【KAC20254】楠木さんは「カクヨム」が気になるお年頃

ほわりと

【KAC20254】楠木さんは「カクヨム」が気になるお年頃

 あの夢を見たのは、これで9回目だった。


 そう一行だけ書かれているルーズリーフとにらめっこをしながら、私は深いため息を吐いた。


「……はぁ。ここから何を書けばいいんだろう」


 この夢は将来の夢ではなく寝ている時に見る夢なのは、現代文が赤点ギリギリの私でもわかる。わかるけど、最後に夢を見たのはいつだろう。そもそも夢は覚めると忘れるもの。起きたら忘れるんだから、9回も同じ夢を見たことなんて一度もない。


 カクヨムに登録したものの、KAC2025の第4回目お題は「あの夢を見たのは、これで9回目だった。」で始まる小説を900文字以上書くこと。今日は三月十四日だから、締め切りは三日しかない。


「あーもうっ。小説なんて一度も書いたことがないのに、三日で書くなんてハードルが高すぎるっ!」


 何かヒントはないかとスマホでカクヨムのサイトを見てまわる。小説はあまり読まないけど異世界ものに悪役令嬢、追放されるような作品が多いことがタイトルからわかった。それと――


「これ、漫画で読んだことがある。あっ、これもアニメになっていたような……」


 知っているタイトルを見つけて、つい画面をタップする。気になると読んでみたくなるのは仕方がないこと。無料で読めるなら尚更だ。


 よく考えたら、締め切りは三日しかないけど今日は金曜日で明日は土曜日。もちろん明後日は日曜日である。部活は帰宅部みたいなものだし、高校が休みだから書くために丸々二日使える。締め切りはあと二日もあるんだし気分転換だって必要だよね。


 それに、読んで参考にすれば一石二鳥。テスト前に部屋を掃除したくなるのと一緒で、現実逃避するかのように読み始めてしまった。


 金曜日の夜は漫画で読んだことがある作品を読み始め、それが最新話まで読み終わると別の作品を読み始める。ご飯を食べてごろごろしながら読み、お風呂に入ってまた読んで。そんな生活を二日続けてしまった。


「あれ? もう月曜日になってる?」


 今更気づいても、もう遅かった。どうしよう。お題について全く考えていない。そうだ、お題はもう一回出題されるんだから、それを頑張ればいいだけだよね。私は焦る気持ちを抑えて、そう自分に言い聞かせたのだった。

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