【600PV突破感謝】セッ……5秒前?!

アルパカ狂信者

第1話 「じゃぁ、前戯はこれくらいにして、本番と行こっか」

「あの夢を見たのは、これで9回目だった。……。……そうだ!先輩、思い出しました!あの夢を見たのは、今週に入ってから、これで9回目だったんですよ。いや、10回目だったっけ……?」

「え?ちょっと待って由莉奈ゆりな。……今日って、何曜日やっけ?」

「え?金曜の夜ですけど……?」

「じゃあ、見過ぎやない?後、1週間で9回とか10回とかって、数おかしくあらへん?」

「最近、会社で、お休みタイムが導入されて」

「お休み、タイム……?」

「そうなんですよー。オフィスの中に眠れる所が作られて……。あー。ほら、15分〜30分の睡眠は仕事の効率を上げるってよく言うでしょう?アレにものらしくて……。ウチの社長は、何かと、新しいモノが好きなんですよねー……」

「あーね。その『お休みタイム』とやらも含めて9回、と。でも、9回も同じ夢を見るって、一体全体、どんな夢なん?」

「『結婚せーへんの?』『まだ、彼ピ、ーひんかったんやっけ?』『良い人紹介して上げよっか?』って、親戚、家族、友達、上司、同僚とか、もー、兎にも角にも、周囲の人全員から、言われまくる夢ー」

「うわー。えぐぅー」

「それにね、街中まちなかのポスターとか、スマホの広告とか、あとあと、TVとか、どこを見渡しても、『結婚、結婚、結婚、結婚』『彼氏、彼氏、彼氏、彼氏』『良い人、良い人、良い人、良い人』って書かれているんですよ?もう、嫌になっちゃいますよ……。というーかー、別に、全てのヒトの幸せが結婚して、子供産んで何やかんや有りつつ、お母さんぎょうして、おばあちゃんになって家族に看取られてって……。そう言う訳じゃないじゃないですか」

「まぁーねぇ……」

「いや、勿論、日本の少子高齢化の為に子供、産まなきゃーっていうのは分かるんですよ?うん。分かるんです」

「んん?普通は多分それが理由で、子供は産まないと思うかなー……。多分惚れた腫れたー、とかなんか、やと思う。まぁ、ようは知らんけど」

「あ、確かに論点が議題からズレましたね。まぁ、何の為に子供は産むかは、一旦こっちに置いておくとして……」

そう言いつつ、由莉奈ゆりなは手を左から右に動かした後、更に言葉を続ける。

「私は彼氏は居ないけれど、別に独り身じゃないって事ですよ!!ハァ……。まぁ、今の日本の司法制度じゃ、結婚出来ませんけど!!実家帰る度に、家族がうるさいんですよ!!良い人は?彼氏は?結婚は?って!余計なお世話ってヤツだと思いませんかっ!?」

「絶ッッッ対、それのせいやん……」

「お陰で、9回以上も夢に出てくる始末ですよ?!もー、私の睡眠を返せーー!って話じゃないですか!」

「あはははは……」

「笑ってないでちゃんと聞いてくださいよー!先輩!ううー、もう……」

「まぁ、ウチの所はそういうん、一切無いからなー。いやー。長男が優秀だと妹がらく出来て、えわー」

「う、羨ましい限り……。あ。どっちかが、男装するとかは?」

「多分、バレるで」

「ですよねぇー」

「でもさ、由莉奈ゆりなは実際の所、したいん?結婚」

「え?したく無いですよ?だって、私には、先輩が居るんですもん……。もし、結婚式あげるとしても、先輩以外にあり得ません!!」

「あー。もう……ウチの彼女が今日も、ぐう可愛……。そして、今日も尊いてぇてぇー……。」

ねぇ、とウチは、私の彼女である由莉奈ゆりなに声をかける。

「何ですか、先輩?」

彼女の、由莉奈ゆりなの髪にそっと触れて、私は彼女の髪にキスを落とした。

「そんな事、言われてしもうたら……。もっと、もっと、もっーと、可愛がってあげたくなっちゃうなぁ……。由莉奈ゆりなのこと」

そのまま頬に触れてみる。彼女の、由莉奈ゆりなの頬が紅色に染まって、熱くなるのが分かった。

「これから、何をされるか分かってるんでしょう?」

私がそう言うと、彼女はコクリと頷いた。それが何だか、いじらしくて、軽く虐めたくなって、首の辺りを指でツツ、と何度かなぞれば、ビグッと彼女の身体が反応するのが分かった。

「ツッ……!せんぱ……!」

彼女が何か言いかけたのを制するように、ウチは唇を重ねた。

「あっ!んっ!せん、ぱ……!」

二人分の吐息が混じり合って、しばらくして最早どちらのモノかも分からぬ唾液が双方の間に、たらり、と垂れる。

「ねぇ。好きだ、大好きだよ」

「先輩。……私も、です」

「じゃぁ、前戯はこれくらいにして、本番と行こっか」

ウチはそう言って、由莉奈ゆりなを押し倒した。


                               (了)

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