枕元のおまじない

@Q---No_9---

本分

控えめに鳴る着信音に、ふと目が覚める。


暗闇になれた視界に、まぶしい画面は友人からの着信であると映っていた。


この深夜に何の用だろう?優しく気を遣う彼女にしては珍しく思えて、何かあったのかもしれないと考えが過ぎる。


「ん〜唐音っちぃ〜......?どうかしたのぉ〜...?」


眠い目を擦り、掠れた声でなんとか応じる。


「......ごめん、あー子。こんな時間に。」


少し掠れた声。だが自分のそれとは何か違う。


「大丈夫だけどぉ〜......


...唐音っち、泣いてるの...?」


「...泣いてない。」


胸が苦しい。


自分を友達だと言ってくれた彼女。その苦しそうな、寂しそうな声にどうしようもなく自分の心が締め付けられる。


彼女が少しばかり素直じゃないのは知っている。


「ん〜...そっかぁ。......ねぇー唐音っち、よかったら今日あった楽しかったこと、話してもいい?」


「...うん。」


不謹慎かもしれないが、彼女が自分を頼ってくれたのが少し嬉しかった。


ーーーーー


「って百八っち先生がー」


「ふふっ...なによそれ。」


しばしの静寂。ふと息を飲むような気配と、布団が擦れる音。


「ねぇ...私の話も聞いてくれる?あんまり...楽しくはないかも...なんだけど。」


彼女は、ぽつりぽつりとさっきまで見ていたらしい夢の内容をこぼしてくれた。


どうやら、彼絡みで何か悲しい事があったという。


「そっかぁ〜...。でも、恋太郎っちならきっとそんな事にはならないと思うけど〜......」


「そんな事あたしだってわかってる。わかってるのよ。けど...」


また彼女の声に涙が混じる。こんな弱気な彼女は初めてだった。


だがこれこそが彼に頼れなかった理由なのかもしれない。


彼なら、こんな悩みも雰囲気もきっと吹き飛ばしてくれるに違いないだろう。


だが彼女はそうはしなかった。


なら。


「ん〜...じゃあ、唐音っちにおまじないをかけてあげようかなぁー?」


「えぇ...?...おまじないって、いつも数にしてあげてるアレのこと?」


「ダメー?」


「いやダメなことはないけど...」


「じゃあ...いたいのいたいのとんでけぇー」


「......あははっ。ありがとあー子。元気出たかも。」


まだどこかぎこちない声。だがその中にいつもの彼女らしさがあったような気がした。


「ありあとねぇー、唐音っち。」


「え?」


少し気がとがめたが、伝えずにはいられなかった。


彼女を思う気持ちを。


「あーしに通話かけてくれて。」


「...今度パフェでも奢るわよ。」


やはり素直じゃない彼女が何だかおかしくて、少し笑ってしまった。

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