第4話 城址公園の問題
戦国時代後期からの城郭というのを考えれば、城郭内部は、本丸に行くまでに、攻城軍の侵入を妨げるということで、
「なるべく、侵入のために、複雑な通路にしているだろう」
ということは分かりきっていて、途中の階段も、わざと、不規則にしてあるものではないだろうか?
攻城軍に対して、足元に注意をいかせておけば、正面から攻撃をした場合に、相手はなかなか逃げることも、身動きも取ることができないからである。
しかも、段を変えていたり、石の大きさを不規則にしていれば、進む時のスピードも一定せず、特に軍が多ければ多いほど、相手は身動きが取れないというものだ。
特に、
「枡形小口」
などというところに追い込んでしまえば、
「四方八方から狙い撃ち」
ということで、逆に、
「狙わなくても、引き金を引くだけで、相手は、集団で倒れていく」
というものだ。
「攻城の場合。籠城の三倍の兵が必要だ」
と言われたくらい、攻城というのは難しい・
特に、
「人数が多ければ多いほどいいというものではなく、限られた範囲で、袋のネズミとなれば、ハチの巣になってしまうというのも当たり前だというものだ。
だからこそ、
「戦国の三大奇襲」
ということで、
「桶狭間の戦い」
「河越夜戦」
「厳島の戦い」
というような、戦いが多かったりする。
特に、厳島の戦いなどは、
「相手の大軍を、限られた厳島というところで、身動きを取れなくする」
という作戦が有効だったりしるのだ。
同じような戦いとして、
「籠城戦」
というものを得意としたのが、
「真田家」
であった。
「表裏比興の者」
と、秀吉に言わしめただけのことがある真田昌幸が、
「あの徳川軍を二度退却させた」
という、
「上田合戦」
などでは、何度も、相手の数の多さを逆手にとって、翻弄したことで、勝利を得るという作戦を取ったのだった。
だから、
「戦では、必ず数が多い方が勝つ」
という、
「数の理屈が必ず通用する」
ということはないのであった。
このお城も、戦国時代では、
「策士」
と言われた武将が領主として入っていたので、さぞや、そういう作戦が取られたことであろう。
詳しいことまで勉強はしていなかったが、
「戦国時代において、戦では、作戦勝ちが多かった」
ということは聴いていた。
それが、
「籠城戦だったのか?」
あるいは。
「攻城戦だったのか?」
ということは分からない。
それでも、どれだけ相手を屈服させたかということで、歴史本の中でも、この武将についてのものが結構書かれているのは知っていたのだ。
もちろん、
「地元の勇士」
ということで、地元コーナーには特集を組むくらいの武将である。
「いずれ大河ドラマの主役にでも」
ということが言われるくらいであった。
城址は、それだけの逸話がある武将の城としては、そこまで大きな城郭ではない。
しかし、前述のように、戦術的には、
「それほど大きくない方が好都合」
ということもあり、
「作戦面において、ちょうどいい大きなに設計されているのだろう」
ということであった。
そもそも。この武将には、軍師として、
「かなり立派な参謀」
というのもいるようで、そのおかげで、
「戦国の世を生き抜いてこれたわけだし、徳川時代の初期に、
「改易」
ということにならず、うまく世渡りができたことで、明治維新まで、
「この土地の大名」
ということで生き残ることができたのだ。
江戸時代では、改易も結構あったが、それに伴って、
「転封」
というのも多かった。
「世継ぎがおらず、お家断絶のために、改易」
という処分になったり、
「謀反を企んでいる」
などという濡れ衣を着せられての改易であったりというものが頻繁だったこともあって、そこに、ぽっかり空いた穴に、他の大名を転封させるというのは当たり前のことで、一つの城に、明治までの間に、数個の大名家が入れ替わり立ち代わりで入城するというのも、普通にあったりしたものだ。
ただ、そんな改易という問題も、四代将軍くらいから、今度は別の問題となって襲い掛かってきたのであった。
というのも、
「家光公の時代」
くらいまでは、
「幕府の基礎を築く」
ということで、
「有力大名を潰し、その権威で、幕府に逆らわせない」
ということでの改易を頻繁に行ったことで、大きな問題となったのが、
「浪人問題」
ということである。
つまり、
「お家断絶」
ということは、今でいえば、会社が潰れたと言ってもいいだろう。
そうなると、引き受け先のない社員は、家族含めて路頭に迷うということである。
大名が、他から転封してくると言っても、その大名には、ちゃんと召し抱えている家臣がいるわけである。
「当然のごとく、改易というのは、そのまま社員の失業」
ということで、改易された家臣のほとんどが失業するということで、失業者が、街に溢れるということになるのだ。
しかも、
「士農工商」
という身分制度があることで、
「他の商売に鞍替え」
ということもできない。
武士としてしか生きられない浪人たちは、召し抱えてくれる大名があって、そこから禄がもらえないと、本当に路頭に迷うのであった。
当然のことながら、街の治安は悪くなり、安心して生活ができないということになるだろう。
当然、幕府に恨みを持つものも出てくるわけで、
「一体、どうすればいい」
ということになるのだ。
幕府でも。職業訓練などで、内職の手習いのようなことをさせたようだが、どれだけの浪人がいたというのか、江戸に集まってくる数といっても、ハンパではなかっただろう。
そういう意味で、この城の代々の城主は、藩政に関しては。素晴らしかったのであろう。江戸から明治維新までにかけて、ほとんど一族だけで時代を駆け抜けたというのは、実に幕府から何も言われなかったという証拠であろう。
ただ、さすがに、幕末あたりでは、
「討幕派」
ということで明治維新にも一役買ったということであった。
「時代を見る目もあった」
ということになるであろうか。
江戸時代には、
「参勤交代」
というものがあり、どうしても、
「藩主は、半分は、江戸表に行かなければならない」
ということで、その留守居役として、城では、
「城代家老」
「主席家老」
「次席家老」
などが国を治めることになるわけで、こちらも、参謀として、しっかりしていないと、それこそ、
「お家騒動」
ということになりかねない。
それも、ほとんどなかったということから、江戸時代の中でも、
「模範的な藩だった」
と言ってもいいかも知れない。
しかも、明治維新による功績や、土地が、産業をいつくしむにふさわしいところだということで、都心部も、
「この地方の中での、一番の大都市」
ということで、かなりの人口も増えてきた。
昨今では、時代の移り変わりに際して、少し落ち着いてきたということもあって、
「観光地」
ということを前面に押し出した、目立たないが、落ち着いたいい街として、全国でも、相変わらずの観光地であった。
ただ、今の時代は、どうしても都心部の賑わいが、県政としては一番であり、
「天守のなかった城」
ということで、さすがに観光地としては、目立たないものとなっていた。
それよりも、神社仏閣の方が人気のところが多く、
「本来であれば、天守を観光用に作ればいい」
という話もあるのだが、県知事が、
「予算の問題」
ということで、何度も、議題には上がるのだが、最終的に、再建問題は、尻切れトンボになってしまうのだった。
そんな城址公園であったが、最近、
「観光客キャンペーン」
ということで、最初は、
「老朽化」
という問題であったり、
「観光客への配慮」
ということで、補修工事などが頻繁に行われていたが、それはあくまでも、
「現状維持によっての、集客」
という、
「専守防衛」
のような消極的な作戦であった。
しかし、最近、
「県知事が引退する」
ということが言われ、今までは、保守に走っていたことで、保守が強い県政ということであったが、その知事が引退するということで、
「改革派」
というものが、力を持つようになったのだ。
改革派は、街の改造だけではなく、観光地として、
「城址公園を、大体的に改造する」
ということを公約に掲げて、選挙で初当選したのだった。
さっそく、彼は、街中の改造から始めた。
「都心部のビルの半分は老朽化ということで、作り直す必要がある」
ということで、
「数年かけて、少しずつ建て替えていく」
と計画していた。
実際に、その計画は、軌道に乗ってきた。
それまで保守ということで、抑えられてきた大企業が、改革派に対して、全面的にバックアップするということになったのだ。
本当であれば、
「これまで使うはずだった金をプールして、この時とばかりに使うということを、企業間で話をしていたので、その改革派へのバックアップによる、
「金の力」
というのは、
「破壊力」
という意味でもすごいものだったのだ。
城址公園も、以前の城の別名である、
「舞鶴城」
というのを公園につけて、
「舞鶴公園」
ということで大々的に宣伝し、元々あったサクラなどの花見の名所として売り出すことも忘れなかった。
そもそも、
「日本サクラの名所100選」
というものに選ばれていたにも関わらず、それほど有名ではなかったのは、それだけ、今までの保守が、宣伝ということで怠けていたといってもいいだろう。
この時とばかりに、改革派は躍進した。だから、今の城址公園は、ところどころ、工事中のところが多かったりする。
「それも仕方のないこと」
ということであろうが、
「観光地としてすべてを一気にしようとは思っていない。新しく建設するところは、一気に行うが、元々あった部分は、ゆっくりときれいにするというのが目的だった」
ということである。
舞鶴公園は、隣接するところに、大きな池を模した公園があった。
そこは、元々、大名屋敷があったり、御殿が、まるで別荘のようにあったりしたのだ。
そもそも、本当の武家屋敷であったり、御殿は、
「本丸であったり、二の丸あたりに作られていた」
ということであったが、大手門の向こうに作られているのは、大名家における別荘のようなところであった。
そこには、日本庭園のようなものが広がっていて、それは、
「天下泰平の時代に、幕府には逆らわない」
という思いを込めたものだと言われている。
その公園は、昭和になってから、
「城とは別管理」
ということで、市民公園として、独立した形になっていたが、しかし、最近では、それも、同じ県の、
「城址管轄」
ということで一緒にして。
「かつての、威風とよみがえらせよう」
という計画をしていたのだ。
「まだまだ。いろいろな資料が不足していたり、読み取れないところがあったりして、学術研究というものが行き届かないとうまくいかない」
ということであるが、近隣の大学で、県から依頼され、考古学や歴史研究チームというものが組織され。
「県から補助金も出る」
ということで研究に勤しんでいるのであった。
その姿勢は、いつしか話題となり、
「舞鶴公園というものを持っているH県では、県政と同時に学術研究が進められていて、観光地として生まれ変わるプロジェクトが動いている」
ということで話題となり、それを、テレビも大々的に宣伝していた。
地元の話題から、次第に、全国での、
「モデルコース」
ということで、取材に来たり、研究員が訪れるということも増えてきたのだった。
それだけでも、
「県のイメージアップにつながる」
ということで、最初は渋っていた一部の県議会の連中も、次第に、このプロジェクトを信用するようになり、
「全国アピール」
というものに、
「自分たちから躍起になっている」
というのが実情であった。
そんな城址公園では、その助成金をめぐって、ひと騒動があったということは、最初に発覚した時、
「なるべく内密に」
ということを県の一部で示し合わせていたということが、マスゴミにバレたことで、問題となった。
最初は、何とか丸く収めるつもりだったものが、結局露呈してしまったことで、
「痛くもない腹を探られる」
ということになったのだ。
実際には、簡単に済ませるつもりだったのが、簡単にいかなかったことで、その責任を一身に受けることで、失脚してしまった人がいた。
本来であれば、
「そんなに力があるわけではなかったはずの人なのだが、この混乱の中、結局責任を一人に負わせてしまったことで、
「トカゲの尻尾斬り」
というものが行われたのであった。
もちろん、ちょっと考えれば分かることであったので、
「誰も気づかなかった」
ということはないはずだ。
もっとも、
「それだけ混乱が激しかった」
というのは分かり切ったことであったが、それにしても、ここまで大変なことになろうとは、思ってもいなかった。
そこには、実際にひと騒動に一役買っていたという人たちが、本来ならお咎めを受けるわけだが、それができないのは、
「県としては、今、その連中を失うわけにはいかなかった」
という事情があった。
下手をすれば、
「他の県から、こちらの県に、他から臨時で収める人がやってくる」
という形になったかも知れない。
「このような騒ぎを起こしたのだから、第三者委員会の査問委員に提訴し、この状態をいかに納めればいいかということを論議するためにも、臨時で、第三者に見てもらうことが必要だ」
ということであろう。
そうなってしまうと、
「県の内情がバレてしまうことになり、さらなる混乱が起こるのは必定ということであろう」
そんなことになってしまうと、どんどん悪い方に行ってしまい、結果としては、県の状勢としては、結局、
「県民が困ることになる」
というもっともらしい理由で、丸く収めようということになるのだ。
実際には、県の状勢は、それこそ、時代劇の、
「悪代官」
なみのことをやっていて、今の時代であれば、
「水戸黄門」
であったり、
「遠山の金さん」
もいないということで、正してくれる人がいなければ、やはり困るのは県民ということになる。
もちろん、次の選挙でいい人を選べばいいのだろうが、ここまで混乱すると、
「誰がいい人なのか分からない」
ということになる。
それどころか、
「この県に、まともな政治家がいるというのか?」
ということになる。
さすがにいないわけではないだろうか、
「県知事ができるほどの人にいるのだろうか?」
ということになると、
「それは、っまずいないだろう」
としか考えられなくなり、県政は地に落ちると言ってもいいだろう。
それを考えると、最初に、
「何とか、内輪で収めよう」
と考えたのも、無理もないことで、そうなると、
「特ダネ欲しさにスクープしたマスゴミが、一番悪い」
ということになるかも知れない。
しかし、
「火のないところに煙りは立たない」
ということで、それこそ、
「誰が悪いのか?」
ということは、根本の人間が悪いというのは当たり前だが、
「県政をここまで腐らせてしまった、これまでの政治家のせいだ」
と言ってもいいだろう。
しかし、それをいまさら言ってもしょうがない。
確かに以前の政治家に文句を言っても、いまさらのことである。しかし、
「起こってしまったことはしょうがない。事態を少しでも収拾させるには、忘れてしまうことが一番」
ということで、さすがに最初の騒動はある程度仕方がないが、変に騒いだりして、
「余計に混乱させることだけはしてはいけない」
ということになるだろう。
それを考えれば、
「ここは、矢面に立たされても、騒がずに行くしかない」
ということと、
「こうなってしまっては、誰かを人身御供として、犠牲になってもらい、何とか騒ぎが過ぎ去るまで、耐え忍ぶしかない」
ということになったのだ。
その矢面に立たされたのが、県の環境課の課長だった。
ちゃんと調べれば、県の課長の立場で、そこまでできるわけはない。
確かに、この課長は、
「不正一派の片棒を担いでいる人間ではあったが、もっと上の人に指示されて、断ることができなかった」
というだけのことである。
それなのに、
「悪事に加担した」
というだけであるにも関わらず、まるで。
「自分が筋書きを描いた」
とばかりに仕立てられ、最初は、
「まわりが助けてくれる」
と思っていたが。まさか、
「自分が人身御供となってしまった」
などということになっていようとは、思ってもいなかったのだ。
それを考えると、
「なぜ、こんなことに?」
と思うと、さすがにその男も、今までの自分の悪事が、
「本当の悪人によって自分が利用されていただけ」
ということであり、
「何かあった時には、まるで、トカゲの尻尾斬りとして、自分がすべての責任を負って犠牲になる」
という計画だったことに気づくと、いくら、自分の正当性を訴えても、もうどうなるものでもない。
しかも、
「悪の親玉連中は、課長をすべての首謀者とするような偽の証拠をでっちあげて、結局は、何を言っても通用しないように仕立てあげる」
ということであった。
しかも、
「言えば言うほど、課長は自分の首を絞めるということで、完全に、主犯が、被害者で、利用された自分が加害者だ」
という設計図が出来上がってしまっているということになるのであった。
そうなってしまうと、失脚は必定。
もっとも、最初は、
「ここでお前の働きがよければ、いずれは出世間違いなし」
ということで、
「悪の片棒だと分かっていても、このまま逆らったら、自分の出世の道は立たれてしまう」
ということになるだろう。
そうなってしまうと、
「悪の片棒を担いでも出世をするか、それとも、バカ正直に拒否して、出世の道を断たれるか?」
ということを考えれば、
「答えは一つ」
だったのだ。
しかも、
「もし、何かヤバくなったら、こっちでうまくやるので、お前に危害が及ぶことはない」
と言われたことを、今から思えば信じられないが、そんな甘い口車に乗ってしまったのである。
「テレビドラマなどを見ていたのに、そんな言葉をよく信じられたものだ」
と言われるかも知れないが。
「そんなウソのようなことが、本当にあるなんてことはないだろう」
と、
「テレビドラマが誇張されたものだ」
という感じに、都合よく解釈してしまったのだ。
それこそ、
「公務員気質かも知れない」
考えてみれば、
「部下のために、何かあった時に助けてやるような善人であれば、最初から、私腹を肥やすなどということをするわけもないのだ」
ということになるのではないだろうか?
そんなことを考えていると、
「公務員というものの、課長クラスは、そんな人が多いのだろうか?」
と考えると、
「だから、世の中から不正がなくならないのだ」
ということで、それこそ、時代劇の、
「悪代官を思わせる」
というものだ。
公務員というものは、世間から見れば、よくわからない。
「閉鎖的なところだ」
とは思っているが、
「警察組織」
などのドラマを見ていると、おのずと、
「あんなものなんだろうな」
と漠然と考えてしまう。
実際にどうなのかは、意外とマスゴミが知っているかも知れない。
ただ、ジャーナリストというのも、
「ピンからキリまでいる」
と言ってもいいだろう。
「金で特ダネを買ったり、危ないと思うようなことに、どうなるかということを考えもせずに、簡単に足を踏み入れる」
ということもあるだろう。
「その結果どうなるか?」
というのは、ハッキリと分かるわけではない。
それを思えば、今回の事件も、
「マスゴミとしても、慎重にいかなければいけない」
ということになるだろう。
だから、第一発見者を、民間のボランティアの人ということにせずに、
「田島巡査」
ということに公表上はしたのだった。
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