Vチューバーと著作権の基礎知識
Vチューバーとして活動する際、著作権や関連する権利についての理解は不可欠です。
配信中に音楽を流したり、ゲームを実況したり、ファンアートを使用したりする際、知らずに権利を侵害してしまうと、チャンネルBANや収益化停止、法的トラブルにつながる可能性があります。
また、YouTubeのコンテンツIDシステムは、動画内の音楽や映像の著作権を自動(A.I.)で検出する仕組みです。そのため、著作権を侵害していなくても、誤検出によって収益化が制限されたり、動画が削除されたりすることもあります。
そこで今回は、Vチューバーが特に関わる可能性の高い著作権、著作隣接権、著作者人格権について解説します。
1. Vチューバー活動と著作権の基本
著作権とは、創作物を作った人(著作者)が持つ権利であり、無断でコピーや改変、使用されることを防ぐためのものです。配信で使用する画像、BGM、動画、ゲーム映像などはすべて著作物に該当する可能性があります。
著作権に関わる主なポイント
画像・動画の使用ルール
他人が作成したイラストや写真、動画を無断で使用するのは著作権侵害となります。使用する際は著作権フリー素材やクリエイティブ・コモンズ(CCライセンス)のルールを確認する必要があります。
ゲーム実況の著作権とスーパーチャットの扱い
ゲームのプレイ動画は、著作権者であるゲーム会社の許諾が必要なケースがあります。最近は企業ごとに「配信ガイドライン」が定められており、その範囲内であれば実況可能です。例えば、任天堂やカプコンは一定のルールを守れば配信が認められていますが、スクウェア・エニックスのようにタイトルごとに細かい規定がある場合もあります。
「営利目的以外なら許可」とするガイドラインに注意
一部のゲーム会社は、「営利目的以外なら配信OK」と規定しています。この場合、スーパーチャット(投げ銭)やメンバーシップ収益を得ることはNGとなります。そのため、ゲーム配信後に「雑談枠」を設け、そこで投げ銭を受け付けるという方法が一般的に取られています。
ファンアートや二次創作
公式キャラクターを使ったファンアートや二次創作の扱いは、各企業やクリエイターのガイドラインに依存します。企業勢のVチューバーのデザインは基本的に事務所が権利を持つため、二次創作の商用利用は禁止されていることが多いです。
例えば、ホロライブやにじさんじでは、ファンアートの創作自体は許可されていますが、営利目的の利用(販売や配信の収益化など)は制限されています。ガイドラインを事前に確認し、違反しないよう注意しましょう。
2. 著作隣接権と楽曲使用のルール
著作隣接権とは、著作物を創作した人(著作者)ではなく、それを演奏・録音・放送する人や企業が持つ権利のことを指します。これにより、楽曲の配信や使用には特別なルールが適用されます。
JASRACとは?
JASRAC(日本音楽著作権協会)は、日本国内の音楽著作権を管理する団体です。作詞家や作曲家が登録した楽曲を一括管理し、利用料を徴収して著作者に分配する仕組みを提供しています。JASRACが管理している楽曲は、使用するためにライセンス料が必要になります。
YouTubeはJASRACやNexToneと包括契約を結んでいるため、配信で使用できる曲もあります。ただし、ゲームのBGMやアニメの主題歌などはJASRAC管理外のものが多く、個別の許諾が必要になることがあります。
JASRACのメリットとデメリット
JASRACに登録されている楽曲の使用メリット
ライセンス契約が一括管理されているため、使用許可を個別に取る必要がない。
YouTubeなどのプラットフォームがJASRACと包括契約を結んでいるため、カバー曲やBGMとして利用しやすい。
申請手続きなしで一定の条件下で使用可能(例:YouTubeの収益化動画での利用など)。
著作権の管理が明確。
使用料を支払えば、違法扱いされるリスクが低い。
クリエイター側(作曲家や作詞家)にとっては、収益の管理がしやすく、公正に利益が分配される仕組み。
JASRACのデメリット
著作人格権(後述)の影響を受ける可能性がある
作曲者の意向で「このように歌ってほしい」という指示が守られるため、替え歌やアレンジが制限されることがある。
ボーカロイド楽曲のように、作曲者と直接交渉できる自由度は低い。
配信での利用には制限がある場合も
ゲームBGMやアニメの主題歌など、JASRACが管理していない楽曲も多い。
ボーカロイド楽曲はなぜ使いやすいのか?
JASRACに登録されていないボーカロイド楽曲(ボカロ曲)は、作曲者が個別に使用許諾を出していることが多いため、直接交渉すれば替え歌やアレンジなど、配信で使いやすいというメリットがあります。
3. 著作人格権とVチューバーのキャラクター・音楽の権利
著作人格権とは、著作権とは別に、著作者(イラストレーターや作曲家など)が持つ「作品に対する人格的な権利」のことを指します。この権利は譲渡できず、著作者の名誉を守るためのものとされています。
著作権の保護期間(50年?70年?)
以前は著作権の保護期間は著作者の死後50年(企業・団体は公表後)でしたが、2018年に法改正があり、現在は70年 に延長されました。ただし、国によって期間が異なるため、海外の楽曲を使用する際は注意が必要です。
クラシック音楽は自由に使えるのか?
モーツァルトやベートーヴェンのような著作権が切れた楽曲(パブリックドメイン)であれば自由に利用できます。ただし、現代のオーケストラが演奏した音源には演奏家やレコード会社の「著作隣接権」が発生するため、そのまま使用することはできません。クラシックを使いたい場合は、著作権フリーの音源を探す必要があります。
まとめ
著作権:配信で使う画像・動画・ゲーム映像などは、著作権者の許可が必要です。
著作隣接権:楽曲使用はJASRACやNexToneの管理状況を確認し、フリーBGMやボカロ曲を活用すると安全です。
著作人格権:作曲家が求める歌い方の制限や、キャラクターデザインの権利が関係するため、契約内容をよく確認することが重要です。
Vチューバーとして活動するなら、著作権のルールを理解し、トラブルを避けることが大切です。
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VTuberを描く・目指す人のための実践ガイド たなかし @tanakashi
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