ついに大詰めを迎えた「KAC2025」、最終回のお題は「三題噺『天下無双』『ダンス』『布団』」。私の記憶では、確か三題噺とは「寄席で客から三つのお題をもらった噺家が即興で話を作る」とかいうものであって、どう考えても素直に相容れない三つの言葉を使えというスパルタンな代物ではなかった気がしますが、賞品が欲しければ戦えというカクヨム運営の声が聞こえてきます。
三つの題の脈絡の無さに絶望する私でしたが、しかしこのお題、本作の作者である四谷氏は必ず応えると確信がありました。題材は柳生、それもおそらく柳生宗矩。何せ彼は「天下無双」の将軍家剣法指南役。そのくせ彼には、「他の大名家に押しかけて舞を披露し、沢庵和尚に手紙で叱責される」という心温まる逸話があり、あとは「布団」さえクリアできれば三題噺完成です。「布団」の材料である綿は徳川家の出身地である三河の特産なので何とかなりそう、あとは「舞」ではなく「ダンス」をどう処理するかですが、考えても分かるはずもないので四谷氏の発表する正解を固唾を呑んで見守りました。
……いきなりタイトルから英語かい!
やられました。私の予想と合っていたのは「柳生」と「綿」だけ。「ダンス」の処理に至っては、完全に予想を超えていました。
しかも三つのお題を作中に溶け込ませただけではなく、若き日の柳生十兵衛の成長についても味わえる作品に仕上がっています。
嫌がらせのようなお題をまとめ、むしろ上質な短編に昇華させた手並みはまさに「天下無双」。これほどの作品を完成させる才能の無い私は、早々に「布団」にくるまって寝ることにします。……だめだ、どうしても「ダンス」に繋がらない……。