第3話 転生者は今世こそ結ばれたい
〜須藤結衣side〜
私には前世の記憶がある。前世の名前は
今世の私は魂の抜け殻のような半生だった。なにせ前世の私は死ぬ直前にやっと会えるとそう信じて疑っていなかったから。けど実際には新たな生を授かってしまい再会が叶うことはなかった。
私には才能があった。何をしても直ぐに覚えて同年代を軽く凌駕するほどの結果を残すことができた。前世の記憶による心の成熟とゴールデンエイジと呼ばれる子供特有の成長速度が上手く噛み合った結果だと私は睨んでるがその当時は正直どうでも良かった。
だってあの人がいなければ私は死んだも同然なのだから。だからあの出会いは私にとって人生の始まりと言わざる負えなかった。
私は大学卒業後前世の私が遺した会社に就職した。前世の私は様々な事業を展開しあらゆる界隈に彼女の名を遺した。その結果世界有数の財閥となったのだが私にとってはどうでもいいことだった。
だから私が数ある会社のうち、その会社を選んだのはただの気まぐれだと私は
しかしそれは
「今日からあなたの上司となる前野知翠です。同い年なので気になったことは色々と聞いてください」
名前も見た目も全然違う。けれども私は確信した。
この人が私が愛してやまなかった
その日から私は人生が楽しくてしょうがなかった。今世で初めて生きてて良かったと心の底から生まれ変わらせてくれた存在に感謝した。
きっと私は心の何処かで詩音が私と同じように生まれ変わってるんだと信じていたんだと今では思う。じゃなければ私はこんなにも努力してないはずだ。好きでも無い勉強をして面倒くさくてしょうがないスキンケアを欠かさずして、毎日もし詩音が生まれ変わって居たらどこでどうしてるのだろうかと何パターンも考える。そんなことするはずないのだと私は振り返って思った。
私は詩音が死んだ時に何も失いたくないと強く思った。前世では最も守りたいものはとっくに崩れ去っていたけど今世では違う。今もまだ私の傍で生きている。
だから今世こそは絶対に護ってみせる。そのためならなんだってしてみせる。そのための準備は前世でとっくに終えてる。前世の私は自分の資産をとある条件を満たすことのできる人に託せるようにした。それと同時に私が創り上げたシステムと権力を引き継げるようにもした。これはもし詩音が生まれ変わっていたらという有り得ないことがあった時のために行ったものだった。
創った時は我ながら老いで本格的にボケが来たのかと自傷したものだが今となっては英断と褒め讃えたいものである。
私は今世こそ
◆◆◆
「ゆいちゃ〜ん、もう私飲めないよ〜」
新人歓迎会も終わり泥酔した知翠先輩はタクシーの中で私に絡んできた。
前の私ならきっと冷たくあしらっていたのだろうが知翠先輩だと言うだけでその絡みすらも愛おしく感じて堪らない。
まぁ、先輩が泥酔状態になるように色々と細工したのは私なのだから本来は謝る必要があるのかもだけど。
しかしこれは必要なことだった。先輩は泥酔していても案外意識はある。これは前世からそうだった。もっとも泥酔状態の時は全く記憶にないらしいのだが普通に会話が成り立っては居たので不思議なものだ。
「ほら、先輩アパートに着きましたよ。送るので部屋を教えてください」
そう、私が先輩を泥酔状態にさせた理由は合法的に先輩の家を突き止めるためである。本当は少しグレーゾーンな手を使おうと思っていたのだが、先輩のこととなると私はどうしても暴走気味になってしまうこともあり先輩から警戒されてしまった。
だからこそ成り行きで先輩の家を知ったことにすることで後に色々な事をした際に先輩から疑われないようにしたかったのだ。
「えっと〜わたしのへやは〜406だよ〜」
「分かりました、鍵ってどこにあります?」
「かぎじゃなくて〜しもんにんしょうなんだ〜つかうゆびはみぎてのひとさしゆびだよ〜」
さっき私にプライベートについて注意してたのに息をするかのようにプライベートの情報を漏らす先輩はあまりにも可愛かった。普段はきっちりとしてるから余計に気の抜けてる先輩が愛おしくてしょうがない。このままだと外で襲ってしまいそうなくらいだ。
私は理性が残ってる間に先輩を家まで運ぶ
「先輩、着きましたよ。服はこのままでもう寝ますか?」
「うん〜そうする〜結衣ちゃんありがとね〜」
先輩をベットに乗せると直ぐに寝息をたてはじめた……無防備な先輩はあまりにも可愛すぎる。このままずっと見ていられるが色々としたいことがあるので頑張って部屋を離れる
「えっとこのカメラはここで、盗聴器はここかな?」
私がここに来た目的、それは先輩を監視すること。前世では少し目を離したせいでいなくなってしまった。今世でそんなミスをしないようにするために私は先輩を監視することにした。
「先輩、待っててくださいね。すぐに堕として見せますから」
深夜のアパート、ある1部屋での出来事は誰からも知られることは無かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます