# 第9章: 【血筋に流れる星の力】真の力と責任の自覚
##【救出作戦】星の城への潜入
満月の前夜、星の城アストラリスの外周部。三つの影が静かに白い城壁の下に潜んでいた。
「ここからが正念場だ」ファリオンが小声で言った。
白い外套と赤い外套を身にまとった二人の老人と、彼らに挟まれた若者——俺たちは二日間の準備を経て、いよいよ救出作戦を実行に移そうとしていた。
「作戦を最終確認しよう」イグニウスが言った。「西側の通用門から侵入し、地下の通路を通って中央神殿へ向かう。そこで人質を救出し、即座に撤退する」
「目立たないように行動するんだ」ファリオンが付け加えた。「決して無謀な戦闘は仕掛けない。救出が最優先だ」
俺は頷きながらも、懸念が消えなかった。「アーサーが儀式の準備を進めているなら、彼と対峙することになるかもしれない」
「その場合でも、全力での戦闘は避けるべきだ」イグニウスは警告した。「彼の力は我々三人を合わせても太刀打ちできない可能性がある」
「わかっている」俺は左手の痣を見つめた。今や二つの星が輝いている。風と火の力を得たことで、俺の魔力は格段に増していたが、まだアーサーの禁断魔法には及ばないだろう。
「レイン」ファリオンが真剣な表情で俺を見た。「どうしても戦わなければならない状況になったら、我々に任せて君は仲間を連れて逃げるんだ」
「でも…」
「君は星の継承者だ」イグニウスが厳しく言った。「君が捕まれば、全てが終わる。それだけは避けねばならない」
俺は黙って頷いた。二人の老守護者の言うことは正論だ。しかし、彼らを危険な目に遭わせることへの罪悪感は拭えなかった。
「行くぞ」ファリオンが合図した。
三人は影に紛れながら、西側の小さな通用門に近づいた。門は二人の黒衣の結社メンバーに守られていた。
「私が処理する」イグニウスが言った。彼は小さな赤い結晶を取り出し、それを軽く握りしめた。
結晶が淡く光ると、門を守る二人の目が突然虚ろになり、その場でぐったりと座り込んだ。
「睡眠の煙だ」イグニウスは説明した。「目覚めた時には何も覚えていない」
「すごい」俺は感心した。
ファリオンが門の鍵に触れ、古代語で何かを唱えると、鍵が音もなく外れた。三人は素早く門内に滑り込み、すぐに近くの影に身を隠した。
星の城の内部は幻想的な美しさに満ちていた。白く輝く建物群、青く光る水路、そして上空に浮かぶ無数の小さな光球。かつて栄えた古代文明の首都の壮麗さが、今も保存されていた。
「かつての栄光の日々…」ファリオンはほとんど囁くように言った。彼の目には懐かしさと哀愁が浮かんでいた。
「感傷に浸っている場合ではない」イグニウスが現実的に言った。「地下への入口を探そう」
三人は建物の影を縫うように移動し、中央広場を避けながら進んだ。時折、黒衣の結社メンバーが巡回しているのが見えたが、何とか発見されずに通り過ぎることができた。
「あそこだ」ファリオンが小さな神殿のような建物を指さした。「水の神殿の地下には、中央神殿へと続く秘密の通路がある」
三人は神殿に向かったが、入口には四人の結社メンバーが立っていた。彼らは普通の見張りとは違い、より警戒している様子だった。
「厄介だな」イグニウスが眉をひそめた。「睡眠の煙では効かないほど強い連中のようだ」
「どうする?」俺は小声で尋ねた。
ファリオンはしばらく考えた後、「気を散らす必要がある」と言った。彼は小さな青い結晶を取り出し、遠くの広場に向かって投げた。
結晶が地面に触れると、突然強い風が吹き荒れ、広場の噴水が高く吹き上がった。見張りの男たちは驚いてその方向を見た。
「今だ!」ファリオンが合図した。
三人は足早に神殿の裏手に回り込み、小さな通用口から中に滑り込んだ。内部は青い光に照らされた回廊が続いており、壁には水の流れをモチーフにした装飾が施されていた。
「水の神殿は元々、中央神殿と直接つながっていた」ファリオンは小声で説明した。「古代の都市計画では、七つの神殿が車輪のスポークのように中央に集まる構造だったんだ」
「でも、ただの飾りじゃないよな?」俺は周囲を警戒しながら尋ねた。「まさか結社のメンバーがこんな簡単に侵入できるとは思えない」
「鋭いな」イグニウスは頷いた。「この神殿には守護の魔法が施されている。正当な理由なく侵入しようとする者は、迷宮に迷い込むことになる」
「でも、俺たちは大丈夫なのか?」
「君は星の継承者だ」ファリオンが微笑んだ。「そして我々は守護者。都市は我々を認識している」
三人は神殿の奥へと進み、やがて大きな円形の部屋に到達した。中央には水を湛えた池があり、その底に魔法陣が刻まれていた。
「ここが入口だ」イグニウスが言った。「水の表面を通り抜けると、地下通路に出る」
「通り抜ける?」俺は疑問に思った。
「心配するな」ファリオンは言った。「特殊な魔法の仕掛けだ。呼吸にも問題はない」
俺は二人の後に続き、勇気を振り絞って水面に足を踏み入れた。水は普通の感触だったが、完全に潜ると不思議な感覚に包まれた。水なのに呼吸ができ、視界も明瞭だった。
池の底に到達すると、魔法陣が反応して青く光り、床が下方に開いた。三人はその穴を通って下へと降りていった。
地下通路は予想以上に広く、天井が高かった。壁には青く光る結晶が埋め込まれ、通路を照らしていた。床には七つの異なる色のラインが描かれ、それぞれが七つの神殿に通じているのだろう。
「青いラインを辿れば中央神殿に着く」ファリオンが言った。「だが、慎重に進もう。この通路は3000年もの間、ほとんど使われていない」
三人は青いラインに沿って進み始めた。通路は徐々に傾斜を増し、さらに深部へと続いていく。途中、崩れた天井や水没した区間を迂回しながら、彼らは進んだ。
「不思議だな」イグニウスが周囲を観察しながら言った。「守護魔法は健在なのに、結社のメンバーが侵入している。どうやって突破したのだろう」
「内部協力者がいるのかもしれない」ファリオンが暗い表情で答えた。「七つの都市の守護者のうち、何人かは既に失われているかもしれない」
その言葉に、俺は左手の痣を見た。七つの星のうち、現在二つだけが輝いていた。残りの五つは、まだどこかにいるはずの守護者たちと繋がっている。
「他の守護者たちは…生きているのか?」俺は恐る恐る尋ねた。
「わからない」ファリオンは正直に答えた。「私とイグニウスは長い間、互いに連絡を取っていなかった。他の者たちとは、さらに長く音信不通だった」
「しかし、鍵が存在する限り、守護者も何らかの形で存在しているはずだ」イグニウスが補足した。「鍵は守護者の命と結びついている」
通路をさらに進むと、突然、前方から物音が聞こえた。三人は即座に身を隠し、通路の曲がり角から様子を窺った。
黒衣の結社メンバーが二人、何かの装置を設置している。彼らは通路の壁に小さな結晶を埋め込み、魔法陣を描いていた。
「見張りか?」俺は小声で尋ねた。
「いや、違う」イグニウスの表情が険しくなった。「あれは封印魔法だ。通路を塞ごうとしている」
「なぜだ?」
「我々の侵入を感知したか」ファリオンは眉をひそめた。「あるいは…儀式の準備が整いつつあるということかもしれない」
「どちらにせよ、あの二人を何とかしないと先に進めない」イグニウスが言った。
俺は左手の痣に意識を集中させた。風と火の力を同時に引き出せないだろうか?アレン・スターライトから受け取った新たな力が、体内で反応するのを感じた。
「二人を倒せるか?」ファリオンが俺に尋ねた。
「やってみる」俺は決意を固めた。
左手の痣が青く輝き始め、周囲の空気が微かに振動した。俺は風の鍵の力を呼び起こし、通路の風の流れを操作した。同時に火の鍵の力も引き出し、熱を生み出す。
『*アストラリス・テンペスタス・イグニス*』
風と火を組み合わせた古代魔法が発動した。突然、結社メンバーの周囲に炎を帯びた小竜巻が発生し、二人は驚きの声を上げる間もなく、気絶した。
「見事だ」イグニウスは感心した様子で言った。「二つの力を同時に使いこなせるとは、星の継承者の血が確かに目覚めつつあるな」
三人は気絶した結社メンバーを安全な場所に移し、封印魔法の準備を解除した。
「この先はより危険になるだろう」ファリオンは言った。「中央神殿に近づくほど、警備も厳重になる」
通路をさらに進むと、やがて大きな扉が見えてきた。その扉には七つの都市のシンボルが刻まれ、中央には星型の凹みがあった。
「中央神殿の入口だ」イグニウスが言った。「星の継承者の血が必要だ」
俺は左手を扉の凹みに当てた。痣が青く輝き、扉に刻まれた七つのシンボルも反応して光り始めた。やがて、静かな音を立てて、巨大な扉が開いた。
扉の向こう側には、想像を絶する光景が広がっていた。
中央神殿の内部は、信じられないほど広大だった。天井は数十メートルもの高さがあり、そこから青白い光が降り注いでいた。床には巨大な星型の魔法陣が刻まれ、七つの柱が円を描くように立っていた。そして神殿の中央には、台座の上に大きな水晶球のようなものが浮かんでいた。
しかし、その美しい光景に不釣り合いなのは、神殿内を忙しく動き回る黒衣の結社メンバーたちの姿だった。彼らは様々な装置を設置し、魔法陣を描き、何かの準備を進めているようだった。
「儀式の準備をしている」ファリオンが小声で言った。「星の継承の儀式だ」
「だが、星の継承者なしでどうやって?」イグニウスが疑問を呈した。
「おそらく、レインが来ることを前提に準備を進めているのだろう」ファリオンは推測した。「仲間たちを人質に取ったのも、レインを誘い出すためだ」
「みんなはどこだ?」俺は神殿内を見渡した。
イグニウスが遠くの一角を指さした。「あそこだ」
神殿の奥、壁に沿って透明な魔法の牢がいくつか設置されていた。その中にエリナ、シルヴィア、ルーク、マーカス教授、オルドリッチ館長の姿が見えた。全員無事のようだったが、魔法の鎖で拘束されていた。
「どうやって近づく?」俺は尋ねた。「あんなに大勢いては…」
「分散策だ」イグニウスが提案した。「私が向こう側で騒ぎを起こす。その間に、ファリオンと君は人質を救出する」
「危険すぎる」ファリオンが反対した。「彼らは全員ではないにせよ、相当数が集まっている。一人では太刀打ちできない」
「分散策は良い案だが、別のやり方にしよう」俺は言った。「俺が中央に現れて注目を集める。みんなの注目が俺に集まったら、二人で仲間たちを救出してほしい」
「君を囮にするというのか?」ファリオンは眉をひそめた。「それこそ危険だ」
「でも、彼らは俺を生かしておく必要がある」俺は冷静に言った。「儀式には星の継承者が必要なんだろう?だから、すぐには殺さないはずだ」
二人の老守護者は顔を見合わせ、渋々同意した。
「だが、あまり長く時間を稼ぐ必要はない」イグニウスが言った。「我々が人質を救出したら、すぐに合図する。その時はすぐに撤退するんだ」
「わかった」俺は頷いた。
三人は作戦を最終確認し、それぞれの位置に散った。ファリオンとイグニウスは神殿の影に隠れながら、人質のいる方向へと移動を始めた。俺は深呼吸をして、決意を固めた。
「さあ、始めよう」
俺は堂々と神殿の中央に向かって歩き出した。左手の痣を隠さず、むしろ意図的に青く光らせながら。
「星の継承者がここにいるぞ!」俺は声を張り上げた。
神殿内の動きが一瞬で止まった。全ての結社メンバーの視線が俺に集まる。
「レイン・グレイソン」冷たい声が響いた。「来ると思っていたよ」
神殿の奥から、アーサー・ノイマンがゆっくりと歩み出てきた。彼の左目の義眼が青く輝き、その姿には禍々しい魔力のオーラが漂っていた。
「お前の仲間たちは元気だよ」アーサーは不気味な笑みを浮かべた。「もう少し長く生きていられるかは、君次第だがね」
俺はアーサーを見つめながら、ゆっくりと中央に向かって歩み続けた。目的は彼らの注目を集め続けること。ファリオンとイグニウスに時間を稼がなければならない。
「仲間を解放しろ」俺は毅然とした態度で言った。「彼らには関係ない」
「関係ないだと?」アーサーは嘲笑した。「彼らは君と共に古代の秘密を探り、我々の計画を妨害しようとした。十分に関係があるだろう」
「何が望みだ?」俺は尋ねた。「結局、お前たちは星の力を手に入れて何がしたい?」
この質問は単なる時間稼ぎではなかった。アーサーとその動機を理解することは、彼を止めるために重要かもしれないと思ったのだ。
アーサーはしばらく俺を見つめ、やがて歩き始めた。彼は中央の水晶球の周りをゆっくりと回りながら話し始めた。
「古代アストラリス文明は、星の力を使って驚異的な繁栄を築いた」彼の声は静かだが力強かった。「しかし、その力は平等に分配されるべきだという愚かな理想主義によって破壊された」
彼は一瞬止まり、俺をじっと見た。
「力は能力ある者のものだ。選ばれし者のみが、その使い方を正しく理解できる」
彼の言葉に、俺は星の間でアレン・スターライトから聞いた話を思い出した。最後の星の継承者も、同じような考えと戦っていたのだ。
「そして、お前が選ばれし者だと?」俺は皮肉を込めて尋ねた。
「私を含めた結社の幹部たちだ」アーサーは答えた。「我々は長年の研究と準備を経て、この時を待ち望んできた。そして今、星の継承者である君の出現により、ついに儀式を完成させることができる」
「儀式を完成させても、また失敗するだけだ」俺は言った。「3000年前と同じようにな」
アーサーの表情が一瞬歪んだ。「違う。今回は違う。我々は過去の失敗から学んでいる。力を共有するなどという愚かな選択はしない」
俺は密かに、人質のいる方向に目をやった。ファリオンとイグニウスの姿はまだ見えなかったが、動いているはずだ。もう少し時間を稼がなければ。
「お前の兄は、そうは考えなかったようだな」俺は思い切って言った。
アーサーの顔が激怒で歪んだ。「兄を持ち出すとは…誰から聞いた?」
「クレイグだ」俺は答えた。「彼を殺す前に話していたな」
「あの使い捨ての駒が…」アーサーは怒りに震えていた。「そうか、彼は死の間際に真実を話したか」
「お前の兄は力の共有を望んだ。そして、お前はそれを許せなかった」俺は推測を交えて言った。
「兄は裏切り者だった!」アーサーの怒りが爆発した。「ノイマン家の名誉を汚し、結社の理念を裏切った。彼は力を理解していなかった」
「それで彼を殺したのか?」
「彼は粛清された」アーサーは冷たく言った。「結社の掟に従っただけだ」
この会話の間にも、俺は中央に向かって少しずつ近づいていた。結社のメンバーたちも、その場に釘付けになっている。誰も人質に注意を払っていないようだ。
突然、神殿の奥で小さな爆発音が聞こえた。一瞬、全員の注目がそちらに向いた。
「何が起きた?」アーサーが部下に向かって叫んだ。
混乱の中、俺は左手の痣に力を集中させた。風と火の力を同時に引き出し、一時的な煙幕を作り出す。
『*アストラリス・ネブラ*』
神殿内に突如として濃い霧が立ち込め、視界が遮られた。結社のメンバーたちが混乱の声を上げる。
その混乱に乗じて、俺は人質のいる方向へと駆け出した。霧の中を進みながら、左手の痣が導くように、仲間たちの存在を感じ取る。
やがて霧の向こうに、ファリオンとイグニウスの姿が見えた。彼らは既に魔法の牢を開き、エリナたちの拘束を解いていた。
「レイン!」エリナが俺を見つけ、喜びの声を上げた。
「急げ」俺は言った。「この霧は長くは持たない」
マーカス教授とオルドリッチ館長も解放され、二人とも疲れた様子だったが無事だった。ルークはシルヴィアを支えながら立っていた。
「計画通りにいったな」イグニウスが言った。「さあ、撤退するぞ」
「逃がさん!」アーサーの怒号が霧の向こうから聞こえた。「全ての出口を封鎖しろ!星の継承者を捕らえよ!」
「こっちだ」ファリオンが別の通路を指し示した。「秘密の脱出路がある」
全員が示された方向に走り出した。しかし、その時、俺の背後から強力な魔力波が襲いかかった。振り返ると、霧を払いのけたアーサーが黒い魔力を纏った姿で立っていた。
「行くな!」彼は叫んだ。
アーサーの放った黒い魔力の束が俺たちに向かって飛来した。咄嗟にオルドリッチ館長が防御壁を展開し、攻撃を受け止めるが、その衝撃で館長は吹き飛ばされた。
「館長!」マーカス教授が駆け寄った。
「大丈夫だ…」館長は痛みをこらえながら立ち上がった。「急いで…」
全員が再び走り出したが、アーサーの怒号と共に、より多くの黒衣の魔術師たちが追ってきているのが分かった。
「来たな」ファリオンは脱出路の扉の前で立ち止まった。「ここを通れば安全だが、扉を開くのに時間がかかる」
「俺たちが時間を稼ぐ」マーカス教授とオルドリッチ館長が前に出た。
「私も」イグニウスも加わった。
「レイン、君は仲間たちを連れて先に行け」ファリオンは言った。「風の都に戻れば安全だ」
「でも…」俺は躊躇った。
「行くんだ!」イグニウスが強く言った。「我々で時間を稼ぐ。君が捕まれば全てが終わるぞ」
エリナが俺の手を取った。「レイン、彼らの言う通りよ。まずは安全な場所に逃げましょう」
俺は苦しい決断を強いられたが、頷いた。ファリオンが扉に手をかざすと、古代語で何かを唱えた。扉が青く光り始め、ゆっくりと開き始める。
「行くぞ!」
俺たちは扉を通り抜けようとした瞬間、背後から凄まじい魔力の波動を感じた。振り返ると、アーサーが両手に黒い魔力の塊を溜め、放とうとしていた。
「死ね!」
彼の放った黒い魔力の波が、まるで全てを飲み込む闇のように押し寄せてきた。マーカス教授、オルドリッチ館長、イグニウスの三人が力を合わせ、防御壁を展開する。
「早く行け!」イグニウスが叫んだ。
俺たちは扉を通り抜けた。最後に見た光景は、黒い魔力の波に立ち向かう三人の姿だった。
扉が閉まるとともに、向こう側からの轟音と衝撃が伝わってきた。
「教授…館長…イグニウス…」俺は扉を見つめた。
「彼らは大丈夫よ」エリナが俺の肩に手を置いた。「あの三人は強いわ」
「そうだな…」俺は自分に言い聞かせるように呟いた。
一行は暗い通路を急いで進んだ。ファリオンの指示通りに進めば、風の都に戻れるはずだ。
しかし、俺の心は重かった。仲間たちは救出できたが、残してきた三人の身を案じずにはいられなかった。そして、アーサーと「黒翼の結社」の脅威は依然として存在している。
星の継承者としての使命は、まだ始まったばかりだった。
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