第2話

「本気であの子を使うつもりですか?」

「彼女はあの矢野一色の娘だ。起用すれば今後何かと役に立つ」


「128番、矢野寧々さん、君がヒロインの妹役に決まったよ」

 最終審査を終えて、結果を待っている所に発表があった。

「有名人の子は得ね」

「あなたのお母さん、いい人捕まえたよね」

 審査員が下がった途端、寧々はあちこちから悪口を言われた。

「矢野一色の娘で良かったわね。まあ、ホントの娘じゃないけど」

 寧々は唇をキュっと噛み締めた。


 実力で役を勝ち取ったのではない事は

 寧々が一番良く分かっていた。

 寧々は自分の部屋に篭っていた。

 実際寧々の演技はガタガタだった。

 第一次審査を通過する事さえ、危ういレベルだったはずだ。

 最終審査に来た人達はみんな明らかに寧々より上手かった。

 私が選ばれた理由はただ一つ、矢野一色の娘だからだ。

 寧々は膝を抱え込んだ。

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