曲がり角
第12話
大学を一旦中退したあと、5年間ほど工場でのアルバイトを続けた。
その年も年末になり、最後の出勤日を迎えた。
長期の休みの期間、一緒に働いていた高校生がいた。
彼は、私にはまるで同級生のように接する。
その日、彼は言った。
「来年俺、九州の大学の工学部に入ることが決まったんよ」
ため息交じりに私は言った。
「将来は技術者か。なりたいものが決まっとる奴はええわなあ」
彼は言った。
全然難しい大学じゃないし、自分の技術で食っていけるかどうかは分からん。
俺も自分が何になりたいかって分からんのよ。
でも、今何をするべきかは分かっておきたいって思うんよ。
私ははっとした。
自分も何か出来ることをやってみよう。
小さなことでも良い。
何もやらないより、ずっとましなはずだ。
そして、私は決意した。
大学へ戻って残った単位を取ってみよう。
そして、卒業しよう。
3年の秋、文章が書けなくなった。
精神面が原因で気持ち悪くなる症状は、まだ完全には治まっていない。
だがはっきりと、今度は書けるような気がした。
今思えば、それはアルバイト生活の中で少しは実務経験を積むことができたからだろう。
しばらくして、私は実学院大学への復学を決断した。
それを両親にも伝えた。
「どういう風の吹き回しだ」
両親は驚いた。
家の食器洗い機がついに動かなくなったのは、ちょうどこの頃だった。
でも、学費の支払いに追われて買い換えることは出来なかった。
母が食器をスポンジで洗い、一つずつすすぐ日々が始まった。
私は大学へ行って復学の手続きを終えた。
再び、京都に住むことになる。
住むアパートまで決まった。
だが再び大学に毎日通うことは、どうしても体が受け付けなかった。
事情を話して、先生から許可をもらい、実家で卒業論文を仕上げて提出することになった。
実学院大学には松山に四国経営情報学部というのがあった。
残りの単位は自分の卒業単位に振り替えることが出来るものを、そこで取得することになった。
そのため、実家から松山に通った。
そして、レポートやテストの回答を文章で書いて、単位を取ることはできた。
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