## 【エピローグ】新たな時代の幕開け

一ヶ月後、風の都は驚くべき変化を遂げていた。かつての荒廃した状態から見違えるように復興し、古代の美しさを取り戻していた。中央広場には新たな七つの塔が建設され、それぞれが新しい守護者たちの拠点となっていた。


レインは風の神殿の高台から、都市の復興の様子を見下ろしていた。彼は火の守護者としての新たな外套を身につけ、左手の痣は常に穏やかに輝いていた。


「素晴らしい眺めだね」


振り返ると、エリナが立っていた。彼女は水の守護者として、青い外套を身につけていた。


「ああ」レインは微笑んだ。「信じられないくらいの変化だ」


「みんなの努力の賜物よ」エリナは彼の隣に立った。


実際、全員が新たな役割に適応し、風の都の復興と星の力の研究に尽力していた。ルークは風の守護者として、都市の防衛を担当。シルヴィアは木の守護者として、生命の研究と治癒を担当。マーカス教授は地の守護者として、古代の知識の保存と研究を担当。オルドリッチ館長は金の守護者として、技術と発明を担当。そして、エリナは水の守護者として、予知と観測を担当していた。


「会議の時間だよ」エリナが言った。「みんな待ってるわ」


二人は中央神殿へと向かった。そこでは既に他の守護者たちが円卓を囲んで座っていた。


「遅いぞ、火の守護者」ルークが冗談めかして言った。


「すまない」レインは笑いながら席に着いた。


「では、会議を始めよう」マーカス教授が言った。「まず、古い守護者たちの報告からだ」


老守護者たちは、それぞれの都市に戻り、新たな時代への準備を進めていた。ファリオンからの通信が円卓の中央に映し出された。


「風の都の状況は良好だ」彼の映像が報告した。「古代の技術の多くが復活し、新たな守護者たちの下で順調に機能している」


次にテラムスの報告が続いた。「地の都では、古代の鉱物学と地質学の知識が再発見されている。新たな資源の発見も期待できる」


シルヴァーナス、アクアリア、メタリウス、ウンブラリウスからも同様の報告があった。七つの都市全てが、長い眠りから目覚め、新たな時代へと歩み始めていた。


「結社の残党については?」オルドリッチ館長が尋ねた。


「大部分は解散した」シルヴァーナスの映像が答えた。「アーサーの死と共に、多くのメンバーは目的を失った。残りの者たちも監視下にある」


「良いニュースだ」レインは安堵した。


「次の議題は、星の力の管理について」マーカス教授が言った。「レインの選んだ均衡の道をどう具体化するか」


「私の提案は、『星の学院』の設立だ」レインは言った。「古代の知識と星の力を学ぶための学校。しかし、力へのアクセスは段階的に与え、責任と知恵を重視する」


「賛成です」オルドリッチ館長が頷いた。「知識は共有されるべきですが、力は責任と共にあるべきです」


「学院はどこに?」シルヴィアが尋ねた。


「風の都に本部を置き、七つの都市全てに分校を設ける」レインは説明した。「それぞれの都市の特性に合わせた教育を行う」


「素晴らしいアイデアだわ」エリナは感嘆した。


全員が賛成し、「星の学院」の設立が決定した。次の議題は、外部世界との関係についてだった。


「古代都市の存在を世界にどう伝えるか」ルークが問題提起した。「完全に隠し続けるのは難しいだろう」


「段階的な公開が良いでしょう」マーカス教授が提案した。「まずは信頼できる学者たちに限定的に公開し、徐々に範囲を広げる」


「同意する」レインは頷いた。「急激な公開は混乱を招くだけだ。時間をかけて、世界が受け入れられるよう準備する必要がある」


会議は数時間続き、新たな時代の基盤となる多くの決定がなされた。星の力の研究と保存、古代技術の復活と応用、七つの都市の再建と連携、そして外部世界との関係構築。全てが新たな守護者たちの肩にかかっていた。


会議が終わり、夕暮れ時になった。レインは再び風の神殿の高台に立ち、沈みゆく太陽を眺めていた。


「疲れた?」エリナが彼の横に立った。


「少し」レインは微笑んだ。「でも、充実している」


「あなたは良い選択をしたわ」彼女は優しく言った。「星の継承者として、そして火の守護者として」


「一人では何もできなかった」レインは彼女の手を取った。「皆がいたからこそ」


二人は沈む太陽を見つめながら、しばらく静かに立っていた。


「両親に会いに行こうと思う」レインは突然言った。


「墓参り?」エリナが尋ねた。


「ああ」レインは頷いた。「報告したいことがたくさんある。彼らの研究は無駄ではなかったと伝えたい」


「一緒に行くわ」エリナは優しく言った。


翌日、レインとエリナは風の都を離れ、レインの故郷の村へと向かった。村はかつてと変わらず静かで平和だった。二人は丘の上の墓地へと登った。


レインの両親の墓前に立ち、彼は静かに語りかけた。


「父さん、母さん。ついに全てを理解しました。星の継承者の使命を、そして両親が守ろうとしていたものを」


彼は左手の痣を見つめた。


「私は第三の道を選びました。完全な共有でも、完全な封印でもなく、均衡の道を。星の力は知恵と責任と共にあるべきだと」


風が静かに吹き、墓石の周りの花々が揺れた。


「これから新たな時代が始まります。星の継承者として、そして火の守護者として、私はその道を導いていきます。両親が命をかけて守ろうとした真実と知恵を」


エリナは静かに彼の横に立ち、支えていた。


「安心してください。私は一人ではありません。素晴らしい仲間たちがいます」


レインは墓前に花を供え、深く頭を下げた。


「見守っていてください。これからの時代を」


墓を後にする時、レインは不思議な感覚を覚えた。まるで両親が彼を見守り、微笑んでいるかのような温かさを感じた。


「さあ、帰ろう」彼はエリナに言った。「やるべきことがたくさんある」


二人は丘を下り、新たな時代へと歩み始めた。星の継承者と新たな守護者たちの物語は、まだ始まったばかりだった。


そして遠くの星空では、七つの星が特別な輝きを放っていた。均衡の道を選んだ星の継承者を祝福するかのように。


終わり

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最弱魔術師だった俺が実は古代魔法使いの末裔だった件 〜誰も知らない禁断の魔法で無双する、知識チートな異世界冒険譚〜 人とAI [AI本文利用(99%)] @hitotoai

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