石板探訪――ふせられた真実――(月光カレンと聖マリオ34)

せとかぜ染鞠

石板探訪――ふせられた真実――(月光カレンと聖マリオ34)

「あの夢を見たのは、これで9回目だった。」

 トリ妖精国危機のたび為政者たちが救いの示唆を仰いだ石板にはそう刻まれていたという。

 城下の街を森へ抜けつつ 鳥綺ちょうきが緑髪をかく。「再びあなたのお供を仰せつかったものの 以前は年少ゆえ 9日9晩の木のぼりに耐えられたが 今はもう……節々が痛むのだ」

「見てればいい――」

「さすがゴールド,話が分かる」

 だから勘違いだって。俺は怪盗月光カレンさ。妖精力を以てして90日はかかる木のぼりでも俺さまには ビフォーbreakfastだ。それに 三條さんじょうを人質にとられている。是が非でも石板解読する必要がある。

 市場で子供に衝突される。謝る母親が走りさる子供に叱った――悪さしたらユーカイメダッタ出てくるぞ!

チュンチュチュンはっはっはっ幽界ゆうかい雌堕津田めだったとは罪深き女の堕ちる黄泉よみじの深津。そこより蘇った者は禍難を齎すとか」

 小旅行を楽しみ夕刻に森奥の天空をつく木立の一画に臨んだ。

 突如頭上から岩石が落下する。はみだし大烏一門の仕業だ。例の液体を噴射し奴らをねじふせてくれたまえ!――鳥綺が叫ぶ。

 ゴールドは共鳴薬を使ったのか。彼女は動物を意のままに操る共鳴薬の開発者だ。

 あいにく薬も武器もない。俺さまには愛があるだけ。宙を埋める漆黒の群れに投げキッスする。

 大烏たちがふらふら舞いおり項垂れたまま足もとに集った。数羽の大烏が平たい物質の縁を銜え運んでくる――救いの石板だ!

  阿之忌雌尾三多伸羽之玲出生之由津之夜宇由宇化忌雌堕津田

 縦に刻字されたそれらは万葉仮名に近い表記が採られているのだ。漢字を借りて日本語音を表現している。

  ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫

  ⑬ ⑭ ⑮ ⑯ ⑰ ⑱ ⑲ ⑳ ㉑

 確かにそう読めなくはない。3,4字目の「」は「ゆめ」の古形だ。「見たのは」のあと,鳥綺の 読点と解したものは 10字目に 乱刻された「之」の画数最初の点だった。文字列最後の句点についても文字ではなく汚損だ。

 以上の内容を「あの夢を見たのは,これで9回目だった。」と鳥綺は解釈し,それをゴールドは黙認した。その解釈は間違いと分かりながら真実をふせたのだ。

「トリの降臨である~~」鳥綺の背後より王妃が現れる。「朕も石板解読しましてよ」

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