第4話
ある日、取材から帰って来ると、編集長は私を個室に呼んだ。
私は何となく、部屋に入った。
そこには私が書いてきた記事が置かれていた。
編集長が不意に口を開いた。
君の書いている記事はかなり読んだ。
いかにも、自分の言っていることは絶対だ、みたいな論調だなあ。
そのあと、編集長は思いっきり大声を出して私を一喝した。
「いつも嘘つきなんだよ、君は!!」
そのあと、勉強や休日の過ごし方・友達付き合いの仕方について問いただされた。
そして、何を言っても否定され、叱られた。
それでは許されないという態度だった。
私はびくびくしながら話した。
全てを正直に。
編集長は私の方を思いっきりにらみつけていた。
まるで殺人犯に対する検察の取調べであるような気すらした。
それが2時間半ほども続いた。
編集長は言った。
そんなことじゃ書けない訳だ!
君は結局、自分のことしか考えてないじゃねえか!
書かれていることが全部、まるで他人事なんだよ!
自分の言ったことに責任を持たねえと。
要するに無責任なんだよ!
自分が書いたことによって生じたしがらみを一生抱えていこうってくらいの決意がないと。
だから書けないんだよ!
にも関わらず、君はそれを全然気にしていないじゃねえか!
最低なんだよ!
君の普段やっていることは勉強じゃなくて、勉強しているふりじゃないか!
それを口実に君は、すべきことを全部投げ出していたんじゃないか!
何をぬくぬくと引きこもってんだい!
卑怯なんだよ!
私は仕事だけのことを言っているんじゃないんだよ!
君の生き方そのものを言っているんだ!
すっかり落ち込む私に、編集長はさらに大声を張り上げて叱った。
私は君のことを思って貴重な時間を割いてまで叱ってやっているのに、ちっとも感謝の態度が見られないじゃねえか!!
そういう所からして直していかないと、どこへ行っても通用しないんだよ!!
編集長のお説教が終わったあと、おびえながら私は、半ばやけくそで言った。
「ご指導ありがとうございました。
これからもお気付きの点がございましたら、どんどんご指導頂きますようお願いします」
次の日、無断で出版社を休んだ。
それから結局、夏休みが終わるまで行かなかった。
そこであったことを両親に話した。
父は「お前がマスコミの人間として通用しないということが分かっただけ良かったじゃないか」と言った。
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