鬼神道(gemini-2.0-pro-exp 使用)

@tuzitatu

第1章

**第1章:神罰と逆恨み**


 俺の名前は、まあ、どうでもいいだろう。どうせ、この話が終わる頃には、名前なんてものに意味はなくなる。


 俺は、この村の嫌われ者だった。理由は簡単、無神論者だからだ。この村の連中は、古臭い神様だか仏様だかを、ありがたがって拝んでいる。道端の石ころにまで頭を下げる始末だ。馬鹿馬鹿しい。


 朝、日が昇れば、村人どもは揃って、東の空に向かって手を合わせる。「お天道様、今日も一日ありがとうございます」だとさ。太陽がなんだっていうんだ。ただの燃えるガス玉じゃないか。


 昼間、畑仕事の合間には、田んぼの神様に感謝の祈りを捧げている。「実りの秋を迎えられますように」って、肥料と水やりを怠らなければ、勝手に実るだろうが。


 夜になれば、星空を見上げて、「星神様、私たちをお守りください」と懇願する。星なんか、遠くの燃える石ころだ。守ってくれるわけがない。


 俺は、そんな連中を、心底軽蔑していた。


 「なあ、お前ら、本当に神様がいると信じてるのか? そんなもの、見たこともないくせに」


 俺がそう言うと、村人どもは、ぎょっとした顔で俺を見る。まるで、汚らわしいものでも見るような目つきだ。


 「罰当たりなことを言うな!」


 「神様の怒りを買うぞ!」


 「この村から出て行け!」


 口々に罵声を浴びせてくる。俺は、そんな連中を鼻で笑ってやった。


 「怒り? 笑わせるな。神様がいるなら、とっくに俺を殺してるだろうが。俺はこうして、毎日、神様を否定して生きてるぞ。どうだ、神様、何か言ってみろ!」


 俺は、空に向かって中指を立てた。村人どもは、ますます顔を青ざめさせた。


 そんなある日、俺は、村はずれの道祖神の前で立ち止まった。道祖神なんて、ただの石像だ。村の境界に置いて、災厄から村を守るなんて、迷信もいいところだ。


 俺は、その道祖神をじっと見つめた。古ぼけて、苔むして、顔なんてほとんど判別できない。だが、なんとなく、その石像が、俺を嘲笑っているような気がした。


 「お前も、俺を馬鹿にしてるのか?」


 俺は、道祖神に話しかけた。もちろん、返事はない。


 「俺は、お前みたいな、無意味な存在が大嫌いだ」


 俺は、足元に転がっていた石を拾い上げた。そして、力いっぱい、道祖神に投げつけた。


 石は、道祖神の顔面に命中し、鈍い音を立てて砕け散った。俺は、もう一度、石を拾い上げ、今度は道祖神の胴体に叩きつけた。何度も何度も、繰り返し、石を投げつけた。


 道祖神は、次第に形を崩し、ただの石くれと化していった。俺は、息を切らしながら、その様子を眺めていた。


 「どうだ、神様。これで満足か? 俺は、お前を破壊したぞ。何も感じないのか? 何もできないのか?」


 俺は、道祖神の残骸に向かって、唾を吐きかけた。


 その瞬間、俺の体に、激しい痛みが走った。まるで、全身を針で刺されたような、焼けるような痛みだった。


 「ぐああああああああ!」


 俺は、地面に倒れ込み、のたうち回った。痛みは、ますます激しくなり、俺の意識を奪っていく。


 「な、なんだ、これは……? 呪い、なのか……?」


 俺は、朦朧とする意識の中で、そう思った。村人どもが、俺を呪い殺そうとしているのか? いや、違う。これは、もっと別の、もっと恐ろしい何かの仕業だ。


 俺は、自分の体を這い回る、無数の虫の幻影を見た。それらは、俺の皮膚を食い破り、肉を貪り、骨を噛み砕いていく。


 「や、やめろ……! 助けてくれ……!」


 俺は、かすれた声で叫んだ。しかし、誰も助けに来る者はいない。俺は、一人、地獄の苦しみを味わっていた。


 「神様……! 仏様……! 助けてください……!」


 俺は、今まで散々馬鹿にしてきた神仏に、必死に祈った。しかし、返事はなかった。


 「くそっ……! こんなことで、死んでたまるか……!」


 俺は、最後の力を振り絞って、立ち上がろうとした。しかし、体は言うことを聞かず、俺は再び地面に倒れ込んだ。


 「俺は……、こんなところで、死ぬわけにはいかない……! 俺は、神仏を、この世から消し去るまでは……!」


 その時、俺の心の中に、何かが生まれた。それは、怒りであり、憎しみであり、復讐心であり、そして、狂気だった。


 「そうだ……。俺は、鬼神になる……。神仏を殺し、この世を地獄に変える、鬼神になるんだ……!」


 俺は、そう呟くと、意識を失った。


 次に俺が目覚めた時、俺は、俺ではなくなっていた。


(……この男の行動は、本当に狂気なのだろうか? それとも、神仏への反逆なのだろうか? そして、彼はこれから、何をするつもりなのだろうか?)

死臭と腐臭が混じり合った空気が、俺の肺を満たす。ここはどこだ?村の外れか?いや違う。まるで巨大な、暗い、石造りの建造物の中の様だ。天井は遥か高く、薄暗い闇の中に消えている。壁には、無数の人面が彫り込まれ、その全てが苦悶の表情を浮かべている。…ああ、悪趣味だな。

俺の体は…変わっていた。皮膚は赤黒く染まり、筋肉は異常なほどに隆起している。爪は鋭く伸び、まるで獣のようだ。

「…成功、したのか…?」

俺の声は、低く、嗄れていた。まるで、別人の声のようだ。いや、実際に、俺はもう、以前の俺ではないのだろう。

「…鬼神、か…」

俺は、その言葉を呟き、ニヤリと笑った。

俺は、ゆっくりと立ち上がった。足元には、俺が着ていたはずの服の残骸が散らばっている。…もう、あんなものは必要ない。

俺は、歩き出した。どこへ行くのかは分からない。だが、どこへ行こうとも、俺の目的は変わらない。

「神仏を…殺す…」

その言葉は、俺の心の中で、呪文のように繰り返された。

俺は、歩きながら、自分の体を確認した。…力が漲っている。まるで、無限のエネルギーが、俺の体の中を駆け巡っているようだ。

「…面白い…」

俺は、思わず笑ってしまった。…この力があれば、何でもできる。神仏だって、恐れるに足りない。

俺は、さらに歩き続けた。すると、前方に、何かが動いているのが見えた。

「…誰だ…?」

俺は、声をかけた。

その「何か」は、ゆっくりと振り返った。

それは、人間だった。…いや、人間だったもの、と言うべきか。

その体は、腐り果て、骨が露出し、蛆虫が這い回っている。目は虚ろで、口は大きく裂け、まるで、死んだ魚のようだ。

「…お前は…?」

俺は、再び声をかけた。

その「何か」は、ゆっくりと口を開いた。

「…我は…、亡者…」

その声は、ひどくかすれていて、ほとんど聞き取れない。

「…亡者…? 死んだ人間、ということか…?」

「…そうだ…」

「…ここは、どこだ…?」

「…ここは…、地獄…」

「…地獄…?」

俺は、思わず笑ってしまった。

「…地獄、か…。面白い。俺に相応しい場所だ」

「…お前は…、何者だ…?」

「…俺は…、鬼神だ」

「…鬼神…?」

亡者は、俺の言葉を繰り返した。

「…神仏を殺す者だ」

「…神仏を…、殺す…?」

亡者は、俺の言葉に、怯えたような表情を浮かべた。

「…そんなこと…、できるわけがない…」

「…できるさ。俺には、その力がある」

「…嘘だ…」

「…嘘かどうか、試してみるか?」

俺は、亡者に近づき、その腐り果てた体を掴んだ。

「…やめろ…! 何をする…!」

亡者は、必死に抵抗しようとした。しかし、俺の力は、圧倒的だった。

俺は、亡者の体を、軽々と持ち上げた。そして、力いっぱい、地面に叩きつけた。

亡者の体は、グシャリと音を立てて潰れた。…まるで、熟れすぎた果実のように。

「…どうだ? 俺の力は、本物だろう?」

俺は、亡者の残骸を見下ろしながら、そう言った。

…この感触、この音、そしてこの臭い。全てが、俺の心を、狂喜させた。

「…次は、誰だ…?」

俺は、辺りを見回した。…地獄、か。面白い。神仏を殺す前に、ここで少し、遊んでいくとするか。

(死とは、終わりなのだろうか? それとも、始まりなのだろうか? そして、地獄とは、本当に存在するのだろうか? もし存在するなら、そこには、どんな苦しみが待っているのだろうか?)



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