## 【選択の時】友情と使命の間で

強烈な白い光の中から現実世界へと戻ると、予想外の光景が俺を迎えた。


星の門の間は、さっきまでの激しい戦闘の痕跡で荒れていた。壁には魔法の衝撃による亀裂が走り、床は所々が焦げていた。しかし、結社のメンバーも仲間たちの姿も見当たらない。ただ一人、クレイグが床に横たわっていた。


「クレイグ!」俺は急いで彼のもとに駆け寄った。


彼はかろうじて息をしていたが、胸の傷から血が流れ続けていた。アーサーの魔法短剣による傷は、通常の治癒魔法では完全に治せないだろう。


「レイン…戻ったのか…」クレイグは弱々しい声で言った。目を開けるのも辛そうだった。


「みんなはどこだ?」俺は彼の頭を優しく支えながら尋ねた。


「結社が…連れ去った」クレイグは咳き込みながら答えた。「マーカス教授と…オルドリッチ館長は…魔法で抵抗したが…圧倒された」


「エリナたちは?」俺の胸に恐怖が広がった。


「全員…捕らえられた」彼は痛みに顔を歪めた。「ファリオンだけは…別の場所に…逃げた」


「なぜ、お前は…」


「見せしめのために…ここに残された」クレイグの目に涙が浮かんだ。「アーサーは…私がもう用済みだと…」


「裏切ったのに、なぜ教えてくれる?」俺は混乱していた。


クレイグは苦しそうに微笑んだ。「最初から…完全な裏切り者ではなかった。家族を人質に取られ…協力するふりをしていた」


「結社に?」


「はじめは…本当に考古学者として…この遺跡を調査していた」彼は言葉を区切りながら話した。「しかしアーサーに見つかり…家族の命と引き換えに…協力させられた」


「そして、俺たちを…」


「案内し…監視するよう命じられた」クレイグの表情に後悔の色が浮かんだ。「しかし…君たちと過ごすうち…良心の呵責を感じ始めた」


「だったら、なぜ最後に俺を止めようとした?」俺は尋ねた。


「見せかけだ…」彼は弱々しく答えた。「本当は…君を星の間に行かせるつもりだった。アーサーを欺くために…」


それを聞いて、俺はクレイグを見る目が変わった。彼は完全な裏切り者ではなかったのだ。苦しい立場で、できる限りのことをしようとしていた。


「クレイグ…」俺は申し訳なさを感じた。


「気にするな」彼は微かに頷いた。「私は…罪を償おうとしているだけだ。それより…仲間たちを救わなければ」


「どこに連れて行かれた?」


「アーサーは…星の城へ向かうと言っていた」クレイグは唇を湿らせた。「古代文明の中心地…アストラリスへ」


「星の城?」俺は驚いた。「星の都のことか?」


「ああ…七つの都市の中心」彼は頷いた。「彼らはそこで…儀式を行おうとしている」


「儀式?」


「星の継承の儀式だ」クレイグの声はさらに弱まっていた。「彼らは君の仲間を…人質として使い…君を誘い出そうとしている」


俺は拳を握りしめた。左手の痣が怒りに応えるように青く光った。


「手当てをしよう」俺はクレイグの傷を見た。「何とか止血を…」


「無駄だ…」クレイグは諦めたように言った。「この傷は…魔法の毒で…治らない」


「諦めるな!」俺は叫んだ。「俺は星の間で新たな力を得た。何か方法があるはずだ」


クレイグは弱々しく笑った。「君は…優しいな。裏切り者に…そこまでしてくれるとは」


「裏切り者じゃない」俺は言い切った。「君は苦しい選択を迫られただけだ」


「レイン…」クレイグの目に感謝の色が浮かんだ。「ポケットに…地図がある。星の城への道だ…役立つかもしれない」


俺は彼のローブのポケットから折り畳まれた羊皮紙を取り出した。そこには天脈山脈の詳細な地図と、星の城への経路が記されていた。


「これは…」


「私の本当の研究成果だ」クレイグは誇らしげに言った。「アーサーには…見せていない。君に…渡すために取っておいた」


「ありがとう」俺は心からの感謝を込めて言った。


「レイン…」クレイグの声がさらに弱まった。「一つ…警告がある」


「何だ?」


「アーサーは…通常の魔法使いではない」彼は必死に言葉を紡いだ。「彼は…古代の禁断魔法を…使っている。自分の命と引き換えに…得た力だ」


「命と引き換え?」


「彼の寿命は…短い」クレイグは説明した。「だが…その分…常人離れした力を持つ。気をつけろ…」


クレイグの呼吸が浅くなってきた。時間がないことは明らかだった。


「もう一つ…」彼は最後の力を振り絞るように言った。「アーサーの…真の目的は…復讐だ」


「復讐?誰に?」


「彼の兄に…そして…その血を引く者…全てに」クレイグの声はほとんど聞こえないほど小さくなっていた。


「その兄というのは…」


しかし、クレイグはもう答えることができなかった。彼の目が虚空を見つめていた。


「クレイグ…」俺は彼の目を静かに閉じた。


裏切り者と思っていた男が、最後に見せたのは真の勇気だった。彼の犠牲を無駄にはできない。


俺はクレイグの遺体の横に、見つけられた石を並べて簡易的な墓標を作った。時間がなかったが、最低限の敬意は払いたかった。


「安らかに眠れ」俺は静かに祈りを捧げた。「君の情報を無駄にはしない」


立ち上がった俺は、どう行動すべきか考えた。仲間たちは人質として星の城に連れて行かれた。彼らを救うためには、一刻も早く向かわなければならない。しかし、一人で結社全体と戦うのは無謀だ。


「ファリオンはどこだ?」俺は独り言のように呟いた。


クレイグの話によれば、風の守護者は別の場所に逃げたという。彼の力があれば、仲間たちの救出にも役立つはずだ。


俺は左手の痣に意識を集中させてみた。アレンから受け取った新たな力を使い、ファリオンの存在を感じ取れないだろうか。


痣が温かくなり、青い光を放った。心の中に風の鍵の方向を示す感覚が生まれた。それは風の都の中心部を指していた。


「風の神殿か」俺は思い出した。「あそこなら安全かもしれない」


星の門の間を後にし、急いで風の都の中心部へと向かった。道中、都市の様子は一変していた。いくつかの建物が破壊され、かつての幻想的な光景は荒廃感に覆われていた。結社のメンバーによる無差別な破壊行為の痕跡だろう。


中央広場に到着すると、七つの塔の一つが強く青く輝いているのが見えた。風を象徴する塔だ。その入口が微かに開いている。


俺は慎重に塔に入った。「ファリオン?いるか?」


「レイン!」奥から老人の声が響いた。「こちらだ!」


奥の部屋に進むと、ファリオンが小さな祭壇の前に座っていた。彼は負傷しているようで、肩から血が滲み出ていた。


「無事だったのか」老人は安堵の表情を見せた。「星の間から戻ってきたんだな」


「ああ」俺は頷いた。「みんなが捕まったって聞いた。君も怪我をしているな」


「これは大したことない」ファリオンは手を振った。「私は最後の瞬間に逃げ出せた。古い抜け道を知っていたからね」


「みんなを助けなければ」俺は切実に言った。「星の城に連れて行かれたらしい」


「アストラリスか…」ファリオンの表情が暗くなった。「アーサーは大胆なことをする」


「どういう意味だ?」


「星の城はアストラリス文明の中心地だ」老人は説明した。「そこには真の星の間がある。風の都の門は、いわば入口に過ぎない」


「星の間で、アレン・スターライトに会った」俺は報告した。「彼から多くのことを学んだ」


「アレンに?」ファリオンは驚いた様子を見せた。「彼の意識の残滓が残っていたとは…」


「星の杖について教えてもらった」俺は左手の痣を見せた。「そして新たな力も」


ファリオンは俺の痣を見て目を見開いた。「七つの星…星の継承が始まっている」


「七つの鍵を集めなければならない」俺は説明した。「それで星の杖を作り出し、星の門を永久に封印するか、あるいは力を共有するかを選択するんだ」


「君はどちらを選ぶつもりだ?」ファリオンが静かに尋ねた。


「まだ決めていない」俺は正直に答えた。「だが、まずは仲間たちを救い出すことが先決だ」


「その通り」老人は頷いた。「だが、星の城に向かうのは危険すぎる。特に一人ではな」


「他に選択肢はあるか?」


ファリオンは考え込んだ。「一つだけある。他の守護者に助けを求めることだ」


「でも、彼らの居場所はわからないんだろう?」俺は疑問を呈した。


「以前はそうだった」老人は微笑んだ。「だが、今や君は強化された星の継承者の力を持っている。鍵の在処を感じ取れるはずだ」


「そうだ」俺は頷いた。「星の間でアレンから教わった。既に六つの光の場所を感じている」


「では、最も近い場所から始めよう」ファリオンは提案した。「他の守護者の力を借りて、仲間たちを救出するんだ」


「でも、時間がない」俺は焦りを感じていた。「アーサーは今にも儀式を始めるかもしれない」


「心配するな」ファリオンは俺を安心させようとした。「アーサーには君が必要だ。君なしでは儀式を完了できない。仲間たちは人質として生かしておくはずだ」


それは理にかなっていた。俺が必要なら、エリナたちにひどいことはしないだろう。少なくとも、今すぐには。


「わかった」俺は決断した。「では、最も近い守護者を探そう」


俺は左手の痣に意識を集中させた。六つの光のうち、最も近いものを感じ取る。それは北東の方向、山脈の向こう側を指していた。


「北東だ」俺は言った。「天脈山脈の北側のどこかにいる」


「それは火の都イグニスの守護者に違いない」ファリオンは顔を明るくした。「彼が生きているとは…」


「どれくらいの距離だ?」


「山を越えれば一日の行程だ」老人は言った。「だが、通常の方法では時間がかかりすぎる」


「他に方法は?」


ファリオンは微笑んだ。「古代人の移動手段を使おう」


彼は俺を塔の上層へと案内した。そこには丸い台座があり、中央に風の紋章が刻まれていた。


「これは瞬間移動装置だ」老人は説明した。「かつては七つの都市を自由に行き来できた。風の都が活性化したことで、再び使えるようになっているはずだ」


「本当に?」俺は半信半疑だった。


「試してみよう」ファリオンは俺に台座の上に立つよう促した。「風の鍵と星の継承者の力があれば、起動できるはずだ」


俺は言われた通りに台座の上に立った。ファリオンも隣に立ち、風の鍵を取り出して中央の紋章にかざした。


「星の継承者の血よ、道を開け」老人は古代語で唱えた。「火の都イグニスへの道を示せ」


俺の左手の痣が反応し、台座全体が青く輝き始めた。光が渦を巻き、俺たちを包み込む。


「うまくいっている!」ファリオンが喜びの声を上げた。


世界が白い光に包まれ、体が宙に浮いたような感覚があった。そして一瞬後、光が収まると、俺たちは全く異なる場所に立っていた。


周囲は赤茶色の岩と溶岩の流れる地形。遠くには活火山が噴煙を上げている。台座は似たような塔の上に設置されていたが、こちらは赤い光を放っていた。


「イグニス…火の都へようこそ」ファリオンが言った。「3000年ぶりの訪問だ」


俺は圧倒されながらも、仲間たちのことを思い出した。「急がなければ。火の守護者はどこにいる?」


「彼の気配を感じられるか?」ファリオンが尋ねた。


俺は再び左手の痣に意識を集中させた。この場所で、より鮮明に火の鍵の存在を感じることができた。それは塔の下、都市の中心部を指していた。


「下の方だ」俺は言った。


二人は塔を降り、火の都へと足を踏み入れた。風の都とは対照的に、ここではすべてが赤と金色で彩られていた。建物は炎のモチーフで装飾され、道路すら熱を持っているように見える。しかし、そこにも人の気配はなく、ただ古代の遺産が静かに佇んでいるだけだった。


「火の神殿はあそこだ」ファリオンが前方の大きな建物を指さした。それは巨大な炎の形を模した神殿で、入口は竜の口のように開いていた。


二人が神殿に近づくと、突如として入口から炎の壁が立ち上がった。


「誰だ?」強い声が響いた。「風の都の者よ、なぜここに来た?」


「イグニウス、私だ」ファリオンは前に出た。「ファリオン、風の守護者だ」


「ファリオン?」声は驚きを含んでいた。「お前は生きていたのか」


「ああ、友よ」ファリオンは微笑んだ。「そして、新たな星の継承者を連れてきた」


炎の壁が徐々に下がり、神殿の入口から一人の男が現れた。赤と金のローブを身にまとい、長い白髪と髭を持つ老人だった。ファリオンと同様に年老いているが、その目は炎のように輝いていた。


「本当に…」イグニウスと呼ばれた老人は、俺の左手の痣を見て目を見開いた。「星の継承者…」


「イグニウス、これはレイン・グレイソン」ファリオンが紹介した。「彼は助けを必要としている」


「お会いできて光栄です」俺は礼儀正しく頭を下げた。


「中に入りなさい」イグニウスは二人を招き入れた。「話を聞こう」


神殿内部は意外に涼しく、中央に大きな火の祭壇があった。三人はその周りに座り、俺は状況を説明した。星の間での出来事、仲間たちの誘拐、アーサーの計画、そして七つの鍵を集める必要性について。


イグニウスは黙って聞き、深く考え込んだ。


「アーサー・ノイマンか…」彼は渋い顔で言った。「彼の名は知っている。数十年前、ここを訪れようとした男だ」


「彼が来たのか?」ファリオンが驚いた様子で尋ねた。


「ああ」イグニウスは頷いた。「だが、私は彼を中に入れなかった。彼の心に闇を感じたからな」


「彼は危険な男だ」俺は言った。「私の両親を殺し、今は友人たちを人質に取っている」


「そして、星の杖と星の門を求めている」イグニウスは理解を示した。「古い悪夢が再び始まろうとしているのか」


「それを止めるために、あなたの力を貸してほしい」俺は真剣に頼んだ。「火の鍵が必要なんです」


イグニウスは立ち上がり、祭壇に向かった。彼が何かを唱えると、祭壇の炎が高く上がり、その中から赤い結晶が浮かび上がった。


「これが火の鍵だ」彼は結晶を手に取った。「3000年間、私はこれを守ってきた」


「譲っていただけますか?」俺は恐る恐る尋ねた。


「君は真の星の継承者のようだ」イグニウスは俺をじっと見つめた。「だが、簡単に譲るわけにはいかない」


「試練があるのか?」ファリオンが尋ねた。


「ああ」イグニウスは頷いた。「火の精霊との契約を結ぶ必要がある。それができれば、鍵を授ける」


「火の精霊?」


「各都市には、守護する精霊がいる」ファリオンが説明した。「風の都には風の精霊、火の都には火の精霊といった具合にね」


「そして鍵を使うには、その精霊と契約を結ばなければならない」イグニウスが付け加えた。「それが古からのルールだ」


「わかりました」俺は決意を示した。「何をすればいいですか?」


「祭壇の前に立ち、左手を炎の中に入れなさい」イグニウスは指示した。「火の精霊が君を試すだろう」


俺は緊張しながらも祭壇に向かい、言われた通りに左手を炎の中に差し伸べた。痣が強く反応し、炎が俺の手に絡みついた。しかし、痛みはなかった。


「何が起きるんだ?」俺は二人の老人に尋ねた。


「精霊との対話が始まる」ファリオンが説明した。「心を開き、受け入れるんだ」


俺の意識の中に、突然異質な存在が現れた。それは言葉ではなく、感情と意思で会話してくる。炎のように激しく、しかし温かい存在。


「火の精霊…」俺は心の中で呼びかけた。


返答は直接心に響いた。『星の継承者よ、なぜ私の力を求める?』


「友を救うため」俺は正直に答えた。「そして、星の力が悪用されるのを防ぐため」


『お前の心を見せよ』精霊は命じた。


俺の心に鮮明なイメージが流れ込んだ。両親との思い出、学院での苦難、エリナとの出会い、そして友人たちとの旅。喜びも悲しみも、全てが露わになる感覚。


『お前の心に偽りはない』精霊は満足げに返した。『だが、力には責任が伴う。その覚悟はあるか?』


「ある」俺は確信を持って答えた。「どんな犠牲を払っても、正しいことをする」


『よい』精霊は承認した。『では契約を結ぼう。私の力を授ける。だが覚えておけ、火は創造にも破壊にも使える。選ぶのはお前だ』


激しい熱が左手から全身に広がった。痣が赤く輝き、その模様に微妙な変化が生じた。七つの星のうち、一つが炎のように燃え始めた。


炎が収まると、俺の手の中に小さな赤い結晶が残されていた。火の鍵だ。


「契約が成立した」イグニウスは満足そうに言った。「火の精霊はお前を認めた」


「これで二つ目の鍵だ」ファリオンも喜びの表情を見せた。


俺は左手を見た。痣の模様が変化し、風と火を象徴する二つの星が輝いていた。体の中にも新たな力が流れているのを感じる。


「他の鍵も同じように集めるのか?」俺は尋ねた。


「その通り」イグニウスは頷いた。「各都市の守護者と精霊の契約を結ばなければならない」


「でも、それでは時間がかかりすぎる」俺は焦りを感じた。「友人たちが危険な状況にいる」


「心配するな」イグニウスは言った。「私も力を貸そう。友を救出するまで」


「本当ですか?」俺は希望を感じた。


「ファリオンと私の力を合わせれば、かなりの戦力になる」イグニウスは自信を持って言った。「そして、君は既に二つの精霊と契約した。その力も侮れない」


「では、どうすればいい?」


「まず、星の城の正確な位置を確認し、そこへの最短ルートを見つける」ファリオンが提案した。「そして、救出計画を立てる」


「私の神殿には古代の観測装置がある」イグニウスが言った。「それを使えば、星の城の状況を遠隔から見ることができる」


三人は神殿の奥へと進み、大きな部屋に入った。そこには巨大な水晶球のような装置があり、周囲には複雑な機械が設置されていた。


「これが火の眼」イグニウスは装置を指さした。「遠くの場所を観察できる古代の技術だ」


イグニウスが装置を起動すると、水晶球の中に映像が浮かび上がった。映し出されたのは壮大な白い都市、アストラリスだった。七つの塔が中央の巨大な神殿を囲み、幻想的な光景を作り出している。


「星の城だ」ファリオンが静かに言った。


映像は都市の内部へと移り、中央神殿の大広間を映し出した。そこには黒い外套を着た多くの人々がいた。そして、部屋の端に、檻の中に閉じ込められた仲間たちの姿が見えた。


「みんな!」俺は思わず叫んだ。


エリナ、シルヴィア、ルーク、マーカス教授、オルドリッチ館長。全員が無事のようだが、魔法の鎖で拘束されていた。


そして映像は部屋の中央に移り、そこにアーサー・ノイマンの姿が映った。彼は大きな魔法陣の上に立ち、何かの準備をしているようだった。


「儀式の準備をしている」イグニウスが説明した。「だが、完全な儀式を行うことはできない。君がいなければな」


「どれくらい時間がある?」俺は尋ねた。


「三日後の満月の夜」イグニウスは言った。「古代の暦によれば、それが星の力が最も強まる時だ」


「三日…」俺は考えた。「十分な時間があるかもしれない」


「何を考えている?」ファリオンが尋ねた。


「他の鍵を全て集めることは難しい」俺は言った。「だが、既に二つあれば、仲間たちを救出するには十分かもしれない」


「危険だ」イグニウスは警告した。「アーサーは強大な力を持っている」


「選択肢はない」俺は決意を固めた。「仲間を見捨てるわけにはいかない」


二人の守護者は顔を見合わせ、俺の決意を理解したようだった。


「わかった」ファリオンは頷いた。「我々も全力で支援しよう」


「救出作戦を立てるぞ」イグニウスも同意した。


三人は再び火の眼に向き合い、星の城の様子を詳しく調査した。守備の状況、弱点、侵入経路などを確認していく。


俺の心は固い決意で満ちていた。どんな困難があろうと、仲間たちを救い出す。そして、アーサー・ノイマンの野望を打ち砕く。


左手の痣が二つの星を輝かせ、俺の決意に応えるように脈動していた。


星の城への戦いの準備が、始まったのだ。

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