第27話 アマネ ホラーゲームにリベンジします

 開会式も、終わりLelive1周年記念配信は、個々のチャンネルでの配信になった。まず、一番初めの配信をきるのは、私、夢風ゆめかぜ 天心アマネである。


 そして、今回は豪華なゲストも迎えている。それは、もちろん彼女である。


「みなさ〜ん! それでは、まずはこのLelive1周年記念配信のバトンをわたしから繋いでいきましょう。そして、今回のゲストは……。」


「どうも〜、爽やかな月がでる夜に…。attenTGアマリス所属 草花サハナミントだよ〜。」


 そう、この大人気VTuberで大先輩であるミントさんだ。スケジュールの都合上、この時間帯しか空いてないので、はじめから大型コラボで始まる配信になってしまった。


「それじゃ、この配信の企画を決めていくんだよね。アマネちゃん。」


「はい! それでは、このガラガラを回して引いてください。」


「本当のガラガラなんだけど(笑)……。わたしが引くの? うん。じゃあ、回していくよ、」


 ガラガラと音を立て、出てきたカプセルは赤色。Leliveの技術担当 チセさんが考えてくれた企画だ。


「え〜っと。中身は……。ハハッ!」


 ミントさんが、嫌な笑みを浮かべた。背中に冷や汗が出る。まさか、まさか……、を引いたんじゃないよな。


「え〜。これから、私とアマネちゃんはに挑戦します〜!」


 彼女が持っていた紙には、


【ホラーゲームにチャレンジ。(強制)】


 と、書かれていた。(マジか〜。)


 そういえば、チセさんホラーゲーム好きなんだった。あれ? それじゃ、この企画を運営しているのはLeliveであるから、出てくるゲームは……チセさんのオススメってこと?


「それじゃ、用意されたゲームを開くよ。あれ?これって、マジで怖くて罰ゲームとしてやることが多いゲームじゃん。やったことないな。」


 ミントさんが開いたのは、「夜間急行 000」というゲーム。このゲー厶の内容は、なぜか夜間の寝台列車に乗っている主人公が死後の世界にいくための列車に迷い込んだことから始まる。


 そして……、その列車から抜け出すことを目的に行動する、脱出系ホラーゲームなのだが……。その怖さといったら、噂を聞いただけでも涙が出てくる。


「だけど、このゲーム2人プレイできないんだよな。交換でプレイしていこうか。」


「分かりました。それなら、ミントさん先にどうぞ。」


「いや、そこはこの企画の主催者であるLeliveの代表からプレイしなよ。私は、ホラーゲームなれちゃってるからあまり面白くならないよ。」


 いや、ミントさん。現実では、また膝がガクガク震えていますよ。


 ***


 結局、ジャンケンで先に私がやることになってしまった。プレイ画面から、ゲームスタートのボタンを押す。人の叫び声のような効果音が、でてきて初めからビビりまくる。


「え〜っと。まずは、この部屋から抜け出すのか。寝台列車からね。鍵を探そうか。早く動きな!」


「無理ですよ。なんか、明かりが赤色なんですけど! 蜘蛛の巣あるんですけど、中に! ほら!いま、何かドアの向こうを通った〜〜!」


「まずは、何も気にしない! ほら、そこの引き出し開けてみて!」


 指示に従い、おとなしく操作を始める。歩くたびに、地面の板材が不気味な音を立てる。それが、まるで自分に操作をするなと、言っているように聞こえてきてしまう。


 しかし、これで『やっぱ、無理〜』と、言って抜け出せないのがVTuberだろう。私だって、ダンジョン系VTuberなんだから……、あれ?VTuber系ダンジョン配信者だっけ?


 まぁ、覚悟を持っているという意味ですよ。ヤバい怖すぎて一人で会話できるようになってきた。


「アレ?鍵ないな〜。ベットの下とかは?」


 探索中の私に向けて、的確な指示を出してくれるミント。それにただ従う私。もちろん、2人ともこのホラーゲームにビビりまくりである。


 それを、外側から見て面白そうな顔をしているチセさん……。そんな、余裕でこの画面見れるなら助けてくれよ!


 心の中で言葉にならない愚痴をためながら、私たちのホラーゲーム実況のリベンジは続いた。


 ***


 ゲーム開始から、2時間。さっきから叫びっぱなしで喉が、枯れてきている。はじめは、うぎゃ〜〜〜って、っていう声が、ヒィ~~~という声になっただけの違いだが……。


 このゲームの恐怖になれることはないだろう。毎回、似たような驚かせ方ではなくて全く別の驚かせ方をしてくる。


「そろそろ、終わりかな〜。」


 今のプレイは、ミントがやってくれている。今のミッションは、一番前の運転席に行くところ。そこへの道のりでも、何体ものゾンビのようなリアルな人間がこちらに攻撃してくる。


 それを、素早い操作でかわす、ミント。これは、もうさすがとしかいいようがないだろう。


 やっとことで、運転席のドアの前に着くことができた。そして、コントローラーをこちらに渡してくるミント。


「え?」


「最後くらい、アマネがやりなよ。ほら、Lelive代表なんだからさ。」


「さっきから、Leliveだからってホラーゲームやることにはならないでしょ! 最後までやってくださいよ。」


「あれ〜? アマネちゃん、ビビってるの?」


「ビビってますよ〜、ミントさんだって、足ガクガクじゃないですか!」


 ピピッ ピピッ


 机の上に、乗っていたタイマーが鳴る。15分で、交代しているので、その合図だ。結局、私が扉を開けることになってしまった。


 ゆっくりと、扉を操作して開ける。中は、暗くよく見えない。そこに、大きな影が映る。


 そこに居たのは、たくさんの顔を持った怪物だった。怖い、と気持ち悪さを一対一で混ぜたような外見にとっさに、『消えてくれ』と、願ってしまう。


 まるで、その願いを聞き入れたかのようにゲーム画面が、バグり始める。はじめは、ゲームの仕様かと思っていたが、そうではないらしい。チセさんが焦っているから。


「え〜っと、なんかパソコンの調子が悪いみたいで配信を中断しています。」


「良かった〜。怖かった。」


「アマネちゃん、クリアしたわけじゃないからね。」


 釘を刺す用に彼女に言われ私の配信時間は終わった。もともと、未成年だから深夜の仕事はできない。そのため、中途半端にホラーゲーム実況は幕を落としたのだった。




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