは【彼は生きて居るのですか】と聞くと、マリは【生きて居ますが、貴女への愛と贖罪の気持ちに挟まれ、心が死にかけて居るのです、私は自分が無力なため、貴女の慈悲に頼るしか、方法が思い浮かびません、自分勝手なお願いだと理解しています、加害者の彼を救って欲しいなんて、貴女にすれば悪魔の誘いに感じるかも知れません、

どうかあなたの考えを教えて下さい】と言った。アリューシャは【彼は加害者では

有りません、彼が加害者ならば私の父も加害者に成ってしまいます。二人とも戦争と言う恐ろしい悪魔の被害者なのです、私が看護師をして居るのも、その悪魔から一人でも多くの人を救いたいからです】と言う。マリが【有難う、そのことを彼に伝えます、彼の様子をまたお伝えして宜しいでしょか】と聞く。すると彼女は【彼と話したい直接話したい事が有ります、どうか彼と話をする機会を私に下さい】と言う。

マリは【必ずその機会を作ります、少しお時間をください】と電話を切った。

マリは大きなかけに勝ったのである。翌日マリアはトミーに会いに行き、トミーに

告げる【アリューシャと電話でお話をしたわ、貴方はアリューシャと、もう一度話をするべきよ、勇気を出して】と。トミーは【そんな事が許されるはずが無い、僕は

きっと神にも許されない、地獄に落ちる運命なんだ】と言う。マリが【もしそう

なら、私が神を許さない、貴方が思って居るのは、神を語る悪魔よ貴方の言う神は、貴方が心の中で作った、あなた自身を許さない存在なの、貴方の中の神が存在する

なら、貴方を許すべきなの、悲しみも受け入れ、立ち上がる事を私は信じている、

貴方が立ち上がる事が私の助けになる、私が人間を信じるために、貴方が立ち上がる姿を一緒に体験する必要があるの】と訴えた。トミーは【そんな大切なことを君は僕に託すのかい】と言う。マリは【そうよ、貴方にはその責任が有る、例え今打ちのめされて居ても貴方が立ち上がる事が、人間の希望に繋がるの、貴方が立ち上がるまで

私は貴方に手を差し伸べるから、お願い勇気を出して】と言う。トミーがじっと考えて目に決意を感じた時、マリは自分の携帯を取りアリューシャに電話した。

彼女に【ここに彼が居ます、電話を彼に渡すので思って居る事を、彼に告げて

下さい】と言う。そしてトミーに【貴方は彼女と話す義務が有るの、勇気を出して】と電話を渡す。アリューシャが向こうから【トミー、トミーなのね】と呼びかける。

トミーは黙って話すことが出来ない。アリューシャが【トミー、私は怒っているの、本当に怒っているのよ】と言う。トミーは【許してくれ、アリューシャ俺を許して

くれ】と謝る。【いいえ私は本当に怒ってるの、何故手紙だけを置いて私の前から

黙って消えたの。私たちは心から愛し合っていたはずなのに、私に黙って消えて行くなんて酷すぎるわ】と言う、向こうからアリューシャの鳴き声が聞こえてくる。

トミーは【俺は許される訳が無いことをしたんだ】とトミーは言う。

アリューシャが【知っているわ、後から貴方が悩んで居た事を、私の父さんと

戦ったかも知れない事も、人づてに聞いて私もショックだった、でもそれ以上に貴方が苦しんでいたと聞いて、胸が張り裂ける程、私も悩んだ、何故その苦しみを二人で

分け合わ無かったの、愛するトミー苦しみも悲しみも分け合う事を二人で誓ったで

しょ】と言う。トミーが【ごめんよ、ごめんよ許してくれアリューシャ】と言う。

アリューシャが【愛するトミー私は貴方を許します、でも条件が有ります、

必ず私に会いに来て、貴方に会いたい必ずよ】と言う。トミーもアリューシャも号泣している。マリが電話を取り【アリューシャ有難う、必ずユニオンが彼を貴方の元に

連れて行きます、私が責任を持って連れて行くので安心してください】と言って

電話を置いた。ヒロはその話の報告を受け、オッサンなのに涙を流し喜んだ。

マリはヒロに【きっと私達もママに巡り会えるわ、その時まで頑張りましょ】

と言った。トミーを救えたことが、マリにはどんな大きな任務を、成功させること

より喜びだったのだ。人がほんの少し、許し合う事が出来たなら、この世から戦争など起こらない。最初から戦争が起こっている訳では無い、パン一つコイン一枚、土地一坪で争い殺し合う。あいつが取った、嘘をついた、そんな出来事が、末代までの恨みに繋がったりもする。人間の悲しい性なのか、それとも乗り越える事が出来きる、進化の糧なのか、他ならぬ人間次第であろう。片やエリカは、ウイルソンに、どんどん入り込んで、彼の娘、エマとも仲良く親密に成り、一緒に彼の家を手伝いに行って居る。理由は彼の周囲を調べる事と、彼と彼の娘の身柄を守る事だ。勿論、彼との

繋がりを強める事は、最終的にこの任務には必須だ。責任者の彼に、捜査や証拠の

協力が不可欠で、そのためエリカの任務は非常に重要と言える。出来る事ならば戦争で、何かしらの被害を受けた、兵士へのサポートは、潰したく無いからだ。

目的は、裏で戦争を引き起こす動きをする連中を潰し、戦争を止めることだ。

またギャンブルや麻薬とも繋がっている資金の、マネーロンダリングにも使うとは由々しき事である。恐らくその構図は、ダークマネーは一旦、寄付としてNGOに

個人名で入金される。そして再度、障害の有る人への支援として出金される、また

武器横流しのシステムはもっと巧妙だ。密輸業者が古い武器を廃棄する業者を装い、基地からピーターが廃棄料金を振り込みその業者に渡す。その武器の代金は、恐らくその銀行に、個人の預金や、廃棄企業の関連企業の預金として振り込まれ、そのお金は寄付としてNGOに、そして時間がたった後再度、何処かに振り込まれるので

あろう。恐ろしく複雑な、経路を全て把握するにはNGOから協力が不可欠だ。

もしかすると病院の治療費として、関係する病院も経路に使われ、政治家への

寄付として、その病院からお金が流れている可能性も有る。ヒロ達が基地に潜入

して、約一カ月が過ぎた、美樹はマリと定期的にバーに出没して情報を探っている。

ピーターやダニエルが、出没する場所を調べるが、基地内では無く、州の中に有る

カジノに出入りしている、と言う噂を聞きつけ、それらを探ることに成った

ノースキャロライナはカジノは公認である。ようやくピーターが出入りしている

カジノを、探り当て、マリと美樹が近づいて行く。公認のカジノだが、何故かマリには嫌な気配を感じた。中を探るため虫型ドローンで撮影をしていた。美樹も何か嫌な雰囲気を感じたが、構わずピーターに近付いた。マリが異臭を感じて美樹を制した、ピーターの近くに異臭の元を感じたからだ。そこには中国人らしき男が居た。

例えると何も意思を感じられない、蝋人形のような表情の東洋人だった。

顔は笑顔に見せているが、表情を感じない。美樹はとっさに折り鶴をその中国人に、投げようとした。そのくらい不気味な人物に感じたのだ。マリが再度美樹を制して男に【ごめんなさい、この子は少し可笑しいの、許して頂戴】と言う、美樹が【こいつが私に障ろうとしたのよ、警察に電話して】と騒ぐ。これを見て客が騒ぎ出し、他の店員が駆け付けて、再度マリが店員に【この子は病気なの御免なさい】と言い、謝罪して店を出た。美樹が【姉様酷い、ちょっと可笑しいなんて】と言うと。マリが

【ゴメンね美樹ちゃん、貴女を守るためよ】と言う。美樹が【でも気持ち悪い奴

だった、なにあいつ】と言う。マリが【そうね危ない所だった。一旦出直しま

しょう】と言った。帰ってその人間の画像をヒロに見せると【まだ生き残りが

居たのか】と言う。【この人を知っているの?】とマリが言うとヒロが【こいつの

一族をな】と答える。ヒロはマリアに電話してマリアと口論している。

その男は孟と言う一族で、中国で毒を扱い暗殺をする一族の末裔だと言う。

独特な無表情と手に付けた腕輪の文様、美樹が感じた僅かな、お香のような臭い。

それは僅かな毒の臭いを隠すためだとヒロは言う。美樹とマリはその違和感を、感じたのだ。ヒロはマリアに娘たちを関わらせるのを止めるように言い、マリアと揉めたのだ。マリはヒロからそれを聞いて【パパ。私も美樹ちゃんも、パパが思っている

より大人よ、子ども扱いは止めて】と言う。ヒロは【大人とか子供とか言う事じゃ

ない、とにかく危険な一族だ、これ以上お前たちは関わってはダメだ】と言う。

美樹がヒロに【先生、私を見くびり過ぎ、私の一族が世界一毒に強い肝臓を持って

いるのを知っているでしょ】と言う。ヒロが【毒を舐めちゃダメだ、いくら毒に強くてもそのダメージは後々、体をむしばむ、当の孟一族でさえ、自分たちの毒のため

長生き出来ないんだ】と言う。アリサが【先生どうして自分の毒で長生き出来

ないの】と聞く。ヒロが【毒手だ、自分の手に毒を染み込ませ、それを武器に相手を暗殺するのが奴の最終手段だ、少しでも毒が血管や内臓に入れば死に至る】と話す。

マリが【パパそれじゃ、ピーターや関係者も危ないんじゃないの?】聞くと

ヒロが【ああ、ヤバイことに成る可能性が出て来た、事を急ぐ必要が有るが、

どうするか、俺も今は思い浮かばない】と答える。

するとマリが【リスクを取りましょ、リスクを補うための保険をかけてねと】言う。

ヒロはマリを見て頭を抱えて思った。また俺の娘は突拍子もない、危険なことを考えているに違いない。ヒロは【その保険って何だ】と言うと【マリアママよ】と

答える。【マリアをここに呼び寄せるのか】とヒロが聞くと【そうよ、まずは関係者を神隠しにする必要が有る、一人を除いてね】とマリが答える。

ヒロが【その除く一人は誰だ】と聞くと、【ダニエルよ、彼は蜘蛛の巣の餌に

成ってもらうの】とマリが答えた。ヒロはますます危険な臭いのする、作戦だと

思った。マリは【ピーターとウイルソンさんには、行方を消して貰う】と言う。

ヒロは【どうやってだ】と言うと【ピーターには美樹ちゃんのネットワークを使い

ラスベガスの旅行に誘いだすの】とマリが言う。ヒロは【そんなこと出来んのか】と言うと美樹が【元々その作戦は枝葉の一つでマリ姉さまが考えていたもん、

私のコミュ力を舐めないでよ】と言う。マリが【彼には数日違う場所で眠って

貰うだけよ】と付け加えた。ヒロが【まさかあの危険薬物で催眠術を掛けるつもりか】と言うとマリは【パパ誤解よ、あれは危険薬物じゃない、魔導士の秘伝の薬草酒よ】と言う。ヒロは【あれが危険薬物じゃ無ければ、麻薬や覚せい剤も合法薬物と

して認められるはずだろ】と言うと、マリは【ヘロインだってガンや精神治療に

使われることが有るのを知らないの】と言う。ヒロが【その言い訳は、誰かからも

聞いた覚えが有る、あんな悪魔に染まるんじゃない、お前は俺の娘なのだから】と

言うと【今回はしかた無いの】と言う。また【ウイリアムさんには、エリカちゃんとアリサちゃんから、説得して貰う、これが大きな掛けに成る】とマリが説明する。

ヒロが【まさか種を明かすのか】と聞くと、【そのまさかよ】言い

【このような時のために、エリカちゃんにウイルソンさんと、人間関係を作って

貰っていたの】とマリは答えるのだ。ヒロは【それはそうだが証拠も無しに、彼が

それを信じるのか】と聞くと、マリは【きっと証拠はダニエルかピーターが作って

くれるわ】と言う。その翌日、美樹が友達の一人とピーターの職場に彼に会いに

行く。そして昨日カジノで、会ったことを彼に話すと、覚えていた。

本来はそこで仲良くなって、マリとカジノで勝ちまくり金の流れと情報を

引き出す手筈であったが、第2第3の策をマリとシュミレーションしていたのだ。

美樹は友達とピーターに皆でラスベガスに行こうと誘った、旅費がこちら持ちで

二泊での旅行だと誘う。

チケットを見せて、懸賞で美樹が当たったことにしたのだ。

美樹の友人二人は、トミーのカジノ情報を、教えてくれた人間で彼女達も

カジノで時々トミーに合う知り合いなのだ。一か月の美樹の豪遊は無駄ではなかったが、ヒロはコストの無駄だといつも思って居た。リムジンを用意してマリ、友人

二人、美樹、ピーターと乗り込んだ。そしてリムジンに置いていた酒の瓶に薬草酒を入れてピーターに飲ませた。その後、マリがリムジンの中でトミーに催眠術を

掛ける。その秘伝の催眠術は、彼に本当にラスベガスに行って大金を掛け、

大負けして恐ろしい額の借金を負った、と思わせるのだ。それを二日掛けて行う

大掛かりな催眠術である。彼には別のモーテルで二日間眠って貰い、美樹とマリが

彼を世話をし、術を掛けながら、水や食料をユニオンのスタッフが用意しその

スタッフと美樹、マリ3人で、彼が眠る間の世話をする、大掛かりな作業で術式で

ある。一方エリカとアリサは、ウイルソンの家に行き真実を話す。

ピーターはカジノで、大きな借金を作り、裏の組織に利用されNGOを

マネーロンダリングに使って居る事、また中東や東側のある組織に、武器を売った

資金の利益のマネーリンダリングにも使われている事、その後ろにケビンコールマン

(シンクタンクの代表)と彼が関係する投資銀行(NGOの口座も有る)が

関わっている事を話す。エリカはウイルソンに口座を調べさせてくれと頼む。

ヒロの予想通り、ウイルソンはそれを断った。エリカはウイルソンに【このまま

では、また戦争が起こるかも知れないよ、またその犠牲で多くの兵士も傷付くから、お願いウイルソンさん】と訴えた。ウイルソンは‘【それは仕方ない犠牲なんだ、

エリカ解ってくれ】と言う。ウイルソンの娘の旦那、義理の息子はウイルソンの

元部下で戦地で殉職したと言うのを、エリカは彼から聞いて知っているので驚いて

彼に言う【息子さんと同じような人がまた出るんだよ、それで良いの】と言うと

彼は【エリカ、アメリカはいつも正しいんだ、常に正しい戦いを選択する、

正義の国なんだ、君たちアジア人には、理解出来ないかもしれないが、もしアメリカが戦うのならそれは正義なんだ】と言う。エリカは泣き出してしまう。

泣きながらエリカが【私は実の両親も、お爺ちゃんも、ある戦いで死んだの、

お爺ちゃんも、ウイルソンさんと同じことを言って居たんだって、そのせいで私は

いつも寂しかった、もしもウイルソンさんもずっと一人に成ったら悲しくないの?

そんな人がまた生まれるのよ】と訴えた。ウイルソンは【そのためにこの基金を

作ったんだ、彼らを一人にしないのもこの基金の目的なんだ、もし君の話が本当でも、このNGOを潰す訳に行かない】と言う。エリカが【そうならない様に、調べて悪い人だけを、罰するよう動くから信じて】と言う。ウイルソンは【その保証は

ない、それはこちらで隠密裏に動く】と言う。エリカは【それじゃウイルソンさんが危ないの】と言うと彼は【自分の身は自分で守る】と言って聞かない。一旦宿舎に

戻り二人はヒロにその報告をした。ヒロは【やっぱりそうなったか、ウイルソンは

危ないかも知れない、自分の正義を信じるのも困った者だ】と言う。

エリカが【ウイルソンさんは騙されているの、私を孫みたいに思うって優しくしてくれた、先生、助けてあげて】と言う。ヒロは【助けたいが、勝手に動かれても

困るんだよ、まずは虫(ドローン)で動きを見るしか無いが】と言うとエリカが【‘私が虫と近くで見張って守る】と言う。ヒロが’【ずっとって訳に行かないだろ、俺も動くしかない、ピーターかダニエルを餌にする作戦だったのにくるったな】と

言う。ヒロはジャンに連絡して、ダニエルを見張るように言った。元々ダニエルは

泳がせ、見張る予定だったが、ウイルソンが変に動いて狙われる可能性が出来て予定がくるったのだ。ジャンがヒロに【ピーターの行方不明の件は伝えなくて良いのか?

と聞く】ヒロはジャンに【熊語が通じるなら伝えてくれ】と言う。ヒロはジャンの

英語をバカにして熊語と言うが、要はフランスなまりの英語なのだ。

断っておくがフランス訛りは、熊に似た発音では無い、フランス語と英語は同じ

文字でも発音が違うのでキングスイングリッシュ(‘イギリスの発音)で覚えている

ヒロには以前は解り難かったのだ。ジャンはそれを聞いて【マリアが許可したら俺がお前を射撃する】と怒るのだが。ヒロは‘【マリアは人を殺すのに人を使う必要は

無いさ、お前はまだマリアを解って無い】と言い返す。ジャンはヒロの言う通り、

ピーターが行方不明らしい、と言う噂を話す。事実、彼は美樹とマリのせいで、行方不明状態だ。千と千尋では無く、美樹とマリによる、神隠しである。そしてカジノで莫大な借金を抱えて、金を盗んで逃げたと言う噂を話す。これは嘘だが、経理をしているのは当のピーターだ。その話を聞いてダニエルがどう動くのか、ケビンに連絡

するかを見るのだ。当然それを、虫型ドローンで見張り、証拠として録画している。

言うなれば、完全遺法捜査である。素人は正義と感じるが法的には悪だ、しかしこんな手法で自白に追い込み、立件するなんてことは有る話だ。またアメリカには司法

取引で情報を引きだし、末端は執行猶予を与え、主犯や事件の真相解明に協力させることが、認められている。日本では法的に違法だ、だから複雑で巧妙な犯罪は真相が判らない事が多く有るのだ。日本の検察は役人思考、アメリカは捜査思考なのかも

知れない。取り調べる際の留置や判決のシステム、そして刑務所の事情も随分違う。

一般的に日本の司法は先進国では、かなり遅れているとも言われている。

中には中国やロシアと並ぶ、非人権的とも訴える人も居る様だ。事実、反戦デモで

米軍基地に足を少し踏み入れた、とか米兵を押しのけたと言う疑いで、逮捕され立件され1年以上拘留され、結局無罪だったケースもある、国際的に人質司法と問題に

成っているようだ。一方エリカとヒロ、アリサは交代でウイルソンの動きを見ているウイルソンに何か有れば、全てが無駄に成る可能性も有る、彼はエリカの話を聞いてピーターに電話を 掛けた様だ。当然電話も出ない、不安に成り職場に電話しても

休んでいる。更に不安が募ったようだ、そして彼にとっては、最悪の選択をして

しまう。ケビンにこのことを電話してしまうのだ。丁度その時は、エリカが彼を

見張っている、ヒロに電話してそのことを報告する。エリカはヒロに【先生どう

しよう、もう一度ウイルソンさんに直接会って説得しよう】と言う。ヒロは【待て、スグに行く、そのまま見張っていろ】と制止する。ヒロは直ぐにエリカの元に急行してエリカを落ち着かせた。【大丈夫だ、きっと何とかするから、二人で彼を守るぞ】と言う。エリカは頷いているが目が潤んでいる。彼女は誰にでも優しい、これは彼女の美点では有るがエージェントとして妨げになる可能性も有るとヒロは感じる。

自分が過去そんな苦しみを、何度か経験したので、彼女の苦しみを感じるのだ。

そして何故かマリアに怒りを感じる、こんな任務を娘たちに続けさせた本人にだ。

見張りの車から少し席を外して、マリアに電話する【マリア、いつまでゆっくり、

している、年が明けるぞ】と言うと【今そっちに飛行機で向かっているわ、まだ秋にも成って無いわよ、鬼が泣くわよと】言う。ヒロが【鬼が無く訳が無いだろう、それは鬼が笑うって言うんだ】と言うと【日本語は難しいわね、ジェフリー・ディーヴァの作品では悪魔が泣くのよ】と言う。ヒロは【なんだそれ、アンタでも小説とか読むのか、そんな事はどうでもいい、いざと言う時の保険なんだ、孟の奴が動くかも

知れない、悪い予感がする奴に狙われたら死人がでる、アンタにしか解毒は無理

なんだ】と言う。マリアが【解っている今飛行機の中よユニオンの飛行機でも、時空を超えるのは無理なのよ】と言う。ヒロは【科学って、いざと言う時役立たない、

早く頼むよ】と言って電話を切った。完全に無茶ぶりである、その時、焦るヒロに

ジャンから電話が有った。ジャンは【ダニエルは動く気配が無いぞ、ケビンにも連絡してない様子だ、どうするもっと揺さぶるのか?】とヒロに尋ねた。

ヒロはジャンに【ダニエルみたいな無責任な奴を、ケビンは良く仲間に入れたな

こいついざとなれば直ぐ、尻尾として切られるんだろう、そのまま様子見て

待機してくれ後々、こいつをまた餌に出来るから、殺されないようにな】と言った。

するとウイルソンの娘が外出するようだ。最悪だ、エリカに彼女を警護させるため、二手に二別れる必要がある。そんな時アリサが応援に駆けつけてくれた、アリサと

エリカがウイルソンの娘の警護に出て、ヒロがウイルソン本人の警護で、そのまま

張り付くことに成った。ヒロはそこで一つの賭けに出る、エリカにウイルソンの娘を説得して協力を願うことだ。エリカとアリサが、彼女の車を追いかけた、彼女は

スーパーに向かっているようだ、普段の食料や日常品を買いに行くのだろう。

スーパーに到着した彼女に二人は声をかける。エリカが彼女に【エマさん、お願いが有ります、もう一度聞いてください】と言う。エマは‘【ここまで付いて来たの、驚いた、私には何も権限も無いわ】と言う。エリカが【このままではウイルソンさんが

危険な目に合うかもしれません、どうか私達が警護出来るように説得して下さい、

お願いします】と言う。エマが【父を説得なんか出来ない、知っているでしょ、あの人は根っからの軍人、自分の正義を貫く人、あの人を変える事なんか誰も出来ない】と言う。エリカが【ご主人のように、ウイルソンさんを失っても良いのですか】と

言うと【主人も父も同じよ、家族の気持ちなんか考えない、国と自分の正義が一番

なのよ。女は男を信じて付いてくれば良い、と言うタイプなの、でもその分家族には優しいのよ知っているでしょ】と聞かない。エリカが諦めて彼女の護衛だけはさせて貰うと、ウイルソンに異変が起きる。彼が突然苦しみ出したのだ。

ケビンは既に、何がしかの手段でウイルソンに毒を盛って居たのだ。

それも遅効性の物であろう、ヒロはエリカに連絡して、このことをエマに知らせると共に救急車を呼び軍の病院に運んだ。時遅しかも知れない、と思った所にマリアから空港に着いた連絡が有った。救急車で彼を運ぶと共に、皆で病院で落ち合うことに

成った。救急車で救命士に事情を話し血液を採取させると共に、電解液を輸液させ

解毒を試みるが、それで効果が出る訳では無く、あくまでも時間稼ぎに過ぎない。

本格的に解毒するには最低、人工腎臓装置による血液透析、浄化が必要に成る。

遅効性の毒の厄介なのは、症状が出た時には体に吸収されていることで、

それを無毒化する薬剤が有れば良いのだが、それには毒物の知識とそれに対処できる

技術が必要だ。マリアは毒のスペシャリストでも有るのだ。ヒロは毒の成分を早急に知るためエリカに電話して、ウイルソンが、この数日贈り物など人から届いた物を

何か食べるか口にしたか聞かせた。すると誰かから葉巻が送られて来て、それを

吸っていたと言う。エリカだけをエマに付き添わせアリサにその葉巻を取りに

行かせた。病院に着きマリアと合流して、ウイルソンの治療に取り掛かる。

アリサが持ってきた葉巻とウイルソンの血液を病院とマリアが調べ、その間

点滴と透析を行って解毒しながらその薬を調べると、ナス科の植物、キノコ、 

トリカブトなど、数種の毒を巧妙に混ぜた毒で有る事が判った。心臓、腎臓、肝臓に、それぞれがダメージを与える巧妙な毒だ。また毒がお互いの薬効で時間差で

効いて、ダメージを与える巧妙な物だ。症状の解りやすい心臓は、最後にダメージが来るように、設計されていた。心臓はマリアが早急に対処策を投じ、弱った心臓を

病院の機材で補助しながら肝臓と腎臓の治療に努めた。ユニオンからもそれぞれの

臓器の専門医を呼んで一週間の治療でようやくウイルソンは回復をして、病状が安定した。その間エリカとエマでの介護とマリアと医師団の賢明な治療でようやく

意識を取り戻し安定したのだった。エマが涙を浮かべウイルソンに【良かった、皆がパパを助けるために動いてくれたのよ】と言う。ウイルソンが【一体、何が起こったんだ】と言うとエマが【覚えていないの?パパがいきなり倒れて救急車を呼んだの、エリカちゃん達が居なければパパは死んでいたのよ】と言う。ウイルソンは【そう

いえばいきなり胸が苦しくなって、そしたら腹部も何か違和感を感じた気が】と

言う。気が付いた事を聞いた医師とマリアが、病室に来てウイルソンに

【貴方は毒を盛られていたんです】と告げる。【そんなバカな事を誰が何のために】とウイルソンが聞く。エリカが【ケビンって人がやったに決まっている】と言うと、彼は【信じられない、あの人はアメリカのために活動している人だ、何か証拠は有るのか】と言う。マリアは【証拠はこれから出てきます、それを証明するため貴方には、一旦死んだ事に成っていただきます】と言う。そして【因みに、あなたが中毒に成った原因がこの葉巻です、この送り主の方はこの葉巻のことを知りませんでした、きっと誰かがこの方を語り、貴方に送ったのです】と言う。ウイルソンが【一体何のために】と聞くと【貴方のNGOを乗っ取るためでしょう。それが判るまで貴方と

ピーターには死んだことに成ってもらいます】とマリアが言う。そしてその数時間後ピーターをウイルソンの元に連れて来た。ピーターにはウイルソンが殺されかけた事をマリに教えられた、そして真実をウイルソンに話すようマリが言ったのだ。

ピーターはウイルソンに知っている限り、自分が行った事と、その理由を話した。

しかしそれはカジノに脅され、借金返済のため、ヤラされたことで、本当の黒幕までは知らないと言う事で有った。そしてピーターは、ラスベガスで大負けして自殺したことに、ウイルソンは中毒死したことを装い、本当の闇の将軍が、ケビンで有る事を暴く事を告げた。勿論二人の協力で経理関係の記録と、入出金の記録、銀行関係の

記録は全て出してもらいコピーした上で、事務所に保管して、その後誰がどのように動くかを虫型ドローンや、紐づけされた口座で追いかけるのだ。次にダニエルがどのように動くのか、これも紐づけする必要がある。実際に銃器の不正の実行は、

ダニエルで有るから、何かしらのアクションを起こさせ彼の知る所を追及する必要がある。ウイルソンの葬儀は3日後に行い、その中の人間を全てチェックした。

当然ケビンや多くの退役軍人が弔問に訪れた、その中になんと孟も来ていたのだ。

彼の死を確かめるためであろう。ヒロはこれ以上の被害を出さないため、彼を倒す

決意をした、当然、人目の無い場所を選ぶ必要がある。ヒロは離れた場所で、常に

ドローンで孟の行動をチャックをした。軍の教官の予定は数日キャンセルして、

孟一人に集中したのだ。孟が報酬を受け取る所を確認するためである。

彼らの一族は電子マネーを信じないし、口座も持たない、現物主義で有る。

恐らく現金か、金の現物での受け渡しに成る事は知っている。その現場を確認して、孟を倒すつもりだ。ヒロはジャックと二人で車からドローンを使い孟を監視した。

孟が誰かの車に乗り込んだ、それをドローンで追いながら、離れて尾行すると

有る事務所に入り、十分後ぐらいに出て来た、新たに手にアタッシュケースを持って

居る、それを確認して、ヒロは孟に声を掛けた。ジャックはその事務所に乗り込んで行く。ヒロは孟に【すまないがその中身を見せてくれ】と言う。すると孟はカバンを開けるふりをして中から鏢(ひょう)と言う、手裏剣のような刃物に細い紐のついた武器を、ヒロに投げる、ヒロがそれをよけると懐から、消音能力のついたOPS30と言う火薬では無く、バネで飛ぶ銃をヒロに向かって撃つ。ヒロは横に飛んで逃げながらベルトの後ろから、小さな傘のような防弾シールドを

出し急所をカバーしながら、折鶴(手裏剣)を孟の手に当て銃を落とす、銃が落ちたと同時に傘型のシールドの柄の部分を分離して吹き矢のように孟に吹き付けると

小さな矢が孟の足の部分に刺さり、孟が逃げ走ろうとするが思うように走れない、

一時的に神経がしびれる薬品が塗ってあるのだ、孟はそれでもカバンを持って逃げようとするが、ヒロは距離を保ちながら追い詰めて行き、距離が詰まった所で、ヒロが小型の銃を向けて【カバン邪魔じゃ無いか?】と言います。更に‘【カバンと交換

しよう】と言い、銃を孟の手元にそっと投げると孟はカバンを右手に持ったまま、

左で銃を受け取ろうとします。ヒロは毛の左横に無拍子(ノーアクション)で飛び込み、斜め後ろから、首の上に左ハイキックを打ち下ろします。毛は操り人形の糸が

切れたように、崩れ落ちました。孟を拘束して、彼が気が付いた時ヒロは【悪かったな、騙して、これ弾入って無いの】と彼に見せ笑顔を見せます。 カバンには

金1キロバーが五枚、日本円で六千万以上の金が入って居ました。恐らく前金と合わせ一億円以上の仕事だと思いますが。それで人を殺すのは割に合いません。

ヒロは彼に【孟家も落ちたのもだな、銃に頼るなんて、銃と金に執着しなければ

お前逃げることが出来たかも知れないのに】と言うと。孟は【お前に何が解る。もう孟家は無い、俺は食べるために殺すだけだそれの何が悪い】と言う。

ヒロが【そうだな、そんなに悪いことでは無いかもな、他に道を与えてくれる

人間が居たら違って居たかもな】と話す。ヒロは自分に、仲間や家族が居なければ、同じ道を歩んだかもと悲しく成った。源三が昔【武とは皆が仲良くする一つの道具にすぎぬ、無手とはそれさえも捨て、何も無くとも、最強でおれる境地の事よ、我らは、何れそこにたどり着くため、もがき苦しんで居るだけじゃ】と言った。

その言葉をヒロは今、思い出した。その時にヒロは【ジジイ、ボケたか?】と言ったが、もしや無の境地とは一見、何も無いように見えて居るが、全てを解り悟りながら、何も解らぬ人間にはそのように見える物かも知れないとも思った。

孟が執着した金と銃、しかし、そのようにさせる世の中、現世は地獄、来世は天国と教える宗教は何だ?結局諦め、死ねば楽に成ると、言っているだけだ。それより、

もがき苦しみながら、その苦しみを分け合い、共存出来る道を見つけ。

志、半ばで、その魂の遺伝子を残した、源三や水樹こそ極楽だったのでは無いのか

誰かがきっと夢を繋いで叶えてくれる、そう信じて行ける世の中を、目指したいと

思った。一方ジャックは、ヒロから借りた睡眠ガス装置を、事務所に投げ込むだけの

楽な仕事で任務を達成した。ヒロは彼に【お前らがこれ使うのは違法だからな、お前は医師免許持って無い。俺は今俺では無いから、何を使っても許されるんだ、お前らクソ役人はルールに縛られ皆、くたばるんだ】と毒を吐きながら帰った。

孟とその他の連中はユニオンのスタッフが拘束したまま連れて帰り、聴取をした。

孟の危険が消え、ホッとし車で帰る中ヒロは、あんなに恐れていた割に呆気ない奴

だったと思った。以前、彼の一族と戦った時、ヒロは毒手にやられ死にかけた。

今回の奴が孟家は、もう無い(洒落?)と言った、それよりあんなに、金と銃に執着するなんてと思った。途中ジャックがトイレを催して、スーパーに入った。                               その時ビールをヒロが買いスーパーのベンチで飲んでいると、ジャックが【お前まだ任務中だぞ】と文句を言うので【やかましい、お前、楽な仕事しかしてないだろ、

死ぬまで運転手してろボケ公務員】とヒロが言い返す。その時、近くで一人の少女が反戦を掲げてギター一本で歌を歌っていた。その歌詞は

【いつのまにか、貴方の事を憎み始めたの、いつのまにか貴方に執着してしまったの

憎み続けてそれが私の愛だと気づいた、そして貴方の憎しみにさえも愛が有ると

知ったの。有難う貴方、貴方の愛を教えてくれて。そしてさよなら貴方と私、

愛の執着よ。また会いましょ、違う形で二人、会いましょう】と言う唄だった。

ヒロには哲学的にも聞こえ、数人の観客の中で誰に歌うでもなく、まるで彼女自身に歌って居るように見え、何よりも綺麗で通る彼女の唄に自然と涙が溢れ、聞いていた 皆と一緒に拍手をした。そしてジャックに100ドル持っているか?と言って

100ドル札を出させ【ベンジャミンフランクリンからのお礼とお詫びだ】と言ってギターケースに置いた。帰りの車でジャックが【返してくれるんだよな】と聞くと

【フランクリンが返してくれるさ】と言って笑ってごまかすのだった。

その帰りウイルソンのいる病院に行き【貴方に毒を盛った実行犯を捕まえました】と彼に告げて、孟がその一味と一緒に居る写真と、カバンの中の金の延べ棒の写真。

毛がカジノに居た写真を見せた。そしてそれをピーターにも説明させた。

ピーターは借金で脅され犯した犯行、と言う事でユニオンが捜査当局と交渉して、

全面的に協力する条件と、賭博中毒の治療を受け、その賭博の怖さを知らせて

中毒者へのボランティアを条件として刑の執行を猶予することされた。

ウイルソンはこの現実に混乱してマリアに【私はどうなる、こんなことに関与して

いたことに成れば私はおしまいだ、私は何も知らなかった】と言う。マリアは

【そうね、貴方は被害者でも、加害者でもある】と言う。ウイルソンは【私が何を

したと言うんだ】と聞くと【貴方は戦争を引き起こし、新たな戦争の被害者を作る

手伝いを、知らず知らずしていた無作為の加害者よ】と言う。

更に【何より自分の愛する家族を、戦争の正当化で、知らずに傷付けていたことに

気付くべきだわ】とマリアは言った。ウイルソンが【私が家族を傷付けた?】と聞くと。【貴方は、貴方の部下で有る義理の息子さんを教育して戦地に送り込んだ、

その時の娘さんの複雑な気持ちは?貴方の正義を信じたい気持ちと愛する夫を戦地に

送り出す気持ちを解って居て、正義を主張したの?】とマリアが言う。

そして【何よりも、戦争は必要悪だと決めつけ、その埋め合わせに、この団体を作る

それって、マッチポンプでは無いかしら?何よりも自分の正義を疑わない

貴方のような人たちが多くの犠牲者を出していることに気付くべき、正義ほど厄介な

公害はこの世に無いわ】とマリアは責める。ウイルソンは【しかし悪は滅ぼさなければ、行けないのでは】と言うとマリアは笑いながら【それでは貴方自身で貴方を滅ぼさなければね】と言い【貴方の行為が多くの人を傷つけ、米軍の信用さえ貶めたのだから】と言う。そして【貴方は悪と言うけど、その悪も同じ地球と言う身体で

育った、貴方と同じ細胞なのよ、例えその細胞が病気に成ったと言って、

悪と決めつけ、どんどん切り捨てて行ったら貴方の身体はどうなるかしら?それより自分の体質を改善して、その臓器が自己治癒出来るよう治療するのが正しい医療では無い?貴方を殺しかけた毒でさえ、薄め形を変えると別のものと化学反応し、薬として使えるのよ、不思議よね、自然って】と言った。ヒロはそれをそばで聞いて、

マリア自身が強力な毒物ならの、深い言葉だ、流石マリアは毒を使えば世界一だ

等と、的外れな事を思ったのだ。そして一方でダニエルを利用して、ケビンをあぶり出す罠をはるためジャンが動いた。有る組織の傭兵部隊に、武器が早急に入用だと

ダニエルに流したのだ。勿論、ダニエルを見張りながらジャンはダニエルと人間関係を作り傭兵上がりで金のため仕事をしていると思いこませていた。

今回、孟に資金を提供した組織から押収した、資金を使うことにした。

相手は資金源が一つ減った所だ、金に飛びつくで有ろう。しかもウイルソンと

トミーが死んでゴタゴタな事に成っている。尻尾を出すだろうと踏んでの作戦だ。

ヒロ達が基地に来て、2か月近くが過ぎた頃に事は動きだした。

十月に成ろうとしている時だ。新しいNGOの代表が決まり、再スタートが始まった頃にジャンに話しが来た。ジャンが注文したのはⅯ240、Ⅿ249機関銃、現在もNATOで使われている。銃とその銃弾で総額1億ドルの取引で、まず1割の

1千万ドルを手付として振り込み、武器が到着した分を順次口座に振り込む話で

ある。それにより送金のシステム、金が再度どのように、どこに送られるか解明

できる。決局、新しく決まった経理と、理事の中の一人を解明して、その捜査は

終る。ヒロがマリアに文句を言う【散々俺たちを使いまわして、ケビンを上げられないなんて魔導士マリアも落ちぶれたな】と言うと。マリアは気に障ったのか、少し

表情を硬くして【私があの男を許すと思う?】と言った。

因みにその取引のハブ(中軸)と成っていた銀行はマリの行っていた、偽装カジノ

捜査で関係が明らかに成り株が暴落をした。それ以前からマリアが、株の空売りを

仕掛けていて、ユニオン関連の金融会社は大儲け、その金を使いⅯ&Ⅿで株を安値で買い、そして役員を一掃して新たに新会社として、ユニオンの系列会社が経営を

スタートした。当然そこの株主で、理事で有ったケビンは理事を退任して、魔導士会は大儲け、ケビンは壊滅的な損をしてしまった。武器輸出やカジノの、お金の経路が解ったのちに、障害を負った兵士のためのNGOは改めて、ウイルソンの娘が代表として就任し、ユニオンが基金の運用を手掛け兵士たちのケアの事業を続けた。

エリカはアメリカの任務中ウイルソンの所にちょくちょく顔を出し、お茶をしたり

たまにゴルフをしたりしていた。ウイルソンは表面上死んだ後、ゴルフ練習場の

オーナーとして娘の近くで暮らし、ゆっくりゴルフを楽しんだそうだ。

任務が終わりマリとマリアはアリューシャの居る所にトミーを連れて行き。

ヒロと弟子の三は日本に帰った、十一月に成ろうとしていた頃だ。

エリカと美樹は十八歳、高校生なら卒業の歳だ、アリサは二十歳、

子供っぽいと思って居たアリサにも、大人の女性らしさを感じるようになり

ヒロは寂しさを感じていた。一方で美樹は今回の事件は、自分が活躍して解決に

至ったとヒロに主張し、一向に精神的な成長を感じさせない。ヒロは一応【よく頑張ったな】と誉めはするが、明らかに天然の遊び好きが功を奏しただけである。

エリカの方はウイルソンの看護の様子や気持ちの優しさをヒロが見て

エリカと話し、姉のヒトミに相談をしていた事がある。彼女は医療に向いているの

では?とヒロは感じたのだ。エリカは語学も堪能で、英語とフランス語を話せる。

また手先も武器の扱いの修行からか器用な娘である。学業もアカデミーの中でも

トップの成績であった。エリカ自身も新しい自分に成りたいと言う、姉のヒトミは

大喜びで彼女を歓迎して学費から勉強から全てフォローすると言ってくれて居る。

エリカは新しい可能性に進むことに成った。帰りの飛行機でヒロはようやく日本に

帰れることを喜ぶと、美樹は寂しがっている。基地の友人達とディズニーに行きた

かったとか、ラスベガスに本当に行きたかったとか言う。ヒロは狸寝入りして、

知らんふりしていると、ヒロの肩を揺さぶり、駄々をこねる始末だ。

美樹が【先生も任務が終わったら、ニューヨークで色んなバーボン飲んで

ライブハウスで昔のロック聞きたいって、言ってたジャン】と言う。

ヒロが【俺は今のニューヨークに絶望したくないんだ、もしロックが魂を失って

居たら、俺には絶望でしかない】と言う。美樹が【何言ってるか、わかんねー】と

漫才のギャグをかますのであった。


第十五章

ヒロ達は任務が終わり、直ぐに、日本に帰って来たのは訳が有る。

師匠でも有る、矢早の里のハヤメが、ヒロの在米中に、亡くなっていたからだ。

ユニオンに帰り家に着くと、荷物を片付けシャワーを浴びて皆にそのことを伝えて、明日、皆で矢早の里に行くことを告げる。エリカは短い間で有ったが、矢早でハヤメに教えを受けた。それを知って号泣している、それをアリサと美樹が抱きしめて

慰めている。エージェントは任務中、例え身内が亡くなっても、帰れない事が多々

ある。ヒロはあえて娘達には、ハヤメが死んだことを、告げていなかった。

エリカもそれを理解してヒロを責めない。ヒロは【黙っていて済まなかった】謝罪

した。エリカは首をふって【任務だもんね】と泣きながら答える。ヒロは一エリカが我慢して、涙しているのを見て愛しさで胸が詰まるが弟子の前では涙を見せない。

そこにヒトミが帰って来た。【お帰り、ご苦労だぅたわね。皆も大変だったでしょ】と労う。ヒロはヒトミの顔を見て【しまった】と声を上げる。ヒトミから頼まれて

いたものが有ったのだ、ナパバレーのワインを、アメリカで直接買って、持ってくることを頼まれていた。日本ではバカ高い値段で、オプションが付いて、詐欺同然の

価格で売られている。勿論、向こうでも高価で有るが、日本は異常なのだ。

ヒロが忘れたことを謝ると【解っているわよ、ジャン君にお願いして空輸の荷物で

送って貰ったわ】と怒った顔で言う。ヒロは【それなら、そんな怒った顔するなよ】と言うと【ホント頼りない、夕食の準備、さっさとしなさいよ】と言うのだ。

ヒロは【こんな弟使いの荒い姉は姉ちゃんだけだ】とブツブツ言いながら。

娘たちに【買い物行くぞ】と言う。ヒトミは【エリカちゃんには、お話し有るから

ここに残って居て】と言う。ヒロはエリカに笑顔で頷き【良く話を聞いて自分で

考えろ、俺は悪い話じゃないと思う】と言う。ヒトミはエリカを自分達の養子として、迎える積もりなのだ。ヒトミが【今日はうちの人も帰ってくるから、きんぴらを作って】と注文する。コウジはヒロのきんぴらが好きらしい。ヒロ達は夕食の買い物に行き、鍋と刺身、きんぴらの材料を買った。ユニオンのスーパーは食材が

多彩なのだ。肉も国内は元より、海外の提携している企業から、物流が有る。

それが貧困国の収入にも成るシステムを作っている。それは、水循環エネルギーと

言う、アドバンテージをユニオンが持って居るから可能なのだ。ユニオンの科学部は、今人工的に二酸化炭素を、酸素と炭素に換える、人工的光合成も研究している。

勿論、植物や自然の力でやるのが、コストも掛からないが、自然への負荷が増え続ける未来を考えるとその研究も必須に感じている。ヒロ達の今日の夕食は豚肉と、

しめじ、ネギ、厚揚げ、鳥のツミレの入った、こぶ出汁醤油味の、スタンダードな

鍋と、牛の細切れが入ったきんぴら、刺身はタコ、するめイカ、イシガキ鯛の刺身を買った。ヒトミの夫、コウジも帰って来て、皆で日本の食事を楽しむことに。

ヒロは久々の日本酒、香川県の喜び凱陣、金毘羅大芝居を味わう、皆で鍋をつつき

刺身の大皿をつつき、酒を飲む。ヒロがエリカに【話は決まったか】と聞くとエリカがうなずく。ヒロが娘たちに大発表が有ると、エリカを立たせて、エリカ自身に

医学を学ぶ事、そしてヒトミとコウジの養子に成ることを発表させた。美樹が

【エーッ、と驚いて、先生いつ頃から話しが有ったの】と聞く。ヒロが【アメリカの任務が終わる頃からだ】と答える。美樹が【急すぎるよ先生】と言うとヒロが【美樹今までと何も変わらない、同じ家族でチームだ、エリカは医療で俺たちを支え、俺たちは任務をこなすユニオンは多様な力で動いて、助け合う共同体なんだ】と言う。

エリカが【皆が怪我や病気しても、安心できる医師に成る】と言うと、ユウが‘

【エリカちゃん偉いわ】と抱きしめハグをする。美樹が【私も医者に成ろうかな?】と言うと、アリサが【アンタじゃ無理でしょ】と言う。美樹が【酷い姉様】と言い

ヒロの酒のグラスを取りあげ、自分で飲むのだった。ヒロは何でおれの酒を?と

思いながら美樹に【まあふてるな、お前には俺がまだまだ武術を教えて行く】と言うと、美樹はグラスをだして【お代わり】と酒を要求するヤンチャな美樹だった。                            ヒトミが美樹を見て【昔を思い出すわね】と水樹のことを思い出すのであった。  翌日、車で矢早の里に行き午後に里に着いた、シュウがヒロ達を出迎え玄関に出た。ヒロが【遅くなって悪かったな】と詫びるとシュウは【仕方ないさ、俺たちの仕事 

はそう言うものだ】と言うハヤメの好きだった日本酒を持って、ヒロが【線香を上げさせて貰って良いか?これはババ様に】と言うと【有難う兄様】とシュウが答える。

ヒロと娘たちは仏前で線香に火を着けそれぞれの思いにふける。エリカはまた

涙ぐんでいる。ユミが隣でエリカの肩をなでると【先生と抱き着いて】胸に顔をうずめる。シュウがヒロに湯呑と酒を持って来て、【一緒に飲んでやってくれ】と言うと

【頂くよ】とヒロが胡坐で座り湯呑を受け取る。仏壇に湯呑を置き、シュウが酒を

注ぎ、そしてヒロの湯呑にも同じ酒を注いだ。弓美がヒロに封を開けてない手紙を

渡し【御婆様から預かっていた】と言う。封を開けると

【ヒロへ、お主らの事が心配じゃが源三や水樹があちらに良い酒が有ると言うので

飲みに行くことにした、お前らが心配じゃが源三達が心配いらん、大丈夫じゃ、と

言うので楽をさせて貰うことにした。お前らはくれぐれも、楽をしよう等ど考えるで無い。そんな素振りでも見えたら皆で化けて出て、昔のように叱りに行くでな。

武とは苦しんで苦しんだ先に見つかる何かぞ。それぞれの武は違えどもその先に有る光こそが武と心得よ】と書いて有る。ヒロはそれを見て涙を流し【最後まで訳解んねー無茶ぶりして】と呟いた。ヒロは心の中で【確かに引き継いだぞ】と言いながら

瞼を拭う。シュウが【今日は泊まって行くだろ】と言うと【世話になると】とヒロが言う。弓美が娘たちと山に入り、野生のアケビや山栗を取りに行き、ヒロとシュウは

上流の生け簀に生かしてる、イワナやヤマメを取りにいった。そして近所で貰った

イノシシ肉やマツタケも有った。しばらくすると、近所の里の人間が小さな子供、

男女2人を連れて家に来た。真矢(まや)と言う女児と溜矢(りゅうや)と言う男児だ。新しくシュウが教える門下に入る子供らしい、娘たちが可愛いと叫ぶ。

弓が【ヒロ先生よ挨拶しなさい】と言うと、もじもじしている。ヒロが【こっちに

おいで】と言っても恥ずかしそうだ。アリサが【アリサ姉さまよ】と手を広げると

男の子が、恥ずかしそうにアリサにしがみつく。ヒロがシュウに【どういうことだ?女好きなのか?】と言うとユミが【子供に何を言っているのよ】と言う。

その日は山の幸を、皆で食べながらハヤメの思い出に慕った。娘達も山の幸を食べ、新しく門下に入った子供と遊んだりして久しぶりの日本を感じていた。ハヤメは実は随分前から肺ガンを患っていたらしい。ヒロ達が里を後にして、ユニオンに帰った

次の日から、ヒロには新たな試練が待ち構えて居るのである。約五か月のアメリカ

滞在の後の、メディカルチェック、エージェントは長期の海外任務の後は、必ず

メディカルチェックを行う。ヒロには悪い予感が浮かんで来る、友歌の妹(ヒロには義理の妹)のユリである。チェックにはユリが待ち構えていた【ヒロ君、お帰り、

体調はどう?】と聞く。ヒロは【疲れは有るけど別に普通だよ】と答える。

ユリは【ふーん、まあ調べたら解るわ】と言う。そして血液を採取したり、基本的な検査をした後、また新しい機器を使った初めて受ける検査を色々されるので有る。

ヒロは基本、検査なる物が大嫌いだ。だいたい医者に俺の何が解る、どうせ死ぬ時は死ぬ。検査しまくり、結局原因が解らず、弱って行く患者も沢山いる。また自分の

自己回復で、回復していく人間も居る、人間は一人一人体質や生活のスタイルが違うのを数値だけで語るなボケと思ってる。これは有る医学者で脳科学者、解剖学者の

意見を過大解釈してその思想に成ったが今の医者に欠けてる部分を示した論でも

ある。ユリは散々調べた後、【ふーん、ちゃんと修行はしていたんだ】と言う。

ヒロは【こっちは自分たちの命が掛かっているからな】と言うと【でもちょっと弊害も現れてるね】とユリが言う。ヒロが【何の事だ】と聞くと【自立神経がやはり交感神経に傾き、バランス悪いね。ヒロ君コントロールが下手なのね、ロンさんと言う人はパーフエクトと言っても過言じゃ無かったと】ユリが答える。

ヒロが【ロンもこの検査を?】と言うと【凄く興味を持ってくれたよ、ヒロ君と

違って頭良くて、理解力も早いよね】と言う。ヒロが【一緒にするな、あいつは仙人だから何でも悟ったふりをしているんじゃ無いか?】と言うとユリは【ヒロ君が頭悪いだけだと思う】と思い切り言葉で心臓をえぐる。ヒロの表情が固まるとユリが

【そうそう、そう言う所ヨ】と言う。ヒロが【何がそう言う所だ、誰でもバカ扱い

されたらこんな顔になる】と言うと。ユリは【今、物凄い自律神経がコントロール

出来て無いよね、ロンさんに化勁とか言うの習っているんでしょ、心の化勁がなっちゃ無いよねヒロ君は】と言う。いつもロンに言われている事では有る。

ユリは【まあそれはさておき、これから戦う最中に、極限の脳の出力から、副交換神経優位に変われるトレーニングをやる、あの渡したスーツは交感神経を高めた感覚を

知って貰う為も有ったの】と言う、ユリが言うのはイメージと呼吸で、自分をより

コントロール下に置くためのものらしい。トレーニングで究極の爆発力を呼吸と脳の力で発揮できるように、脳のイメージを使って体に教育する機材らしい。

普通は何十年と掛けて、ひと握りの武術家が会得しうる技術を、早急に機械で行う

ことが良いのだろうか、不安がある。ヒロは【ユリちゃん、俺、死なないよな?】と聞くとユリは【人はいつか死ぬんじゃない】と答える、ヒロが【いや、そお言う事じゃ無くてこのトレーニングで死なないよな】と聞く。ユリが【やってみて、危なければ止めれば良いんじゃない】と言う。ヒロが青い顔でこわばると【ヒロ君さ、

友歌ちゃんを助けたいんでしょ】と言う。ヒロが【会いに行けるのか】と聞くと

【今すぐじゃ無いけど近いうちに合えると思う】と言う。【でもヒロ君死ぬかもよ】と言うとヒロは【危険はいつもの事だ友歌を助けるなら危険も承知する】と答える。

それからその機材のトレーニングは先ず週一からスタートした。このトレーニングは肉体より脳の疲れが極端に強い、上手くコントロール出来ていない証拠だと言う。

一か月目は週一、二か月目から週二回のトレーニングになった。朝は娘達と修行、

午前か午後にアカデミーで講師を娘達と行い、自分の修行もこなした。

エリカはヒトミがつけた家庭教師で猛勉強している。十二月に入り年末が近づいた頃、休息日にヒロはヒトミの使いで自分が通った大学に娘達三人を連れて訪れた。

エリカにも息抜きに成ると言うので、ヒトミに頼まれたのだ。恩師の浜にお歳暮を、直接持って行くためである。彼女は国際的に活躍する、国際経済学者で、武術一辺倒だったヒロを大学に入学できるまで教え、四年間、英語と経済、歴史、自然科学を

スパルタで学ばせた恩師である。ヒロがウイスキーやロック、ジャズ等を好きに

成ったのも彼女の影響である。お歳暮にはグレンファークラス25年とアベラワーの27年を持って行った。浜は【ヒトミ先生には、いつも頂いて申し訳ないと伝えて

おいて】と礼を言う。そして【ところでアンタから最近、音沙汰無いけど、どう言う訳?】と言う。ヒロは【最近海外が多くて】と言い訳をする。浜は【海外が多い割に土産を送って来ないのはどうしてかな】と言う。ヒロは彼女に感謝はしているが、

頭が上がらず、苦手なのである。その上その日、研究データーの打ち込みまで

ゼミ生と一緒にやらされた。娘たちは大学のキャンパスと言うものを初めて訪れた。

自分たちと同世代の男女が、沢山学んで授業が終わると、一緒に学舎を移動するのを三人で眺めていた。ヒロがようやくゼミから抜け出し、娘達と合流したのは夕方前である。ヒロ達はキャンパスを出て、少し早いが街の炉端焼きの店に顔を出した。

学生時代に良く食べに来た店である。安価だが魚に拘り、丁寧に炭火で焼き上げる、そして、ここで使う塩は美樹の育った里で取れた自然の塩である、ユニオンを通じて魚や塩を仕入れて居る。ヒロが店を覘き、店主に声を掛ける【大将もうやっている

かな】と聞く。大将が【いらっしゃい、久しぶりだなヒロ】と笑顔を見せる。

娘達と中に入りカウンターに座り、えびすビールとウーロン茶を頼む。

美樹は勿論ビールである。焼き物は、うるめいわし、ハタハタ(子持ち)、カマス、サバ、肉は矢早の農家が育てた軍鶏肉、焼き野菜はアスパラ、シイタケ、しし唐を

頼んだ。美樹はうるめ、を食べて、ヒロを見て【これ、うちの里の味だ】と喜んで

いる。そしてヒロに【家でも焼き魚、食べようよ】と言う。ヒロが【それは無理、

姉ちゃんが絶対許さない】と言う。ヒトミは家が焼き魚臭く成るのを許さないのだ。

生や煮物の臭いは掃除で取れるが、焼き魚は換気扇に臭いは、なかなか取れない。

毎日、換気扇を掃除は出来ないのだ。大将や娘達と談笑していると、そこに浜が

現れた。こんな早くに仕事を上がるとは思わなかった、ヒロは油断したのだ。

ヒロが立ち上がり【お先に頂いています】と言うと【いつのま抜け出して来たんだ?】と浜が言う。ヒロの様子を見て娘たちが驚いていると、浜が【こんな可愛い

お嬢さんたちとデートとは】 と言う。ヒロが【この娘達は部下で生徒です】と紹介すると、【なるほど、挨拶に顔を出さない訳だ】とハマが言う。【預かりものなんで

大変なんです】ヒロがと言う。【私の大変さが少しは身に染みたかね?】と浜が聞くと【感謝しています】とヒロが低姿勢で言う、そんな低姿勢のヒロを娘たちは初めて見る。美樹がハマに【偉い人なんですか?】と聞くと浜は笑って

【この世に偉い人なんか居ないんだよ】と言う。そして【皆それぞれ偉いし、そして馬鹿なのが人間さ、誰が偉いとか言っているが、猿とそう大差無いのが人間だよ、

自然界を良く見てごらん、どんな動物でも人間と同じように必死で生きている人間も同じさ】と言う。美樹が【ヒロ先生はやたらと偉そうに小言を言うんです】と言うと。浜が大笑いして【面白い娘だね、そんなの猿がなんか言っているって見てれば良いんだよ】とハマが言う。美樹がヒロを見て、ニコニコ笑うのだ。大将がヒロとハマに、黒木本店 芋焼酎 爆弾ハナタレ を見せて勧める。ハマが【焼き魚にはこれだよ】と言いストレートでちびちび飲み、ヒロにも酒を注ぐ、【きょうのデーター見てどう思ったね?】と浜が聞くとヒロは【今の株価が虚構で作られた価格だと、バカで無ければ解ります】と言う。ハマが【その通りだ、税制と公的資金で作られた虚構で、

本来の日本の企業価値とは程遠い、外資に配当を食わせているような企業もある】と言う。【これじゃ豊かな国なんて有り得ませんね、データーどうするんです】と

ヒロが聞くと。【あんなのは今、発表しても何にも成らない、仲間の学者に預け、

ユニオンに上手く使って貰うさ】と言う。帰りのタクシーで美樹が【先生、焼き魚

美味しかったね】と言う。ヒロが【そうだな、あのうるめいわし、懐かしい】と答える。美樹が頷き【シャチ兄様が、水樹先生に焼くのが下手って文句言われてた】と

言う。ヒロが笑って【俺なんか戦時中の現場で毎日、炭のコンロで魚を焼かされた】と言い、ヒロは美樹の頭をなでで【年末一緒に水樹姉の墓に行こう】と言う。

水樹が逝って一年以上が過ぎていた。次の休み、美樹と一緒に美樹と一緒に、美樹の里に行き、一泊した。シャチは相変わらず頑張って、里をまとめ美樹には口うるさく小言を言う。美樹が可愛いあまり、心配で成らないらしい。美樹は美樹で、反抗して【兄様うるさい】と逆らっている。ヒロはシャチに【たまには時間を作って、

ユニオンに遊びに来い】と言う。美樹が【兄様、お土産持って来るなら、遊びに来ても良いよ】とシャチに喋る。ヒロはそろそろシャチに良い縁談でも有れば、と思うのだった。翌日、帰りの車で、ヒロは美樹と誰か良い相手は無いか勝手に盛り上がって二人で話し有っていた。ヒロがイロイロ候補を言うが、美樹が無理だとか彼氏いるとかイチャモンを付けて良い案が浮かばなかった、本当、余計なお世話の二人だ。

年末ヒロが道場や自分の資料を整理していると、源三との稽古の動画フィルムと

ノートが出て来た。その中にある術式の型の画像があった。攻防一体、防御がその

まま相手を倒すための型式だが。柔の型式に見えて、受けと攻撃の発勁がほぼ同じ

タイミングに見えるが交差法では無い。交差法とは所謂、カウンター攻撃に近い。

威力は抜群で相手の体重と、こちらの体重が相互に乗り、一撃必殺の打撃も

有り得る、相手のフックを避けロシアンフックなどもそうだ、しかし同時に、リスクが大きく、見破られたら逆に倒されるリスクも有る。この動画に有る型式は、源三が旅立つ少し前に、ヒロに直接見せて、何れ習得しろと宿題のように残したものだ。

型式の名を影舞と言う。ヒロには当時、この術式が自分に習得が出来るとは、思えなかった。大掃除の後、一人で何度も動画を眺めて見た。すると一つの事に気が付く、動きの大半は捨己従人(きしゃじゅうじん)己を捨てて相手に会わす動きに見えるが、よく見ると、相手が源三にコントロールされている。そして相手が完全に同調した時、その相手に合わせ、打撃を加える型式だった。ヒロは思わず(クソジジイ、俺にその境地を求めるのか)と呟いたのです。先ずはユリの求める、交感神経と副交感神経のコントロールが完全に出来る必要が有ります。年末、家の大掃除はヒロが家に居る時は大半がヒロの仕事だ。ヒロに取っては、地獄の期間に成る。修行と大掃除の両立だ。ヒトミとユウは年末も関係なく病院でコウジは研究所だ。ヒロは掃除しな

がら、自分が可哀相に思えて来る。因みに娘たちは自分達の部屋の掃除と、勉強や、ネットで調べ物を、している。ヒロは夫婦の確執や、殺人事件のきっかけは、こんな事から起こると思った。そして大晦日の日を迎えた。晦日の日はヒロが居れば、

おでんと年越しソバと決まっている。冷蔵庫の中が、おせちの材料や重箱などで、

満杯になるからだ。これもヒロの担当だ、ヒロが居ないときは、全て百貨店のおせちで済ますらしい。ヒロは娘たちに、料理は美味しい物を食べさせたい、完全に年末の主婦だ。ヒトミやユリ、そしてコウジも帰って来て、皆で大晦日を過ごす。

ヒロ達エージェントは年末、海外で過ごしたり、紛争地で過ごすことも多く有る。

平和に過ごす事が出来ない人々も、世界には多くいる。戦争だけでは無い、貧困、

犯罪、不安、小さな諍い。そんな穢れを本当に綺麗さっぱり、流してくれるならと

思う。ヒロの作るおでんは、牛すじ肉、牛のアキレス腱が、たっぷり入った物だ。

他の具もさまざまな物が入って居る。ぎんなん、餅巾着、はんぺん、厚揚げ、大根、スタンダードな物からロールキャベツ、タコぶつ切り、豊富な具材が楽しめる。

ユウはビール、ヒトミはナパバレーの赤ワインを飲んでる。ヒロは当然日本酒で、

福岡の独楽蔵の古酒を飲んだ。美樹もヒロの影響で日本酒を覚えだした、違法行為の常習犯だ。ヒトミが【美樹ちゃんも、水樹ちゃんのように立派な酒飲みに育った

わね】と言って笑う。ヒロが【ホントにこのまま育っていいのか?】と言うと。

【先生は気にしすぎよ、ねえエリカちゃん】と美樹が言う。エリカが返事に困って

いると、アリサが【アンタが気にし無さ過ぎなの】と突っ込む。美樹の飲酒は何故か公認されていくのだ。その日、ヒトミの提案で、きっと星のせいじゃない、と言う

映画のDVDを観た。ジョン・グリーンのベストセラー小説「さよならを待つふたりのために」を基にした青春ロマンス映画だ。ガン患者の集会で出会った、若い男女が、恋に落ちる映画だ。ヒロはボクシングのタイトルマッチが見たいと言ったが、

最高権力者はヒトミだ。アメリカのラブロマンスなんか、とヒロは言ったが、ヒロが一番涙を流して観ていた。美しい情景で、若い二人のラブロマンスだ。

ヒロが泣いているのを見て、美樹が【先生って泣き上戸だよね】とエリカに言うと

【それ、泣き上戸じゃないと思うよ】とエリカが答える。美樹が【じゃあ泣き虫だ】と言う。大晦日は出来れば、一人で過ごさず、誰かと過ごすと心も洗われ良い歳が

越せるのでは無いだろうか。翌日の元旦は、ヒロが詰めたおせちの重箱と、雑煮を

囲んで新年を迎えた。おせちと言っても、煮豆などをヒロが作るわけでは無い。

ヒロがお気に入りの、おせちの食品を重箱に色々詰めた者を皆でつつく。

かまぼこ、雑煮、黒豆、伊達巻、カズノコ、栗きんとん、昆布巻、エビ、

紅白なます、煮しめ、ブリ照り焼き、伊勢海老、ローストビーフ等、様々な料理が

詰められている。大晦日と元旦は皆家で過ごし、ヒトミとコウジは2日から仕事、娘たちは、それぞれ自由に街に出かけたりしていた。ヒロも久ぶりに、大学時代の

同級生、シロウから声が掛かり、夕方から飲みに出た。大半の店は正月休み、

ユニオンの経営するホテルのバーに顔をだすことに。ユニオンが最近作った

高級ホテルだ。そのホテルには、ユニオンが作った学校の、卒業生なども働き、

多くの事情の有る人達が働いたりしている。中には元々ユニオンのエージェント

だった人間も働いている。ホテルのバーにはアケミとシンと言うヒロの後輩が働いて居る。ヒロがアケミを見て【店を間違えました、また来ます】とボケをかます。

アケミが【お客様、もうチャージが発生しております、どうぞお座り下さい】と

言い返す。ヒロがシロウに【すまんボッタくりの店の様だ、お前が払ってくれ】と

更にボケる。良い子はホテルでこんなボケをやったら、注意されるので、気を付け

ましょう。シンが【兄様、早く注文して】言うので、とりあえずジンリッキーを2つ頼んだ。シロウがヒロに【忙しそうだな】と言う。ヒロが【どこも課題が満載

だから】と言うとシロウは【日本や世界はどうなって行くんだ?】と聞く。

ヒロが【世界の心配より日本が先にヤバく無いか、こんなスピードで劣化していく国は歴史的にも珍しいぞ】と答える。シロウが【何故そうなっていると思うんだ】と

聞くと。【決まっている、人に金を使ってないからさ、物や投資に金が回れば当然人に回らない、物に使った金は人に再度回ることは無い、株もそこから利益が出ても

また株に回る、金が金を産めば、また金を増やそうとするのが、人の本能だ】ヒロ

が言う。経済の話をしているとアケミが【難しい話はそれぐらいにして】とヒロの

ボトルを出した、スプリングバンクの25年だ。キャンベルタウンで作られるモルトの香水と謳われる銘柄だ、アケミが【飲み方はどうする兄様】と聞くのでストレートで加水用の水を付けてくれとヒロが頼むと【めんどくさ】と小さい声でアケミが

言う。ヒロが【聞こえたぞ、俺はお客様だぞ】と言うと【はいはい、お客様、私も

頂いて宜しいでしょうか】と言う、ヒロが【全く、水の里の女はどいつもこいつも】と言うとアケミは【お客様、今のはセクハラとヘイトに成ります、お止め下さい

ませ】と言う。ヒロが【そう言えばお前、水樹姉の墓まいり行ったのか】と聞くと。

アケミが【去年行って来た、先生の葬式行けなかったから】と言う。ヒロは

【そうか、あの時はお前任務だったんだろ、それは仕方ない】と答えた。

シロウが【この女性もお前と同じ仕事を?】と聞くので、ヒロは【去年、現場を

リタイヤして、今はユニオンのホテルで仕事しているのさ】と答える。アケミが

【そろそろ、嫁入り修行もしないとね】と言うのでヒロが【手遅れな気がするが、

シン、お前が貰ってやれ】と言うと二人が同時に【ごめんなさい】と声に出す。

【お前ら二人とも贅沢言っている場合か】と言うと二人は【兄様もな】と

言い返して来た。シロウは笑ながら【本当だな】とヒロに言う。

【ハマ先生も心配していたぞ】と言うのだった。ヒロが家に帰ると兄のコウジから、明日ユニオンの研究所に来てくれ、とメールが送られて来た、また何故か嫌な予感がする。科学部とエージェントが打ち合わせすることは大体、兵器や武器に

関することが多い。勿論、通信技術などの意見を聞いたり、色んなケースが有るのだが任務中に使用する技術に関する打ち合わせである。翌日3日、科学部に顔を出すと、そこにコウジとユリがいた。ユリがニコニコしているのが余計に不安になる。

コウジは暗い顔でヒロの顔を見る。コウジが【ヒロ君悪い知らせかも知れない】と

言うとユリが【どうかな、良い知らせかも知れませんよ】と言う。ヒロが【どういう事ですか】と聞くと。コウジが【友歌君たちの星が、また地球に近付いて来ている、今度はかなり大きな規模でだ】と言う。ヒロが【攻めて来るってことですか?】と

聞くと。コウジは【そのように私は見ている】と答える。ヒロが【何故、今頃、

しかもどうやって?】と聞くと。ユリが【ヒロ君、最初に地球に来たのは何年前

だった?】と聞く。ヒロが【三十年近く前だ】と答えると、ユリが【次に来たのは】と聞く。【二十四年前】とヒロが答える。ユリが【どうして今まで、来ることが

出来なかったと思う】と聞く。ヒロは【距離的に不経済でリスクが大きい】と答えると。ユリが【やっぱりバカなのかな?】と言う。ヒロが【バカにも解るように説明

しろ】と言うと。ユリが【前回の2回は言わば実験的、試しなのよ、地球に攻めて

来るには戦力少ないと思わなかった?】と聞く。ヒロが【確かに科学力の割には

そこまで破壊力のある兵器でも無かった】と言う。ユリは【一応彼らも兵士だけど、彼らは捨て石みたいな物、窓際君で強力な武器を持たされていた訳じゃない】と説明する。ヒロが【いやいや、待てよ、あれで捨て石って、こっちは仲間が沢山死んで

いるぞ】と言う。ユリが【良く頑張ったよね、当時の技術力で】と言う。

【結局、他国を責めるには余程の戦力差と人間の力が必要か、またはとてつもない

破壊力の兵器で脅す、あるいは特別な技術が必要って事。そしてもう一つは地球まで来るのは、非確定要素が大きいの。だから今まで来る事が出来なかった、それにあの国自体の色んな事情が有るのよ】と言う。ヒロが【内政的な問題か?】と聞くと

【そう、あの国はあの国で大変だった】とユリが答える。【でも何故、攻めてくると解るんだ】とヒロが聞くと。コウジが今から説明しようと言い、

【君はワームホールとかホワイトホールと言うのを聞いたことは有るか】と聞く。

ヒロが【名前だけはね、でも仮想の話だろ】と言うと。コウジが【彼らには可能なんだ、ただしかなり不安定だった】と答える。ヒロが【それでこんなに時間がかかったのか】と言う。ユリが【でもそれで大きな、技術改革が出来たのよ】言う。

ヒロが【それで君も来れたのか】と聞くと。ユリが【私は別のルートで、来ているんだけどね】と言う。コウジが【そこで君たちに、新しい技術を使いこなして貰う、

必要が出て来る。勿論、戦わない選択が一番良い】と言う。ヒロが【君は何のために、ここに来たんだ、そんなことを知らせるためか】と聞くと。ユリは【友歌ちゃんを止めるため、このままじゃ彼女は自滅するから】と言う。ヒロが【彼女が、そんな愚かな道を歩むとは信じられない】と言うと。ユリが【前に言ったでしょ、ヒロ君の知っている、友歌ちゃんじゃないって、ヒロ君には、これを使いこなして

貰わないと】と言いゴーグルを見せる。そしてある部屋に通されゴーグルに画像が

映し出された。そして画像の中で次々ヒロに攻撃が繰り返される。ユリが相手に敵意を示してと声が聞こえる。そして敵意を持って相手を見ると、相手が爆発したり落ちたりする。ヒロが【テレビゲームか】と言うと、【実際にはリアルな武器が、相手を攻撃するよ、これが人なら相手は死ぬ】とユリが言う。ヒロが【ちょっとまて、こんなのだと地で血を洗う戦いにまた成る】と言うと【多分大丈夫、相手も人が出て来るのは最後だから】とユリが言う。そして【明日からこれで特訓してもらう、勿論、

手動の武器も、皆に使って貰うから】と言う。ヒロが【そんなワームホームだの

ホワイトホールだのを利用できる文明が有る星が何故、地球のような星を侵略して

まで欲しいんだ、無限循環エネルギーまで持って居るのに】と言う。ユリが【どんな高度な文明も、自然の資源まではどうにもならないの、一度失ったものは取り戻せない、しかも地球のように豊かな星は奇跡なのよ】と言う。ユリから相手の戦力や、

どのような形で地球を手に入れようとするか等も聞いたなんと人工のウイルスを使う可能性も示唆してくるのだ。それをさせないため、地球に来る前に話し合うか、戦う必要が有ると言う。ユリの予想では半年から一年後だと言うのだ。ヒロは話を聞いて非常に暗い気持ちで家に帰る。娘達は巻き込みたくない。夕食は手抜きで、

鍋とおせちの余り、おでんの余り(冷凍していた)で済ます。手抜きと言えども、

味に手を抜きたくない。鍋を矢早早の里の軍鶏肉と野菜で造る。

出汁は日本酒を水で薄めず沸騰させ、そこにコブとイリコをさっと入れて、

1分ほどで外に出し、薄口しょうゆで味を調え、そこに具材を入れて行く。

ヒロ流の日本酒鍋だ。ヒトミやユウも帰って来て皆で食べた。ヒトミが【今日アケミちゃんから、お礼のメールが届いたわ、昨日行って来たのね】と言う。

ヒロが【ボトルの期限が無いとか、五月蝿かったから、でも何で俺にじゃ無く

姉ちゃんにお礼なんだ】と言う。ヒトミが【貴方にお礼は恥ずかしいんじゃない】と言う。ヒロは意味不明と思いながら【美樹、アケミが美樹の事、元気にやっているか

気にしていたぞ】と言う。美樹が【先生、アケミ姉様、なんで現場を離れたの?

せっかく上級エージェントに成ったのに、なんかガッカリ】と言う。

ヒロが【なんでガッカリなんだ】と聞くと【要は怖く成ったんだよね、

エリカちゃんみたいに勉強して医者に成るわけでも無いし、ホテルの

バーテンしているなんて】と美樹が言う。ヒロがギョッとした顔でヒトミと目を

合わす。ヒロは【バーテンの何がダメなんだ?俺たちみたいに戦って居たら

偉いのか?アケミは別に怖くて今の道を選んだ訳じゃ無いユニオンには

アケミのようなスタッフも必要なんだお前は大きな勘違いをしている、それが解る

まで修行を休んで考えて観ろ、別に怒っている訳じゃない。これはお前のための宿題だ】と言う。ヒロが【ごはんを食べたらアリサもエリカも美樹と一緒に考えてやってくれ、美樹は明日の夕方俺に報告してくれ】と言う。美樹は驚いた顔でエリカと

アリサを見た。アケミには任務地で親友と呼べる友人が出来た、彼女は医師で

シングルマザーだが不幸にして、突発性の心疾患で亡くなったのだ。

アケミは彼女の子供を育てるため、危険な任務を下りたのだ。

ヒロが美樹に伝えたかったのは、そのことでは無い。良く、この職業は立派だとか、勘違いしている人間が居る。軍隊の兵士が偉い、自衛官は偉い、医者が偉い百歩譲って、たまたま世話に成った人間に感謝するなら、それは当たり前だが、本人が自分の職業を立派だと思うのは大きな間違いである。また周りの人間が、誰々は医者に

成ったんで偉いね、出世したから偉いね、何が偉いものか、その人間は、自分の為にその職業を選んだだけである。世の中の職業で偉いも偉くないも無い、多くの職業で世の中が回っている。美樹にはそれを解って欲しかったのだ。次の日の朝錬は、美樹を休ませ、アリサと二人で修行した。皆で朝食をとり、ヒロはユリの所で新しい

トレーニングを行うが中々上手く行かなかった。動物は身体と脳が繋がって動く物だ、そうそう脳だけで何かをコントロールするのは難しいものである。

心技一体と言うが、それは心と体が繋がって居るから、出来るので脳だけで何かを

動かすのは、そう簡単では無い。トレーニングが終わり、ヒロはユリにそのことを

訴えた。ユリは【向こうの兵士は、誰もが慣れていることだよ】と言う。

ヒロは【こんなのテレビゲームじゃ無いか、実際の戦いに成れば最後は人海戦だろ】と言う。ユリは【人海戦に成れば多くの人が死ぬ、それは向こうもよ、ヒロ君は友歌ちゃん助けたいんでしょ】と言う。ヒロは【それはそうだけど、これで助けられる

のか】と聞く。ユリは【作戦通り行けばね、それにこっちは沢山の人間を向こうに

送れない、こっちにまで来させたら、それこそ大惨事、向こうもこちらもね】と

言う。ヒロはユリによる、トレーニングが終わると、午後はフィジカルトレーニング

と影舞の型式の修行を続けた。夕方、買い物をして家に帰ると、美樹が落ち込ん

だ顔をしてヒロに手紙を渡す。そこにはヒロとアケミへの謝罪文が書いてあった。

そしてなんと、美樹自身が泣いてる漫画絵が大きく書いてある。

ぴえーんが丘どすこいノ助とか書いて有る((笑)ヒロは美樹に【俺とアケミに謝って欲しいじゃ無い、お前に気付いて欲しいだけなんだ、昨日も言っただろ】と優しく

言った。美樹は【でも先生、機嫌が悪いの判るもん】と言う。ヒロが【そう見えたら悪かった、それは多分違う事でだ、もう一度俺が何を解って欲しいか考えるんだ、

解らなければ色んな人に聞いてもいい】と言った。そこにユウが帰って来て

【お兄ちゃん、まだ説教しているの、まだ美樹ちゃんの歳でそんな事、解る訳ない

じゃん】と言う。ヒロが【それが解らないとダメだ特に俺たちの仕事は】と答える。

ユウが【美樹ちゃんチョット借りるわ、二人のご飯、要らないから】と言って

出かけて行った。ユウと美樹が掛けたのは、活け魚料理を出す料理店だった。

そこには生け簀の中に、多くの活け魚が泳いでいた。イカ、石鯛、伊勢海老、

カレイ。ユウはビールを頼み、美樹にも注いで飲ませ、イカとカレイ、石鯛

を刺身で頼んだ。ユウが美樹に【このイカの刺身に、どれだけの人が関わっていると思う】と聞く。美樹が【イカを取った人と料理をした人】と言う。ユウが店の大将に、どれだけの人が関わっている?と聞くと大将は【数えきれない人が関わって居ます】と言う、美樹が【えっ?】と驚く。ユウは【美樹ちゃんには一面的な物しかまだ見えて無いのよ、イカを取るための網や道具、船、燃料、それを扱う市場やお店、

お店の建物や道具、数えきれない人が居ないと、この刺身一つ食べれ無いのよ】と

言う。そしてユウが【まあ食べなさい】と刺身とビールを勧める。

美樹が刺身を食べ【美味しい】と言う。ユウが【皆が働いてくれているからこんな

美味しいもの食べれる、ここの魚たちも、それぞれ色んな餌を食べて、海の中で生きている、多様性って、そう言う事よ】と教える。美樹が【ユウ先生にとってヒロ先生も多様性ですね】と聞く。ユウが【ウザイけど、あれでも居ないと寂しいものヨ】と答えると【料理と掃除もしてくれますしね】と美樹が言う。ユウが【そんな事

お兄ちゃんに言っちゃダメよ、すぐ拗ねるんだから】と笑う。二人が家に帰り、店の領収書をヒロに渡して請求する。ヒロが【何でおれが払うんだ】と聞くと

【美樹ちゃんの教育のための経費でしょう】とユウが言って、美樹は【ご馳走様

でした】と頭を下げる。ヒロが美樹に【俺が言っている事が解ったのか】と聞くと、【イカとカレイと石鯛と漁師さんと船とお店の人とエトセトラと】答える。

ヒロが【何だそりゃ】と言うと【チャンと解っているから】とユウがヒロに言う。

ユウと美樹が組むとヒロには天敵であった。翌日朝、美樹は手紙に、自分が間違えて居た事、自分はもっと強く成り、その強さで社会で生きて行きたいと書いてヒロに

渡した。ズキュンー♥ー>ぽえんと書いて締めくくっていた。 ヒトミに後で二つの

手紙を見せると大爆笑して笑う、ヒロは何だ?これ?と思った。年が明けて、ヒロと娘達そして、世界の選ばれたエージェント達に、特性に合わせ様々なトレーニングと修練が行われ出して3カ月が過ぎようとした頃、合同で訓練が行われることが

通知された。場所は北アフリカの砂漠地帯を一部封鎖して、総勢500人程度その中にはマリ、アリサ、チヅル、美樹も入って居た、ヒロはマリアに電話を入れ

問い詰める。マリアは【まあ、もう通知が来たの、まだ訓練の段階だから、決まってる訳では無いのよ、明後日どうせマリと東京に行くから、その時話すわ、幹部が

集まり東京で会議も行うから、貴方も参加するのよ】と言う。マリアとマリが日本に来て、コウジの居る研究所で集まった。会議は翌日に、ユニオンのホテルで有る

らしい。コウジの研究所に行くと、既にマリア、マリ、コウジ、それにユリも

集まっている。ヒロがマリアをにらんでいると【機嫌が悪そうね】と言う。

ヒロが黙っていると、娘のマリが【パパ、心配しないで、私たちは大丈夫だよ】

と言う。ヒロが優しく【マリ、これだけはダメだ、これは大人が解決するべき、遺恨なんだ】と言う。コウジが【まあ、落ち着いて、聞いてみよう】と言う。ヒロが用意された椅子に座ると、ユリが【これはマリちゃん達の、助けが必要なのよ】と言う。

ユリが言うのは、マリ達、選ばれた女性エージェントを、交渉の使節団として

向こうに送り話をする、その場にはユリ自身も参加する。それを送り出す母船には、第一陣としてヒロ達、選ばれた兵団を一緒に送り出し外から、いつでも救出が出来るように見守る、と言うものだった。ヒロはあくまでも反対すると言い張る。

ヒロはコウジに【向こう送り出すって、どこまで行くんです】、と言うと木星の近くまでらしい。ヒロは【そんな所まで運べる船が有るのか】、とユリに聞くとユリは

自慢げに【有るのよ、それが、痩せる思いでコウジ先生と頑張ったんだよ】

と言う。ヒロが【そんな痩せてないだろう、痩せたようには見えない】と言うと、

マリが【パパ、それセクハラだから、ユリちゃんに謝って】と言う。ユリはマリを

抱きしめ【やっぱり私のマリちゃんね】と言う。ヒロがため息をつき【すいませんでした】と謝罪すると、船の設計図や完成写真を見せて、2カ月でテスト飛行等を行うと言う。ヒロはコウジに【そんな短い期間のテストで大丈夫なのか】と聞くと

コウジは【これは短い期間で造った訳じゃ無いんだ、以前から彼らの船を調べて、二十年以上、思考錯誤とテストを繰り返していた】と言う。ユリが【そこに私と言う

天才が現れアドバイスしたんだな】とまた自慢げに言う。ヒロはまたユリの事を頭良くても、性格はおバカの部類だ、学者に良く有りがちなタイプだと思いながら、ユリを見つめた。それでもヒロはマリアに【俺はまだ納得はしていない、子供たちを巻き込むのは反対だ、明日の会議で、それを主張する】と言う。マリアが【本当こう

なったら頑固ね、時間かけて話し合うしか無い】と言う。マリが心配してマリアに【パパ達と一緒に居ても良い?】と聞くとマリアが【そうね皆と一緒に居なさい】と言う。ヒロとマリが家に帰ると、アリサと美樹が修行から帰って来た美樹が

【アカデミーの演習場に新しいジェットバイクや戦闘車両のシミュレーターが入って来てたよ】と言う。ヒロが【そうか新しいシステムを導入するんだろ】とごまかす。

美樹が【新機能が満載とか、技師の人が言って居た】と言う。マリが美樹に【皆が

安全に戦える為によ】と言う。アリサが【先生、なんか落ち込んでいるの?】と聞くとマリが【パパは心配性なの、私たちがパパを支えてあげれば大丈夫】と言う。

美樹が【先生、落ち込んでないで、何か作ってお腹減った】とせがむとヒロが

【そうだな、何か作ろう】と言うと【私大盛でね】と美樹が言う。【本当に良く食べるわね】とアリサが言うと【私、若いんだもん】と答える。ヒロが【ニ八(にはち)ソバを作るから、エリカも呼んで来い。】と言って出汁を作り、そばを茹でる、具材に牛肉と卵と野菜をたっぷり入れて、作る。高たんぱくでヘルシーなソバだ。

ヒロは昼食の後、娘たちを残し、新しいシュミレーターを見に行った。

その機動性も大きくレベルアップしてるが、何より武器の種類と威力が格段に違う、明らかに今までの物と考え方からが違うのだ。こんな物まで作ってと感じる。

これを人に使えば、大量殺人に成りかねない、そう感じた。ヒロはコウジに電話して怒りを伝えた。【あれじゃモアブ、大規模爆風爆弾兵器、以上じゃ無いか、あんな物が必要なのか】と言う。コウジは【あれは使用するために作った訳じゃない、

明日ユリ君から、説明が有ると 思う】と言う。若い頃に見た惨状が、思い出され

気持ちが悪くなる。帰って皆の夕食の支度はしたが、ヒロは食欲が湧いてこない、

ユウに言って一人オートミールとプロテインとサプリで済ました。翌日ホテルの

大きな部屋で会議が開かれた。百人ほどの人間が集まり、そこにはチヅルやジャン、シャチ、シュウなど、多くの知った顔も居た。国連からも人が来ているようだ、

勿論、シークレットミーティングである。ヒトミの紹介でユリの説明が有った、

先ず相手の人数は百万人で有る事、そのうち実際の兵士は、1万人に満たない事、

相手の兵器の大半がドローン兵器で、地球の陸兵に当たるのは千人ほどだと言う事。

そして相手は最終的に細菌兵器を持って、地球を攻める可能性が有る事。

つまり千人の陸兵は捨て駒なのだと言うのだ。また彼らには、小惑星を地球に

ぶつける技術も有る、がそれは流石に行使することは無いだろう。目的は地球の資源の全権か、地球の人類の滅亡の2択だと言う。ヒロだけでなく、多くの人間が信じられない事で有り、そんな事は不可能だろうと思った。しかし彼らの作ったウイルスはそれが可能だと言うのだ。ヒロが挙手をして【そんな突拍子も無いことは信じられない、そんな危険なウイルスは向こうだって危険だろ、ウイルスならこちらもワクチンを作れば対抗出来る、そんな直ぐに地球の人間が全員死ぬようなウイルスなんか作れるのか】と言う。ユリが【エボラ以上の毒性でインフル以上の感染率と思えば

良いわ】と言う。場内がどよめく。ヒロは【そんな非人道的な事を、友歌がするはずが無い、有り得ない】と言う。ユリが【それが有り得るんだな、言ったでしょ、ヒロ君の知っている友歌ちゃんとは違うかも知れないって】と言う。ヒロが【その

ウイルスの設計図さえ解れば、防ぎようが有るってことか】と聞く。ユリは【ヒロ君バカと思っていたら、それくらいは判るのね】と公衆の面前でユリが発言する。

ユリが説明を更に続ける、こちらは使節団として、マリ達二十人を送り込む、

それに同行して五百人の船団を、木星の近くの彼らの近くに待機させる。最悪彼らを食い止めるため五百人で一万人の兵力と戦うというのだ。そのための武器の開発

だったのだ。相手の兵器は、ユリが特性を知り尽くしている、何せ基本システムを

開発したのはユリ自身だと言う。そしてユニオンと国連は、彼らと資源の交渉を

勧める、準備をすると言うのだ。様々な意見が出て、質問が飛び交うなか、ヒロは

それでも反対の意見を言って、こちらから攻めるのを止め、彼らを地球に受け入れる事を主張した。会議は結論を得ぬまま、一旦終了して、明日に結論を持ち込む事に。

国連からの代表たちも、結論が出せずに、それぞれ相談したり、するしかない。

それはマリアも予想の範疇だった。チヅルやアリサ、マリや美樹が、ヒロを心配

して、ヒロの近くに来る。マリが【パパ大丈夫?】と声を掛ける。娘たちの顔を見て自分の事も、回りの人間に対しても、怒りと嫌悪感がこみ上げる。娘たちをホテルのカフェで待たせて、再びマリアに電話して部屋に行くとそこにヒトミとユリが居た。

マリアが【まあ来ると思ったわ】と言うとヒロがマリアをにらむ。【そう睨まないで】とマリアが言うと、ヒロは【本当にそれでいいのか?国連の連中は自分達が犠牲を払う積もりは無いんだぞ、あの話し方は遠回しに、犠牲を全て丸投げするつもりだ、俺たちが死んでから、また考えようってのが見え見えだ】と言うヒトミが【落ち着きなさい、あの人達も仕方ないのよ、こちらもあの人達に何か求める積もりじゃ無いわ、アリバイと証拠を作りたかっただけ】と言う。ヒロが【何のためにだ、娘達の命まで危険にして何のアリバイを作るんだ。金を出させるためか】と言う。ユリが【本当に捻くれているね、友歌ちゃん達を最終的に助けるためよ】と言う。ヒロが【それなら最初から受け入れたら良いじゃないか、100万人くらいの人数ならユニオンの力で何とか成るだろう】と言う。マリアが悲しい顔で【無理ね、地球の人間にそんな許容力が有るとも思えない、お金や資源の問題では無い、心の問題よ】と言う。

ヒロが愕然として【それならユニオンが守ってやれば良いだ】と言う。

マリアが【そのためには彼らに、私達の力も示さなければダメなのよ友歌さん達は

以前の差別され、世界に散らばった民族と同じ心境なの】と言う。ヒロが解った

【それなら娘たちは巻き込むな俺たち大人だけで何とかする】と言うと、ユリが

【お願いマリちゃん達が命綱なの、私が責任もって彼女たちの安全を確保する、そのための手筈も準備しているから】と懇願するのだ。ヒトミが【とにかく落ち着いて、皆で食事でもしましょう、貴方も昨日からまともに食べて無いでしょ、朝からサプリとアミノ酸しか取ってないし】と言うと。ヒロが【一日ぐらい問題ない、ボクサーは数日塩分さえ抜いて、アミノ酸とビタミンだけで過ごす俺にはまだ体内に脂肪も筋肉も、たっぷりリザーブが有るから一週間ぐらいアミノ酸と水分で活動できる】と答えると、ユリが【これ以上バカに成ったら困るでしょ】と言う。ヒロが【良いんだよ、脳の顕性遺伝は、全部姉ちゃんに持ってかれているから、気にするな】と答える。

ユリが【やっぱヒロ君面白いわ、実験動物として】と言う。マリアが【まあ仲良く

しましょ】と言ってマリ達を呼んで、ホテルの中に有る高級鉄板焼きレストランに

入った。娘達は喜んで居るが、ヒロは少し不満げだ、コース料理で肉の種類と、肉の量そして追加で、海鮮の鉄板を選べるスタイルだ、ヒロはそのスタイルがあまり

好きでは無い、当然良い素材で上手く焼き上げて居るだろうが、食材で

パフォーマンスするのが好きでは無い。ヒロは海鮮で伊勢海老を選び肉はヒレを

100g、頼んだ。娘達はこの鉄板のスタイルが初めてで喜んで居るようだ。

美樹が【先生乾杯しよう】とヒロにビールを注ぎます。ヒロが笑って

【嬉しそうだな】と言うと、美樹は【私達が一番重要な任務だってチヅル姉様から

聞いた】と言う。チヅルが【先生、大丈夫よ、私達がマリちゃんを、きっと

守るから】と言う。美樹が【自分の弟子を信じなさい】と言うと、マリアが

【頼もしわ、美樹ちゃん】と言う。アリサが【先生、大丈夫だから】とヒロの手を

握って励ますと。ユリが【ヒロ君はモテるんだね】と言うと、マリが【ユリちゃん、パパは優しいから皆に人気なの】と言う。ユリは【ふーん、そうなの】と不思議そうに答える。食事が終わりヒトミが【少し、上で飲みましょ】とヒロをさそう。

バーに行ってカウンターに座って、ヒロは王室御用達のブレンドウイスキー

ロイヤルハウスホールドを頼む。ヒトミはショートカクテルのアレキサンダーを

頼んだ。それを飲みながら【二人で飲むのは久しぶりね】と言う。ヒロが【姉ちゃんも俺も忙しいからな】と言う。ヒトミが【友歌先生が、居なくなった時のことを思い出すわ】と言うとヒロは【あの時はすっかり騙された】と言う。【悪かったと思っているのよ、あの時は言えなかったの】とヒトミが言うと。ヒロは【解っている、俺もそこまでガキじゃない、皆に感謝してる】と答えた。ヒトミが更に【貴方、死ぬ積もりじゃ無いわよね、生きて彼女を連れて帰りなさい】と言うと【出来る限りはやるさ、マリ達だけは守る、命を捨てもな】と言う。ヒトミが【本当にバカな子ね】と

言いながら手で涙をそっと拭う。カウンターの中のアケミは、聞こえない振りして、グラスを拭いていた。翌朝、皆で集まりビュッフェで、朝食を取る、ヒロはマリアとヒトミに【娘達とユニオンの家に帰る、会議にはもう参加しないで良いか?】と

聞く。娘たちにそのことを告げると、美樹は【エーッ午後のケーキバイキング食べたかったのに】と不満を言う。マリが【我慢して私が帰ってケーキを焼いてあげる

から】と言うと、ヒロが【もしかしてマリア直伝のあのケーキか】と聞く。

マリが【そうだけど、どうしたの?】と聞くと。ヒロは【あのケーキは止めておけ】と言う、マリが【美味しいのよパパ】と言う。  ヒロは【美味しいけど夜中ずっと悪夢にうなされた】と言う、マリは【そんな物入れないわ、きっと邪気を払ってくれたのよ】と言う。【そんなのじゃ無かった、一週間ぐらい悪夢を見た】とヒロが

言う。【変なパパ美樹ちゃんが、変に思うから止めて】とマリが美樹を見ると

【やっぱりケーキは大丈夫です】と美樹が言う。ヒロが【ケーキは身体に悪いから、止めておこう】と言い、その日の修行の後にフルーツで糖分を補った。

因みにケーキは脂肪分と砂糖を一緒に取るから太りやすいがカロリーを取り過ぎなければ体に悪い訳では無い。ただし添加物には注意を払う事が賢明だろう。帰りの車の中でマリが【ウイルス兵器を使うなんて本当かな?ママがパパの知っているママ

じゃないって、どう言う事?】と聞く。ヒロは【会って見ないと解らない、友歌を

救い出すしかない】と言った。アリサはチヅルから新しい暗器(隠し武器)の事を聞いているようだ。帰ってすぐヒロ達は、修練場に行き、武器を想定した戦術や動きの修行を始めた。銃器も、レーザーシュミレーターを使っての実技を何度も繰り返す。

経験則を繰り返すしか、武器も体術も体に身に付かない。午後からはヒロはユリの

開発した、兵器のシミュレーターの訓練をした。脳の切り替えや、コントロールに

慣れては来たが、このシステム自体が好きに成れなかった。ユニオンは以前から

ドローンの技術を沢山使うが、自分の指で繊細なコントロールをして、相手の兵器のみを、無力化する物が大半だ。ユリは相手の方も大半が、ドローンの戦力と言うが、陸兵も千人ほど居ると言う。その千人の陸兵をこの兵器で、一気に殺すならば大量

虐殺だ。今後の演習できっと、相手の戦術の子細や、こちらの戦術をユリから

説明されるだろうが、ユリを本当に信じて良いのだろうか、と言う疑念が消えない。

しかしとにかく娘達だけは助けないと、こちらの被害も出来ればゼロで。

ヒロは国連の態度が、太平洋戦争の末期、劣勢となった日本軍が戦局を挽回するために、アメリカの戦艦への体当たり攻撃である「特攻」に踏み切り、最終兵器として、戦艦大和を作り、それを特攻させた連中と同じに感じた。莫大な費用を費やし大和を作りながら、それを特攻と言う無棒な作戦に費やした、当時の天皇と海軍司令部と

今回の国連、自分たちは何もリスクを負わず、ヒロとユニオンに丸投げする連中は皆、同じだと思ったのだ。そんな思いと共に、トレーニングと修行や訓練が続き、

1か月後に砂漠の一部を封鎖して五百人が、様々な演習や船や武器の扱いを訓練を

した。何よりも驚くのはその武器の威力です。重イオン加速器で加速して、

ビーム重粒子線を扱う武器。ヒロの扱う兵器は、超強力な電磁波を利用した、指向性エネルギー兵器をドローンに備えた飛行型の兵器だ。大型のタンカーを敵に見立てた演習で一瞬でタンカーの形が一瞬で変形する威力だ。ヒロはマリアがこの戦いに、

国連や他国の人間を加えなかった理由をようやく理解した。こんな技術が有ると判ると、世界が変わる。大体この武器に使用される、膨大なエネルギーシステム自体、

素人のヒロにも晒してはならない物だと理解出来た。ユリと言う女は恐ろしい女だ、余計に地球に来て協力したのが不思議に思った。ヒロはこの演習中ユリに直接何度も理由を聞いた。ユリは友歌を助けたい、の一点張り。ヒロが【大体、このシステムを、君が向こうで開発したんだろ】と聞く。ユリが【私一人じゃない、研究チームで造ったのよ】と言う。ヒロが【それは俺たち地球を、攻めるために作ったんじゃないのか?】と聞く。ユリが【違うわよ、別の理由が有る、あの星の、事情が有るのよ】と言う。ヒロが【ウイルス兵器も君が作ったのか?】と聞くとユリは【面倒臭い人ね、ヒロ君の事思って黙っいて上げたのに友歌ちゃんが天才的な医学者だって知っているでしょ】と言う。ヒロが【何を言っているんだ、そんな事が有るわけない、何のために俺を騙してる、ウイルスも君が作ったんだろ】と言う。ユリが【悔しいけど、医学については友歌ちゃんは天才なの、それにユリちゃんも 好きでそんな危険な

ウイルスを開発した訳じゃ無い、同じウイルスの治療の研究をしていたの、

よん所ない事情で、ウイルスを兵器にするしかなかったのよ】と言うのだ。

ヒロが【まさか使ったのか】と聞くと【仕方無かったの、あっちに行けば解るわ、

友歌ちゃんは二重人格を患ってしまったのよ、あちらでは良く有るケースなの、それくらい追い詰められていたの】と答える。ヒロは呆然とするしか無かった。

チヅルやアリサ、マリや美樹、使節団として行く人間は女性のみである、ユリから

あちらの風習や施設のこと、話し合いの戦略など講義を受けた。使節団には

エージェント以外のスタッフも居る、そのスタックにも護身術などをアリサやチヅルが教えた、因みに護身の基本は逃げ方だ。相手を倒すことに、未練を持っては逃げる事が出来ない。時に逃げるスキを作るための技術だ、攻撃は一撃でダメージを与える事が必須で有る。普段の生活で使える身の周りの物を常に想定し力の弱い女性は攻撃に情けを持たない事が寛容でもある。一番大切なのは常に危険に近づかない事で男性と安易に二人っきりに成るのはお気楽すぎる行為だと言う事を肝に銘じるべきだ。

演習や戦術の部分で驚いたのは、すべてが広大な砂漠と言う設定で相手の施設は地下の中に有る。外に出撃した敵を攻撃する設定だった。相手の城は地下の中に埋まっていて籠城を取っている設定だ。しかしアラブのドバイが砂漠にビルを沢山建てて都市を作ったが砂漠の地下に人の住む都市を作ったとは驚くべき事だと感じた。

それほど荒廃した小さな惑星のような物を移動させる技術力にも驚愕してしまう。

ユリが言うには月の三分の一くらいの、惑星を移動させていて、そこには地球と同じように空気が存在するらしい。しかし緑の無い、そんな場所に空域が存在するのか。

それも技術力で造られたものなのか。そんな高度な文明と戦えるのか、更に不安に

なる。ヒロは、例えウイルスのリスクを考えても、地の利の有る地球で戦う方が

有利では無いのか、と思うがもう作戦はスタートしているのと、同じである。不安が残るまま演習が終わり、一旦、日本に帰って一週間ほど準備と休息をしてあちらに

出発することに。こちらは母船二艘に、百五十人と三百五十人に分れ、あちらに

向かう。目的の場所まで二カ月必要だ。ユリは自分の通信設備で、向こうの仲間と

連絡を取り、こちらの使節団と交渉の準備を行ってもらう、日本に帰ったのは、

六月半ば梅雨には入って無かったが、ヒロには空が梅雨色に見えた。日本最後の夜は、皆で家で過ごす、予定ではヒロ達先発の後、残りの後発にマリアが搭乗して

やってくる予定だ。最後の夜マリアも日本に来て、マリ達とヒロを見送ることに

成った。今日は総勢十一名分の食事をヒロが用意した。魚貝類はオホーツク産の

毛ガニを人数分湯がき、刺身はアイナメ、ヒラマサ、カレイ、タコを刺身に、そして牛すじ肉とジャガイモ、玉ねぎで肉じゃがマリアとヒトミのために高級なチーズ、

ウオッシュ、白カビ、アオカビのチーズセットと生ハム、のオードブルを作った。

最後の日本酒に選んだのは、三重県の作、中取りと、ほしいずみ夢吟香大吟醸だ。

マリが【向こうに行っている間、美樹ちゃんもお酒飲めないね】と言うと、

美樹が【えっ?なんで?】と聞く。ユリが【講習で言ったでしょ、あの星ではお酒は違法で重罪なのよ】と言う。美樹が【聞いてない、そんな国さっさと滅ぼして姉様の母様だけ助けて帰りましょう】と言う。ヒロが【アホか、酒、禁止の国の全部を

滅ぼしたら、中東の大半の国と戦争しなけりゃいけなくなる】と言う。美樹が

【そんな人権無視の法と、私は断固、戦う】と息巻いてる。ヒロが【お前を連れて

行くのは、やっぱり心配に成って来た】と言うと。美樹は【エース抜きでは大変で

しょ、見つからない様にこっそり飲むから大丈夫】と言う。ヒロはますます心配に

成るのであった。翌日ヒロ達は百五十人を先発隊として出発します。ユニオンの船は木星まで約二カ月で近づける。スペースシャトルの十倍以上のスピードで推進する。

そのため莫大なエネルギーを必要としますので、大きな船には水から水素と酸素、

そして人間の輩出した二酸化炭素を分解して酸素とカーボンを作る循環システムを

搭載しています。何度見ても良くこんな艦をワザワザ作り、遠くまで遠征をする気に成ったとヒロは思った。艦の中は思ったより広く、空間が取られ、二カ月の期間が

苦痛に成らない様に作られています。因みに重力は、磁力や推進力で自動調整され

地球と変わらない重力です。操縦システムは、全てユリが作ったプログラムにより、自動化されています。到着するまで大半の人間は、普段の生活以外、やることが無いのです。二カ月の間船の中で訓練や、トレーニングを兵士は行い。それぞれの任務に応じ準備をしていきます。食料はほとんどレトルトや、容器に詰められた物と

サプリ等で、我慢するしか有りません、ヒロにはこんな時は、オートミールと

プロテインバーやプロテインドリンク、プロテインバーが役に立ちます。

ヒロの船にはジャンやシュウも乗って居ます。二人とも銃器、飛び道具の

スペシャリストで戦いに成れば、大きな戦力に成ります。ヒロに取っては修行で組手や約束組手の相手として、うってつけな二人で娘達や彼らと修行を繰り返すことで

退屈な日常が苦には成りませんでした。娘たちはユリが開発した、向こうの言葉の

翻訳機と、ユリの授業でコミ二ケーションが完璧に出来るように訓練をしていた。


最終章

そうして現地に到着して、船が友歌達の惑星に到着しました。ユリが言う通り、

見渡す限り砂漠で、いくつか地下への入り口のようなものが見えるだけです。

マリ達、使節団がユリと一緒に船の外に出て、大型輸送バスで入り口近くまで

近づきます。自動でエレベーターのように、建物が砂漠から浮き出て、そこから

五十人ぐらいの人が出て出迎えてきました。ヒロとシュウは使節団の護衛で、近くに待機していました。シュウが【地下に空港の入り口が有る感じか?】とヒロに言い

ます。ヒロが【どうだかな?ユリの図面だけでは、正直信用も出来ない。使節団に

なるべく詳しい情報を、知らせて貰うしかない】と答えた。【しかし中に男を入れないと言うのも、おかしな話だ、人数的にそんなに警戒する人数でもあるまいし】と

シュウが言う。ヒロが【他民族を信用しない事は、良くある話だ、特に資源の奪い

合いをするような環境ではな】と言う。地下から上がっていた入り口が、元の地下に戻り、ヒロとシュウは船に帰って連絡を待った。マリ達が中に入ると、ホントに空港のトラベーター(動く歩道)のように移動していく。そして広い所に出ると、更に

多くの人数が出迎えて居た。その中に男の護衛の兵士も二十人ぐらい居た、他は女性の様だった。その女性たちの中心に、友歌が居てマリ達を出迎えた。友歌が【良く

来てくれましたね、貴女方を歓迎します】と言う。穏やかだが、なんだか冷たい感じをマリは感じた。ユリがマリに【友歌ちゃんよ】と言うと【お会い出来て嬉しい

です、長年貴女に合う事が夢でした】と答える、ユリが【立ち話も何だから、移動して皆で座って話しましょう】と言う。場所を移動すると、椅子と机が置かれていて、マリ達、使節団と友歌達が対面で話が出来るように設定されていた。ユリはマリたちの机に座って、マリの右隣に座り、左にはチヅルが座った。友歌が【今日は疲れて

いるでしょ宿舎を用意しているから、そこに荷物を降ろしてゆっくり休んで下さい】と言い。更に【夜はささやかな、食事会と親交の場を催します、楽しんでください】と言った。宿舎の部屋に入り美樹がマリの部屋に来て【姉様の母様、凄く若くて綺麗ですよね、でもなんかここって変じゃない、女の人ばかりで男が少ない】と言う。

マリが【そうね、どう考えても不自然な気がする、ユリちゃんに色々聞かなきゃ】と答える。美樹が【私が姉様のために、色々調べる、私、誰とでも友達に成る才能有るから】と言う。マリが【そうだったわね、頼りにしてるわ】と言う。地球で言う夕方になり、歓迎の宴が模様され、この星の人たちとマリ達が入り混じり、決められた席に着く。マリとチヅルは、友歌と側近らしき女性と、同じテーブルで有る。

マリが地球から持って来た、お菓子やチョコレートをプレゼントとして友歌に手渡し【パパからチョコレートやお菓子が、好きだったと聞いたの美味しいので食べて

ください、船にもカカオ豆やお菓子が積んでるので良ければ他の皆さんにも食べて

貰ってください】と言うと。友歌が【ありがとう、でも地球での事は、余り覚えてないのよ】と言う。それを聞いて、チヅルとマリが顔を見合わせ驚いた。チヅルが友歌に【この星の産業は、どんな物が有るのですか?】と聞くと【産業と言っても、全て国が管理してるのよ衣類、食料、技術、建築、教育全ては一括でこの中央で管理してるの】と友歌が答える。そして【大半はAIシステムが一括で管理してるの】と言うとチヅルが驚いて【システム自体は無理でも、設備とか参考に出来る場所を見せて頂けませんか、機密の内側部分以外で】と聞くと、あっさりと承諾された。

使節団はそれぞれのテーブルで、この星のリーダーたちと話をして親交を深めると

共に、それぞれの専門の分野で、情報を聞き出した。農業、工業、建設、医療、

教育、文化、驚くべき事に、大半がAIのシステムが決定した方向で動いて居るのだ。美樹は若い人達と親交を作り、家での生活などを聞いてる。音楽や芸能、

食べ物、恋愛について。何より驚いたのは恋愛と言う理念が、この星に無いのだ。

恋愛などと言うのは昔の話で、人口の管理そして、受精なども医療の一つとして

行われていると言う。音楽や画像などもAIが作ったり、決定したりしている。

美樹が直球で、男性がほとんど居ないのは、何故なのか聞いてみた。       一つはこの国で、大きな内乱が起こった事。男性だけがかかるウイルスが、大流行して 男性が殆ど死んだこと。そして何より、男性の生まれる人数を、AIが制限してると言うのだ。恋愛や結婚と言う概念も無い、子供を育てるのは母親だが、それも

社会の一員の法で定められた義務としてAIの指示に従って行われる。

母親に何か有れば、社会が責任を持ち育てるシステムが、構築されていると

言うのだ。パーティーが終わり、宿舎に帰り、娘たちは集まって話をした。

ユリから聞いて無いことが、多すぎる。交渉と同時に調べるべきことが多くある。

美樹がワクワクしてアリサに【エースが活躍するときが来たね姉様】と言う。

アリサが【ちょっと落ち着け、美樹ちゃん、大事に成るから】と言う。

チヅルがアリサに【これが意外性の娘って事?】と言う。【先生がいつも悩んでいるの】とアリサが答える。美樹が【何を悩んでいるの姉様】と聞くと【アンタの

そう言う所】とアリサが答えるだ。マリが美樹の頭をなでながら【チームのエースだから皆心配なのよ】と言う。美樹が【姉様、先生に連絡しないと心配する、先生、

気が小さいから】と言うと、マリが【そうね、パパは超がつく心配性だから、美樹

ちゃん連絡して】と言う。美樹が通信機でヒロに連絡して【メーデーメーデー先生、生きてる?】と言う。ヒロが【そっちこそ皆、無事なのか】と聞くと【元気、元気、それより大変なの、ここは男がほとんど居ないの、そして恋愛とか結婚の制度が無いんだって、新しいワクワクを期待していたのに】と言う。ヒロは訳が解らず

【そうか、それは残念だったな、とにかくお前は無茶な行動はするなよ、姉様たちの指示を聞いて行動するんだ】と言うと。美樹は【大丈夫だから、明日から、新しい

ワクワクを探して冒険するから】と言う。ヒロが【そこにマリが居るなら変わって

くれ】と言ってマリに変わって貰う。マリが【パパこっちは大丈夫だから心配しないで】と言う。ヒロは【マリ、友歌に会えたのか、元気だったか?】と聞くと

【元気だったけど様子が変なの、ここの星は少し変、兵士も人口も少ない理由が

すこし解ったわ、暗号でそれぞれのチームがレポート送ると思うけど

もう少し調査も必要】とマリが答えた。ヒロはとにかく、無茶はするな、こまめに

連絡をくれ)と言って通信を切った。シュウがヒロの所へ来て【兄様、連絡有ったか?】と聞く。ヒロが【予定通り、パーティーも無事終わったようだ、しかし

可笑しな事を言っていた、男がほとんど居ないとか恋愛も結婚も無いとか】と

答える。シュウが【指令部にもそんな連絡が来ているらしい、こちらへの敵意なども感じないとか言って居た、科学力やウイルス兵器を持ってる余裕なのかも知れない、

本当に地球の人類を滅ぼすことなんか出来るのか?】と聞く。ヒロが【とにかく

調査をもっと進めないと、そして相手との交渉が進まないと判らない、マリアも

こっちに来なければ】と言う。シュウが【相手がこちらに攻撃してきた時の準備は

進んでいるのか?】と聞き。ヒロが【カモフラージュした車両は配置された

みたいだ】と答える。更に【一番の問題は使節団が無事逃げる事が出来るルートの

確保だろ】と言う。シュウが【施設で派遣されているエージェントがしっかり調べるだろ。基本に成る図面は有るんだから】と言う。翌日、マリ達は宿舎で朝食を取りながらユリに会い色々質問をした。ユリはこの星のAIのシステムの考案者の一人で

有る事。この星へ友歌が帰って来た時、男たちは内乱で争い続けて、社会もインフラも荒廃してたこと、そんな時、男性にだけ流行するウイルス性疾患が大流行した

こと、そんな環境で友歌が心の病にかかり、多重人格化したこと、AIの判断で男性の数を減らしながら国を再建する事に成って、今の状態の国のシステムが出来上がったこと。そしてAIが地球もこのシステムを導入しなければ何れ滅びる事を計算したこと。マリ達には驚愕の事実だった。確かにAIの計算したことには一理有るようには見える。男性だけの持つ、Y染色体はろくでもないと、言う学者もいる。

女性にも勇ましい事をの賜る人も居るが、大半は自分の保身や政治的計算の上だ。

計算高さでは男性は女性に及ばない所も多い。男性の計算高さは男性社会の中でしか通用しない未熟さを持ってる。つまり脅しや 権力的地位などと言う卑劣な武器あってのことだ。下から上の人間を騙すのも、その地位の優位さでバカな上司を騙せる

システムが有ってのことだ。とある大メーカーの社長が、部下たちから煙たがられ、国の司法もその社長に目を付け、司法と社内の利害が一致して情報を漏らされ、社長もその罠に気付かず、逮捕されたと言う例はいくつかある。そんな事をするのも、

男のy染色体の成せる事なのかも知れない。そんな事ばかり繰り返せば、社会は疲弊して滅びるのは道理だ。しかし余りにも過激で短絡的な計算だ。

マリは【ユリちゃんはどうしたいの?このシステムを作ったのユリちゃんでしょ】

と聞く。ユリは【私には決める権利はない、友歌ちゃんに責任を負わせちゃったから、でも出来れば友歌ちゃんを助けて欲しいの】と言い。更に【マリちゃん達の力を貸して欲しいの】懇願した。チヅルが【AIのシステムを逆に利用して、中止させるのは?】とユリに言うと。マリが【それでは意味が無いのでは?ここの人たち自身が考えを改めて、侵略を止めて貰うのが大切じゃないかな?】と言う。この日もこの国のリーダーたちから、国のシステムや産業の様子を画像を交えて紹介される予定だ。

そこでこの国の事をもっと深くしり、こちらからも、地球の状況や色々な考えを

紹介する情報交換がされる予定だ。美樹が【今日の会議、サボタージュします】と

言う。サボタージュとは本来、労働者が労働条件や環境に不満を持ち、工場を破壊したりする行為が元なのだが、昨今、仕事をさぼる意味で若者が良くい使う。アリサが【アンタ、何考えているの?先生が無茶するなって言っていたでしょう】と言うと。

【だってこの国の状況を変えるには、レジスタンスの仲間も集めないといけないし、

この国の本当の姿も見ないと解らないでしょ、スーパーエージェントがやるしか無いでしょ姉様】と言う。アリサが【アンタ、本当に危なすぎる、大人しくしてなさい】と言うとチヅルが【アリサちゃん、この子を動かして見るのも有かも】と言う。

そして【レジスタンスは作らなくて良いから、この周辺の地上を回って色んな画像や人たちの情報を集めてきて、ただし昼と夕方必ず連絡して】と言う。美樹は調査の

ための車を調達するため、船に連絡を取り事前にユニオンが船から配備していた車を借りた。ヒロはその件の報告をチヅルから知って美樹に連絡する。【美樹、大人しくしていろ、と言っただろ、何するつもりだ】と言う。美樹は【チヅル姉様の許可は

貰いました、心配しないで私に任せなさい】と答える。【だから何を企んでいるんだ】とヒロが聞くと。【この国のシステムは完全に可笑しいよ先生、きっとレジスタンスや反体制を訴える人が居るよ、その調査だって】ヒロが【いやそれは、お前が勝手にやっちゃダメだ。もうお前だけでも船に帰って来い】と言う。美樹が【何言っているの先生、チャーリーズエンジェルではエンジェルが冒険して事件を解決するでしょ。私が頑張らないと地球の男がみんな死ぬんだよ。BTSやセブンテーンも死んじゃうのよ】と叫んで連絡を切った。ヒロは気を失いそうになる。そばで見ていたジャンが【どうしたヒロ】と心配して聞いてくる。ヒロは【BTSが死んでしまうそうだ】とか弱い声で言う。ジャンが【なんだそれは】と聞くと、ヒロが首を横に振る。

ヒロがチヅルに連絡すると【大丈夫だと思う、一応虫型ドローンを付けているから。それ見張っていて、何か有れば行って上げて】と言う。ジャンが再度【大丈夫か】と心配する。ヒロが呆然としていると【まあ落ち着け兄様】とシュウが紅茶を持って

来てくれた。ヒロが紅茶を受け取り【ありがとう、でももう俺はダメかもしれん】と弱気になるのだった。しかしこの星でいったい何が起こったのか、想像しがたい。

男を全滅に近い状態にする、自然発生からなのか、何らかの事故からなのか、

そしてそれを兵器に使えるまで昇華させるものを作った事。一方でマリは技術交流の時、母親の友歌にききたいことが有った。マリは友歌に【ママ、ママと呼んで良いですか?】と聞く。友歌は【当たり前よ、貴女は私の娘、おなかを痛めて産んだ娘、

一目見た時に私の娘だと認識できた】と言う。マリは【ありがとうママ、私もママとパパが出会って、この世に生を受けたことを心から感謝しています、ママはパパと

出会ってどうしてパパを愛したんですか?】と聞くと。友歌が【それが良く覚えて無いの、と言うか解らないのよ、男と言うものを何故好きに成ったのか、孤独からなのか、安心が欲しかったのか、自分の子孫を残したいと思ったのか】と答えるのだ。

マリは友歌に【ママ、パパの作った料理が好きだったと言ったの覚えている?

マリアママから聞いたんだよ】と言うとそうね【地球の食べ物が美味しかったは覚えているけど】と友歌が言うと。【ママ地球では、男性の料理の専門家が多いのよ、

勿論女性の人も居るけど、料理を作る職業は地球では結構な重労働なの】とマリが

言う。友歌が【料理なんか機会がレシピ通り作れば誰でも同じでしょ、ここでは

そうしているのよ】と言う。マリが【だからなのね、ここの料理は美味しく感じなかった、日本のコンビニで出してる美味しくないお弁当みたいで、ママにパパの料理をまた食べさせて上げたい】と訴えると。友歌が【そうね、でも難しいかな】と

答える。チヅルとアリサは、この星のシステムについて良い面、悪い面をどのように

捉えているか、この星の人たちに聞いた。ここの人たちは、良いも悪いもこの星が

持続する、唯一の方法だと信じてるようだ。地球でも男が権力を持てば争いは、避けられないのでは?と言うのだ。一方美樹は衝撃的な景色を発見した、元々あった都市の残骸の景色だ。砂漠に建てられた沢山の建物の残骸が、延々と続いている。

そこで行われた、戦闘の激しさを物語る景色だ。美樹の乗ってる車は砂漠でも

時速400キロで走行する性能だ、砂漠に特化した走行能力で自動制御も出来る、

美樹はご機嫌で走って行くと初めて、農業プラントと工場のような物が見えた。

そこは高い塀で囲まれ、中を虫型ドローンで確認すると、多くの男性が作業をしていて、男女の兵士やロボットがそれを見張っているようだ。ロボットも兵士も強力な

小銃のような武器を構えている。美樹は車の中で、誰か人が出てくるのを出口のそばで待った。美樹はその出て来た人に【ここは何をしてるの農産物の工場?】と聞く。

彼らは【ここは男性の刑務所なの、男性が侵してはいけない罪を侵した人が

終生ここで隔離生活して、働いて罪を償うの】と言う。その人は女性、もう一人は

男性あった。美樹が【ここは男性だけの刑務所?どんな悪いことをしたの?】と聞くと。【性行為誘惑罪よ、女性に対して性行為を誘惑しようとした罪、殺人と強姦に

次いで重罪よ】と彼女が言う。美樹がビックリして【性行為誘惑うて、どんな事?

実際に無理やり性行為をやろうとした事?】と聞くと、女性は【それは完全に強姦罪死刑よ、そうではなくて、性行為を目的として、女性を誘惑する為の、行動言動が

認められたら、有罪の判決が出るの】と答えるのだ。美樹が【好きだとか言っても

ダメなの?】と聞くと【微妙よね、それじゃあ立証が難しいから、具体的に手を

繋ぐ、手紙を書く、二人っきりで外か室内に誘う、これらがアウト】美樹が驚いて【それじゃ今のお二人もアウトじゃ無いの?】と聞くと【これは業務上一緒に交代

する必要が有った、それに彼に誘われた訳じゃないから犯罪には成らない】と言う。

美樹が【これに反対する男性はいないの?】と聞くと。【男性はマイノリティーだし、AIが統計データーにより決めた法律だし、何より男性の贖罪が有るからね】と彼女が答える。美樹が【男性の贖罪って何?】と聞くと【今まで戦争で散々社会を

壊したこと、その他に、女性に出産や子育て、家事労働などを背負わして、自分達だけで社会を動かし、女性の意見を取り入れない社会を作った事よ】と彼女が答えた。

美樹が【そうだけど、それって男性だけの責任?】と更に聞くと。彼女は【女性は

体力が無い理由で、社会から追い出していたのは事実、男性は力で押さえつけようとする遺伝子を、持っていることが贖罪なの】と言う。美樹はそんな男ばかりじゃ

無いのに、ウチの先生はいつもヒトミ先生やユウ先生にこき使われてるし、と思ったが、どちらかと言えば少数か?と思った。一旦宿舎に帰り、チヅルに報告すると、

チヅルは【思った通りね、ここの歴史教科書や文献を見ると、男性の犯した罪が

様々書かれているわ】と言う。その中に現代の地球の男性の様々な、悪い部分も強調されていたと言うのだ。マリが【どんな事?】と聞くと【以前の戦争で、多くのこの星の人が虐殺されたとか、野蛮な性格で卑劣な作戦を使った、とかマリちゃんには

言いにくい事だけど】と話を止める。マリが【いいわ、教えて】と言うと【先生が

マリちゃんの母様を、人質に取り戦い、多くの人に被害を与えたことに成っているの】とチヅルが言う。美樹が【酷い、先生はそんな事をする訳が無いのに、でもあの法律は先生のせいって事に成っているの】と言う。アリサが【そんなわけ無いで

しょ、AIが決めたんだから】と怒る。チヅルが【一つの法を作る部品には成っているかもね】と言う。一方、ヒロ達、母船の調査団も、星の中に同じ様な施設を、何個も見つけまた軍の施設をいくつか見つけた。軍の施設は、かなり防御が厳重で、大半が地下にシェルターのように隠されている、その中にいくつか違う色合いの物が

有った。陸兵部隊と航空部隊の違いなのか不明だった。美樹は翌日ヒロの所に顔を

出し、ヒロに昨日の事を告げた。ヒロもその件の報告は受けていた。美樹はヒロに【先生そんな悪い事していないよね】と聞く。

ヒロは【どうだかな?向こうにしたら悪いことをやったのかもな】と答える。

美樹は何をやったのと聞く、ヒロは【覚えが有りすぎてどれの事か解らない、

まあ地球でも普通に有る話だろ】と言う。美樹が【私はコリアンポップが好きなのに、韓国がーとか言う人?】と聞く。【そうだな逆に日本がーって言う人たちも

居る、その中には嘘も真実も有る、憎しみを誇張すれば、悪いことは全て、真実に

感じる人も居れば、それが自己愛を刺激され戦争にまで及ぶ、戦争なんか究極の自己愛が産むのかも知れない】と言う。美樹が【どうすれば良いの?】と聞くと【難しいけど自己も他も同じように愛することが出来れば、一番良い、金持ち喧嘩せずって

言うだろ、どちらも何らかの理由で心が貧しく成った可哀そうな人達だ】とヒロが

答えるのだ。美樹が【でも先生が可哀そう】と言うと【俺には、お前達が居るし

それで彼らが俺を憎んでも、彼らのせいじゃ無い、自分たちの都合で情報を捻じ曲げ、それを出している人間の詐術のせいだ。俺たちだって似たような事をやるだろ】と言う。美樹は【もう少し、調べてみる】と言い、昨日とは違う方向に車を走らせ

調査に向かった、そしてその日車で8時間ほど走った所で、ある施設を見つける、

古びた廃墟のような施設に、多くの男性が数百人、暮らして居る。美樹が【貴方達は何をしてるの?】と聞く。彼らは元々、色んな場所から逃げたり、厳しい規制が

嫌で、社会から自分で離れた人たちだった。そしてある人間に、支援を受けて、軍事的訓練を受けているようだ。彼らの主張は、個々人の自由の尊重と、性善説に乗っ取ったシステムだ。例え、それが何かの悪行に動いても、悪いのは、悪意そのもので、その悪意の根源を作った社会やリーダーにも、責任が存在する、被害者への救済は、

法の不自由や処罰で処するものでは無いと言う主張だ。つまり悪行に至った根源を

本人に理解させ、改めさせる厚生制度と悪意が生まれない理想の社会の実現を目指す、主張らしい。美樹はそれを聞いて、確かに、それが恋愛禁止に繋がったり、誘惑禁止令なんてと思った、でもそれを解決するのに社会から出て、武器を訓練してと、言うのも如何なものか?とも思えた。一方マリは友歌に社会の可笑しさを訴えた。

【ママ、この世界は可笑しい、恋愛や誘惑を禁止したのは何故?パパとの結婚さえ

否定するの?パパが嫌いになったの?】と聞く。友歌は【好きとか嫌いじゃない、

これはAIもハッキリ答えてることだけど、愛と呼ばれる悪魔は数々の不幸を産むの、毎年、色んな不幸が起きる。一見幸せそうに見えて、多くの不幸の引き金に

成ったりする。結婚程不平等な制度は無いわ。子供が欲しければ、管理できる体制を整え適切な遺伝子の受精を行いきちんと育てるべきなの】と言う。【私は間違って

生まれた娘?】とマリが聞く。【そうでは無いわ、貴女は私の思う以上に素敵に育ってくれた、でも男が女と言う物を求め、愛を欲しがり、様々な争そいが生まれるのも真実よ、愚かな遺伝子保存の本能の原罪を限りなく抑える事が、人間の生存へのカギで有るのは事実よ】と言う。マリは悲しく成った、何がここまで友歌を決断させたのか、確かに地球の男の多くは愚かでバカに思える事が多い、しかし逆に可愛いまでの従順で愛らしい所も有る。しかし男の本能が社会を壊している所は、認めざる得ない。そこには女性の責任は無いのか?女性も自分の安全や保身のため力ある男性を

選び、力や金を要求しているでは無いのか?管理社会、漂白化社会は、本当は自然の原則に委ねるのが、正しいのでは?一部の人間だけが力や、余計な知恵を持ち、

そこに歪が起きている気もする。ヒロ達先行部隊が来てから一か月たち、地球が9月に成る頃にマリアが地球から到着した、しかし送られて来た人員は、予定より少なく五十人ほど荷物の多くは支援物資で有った。ヒロはマリアに問いただす【これでもしもの時に戦えるのか?】と聞く。マリアは【戦うつもりは無い、もしもの時は地球に負担してもらう。その時のために戦力は地球に置いて来た】と言う。ヒロは【それなら俺たちは、来る必要無かったんじゃ無いのか】と言うと。【来て良かったのよ、

この星の事情も解り、話も出来た、マリちゃん達のお陰よ】とマリアは言った。

ヒロが【俺たち約立たずって事か?】と聞くとマリアは【もしそうならそれに越した事は無いわね】と言う。マリ達を含め、使節団は交流を深めながら、この星を調べてる間、様々はことも解ってきた、この様なシステムも不満や不平が生まれる。

女性の中にも取り残される人間は必ず出来る。例えば、男性に愛される能力に長けた人は、何故か女性優性の社会で、狭い思いをする事も多いようだ。つまり彼女たちは、愛されたい欲求を失った、喪失感に対する不満が溜まって来ているのだ。人間と言うのは異性への、容姿の評価が、男性と女性で違う。女性も男性も同性に対して、そこまで美しいとか評価をしない。つまり評価される機会を、大半の女性が失った

不満が出て来てる。勿論それを喜ぶ女性も居る。女性が美しいと褒めたたえる女性は、ホンの僅かなのだ。つまり男性が美しい、と感じる女性と、女性が美しいと感じる女性の、基準の厳しさが違う。男性が男性に対して厳しいのも、同じであろう。

勿論、男がグーの音も出ない位、美しいと思える男性も居るが。同性に対しての目はどちらも厳しい。よく普通の容姿で、チヤホヤされる女性に、女性が嫌悪感を覚えるのはそれが理由であろう。まあ愛されたい欲求は、本能として大きな存在なのだ。

チヅルの調査で、そのような人達が隠密裏に、この星で動いて居る様だ。

確かにそれも、人としての権利で有る事は確かだ。マリは友歌に、このシステムは

崩壊を産む、人が人で無くなり人間性を失う。そして生物として存在しなくなると

訴えた。友歌は逆に、地球が何れ男どもの本能で、滅びる事を訴えた。

そんな時マリは、友歌に宿舎に持って行った、電子レンジでチョコケーキを作って

二人で食べ【ママこの味覚えている?】と尋ねる。友歌は【懐かしいわね地球で食べたわ】と言う。マリは【これパパとママの味なんでしょ、パパがそう言って教えてくれた。パパは甘党では無いけど、本当にたまにママを思って作って、たまに食べる事が有るんだって】と言う。マリはそれをヒロから教えて貰ったのだ。友歌の好きな

チョコに、ヒロの好きなコニャック、ポールジローを使ったケーキだ。

【これパパとママが結婚した時、パパがママに作ったんでしょ】と言う。

友歌は微笑み【あの人そんな事覚えているの、相変わらず馬鹿ね】と言う。

マリは【私は馬鹿とは思わない、素敵だと思う、だって大好きなパパとママの大切な思い出だもの】と言うと【そうねあの時は楽しかったあんな純粋でバカ正直で・・】

と言い、そこで友歌の言葉が止まる。マリが【やっぱりパパの事を覚えて居たのね】と言うと友歌は【忘れては無いけど思い出では生きて行けないのよ】と言う。

マリは思った、思い出を大切にして、今も生きている人が素敵だと。それから数日後に、大変なアクシデントが起こった、この星の中央のシステムに障害が起きたのだ。

AI自体の誤作動かそれとも人的災害なのか不明だった。そこにレジスタンスや不満を抱えた人達も動き出した。卵が先か鶏が先か不明で、都市で多くの被害が出始めた。マリ達も首都機能の中に閉じ込められた。首都自体は、頑強にシェルター機能を果たしているが、それ以外で、争そいが起きている。テロなのか市民の混乱なのか、解らない状況だ。マリアが現在居るユニオンの兵士たちに紛争を収める指令を出す。

ただし双方に、死者を出さないように、被害を抑える条件でだ。ヒロはマリアに

【またまた無茶ぶりしてからに、どうすんだよ、相手の数も解らないのに、

レジスタンスがどれくらい居るんだ?】と聞く。マリアが【美樹ちゃんとアリサ

ちゃん達が、秘密裏に動いて調べてくれて居るわ。流石あなたの娘達ね】と言う。

更に【レジスタンスは全部で二千人、一個小隊が二百人規模、でも素人に近いわ】

と言う。ヒロが【それならこの星の軍で対応出来るだろ】と言うと。

マリアが【無理ね、AIのシステムに頼った防衛で、ステムが障害を起こしてる、

そのシステムの上でしか、戦えないお人形さんたちと、素人集団でも一人一人が

ゲリラとして、色んな知恵で生きる力を、蓄えた人間ではイザ人間力で勝負したら

雲泥の差よ】と言う。ヒロが【十日だ、十日くれるように、友歌に連絡しろ。

この都市機能は船のドローン機能とジャンの部隊で護衛させろ。各地の分散してる連中をこの星の部隊と協力して、抑えて無力化する】と言った

美樹たちから連絡が有り、ヒロの部隊に参加したいと言ったが、マリアがは首都の

中でシステムを壊した、人間の調査をするように命じた。首都に近い部隊から、ヒロ達は制圧に向かう、最初に美樹が遭遇した人間たちだ。行ってみると、数の上では

友歌の軍が多いのだが、AIで動くドローンに頼った部隊で多くの犠牲を出していて、攻めることに臆してる。ヒロが使ったのは例のユリの作った強力な武器で、相手を威圧し前線に出さない様に抑え、後ろから手徒部隊とシュウの射撃部隊で、相手を無力化して拘束する作戦である。その他、相手が籠城作戦取った時は、空挺団のように上空から、籠城してる建物に侵入して、無音のハンドガンや折鶴のような手裏剣で侵入して、睡眠ガスなどを使い無力化して制圧した。そうしてレジスタンスの大半を制圧して、拘束したが彼らも気の毒な話ではある。恐らく誰かに利用されたので

有ろう、友歌の星の犠牲者友言える。反乱や混乱が収まり、娘達や使節団は調査に

協力して、レジスタンスのサポーターたちが判明した、一部は友歌の側近の一部、

そしてユリが協力者と思って居た人間の中にもいたのだ。原因は政治的な権力欲求、もう、テロを引き起こす、敵の敵は味方と言うのか?それとも目的達成後また争い

会うのか。混乱が収まり、ヒロはユリに船に来るように言って話を聞いた。

【この混乱は君が起こしたのか?システムを作った君が一番怪しい】

するとユリは笑ながら【私はユリちゃんを助けたいって言ったでしょ、そんな自分で

開発した物に汚名を着せるなんてしない、完璧なシステムは存在しないってことよ】

と言う。ヒロが【何故、俺たちをこんな所まで担ぎ出した】と聞く。

ユリが【何言って居るの、ここまで来たのは貴方達の意思でしょ、私は貴方達と

私の利益が一致したから協力しただけ】と言う。ヒロが【君の利益とはなんだ】と

聞くと【知的興味と、どうしても必要な地球に存在する資源が欲しかったの。

そのためにこの船も必要だったから、協力した】と答える。ヒロが【それなら力で

奪いに来たら良かったのでは】と聞くと、【貴方達の指導者ほど私は馬鹿じゃ無い。それを行えばこの星のシステム自体を否定する、勘違いしないでね、ユリちゃんは

本当に地球のために徐々にこのシステムが必要と思っている】と言う。【ここで反乱起こした人間はどうなるんだ?】と聞くと【今マリアさんが友歌ちゃんと話をしているようね、彼らみたいな人はまだ居るでしょう、私が恐れていたのは、地球と戦争に成った時彼らと地球が結びついて、この星が更に荒廃する事よ】とユリが言う。

【それで俺たちが利用されたのか?】とヒロが尋ねると。ユリは【だから貴方が地球を守りたい気持ちと、私の気持ちとが一致したからでしょ。だいたい貴方は

友歌ちゃんに、未練たらたらで、ここに来たんでしょうが】と答えた。

ヒロは殺意さえ覚えたが一言も言い返せなかった。そんな時、友歌の政府からヒロ達の軍に感謝状と友歌からの手紙が、送られる事に成った、それはヒロを名指しで

あった。ヒロは男性と言う事で、建物の中には入れず、外での授受で有った。

友歌の代理で賞状を渡すのは、友歌の側近の大臣の女性だ。娘たちは友歌達が居る、首都の建物の中で、シュウやジャンは母船の中で眺めていた。そこで、とんでも無いことが起こったのだ。ヒロに副賞の純金トロフィーのような物を大臣が渡した時、

そのトロフィーが爆発してしまったのだ。ヒロも大臣も爆破に巻き込まれ、起き上がれない。急ぎ両者を、救急車で運び、大臣は友歌側の施設、ヒロは母船の手術室で

緊急に手術が行われた。ヒロの手術を友歌本人が買って出て、ユニオンの医師たちと6時間に渡り手術が行われた。ヒロは手術が終わっても、2日間生死の間をさまよい、IⅭUで管理された。娘達は泣きながらヒロに、何度も呼びかけるが目を覚まさない。友歌が点滴を持って部屋に入った時、マリが友歌を責める。

【ママのせいよ、ママがパパをこんなにしたの、パパが帰らなかったらママを

許さないから】と言う。すると友歌の目に涙が浮かぶ。その時、マリアが部屋に来て注射液を点滴に加えようとした。マリアが【これは掛けよ、ヒロの生命力に掛けるわ】と言うと。マリもその劇薬を知ってるようで反対する。助かる確率が50%で

半分はショックで死に至ることも有る劇薬だ。マリは再度、友歌を責めた

【パパを返して、私に取って世界一のパパを、貴女の事を助ける為、パパはここに

来たのに】と叫ぶ。友歌の目にまた涙が流れた。マリアがマリに【お止めなさい、

友歌さんも辛いの、彼女には彼女の立場が有るの】と諫める。その大臣がヒロに自爆テロを仕掛けた理由は、改竄された歴史での地球への憎しみとヒロへの嫉妬だそうだ。彼女は一命をとりとめ、友歌を愛して居たことが判明した。友歌は、いたたまれ無く成り、部屋を出て公邸に戻った。其の後、注射液を入れて、数十分待つが、意識を取り戻さない、泣き止まぬマリを美樹が抱きしめ【姉様が可哀そう過ぎる、先生は世界一優しい人なのに】と号泣する。アリサとチヅルがヒロの身体をゆすり【先生起きてよ】と大声を出す。医師たちも諦めたその時、ヒロが目を覚ました、朦朧とした様子でなにか言っている。マリが【パパしっかりして】と言うと【夢を見たと言う】医師が直ぐに瞳孔や脳波心肺のチェックを行い、頷く、そして言語や痛覚なども

チェックして行く。ケガした個所の痛みは酷いが神経は生きているようだ。

娘たちが喜び抱き合ってる。美樹が【先生何の夢を見たの?三途の川って有った?】と聞く。ヒロが【三途の川は無かったが悪夢を見た】と言う。【地獄の夢?】と美樹が聞くと【ある意味地獄だった】と言う。美樹が【地獄ってどんな所?】と聞くと

ヒロは【水樹姉やハヤメのババ様や、俺のジジイや、死んだ仲間が皆で俺を延々と

シゴキまくるんだ、延々とだ、倒れても倒れても、起き上がらせ、何度も組手で

技を掛けられたんだ】と言う。美樹が【水樹先生、何か言ってた?】と聞くとヒロは【酔っぱらった口調で、何か言ってた、美樹の事をどうとか?酔拳のような技を掛けられた】と答えた。ヒロが回復するのを待ち地球に帰ることになった。

結局ヒロは友歌には会えず手紙を託すことに、それを取りにユリが船に来た。

ユリがヒロに【こんな天然のストーカー見たこと無いわ】と言う。ヒロは【勝手にほざけ、人の愛情を散々利用しておいて】と言うと。ユリは【ヒロ君みたいな研究対象はめったに居ないからまた地球に顔出すね】と言うヒロは【二度と来ないで下さい、用事が有るときは、こちらからお邪魔します】と返した。因みにレジスタンスの人間はマリアが地球に後発の船で、連れて帰りマリアの管理下で働くことになった。

<終わりに>

地球に帰る中マリが【ママに会えなかったね】と言うと。

【縁が有れば、また会えるさ】とヒロが言う。

ユリの言う通り、生粋のストーカー気質だと判明した































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愚才な武人と天才娘達 後編 不自由な新自由主義の反乱児 @tbwku42263

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