ぼくは遊び人、とっても素敵な遊び人、はぁ!?全然パーティーの役にたってないだって!?うるせえわ!!いつか賢者になったらあ!!

秋谷 太朗

第1話 骨付き肉


「はへはへはへはへ」


 真っ赤な舌を大きくたらし、下あごの鋭利な犬歯を白く光らせていた。眼球が嘘のように青い。よくみていると、意外と、かわいいかも、しれない。

 先ほどからまったく目をそらさず僕をじっと凝視している。

 根負けした。

 僕は食べていた大きな骨付き肉を、まるごとそのワーウルフにあげた。

 ピット・ブルの2倍ほどの大きさのそいつは、非常にうれしそうに(そうみえた)音をたてて一気にそれを食べ終えた。

 鳥の骨は縦に裂けて危険だけど、これは牛だし大丈夫だろう。ははは、ただの犬だね。亜種という野生動物との混血らしいし、やっぱり子犬?のころから飼うとこんなになつくのか。

 肉がなくなったので、僕は黒パンとチーズでワインを飲みだした。


「はへはへはへはへ」


 そいつはまた僕をじっと凝視しだした。黒パンを持つ僕の手から熱い視線を動かさない。え、オオカミって黒パン食べるの?

 根負けした。

 黒パンをあげると、そいつは奥歯で(奥歯も犬歯だが)2,3度かみしめ目を閉じて飲み込んだ。

 この宿屋兼食堂の女将が、バタバタと足音をたててまっすぐこちらにむかってきた。彼女はこのワーウルフの飼い主だから、客にものをねだるなと、この犬?は怒られるはずだ。ちょっとかわいそう。

 怒られたのは僕だった。太りすぎているから、勝手に食べ物をやらないでくれと言われた。

 ワーウルフは大きな尻尾をゆっくり振りながら、奥に去っていった。

 アーレーンは陶器のマグカップでワインをぐびりと飲むと、馬鹿にしたような目で僕を見た。いや、僕が自意識過剰なのかもしれない。


「あなた食べ物なくなっちゃったじゃない、これ半分食べなよ」


 ソフィアという褐色の肌の、はっとするほどのヴィジュアル(見慣れたが)の瑠璃色の瞳の女性(二十歳)が自分の煮豆の料理を、僕の皿に取り分けてくれた。


「そんなことしてやらなくていいぜ」


 アーレーンのくそが冷えることを言ってきた。


「明日はけっこうきつい狩りがあるのよ、スタミナ切れちゃったらこまるじゃない」


「こいつ(僕のこと)はスタミナあってもなくても、そもそも役に立たねえじゃねえか」


 アーレーンが絶対言ってはいけないことをさらっと言った。

 彼はこの大陸のこの地方の剣士のなかでまあまあ、ちょぼちょぼ有名だから少し天狗になっているのだろう。

 長身白皙銀髪の偉丈夫で、まあ、かっこいい。だがよく顔をみてみるとあほだということがわかる。

 ちなみに豆をくれたやさしいソフィアは、才能あふれる白魔法の使い手。

 そのとなりの黒髪、黒衣、白い肌で碧眼の女神アリアスに似た女性(同じく二十歳)はイビザといい黒魔法を扱う。

 今、パーティー4人で夕食をとっているのだ。

 さっき魔法、魔法とくちにしたが、この世界では「人間の念が具現化される」のだ。

 ただそれができるのはほんの一握りの稀有な者たちだけである。

 魔法についての説明は後述する。

 そういうわけで、僕はいったい何者かというと、遊び人である。

 そういう職業があるのだ、決まっているのだ、土星に輪があるように、悲劇が裏を返すと喜劇になるように、働かないライオンのオスに立派なたてがみがあるように、名作映画のエンディングに必ず名曲が流れるように。

 名作映画?いったい僕は何をイメージしているのだ?そんな存在しない存在を。

 僕はこんなふうにじつに変なところがあって、突拍子もない妄想が妙にリアルに頭の中から飛び出してくるのだ。

 多次元宇宙論が仮に正しいとして、はるかかなたのイメージを感じるのか、たんに気がくるっているのか。

 ちなみに遊び人は戦闘で、結果を出すようなことをするのが苦手である。これも後述する。


 

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